TS貴族令嬢の複雑すぎる婚活事情 作:桜木桜
月水金土の更新予定です。
たいへん、えっちなシーンが書けたので早く皆さんにおみせしたいです。
『わたくしのガルザァース語は……聞くに耐えないものでしたでしょうか?』
私はラークノール公妃と、もう一人の男性にそう尋ねた。
そしてまた沈黙。
……ふむ。
道中、トール君に発音チェックしてもらって「母上よりも上手い」とお墨付きをもらったんだけど。
エイル語で同じことを口にしようか。
そう思ったその時だった。
『い、いや……大変お上手なガルザァース語です』
男性が慌てた様子で口を開いた。
これ以上、黙っていると恥の上塗りになると思ったのだろう。
正解だけど、いろいろ間違えている。
私はあえて首を小さく傾げてみせた。
『大変、失礼いたします。あなた様は……』
『……!! べリドル・エル・バレーヌでございます。ラークノール公爵より、バレーヌの地に封ぜられた伯です。この度はアース家の成員として、ロゼリア姫を歓迎させていただきます』
『バレーヌ伯爵! トール殿のお兄様ですね? お会いしたいと思っておりました。この度はどうぞ、よろしくお願いいたしますわ』
私は両手を合わせ、笑みを浮かべた。
久しぶりの対男性用全力社交笑顔である。
どうだ?
私はトール君をこの笑顔で落としたんだぞ?
ほら、こんな可愛い笑顔の女の子、いじめられる?
……まあ、私は男だけど。
『……そ、それでは、ご案内いたします。ヨローズ殿!』
「あ、はい! では、ロゼリア姫。どうぞ、こちらに……」
ラークノール公妃は馬車を手で指し示した。
北方訛りを感じさせるエイル語だ。
おそらく、これが彼女の母語なのだろう。
『はい。よろしくお願いいたします。ラークノール女公』
私はガルザァース語でそう伝えると、歩き始める。
まず先にトール君が馬車に乗り込み、彼にエスコートされる形で馬車に乗る。
乗り込む時、私が羽織る外套――トール君からのプレゼントを睨むラークノール公妃の顔が見えた。
予想通りだけど、歓迎されていない。
憎まれている気がする。
もっとも、ここまでは予想通り。
「母上……カンカンに怒っていらっしゃるが、大丈夫ですか?」
「問題ありません。見ていてください」
心配そうにトール君が私の耳元で囁く。
そんな彼に私はウィンクする。
悪印象は好印象に転換可能だ。
元々、印象が悪いのだから、最初は強ければ強いほどよい。
勝負はこれからだ。
ヘーリング市中心部。
ヘーリング城は石造りのお城だった。
開放的なブドゥーベル城とは異なり、実用性(防備)重視の北方様式の建築だ。
外見は石造りに見えたが、内部は木製の床が貼られていた。
その謁見の間、玉座には座っていたのは一人の男。
年齢は五十代半ばほど。
しかし生命力に満ち溢れており、年齢より若々しく見える。
バレーヌ伯爵の兄だと説明されても納得してしまうだろう。
しかし外見とは裏腹に、その魔力量は驚くほど小さい。
多く見積もって、伯爵級。
バレーヌ伯爵……否、劣るかもしれない。
しかし魔力の矮小さはむしろ、彼自身の能力の強大さを物語っている。
貴族たちは彼を讃え、誹り、こう呼ぶ。
“偉大なる私生児”。
非嫡出子の身でありながら、嫡出の弟たちとその家族を皆殺しにし、公爵位を簒奪した怪物。
ジーオン・エル・ラークノール。
「よくぞ、我が邦へ参られた。ロゼリア姫」
『お久しぶりです。ラークノール公』
ラークノール公爵の挨拶は北方訛りのエイル語だった。
私がガルザァース語で挨拶をすると、ラークノール公爵は驚いた様子で眉を上げた。
「見事なガルザァース語だ。しかしエイルの言葉でよいぞ? エイル語を解せぬものはこの城にはおらん」
「おや……そうでしたか?」
私はわざとらしく驚いた様子を見せ、そしてラークノール公妃とバレーヌ伯爵の方へと視線を向けた。
二人は気まずそうに視線を逸らす。
「この地はガルザァースの地であると、説明を受けましたので。わたくしもそれに倣おうと思ったのですが」
「ほう?」
ラークノール公爵はラークノール公妃とバレーヌ伯爵へと視線を向けた。
さすがにラークノール公爵に視線を向けられては、説明しないわけにもいかないらしい。
「ヨローズ殿が……うっかり、ガルザァース語で挨拶をしてしまいまして」
バレーヌ伯爵はいけしゃあしゃあと答えた。
まるで自分には非がないかのような言い方である。
裏切られたラークノール公妃は屈辱に表情を歪めるが……。
「バレーヌ伯爵のおっしゃる通りでございます。わたくしが……」
『くはっ!』
ラークノール公爵の口から笑い声が漏れた。
『何だ、お前たち。揃って、十四歳の小娘を嵌めようとして、嵌められたのか?』
ガルザァース語で大笑いした。
小娘って……私、目の前にいるんだけど。
ガルザァース語、分かるんだけど。
『しかしベリドル、感心せんな。男は女を守るもの。にも関わらず、罪を被せて己だけ逃れようとは。我が血の長兄ともあろう者が……情けないこと、この上ない。恥を知れ』
『は、はぁ……!』
バレーヌ伯爵は深々と頭を下げ、ラークノール公爵に謝罪する。
それから彼はラークノール公妃に視線を向けた。
ビクっと彼女は肩を震わせる。
夫の説教に怯える彼女に先程までの威勢はなく、ただの小娘のようだった。
『ヨローズ……お前も大人げないぞ。息子を取られて気に障るのは分かるが……しかし男というのは、親から離れ、他人の女の物になるのが常だ。俺がお前の物になったようにな』
『は、はい……旦那様』
ヨローズは小さく頷いた。
なんか、惚気てない?
それからラークノール公爵は私に視線を向けた。
「我が一族が失礼をした。ロゼリア姫。我が顔に免じて許せ」
開き直られてしまった。
厚顔無恥で無礼な発言だが、しかしラークノール公爵は自分が“蛮族”だと思われていることを理解している。
だから体面を気にしない。
ある種の無敵の人である。
しかしこういう言い方をされると「はい、わかりました」とは言えない。
何かされるたびに「我が顔に免じて許せ」とされてしまう。
しかし私はラークノール公爵家と友好関係を結びに来たので、「許さない」とは言えない。
上手い言い回しだ。
息子と妻の尻拭いと言ったところか。
字も読めない書けない無教養人であると誹られているが、やはり頭の回転は速いのだろう。
もしかしたら、前者はただのプロバガンダだったり……。
いや、さすがにそれはないか。
デメリットの方が多い。
「許す……とは? 何のことでしょうか?」
私は何を言っているのか分からないとでも言うように、首を傾げてみせた。
私の反応にラークノール公爵は無言で続きを促す。
「てっきり、わたくしのためにガルザァース語で挨拶をしてくださったのかと。……わたくしがガルザァース語を学んでいることを、トール殿から伝え聞いているものとばかり」
私の練習に付き合ってくれていたんでしょう?
という私の言葉にラークノール公爵、バレーヌ伯爵、ラークノール公妃の三人は揃って目を見開いた。
そしてトール君の方へと視線を向けた。
「知っておったか、トール」
「はい」
「であれば、教えてやれば良かろうに」
「ロゼリア姫が明敏な女性であることは何度もお伝えしたつもりです」
トール君は得意気に言った。
どうして私の自慢でドヤ顔しているんだろうか……。
可愛いからいいけど。
「くはっ……そうであったな。確かにその通りだ」
ラークノール公爵はゲラゲラと下品に笑う。
そして再び私を真っ直ぐ見つめた。
「ラークノールの地の主として、貴殿を歓迎する。ロゼリア姫」
「お招き感謝いたします。ラークノール公」
立ち上がって挨拶をしたラークノール公爵に対し、私も貴族の礼でもって返す。
ようやく滞在を認められた形だ。
「早速歓迎の宴……としたいところではあるが、長旅でお疲れであろう。宴は夜に行う故、それまではごゆっくり休まれよ」
「お気遣い感謝いたします」
『と……言葉はガルザァース語の方が良かったか?』
ラークノール公爵は悪戯っぽく笑った。
社交の常識ではエイル語で話すべきだが、それを口にすれば先程の私の発言と矛盾する。
とはいえ、これはちょっとした冗談だろう。
『ガルザァース語……と言いたいところですが、エイル語でお願いいたします。我が方には解さぬものも多いので』
「左様か。ではそうしよう。……貴様らも聞いたな?」
ラークノール公爵はラークノール公妃やバレーヌ伯爵らを見渡し、そう言った。
二人は小さく頷いて見せた。
……そうだ。
一つ、言っておかないと。
「ラークノール公」
「どうされたか?」
「わたくしのことは淑女として、扱ってくださいませ」
小娘ではなく。
私がそう答えると、ラークノール公爵は破顔した。
「すでにそうしている」
高評価ありがとうございます(敬称略)
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