ウララ「トレーナー!この子飼ってもいーい?」ト「元いた場所に返してきなさい!(戦慄)」 作:コウハクまんじゅう
悲鳴にも似た叫び声がトレーナー室に響いた。
ここは東京都府中市にある日本ウマ娘トレーニングセンター学園…通称、トレセン学園である。全国から数多のウマ娘が門を叩きに来るこの学園は国内でも最高峰を誇るウマ娘養成機関だ。
在籍する生徒数は約2000名とかなりのマンモス校である。学園の面積は計り知れないほど広大で施設も充実しており、ここに所属するウマ娘達はトゥインクルシリーズへの出場、及び勝利を目指して日々努力している。
そんなトレセン学園の広大な敷地の内の一部屋で、何やら奇妙な騒ぎが起こっていた。
「どこからそんなの拾ってきたんだ!?元いた場所に返してきなさい!」
野良猫を拾ってきた自分の子供に叱る母親の如く叫ぶ一人の男。彼の胸元には光り輝くバッジがついており、それは彼をトレセン学園所属のトレーナーである事を示していた。
「えぇーなんでー?」
男の言う事に対して、さながら拾ってきた野良猫を母に飼っていいか確認したら叱られた子供のように頬を膨らませる桃色の髪をした少女。
「いやトレセン学園は基本ペット禁止だから!というかその…なんなんだ、
男に訊ねられた少女は「んーっとぉ…」と考えながら、腕に抱えた
「うーん…わかんない!」
「わかんない!?…うーん、まぁそうだよなぁ…一体何なんだろ、
先程から二人の会話には奇妙な点がある。
まず話を整理すると、桃色の髪の少女…ハルウララはなにやら動物を拾ってきたようだがこのトレセン学園はペットは禁止されており、男はそれを返すように諭したが本人はそれを拒否。その会話の最中に出てきた、「それ」という言葉。
普通ならば「犬」や「猫」を想像するものだが、今回は「それ」とわざわざ代名詞を使って表現した。更に二人の会話を鑑みるに、ハルウララが拾ってきた「それ」は犬や猫の類ではないと言うことが分かる。では、それとはなにか?二人の様子を見ていこう。
「あはは!くすぐったいよぉ」
ハルウララの腕の中で尻尾をブンブン振りながらもぞもぞと動く
その特徴を順に描写していくとしたらこうだ。目は人間の眼球のごとくギョロリとしており、首には魚のエラのような物が付いている。それは、まるで生きた化石…ラブカを彷彿とさせた。腕は退化しているのか殆ど腕としての機能を果たしておらず、小さな突起になっていた。その代わり脚は発達しており、体の各部位とくらべてもかなりがっしりとしていた。尾は蛇のように長く、尾の先はふさふさとした毛が生えている。
おおよそこの世の生き物とは思えないような特徴をぎっしりと詰め込んだこの珍妙な生物を、ハルウララは拾ってきたというのだ。
「……マジでなんなんだこいつ。」
トレーナーが持ち合わせているすべての動物の情報と目の前の生物を照らし合わせても何一つとして分らない。エラ…のような物があるということは水生生物なのだろうが、ご覧の通り陸上でもピンピンしている。しかし、いくら考えても分からないのでとりあえず正体不明の目の前の生物は置いておく事にした。
「ウララ、この子はどこで拾ったんだい?」
「三女神様の像がある噴水のところだよ!」
「噴水!?……まあいいや、噴水の近くにいたのかい?」
「んーん、噴水の中を気持ちよさそーに泳いでたの!」
「…ん??泳いでた?」
「そう!それで『何してるのー?』って聞いたら水から上がってきたから、『かわいー!』って抱えてここまで来たの!」
聞けば聞くほど分からなくなってきた。そもそもトレセン学園に何かしらの動物が入ってくる事が滅多にない。しかもこんな珍妙な見た目の生物だ。見つかっていれば騒ぎになっていたはず。なぜ学園の中心である噴水まで侵入できたのか。あまつさえのんびり泳いでいたと言うではないか。というかよく誰にも見つからなかったな…
そんな事を考えていると、ふとウララが通ってきた所が濡れていることに気づいた。
「うん?待てよ…ウララ、その子の事ちゃんと拭いてあげた?」
「え?あ…」
自分の服の惨状を見て気づいたらしい。俺も気づかなかったが、ウララの足元には水滴が滴っており、服が濡れてしまっていた。
「はぁ……まずは着替えてきなさい。その子は俺が見ておくから。」
「はーい!」
無邪気にはしゃぎながらトレーナー室を後にするウララ。部屋の中には俺と珍妙な生物の一人と一匹のみとなってしまった。
こいつ、どうしよう。
俺はこの事態にどう対処するか頭を悩ませたのだった。
蒲田くんのサイズは、ウララの腕の中からちょっとはみ出す程度です。放射線どうのこうのはほのぼの補正でありません。なので普通に触れますし健康に影響はありません。細かい所はあまり気にしないでいただけたら幸いです。