薄暗い倉庫のような場所で、2人の人物が話をしていた。
「じゃあ、現物を見せてもらうぜ」
「ああ、これだ」
片方の人物はもう1人に何かを見せているようだ。
「なるほど、麻酔でぐっすり眠っているみたいだな……」
「麻酔が切れればどうなるかは火を見るよりも明らかだがな。それでこいつを調達した報酬は?」
「それがよ、手違いがあってまだ用意できないんだ。後1~2日くらい此処に隠してもらえないか?」
「なんだと?私は金で雇われてこいつを調達したんだぞ。その報酬が1、2日遅れるだと?」
ともう1人の方が怒りを露にする。するともう1人は
「そう言うなよ。俺だってこんな予定外の事なんて想定してなかったんだから」
2人の人物がそんなやり取りをしていると、そこに別の人物が現れた。その人物は2人に
「おい!お前らそこで何してる!?」
と尋ねる。そして手に持った懐中電灯で2人を照らす。その男はこの場所を担当する警備員だった。だが、
「いっ、異星人!?」
照らされたのは地球人では無かった。ダダとマグマ星人である。
「やべ!見つかった!」
とマグマ星人は慌てるが、ダダは
「運が悪いな!」
と怪しい装置を取り出し、そこから怪光を放った。
「うわあっ!?」
怪光を浴びた警備員は気絶してしまった。ダダは
「いいか、別の場所を指定するから報酬が用意出来次第そこに行け。さもなきゃこいつは渡せん」
とマグマ星人に言う。
「分かった。金は用意しておくから、必ずこいつを俺に渡してくれよ」
マグマ星人はそう言ってその場を去った……。
◇ ◇ ◇
レオは大学の講義を終えて、市内の公園をぶらついていた。すると、
「あっ、サヨメさんだ」
とサヨメを見つけた。レオが近づいて行くと、彼女は何かを探しているようだった。
「あの……」
とレオは声をかける。するとサヨメは振り返り
「お前は……レオか」
と思い出した様に呟く。
「何をしているんです?」
と尋ねるレオに、サヨメは淡々と答える。
「人探しだ」
「人探し?その人って誰なんです?」
するとサヨメは少し考えた後に、口を開く。
「……名前は知らん。しかしそいつがこの公園に入るのを見てな、気になって後を追ったのだ」
「なんで名前も知らない人を追っているんです?」
「……。そうだな少し耳を貸せ」
そう言うとサヨメはレオの耳元に口を近づけて、
「そいつは異星人で、しかも怪獣の気配もするのだ」
と囁いた。レオは驚き、
「異星人!?それに怪獣の気配ってどういう事ですか!?」
と質問する。サヨメは
「声は小さくしろ。大方怪獣に変身できる種族か、あるいは『何らかの方法で怪獣を持ち歩いている』かだな。この近所に住んでいる者として放っておけん。だから探しているのだ」
と言う。レオは
「そうだったんですか……、俺も手伝いましょうか?」
と提案するが、サヨメは
「いや、私1人でやる」
と言って再び探し始めた。レオも手伝うのは諦めてその場を後にした……。
1人になったレオは公園を歩き回っていた。すると、
「うん?」
公園内の公衆トイレのそれも男子トイレの中にサヨメが入ろうとするのを見た。
「ちょっ!?サヨメさん何やってるんですか!?」
とレオが止めるとサヨメは振り返り、
「レオか。さっき探していた異星人がこの中に入るのを見たのだ。だからな」
と答えるが、
「だからと言って女性が男子トイレに入るのはマズいですって!!」
とレオはサヨメを引き留める。
「で?その異星人の特徴ってどんな感じなんですか」
とレオが聞く。するとサヨメは少し考え込み、
「……そうだな。白い帽子を被っていて白黒の縞々柄のスーツを着ていた。地球人に化けている男だ」
と答えた。レオは
「じゃあ俺がちょっと確認してきますから、サヨメさんはここで待っていてください」
とサヨメに言う。サヨメは
「危険だぞ?恐らくだが相手は犯罪者やそれに類する者だ。下手に刺激して何が起きるか分からん」
と忠告するが、レオは
「分かってます。けどこのままサヨメさんに危ない橋を渡らせる訳にはいきませんから……」
と言い、男子トイレの中へ入っていった……。
レオは男子トイレの個室に異星人がいるのではと思い、1つずつ確認していく事にした。まずは一番手前の個室の扉を開くが、そこには誰もいなかった。次に隣の個室も開けるがそこにも誰もいない。
すると3つ目の個室から話し声が聞こえてくる。レオは隣の個室から聞き耳を立てることにした。
「……で、今度こそ報酬は持って来ただろうな?」
「ああ。確かにあるぜ。しかし、何もこんな狭くて臭い所を指定しなくてもいいんじゃないのか?」
「いいんだよ。ここなら邪魔が入る心配もない」
どうやら異星人同士が会話している様だが、レオのいる個室からは死角になっていて見えない。暫くすると
「よし、報酬は確かに受け取ったからな。じゃあな」
と1人の異星人が去って行った。そしてもう1人の異星人もその場を去ろうとするが、その直前に何かが落下した様な音が響いた。
「しまった!」
レオが個室のドアを開けてみると、黒い服をきた男が慌てていた。床をみると試験管のようなものが割れていて、
「……怪獣?」
床には手のひらに乗りそうなサイズの怪獣がいた。黒い服の男は
「やべえ!ヘルベロスが目覚めちまった!!」
と叫び。慌ててトイレの外へ出ていく。レオが状況について行けず、怪獣の方をみると
「あれ?大きくなって来てる?」
怪獣、ヘルベロスのサイズが先ほどより大きく、いや明らかにどんどん大きくなって来ている!レオは嫌な予感がした。
「サヨメさん!」
と、レオはトイレの外に出る。すると、サヨメが立っていたがその足元にはダダとマグマ星人が倒れていた。
「うわっ!サヨメさんその2人は!?」
「ああ、トイレからのこのこ出て来たから気絶させた」
「そうなんですか?あっ、そうだ!トイレの中に小さい怪獣がいたと思ったらそれがどんどん大きくなって!」
と、レオは混乱しながらも状況を説明する。サヨメは
「なるほど。差し詰めダダが縮小させていた怪獣の封が解かれたと言った所か。おい、この場から直ぐに離れろ。もうすぐ怪獣が元のサイズに戻るぞ」
と言う。レオが
「はい!……あっ、サヨメさん!」
と返事をすると、サヨメはふっと消えていった。そして赤と黒で全身に鋭利な刃がついた悪鬼の様な怪獣、ヘルベロスの方を確認すると、ヘルベロスはトイレの屋根を突き破り更に大きくなっている。あと数分足らずで数十mものサイズになるだろう。異変に気付いた周囲の人々は逃げ惑っている。
「どうすりゃいいんだ……」
レオは途方に暮れる。そんな中、1人の男性が駆け込んで来た。
「早く!こっちに逃げろ!!」
と叫ぶ男性に、人々は誘導されるままその場を離れていく……。するとその男性は
「おい!何してるんだ!?君も早く逃げるぞ!」
とレオに言うが、レオはその場から動かないでいた。そしてヘルベロスの方を見て呟いた……。
「……やるしか無い」
レオは自分が変身する瞬間を隠すため、物陰を探しに行ったのだった。
数分後、ヘルべロスは元のサイズに戻り街を破壊する。そんな中光の柱が立ち上ったと思うと、ウルトラマンテラスが現れた。ヘルベロスは現れたテラスを直ぐに敵と認識し、口から火球を吐き出した。
「ジュア!」
テラスは火球を躱し、ヘルベロスに掴みかかる。そしてそのまま押し倒そうとするが、ヘルベロスは抵抗して尻尾を振り回す!
「デュワッ!?」
尻尾の一撃を受けて吹っ飛ぶテラス。だがすぐに立ち上がり再びヘルべロスに掴みかかる。今度は両手で押さえ込もうとするが、ヘルベロスはそれすらも振りほどき、逆にテラスに噛みつく。
「ジュワアッ!!」
ヘルベロスに腕を噛まれたテラスは悲鳴を挙げる。しかしそれでもヘルベロスを抑えつけ、遂に投げ飛ばした!
「ジュワアア!!!」
地面に叩きつけられたヘルベロスは悶え苦しみながら後退する。だがヘルべロスは肘の刃を振り抜き、赤い光刃『ヘルスラッシュ』を放つ。ヘルスラッシュを喰らったテラスはダメージを受けて膝をつく。
更にヘルべロスは背中のトゲから紫色の矢の様な光弾の雨『ヘルエッジサンダー』を放って来た。テラスはバリアを張ってヘルエッジサンダーから身を守るが、胸のカラータイマーが点滅し始める。このままではテラスが危ない。
その時だ、ミサイルが飛んできてヘルベロスに命中した。ダメージを受け怯むヘルべロス。
「ウルトラマンテラスを援護する!」
ミサイルを放ったのは地球防衛隊の戦闘機だった。更に戦車隊も到着し、ヘルべロスに砲撃する。地球防衛隊はあわよくばテラスを捕獲したいが、怪獣と戦っている場合はその限りではなく、怪獣退治を優先する方針に決めていた。
ヘルベロスは頭についた角から電撃を放つ『ヘルホーンサンダー』を放ち、戦闘機を撃墜した。そして振り向きざまにまたもヘルスラッシュを放った!
「デュッ!」
テラスはバリアで防ぐ。残りの戦闘機や戦車がヘルべロスに攻撃を集中させる。またもダメージを受けるヘルベロスは戦車隊を攻撃するべく口を開く。その時、テラスは腕をL字に組みヘルべロスの口内目がけて光線を発射した。
光線はヘルべロスの口内に直撃し、ヘルベロスは口を閉じて苦しみだす。そして最後に爆発四散した……。
◇ ◇ ◇
サヨメはテラスとヘルべロスの戦いの顛末を見ていた。
「あの消耗具合でこちらから仕掛けるのは無粋か」
カラータイマーが点滅しているテラスを見ながらサヨメはそう呟く。そして、
「さて、こいつらを交番の前に放置していくか」
と拘束したダダとマグマ星人を見る。そしてサヨメはダダとマグマ星人を引きずりながらその場を後にした……。
ヘルベロスを倒したテラスだったが、カラータイマーが点滅するのを見てその場から飛び去ったのだった……。
「はあ……はあ……」
変身を解除したレオは痛む胸を押えた。あの怪獣と戦うのはキツく、レオ=テラスにとって初めての苦戦と言えた。すると、不意に誰かに声をかけられる。
「大丈夫か?」
「あっ、はい。なんとか」
レオはそう答えるが、声をかけてきた人物に驚く!それはサヨメだったのだ。
「サヨメさん!?どうしてここに!?」
「ああ、どうやら無事だったようだな。あの2人を然るべき場所に突き出した後にお前の行方を探していたのだ」
サヨメは淡々と答える。レオは
「そうだったんですか……。それにしても何であんな事を?」
と尋ねるが、サヨメは
「怪獣を持ち込み取引をしている時点で奴らを犯罪者だと判断した。だから後は動きを封じて通報して放置しただけだ」
と答える。レオは
「なるほど……」
と呟くが、サヨメは
「それより、かなり調子が悪そうだがヘルべロスの攻撃に巻き込まれたか?」
と、尋ねる。ほぼ正解と言っていいのだが正体を隠しているレオは正直な事は言えず、
「いえ、全力で逃げたから大丈夫です」
と曖昧に答える。だが、サヨメは
「そうか……」
とだけ言い、歩き出すのだった……。レオはサヨメに
「しかし、サヨメさん。何か慣れていた感じですけど、こういう事に何回も遭遇したんですか?」
と質問するが、サヨメは
「お前の想像に任せる」
とはぐらかすのだった。
◇ ◇ ◇
「どうやらマグマ星人の奴、ヘルべロスを運んでくるのに失敗しただけでなく、警察に捕まったようです」
「そうですか。まったく、余計な手間をかけさせてくれますね」
「本当ですよ。お陰で貴重なヘルべロスがウルトラマンに倒されましたしね」
「捕まったマグマ星人から我々に繋がる情報は出ない筈ですが、しばらく静かにしていた方がいいでしょう」
とあるビルの一室で2人の人物が話し合っていた。その2人は地球人の姿をしていたが、異星の者である。正体を隠した異星人達はこれからの事を話し合う。
「しかしあのウルトラマン、中々やるようですね。ヘルべロスを倒すとは……」
「はい、ヘルべロスは最凶獣の別名を持つ凶悪な暴れ者、それを倒すとはウルトラマンテラスの実力をもう少し多く見積もった方がいいでしょうな」
「ええ、全くです。ただ」
「ただ?」
「あのウルトラマンはそれだけではない何かがある気がするんです」
2人の異星人の会話は続くのだった……。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等お待ちしております。