ウルトラマンテラス   作:クォーターシェル

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ゾンビ怪獣 シーリザー 登場


第8話 彼女の事情と異臭騒ぎ

レオとサヨメの2人は星雲荘近くの公園のベンチに座っていた。

 

「――と、言う訳なんです」

 

レオはサヨメに自分がウルトラマンになった事情をかいつまんで話していた。サヨメと話し合えば無用な戦いは避けられると思ったからだ。疲労もあるのだろうが、サヨメはレオの申し出につきあってくれた。

 

「そうか、地球人の君がウルトラマンになったのはそういう訳があったのか」

 

とサヨメは答える。レオも

 

「はい」

 

と頷く。

 

「それで……、サヨメさんは何故俺を狙ったんです?俺は貴方に何か恨まれるような事をした覚えは無いんですけど……」

 

レオの問いにサヨメは、

 

「私も別に君個人に恨みがあるわけではない。しかし、私はウルトラマンはバルタン星人にとって不俱戴天の仇だと教えられ育って来たのだ」

 

と答える。

 

「どういうことですか?ウルトラマンがバルタン星人にとっての仇って……」

 

「かつて、20億人以上ものバルタン星人がウルトラマンに殺された。私の世代より遥か昔の出来事だったらしいが、それでもバルタン星人にとってウルトラマンは仇敵なのだ」

 

とサヨメ。レオは

 

「そんな……」

 

と呟く。そして、

 

「……でも、俺は地球人です。だからその仇ってのには当て嵌りませんよね?それに俺1人殺した所でバルタン星人が滅ぶ訳でも無いでしょう?」

 

と言う。するとサヨメは、

 

「確かに君の言う通りだ。そもそも、私も最初からウルトラマンを倒しに地球に来たわけでは無い。バド星人に雇われたのだが、そのバド星人が全滅してな、それで路銀を稼ぐ為に地球人に化けたのだ」

 

「あの時か……」

 

レオの脳裏に初めてウルトラマンテラスになった時に倒したバド星人が浮かび上がる。

 

「バド星人を倒したのがウルトラマンと知った時は、これは逃れえぬ宿命なのだと思った。今は亡き父も言っていたようにバルタン星人とウルトラマンの長きにわたる宿命がな」

 

「サヨメさん……」

 

レオはサヨメの境遇に同情する。しかし、

 

「サヨメさん、こんなことはやめましょう。俺はサヨメさんに会ってそんなに長くは無いんですけど、サヨメさんが悪い人じゃないってのは何となく分かります。だから、俺は貴方と戦うのを避けたいんです」

 

とレオは言う。サヨメは

 

「しかし……」

 

と呟くが、レオは続ける。

 

「地球に来て色々経験してサヨメさんも分かったんじゃないですか?バルタン星人も地球人と同じで良い人も居れば悪い人も居るって。そして、貴方はその悪い人ではない筈だ!」

 

「……っ!!」

 

サヨメはその言葉に衝撃を受ける。確かに自分はバド星人達によって雇われたに過ぎない。だが、今まで親から教えられてきたウルトラマンへの敵意を捨てていいのか?

 

「俺は戦うのは好きじゃない!まして悪くも無い人となら猶更だ!」

 

レオはサヨメに訴える。だが、その一方でサヨメの内心は複雑な物だった。地球人への親愛とウルトラマンへの敵意がせめぎ合っていたのである……。そしてサヨメは立ち上がる。

 

「……考えさせてくれ。暫くの間、な」

 

サヨメはそのまま公園を後にして、夜の町に消えていった。

 

「サヨメさん……」

 

それを見送ったレオはそう呟くのだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「サヨメさん、今日も帰ってきてないみたいだったけどどうしたのかな……?」

 

ダークロプスを倒してから数日後、怪獣研究会の部室でパソコンを操作しながらレオは呟く。そんな時、トオルが声を掛ける。

 

「殿奈、なんか元気無さそうだけどどうした?」

 

「あっ、いえ……。すいませんちょっと集中力が切れて……」

 

言い訳するレオ。すると、

 

「殿奈、気分転換に外へ出るのはどうだ?隣町の海岸に怪獣の死体がうち上がったみたいでさ、他の部員と一緒に見物に行かないか?」

 

「怪獣の死体……、ですか?」

 

「ああ、半年くらい前に日本領海で防衛隊と交戦したシーリザーって名前の怪獣らしい」

 

「シーリザー……?」

 

トオルは少し考え、

 

「……分かりました。俺も行きます」

 

「よし、じゃあ早速行くか!」

 

とトオルは部員達を連れて部室を出て行った。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

隣町の海岸では防衛隊の隊員達が怪獣の死体を調べていた。

 

「この死体、半年前に日本領海に侵入したあのシーリザーで間違いないな」

 

「はい、採取した細胞を調べたところ同一個体で間違いないようです」

 

怪獣の死体のある場所に着いた一同だが、既にそこには人だかりが出来ていた。そしてその中に1人防衛隊隊員が居た。年若い隊員は死体を見に来た人達を誘導している様だった。

 

「あの、ここは危険ですので近づかないで下さい!」

 

トオルはカメラを取り出し、

 

「もうちょっと近づきたいけどここまでか」

 

と残念そうに言う。レオは

 

「しかし、酷い臭いですね」

 

と、鼻をつまむ。辺りには酷い悪臭が漂っていた。どうやら腐敗しているシーリザーの死体から漂ってきているらしい。巨大な怪獣の腐乱死体ともなれば辺り一帯を包む程の悪臭が発せられるのは当然だろう。怪獣研究会部員の1人が

 

「吐きそう……」

 

と口を押さえる。

 

「確かにな、でも本当に腐ってるな。この臭いじゃどの道側まで近づくのは無理だったかな?」

 

と、トオルはそう言いながらカメラでシーリザーの死体を遠目から撮影している。すると、防衛隊の隊員が

 

「これから怪獣の死体を処分する為に海上に運びます!運ぶ際に死体の一部が飛び散る恐れがあるので離れてください!」

 

と見物人達に呼びかける。そして、現場に防衛隊の大型輸送機が到着する。輸送機はシーリザーの死体の頭上に飛び、ワイヤーを死体に打ち込む。このまま沖合へ空輸する気の様だ。レオやトオルを含めた見物人が見守る中、シーリザーの死体は輸送機によって引き上げられる。しかし、

 

「!?」

 

ワイヤーの打ち込みが甘かったのか、シーリザーの死体からワイヤーが外れて、持ち上がっていたシーリザーの死体は地面に落下してしまった。それにより腐敗しているシーリザーの死体から肉片や腐汁が飛び散る。

 

「うわあ……。ちょっと今夜ご飯食べれないかも……」

 

レオやトオルと共に見物していたワトがそう呟く。

 

「大丈夫なのか……?」

 

「おええ……」

 

他の見物人も各々の感想を口にする。輸送機が一旦ワイヤーを巻き上げ体勢を立て直そうしたその時、なんとシーリザーの死体が起き上がった!

 

「なっ!?死んでいたのでは無かったのか!?」

 

「仮死状態!?」

 

「いやそんな筈は……!?」

 

防衛隊の隊員達はシーリザーが蘇生した事に驚くが、直ぐに見物人の避難誘導に移る。

 

「皆さん!落ち着いて避難してください!」

 

怪獣のゾンビとでも言うべきシーリザーは内陸へと足を進める。

 

「すげえ!ゾンビ怪獣だ!」

 

トオルはシャッターを切る。レオは

 

「写真撮ってる場合じゃないですって!早く逃げましょう!」

 

と、トオルを避難させようとするが、

 

「いや、この機会を逃したら一生後悔しそうだ!だから撮らなきゃな!」

 

そう言ってトオルはカメラでゾンビ怪獣の写真を撮り続けるのだった……。

 

シーリザーが侵攻した地点では防衛隊の戦車や戦闘機が攻撃を加えるがシーリザーは攻撃をものともせず、歩みを進める。防衛隊の指揮官が、

 

「どうなっている!?」

 

と疑問を呈す。すると隊員の1人が

 

「シーリザーの細胞は強い再生能力を持っているようです!高熱の火炎で焼却する他に無いようです!」

 

と報告してくる。指揮官は

 

「ならば焼夷弾か……。しかし、住宅地の近くで焼夷弾を使うわけにはいかない!先ずは街から離れた場所に誘導するぞ!」

 

と指示を出し、シーリザーを街の外まで誘導しようとする。しかし、ここで上空からシーリザーに光線が放たれた!

 

「何だ!?」

 

驚く指揮官。そこにいたのは……、ウルトラマンテラスである。

 

「ジュアッ!」

 

テラスはシーリザーの前方に降り立ち、格闘戦を挑む。シーリザーは両手の爪でテラスに襲い掛かるが動きは鈍く、テラスはシーリザーの攻撃を受け止めて逆にパンチを放っていく。そして、テラスはシーリザーの両手を掴んで回転し投げ飛ばす!

 

「ジュアッ!」

 

倒れたシーリザーにパンチを叩き込むテラス。しかし……、

 

「グアアッ……」

 

「ジュアアア!?(臭っ!?)」

 

シーリザーはゲップの様に口から毒ガスを吐き出した。テラスはガスを吸い込んでしまい、後退る。そこにシーリザーが突進して来てテラスを殴り飛ばす!

 

「ジュアアッ!?」

 

テラスはなんとか立ち上がり、今度はキックを放つ。しかし、

 

「!?」

 

ずぶりという音と共にキックを放ったテラスの足はシーリザーの腹に沈み込んでしまった。シーリザーは全く痛みを感じていないようだ。これ幸いと片足がはまって動きが封じられたテラスを殴る。

 

「ジュアッ!?」

 

テラスも腐敗したシーリザーの身体から足を引き抜こうとするが中々抜けない。その間にシーリザーはテラスを何度も蹴る!

 

「ジュアアッ!?」

 

「グオオッ!」

 

さらにシーリザーは毒ガスを吐き、テラスを苦しめる。そして、シーリザーは足を引き抜こうとしていたテラスにのしかかり、そのまま押し倒してしまう。

 

「ジュアッ!?」

 

倒れたテラスに馬乗りになり、殴り続けるシーリザー。

 

「ジュアア……!」

 

殴られ続けてカラータイマーが点滅を始める。このままではテラスが危ない!その時、シーリザーが市街地から十分離れたと判断した防衛隊の戦闘機が、焼夷弾をシーリザーの背中に放った。焼夷弾の炎によって背中を焼かれたシーリザーはたまらずテラスから離れる。

 

「ジュア!」

 

その隙をつき、テラスは腕を十字に組んでサンジェント光線を発射する。しかし、シーリザーは何とサンジェント光線を吸収してしまった!

 

(既に死んでるこいつは倒せないのか……!?いや、待てよ)

 

テラスは先程の出来事を思い返しながらシーリザーの背中を見る。そこは焼け焦げたままだった。

 

(こいつは火に弱いんだ!ならば……!)

 

向かってくるシーリザーに対し、テラスは両手を突き出して合わせる。そして両手から火炎が放射された。

 

「グオオッ……!」

 

テラスの火炎放射、テラスファイアーを受けたシーリザーは先ほどとは打って変わって苦しむ。それを確認したテラスは更にテラスファイアーをシーリザーに浴びせた。高熱の火炎でシーリザーの身体は焼却されていき、やがて灰塵になった。そしてテラスはシーリザーが完全に焼却されたことを確認すると、空へと飛びたったのだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「よし、終わ……臭っ!?」

 

変身を解いたレオだったが、シーリザーとの戦いでその腐敗臭がうつったのか、その身体からは悪臭が発せられていた。

 

「どうしようこれ……?」

 

レオはそう呟くのだった。その後、レオが家に帰って悪臭を落とすまで、その半径5m以内に生命体は近寄ろうとしなかったと言う……。

 

その頃、サヨメはというと、

 

「お客さん、今日も閉店ギリギリまで居るつもりかい?他のお客さんの邪魔にならないならいいけど、大丈夫なのかい?」

 

「ほっといてくれ、まだ考えがまとまっていないんだ……、ボラジョジュースをもう一杯……」

 

とあるバーで飲んでいた。そのバーは地球人は入れない、宇宙人専用の店だった。サヨメはカウンターに突っ伏し、ボラジョジュースを注文する。

 

「はいよ」

 

店主の宇宙人がグラスに入ったボラジョジュースを出す。サヨメはグラスを傾けて一気に飲むと、

 

「ふう……。しかし、私は一体どうしたと言うのだ?」

 

と呟く。するとそこに1人の客が入って来た。その客はサヨメの隣に座った。

 

「隣いいかね?マスター、私にも彼女と同じ物を……」

 

その客はメフィラス星人だった。そのメフィラス星人はサヨメに

 

「バルタン星人のお嬢さん、随分と悩んでいるようだね」

 

と話しかける。サヨメは

 

「……、バルタン星人のお嬢さんか……。確かに私はバルタン星人だが……」

 

「何かお悩みですか?私で良ければ相談に乗りますが?」

 

「いや、結構だ。それに貴方に話しても意味は無いだろう」

 

「そうですかね?まあ、無理に話せとは言いませんが」

 

そんな会話をする2人。

 

「しかし、バルタン星人のお嬢さん。貴方はどうして地球に来たのです?何か目的があって来たのでしょう?」

 

「……いや、仕事の都合で立ち寄っただけだったのだが、妙に居心地が良くてな……」

 

サヨメがそう答えると、メフィラス星人は

 

「まあ、この星は何故か妙な魅力がありますからね。かく言う私も深くは話しませんが地球のとあるものに夢中でして……、今地球に滞在してるのですよ」

 

と自分の事を語る。そして、

 

「そうですね、お近づきの印にこれを渡しておきましょう」

 

名刺をサヨメに渡した。

 

「『京都を愛する会、メフィラス星人トワイト』……?」

 

訝しげに名刺を読むサヨメ。メフィラス星人のトワイトは

 

「とある事情でこの国の京都に居ます。興味があったら尋ねても構いませんよ。京都に興味のある宇宙人は歓迎します……」

 

「京都か……。まあ、気が向いたら行ってみよう」

 

とサヨメは名刺をしまいながら言うのだった。そして、

 

「さて、私はそろそろ帰るよ。お代はここに置いておくぞ」

 

そう言って席を立つ。トワイトも立ち上がり、2人は店を出る。その時、トワイトがふと立ち止まり、サヨメに尋ねる。

 

「バルタン星人のお嬢さん、貴方はこの地球で何かやりたい事でもありますか?もしあるのなら、それは地球に居てこそ叶う事です。私はこの星でそれを見つけました。貴方も何かやりたい事があるなら、それをやるべきだ」

 

「私がやりたい事……?」

 

サヨメはそう呟き、自分のやるべき事を考えるのだった。そして、

 

「そうだな……、私も少し考えておくか……」

 

と呟いた。トワイトはそれを聞いて微笑み、2人は店の前で別れるのだった……。

 




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