ウララ「トレーナー!この子飼ってもいーい?」ト「元いた場所に返してきなさい!(戦慄)」 作:コウハクまんじゅう
文字通りです。イクゾォォォォオ!!
─トレセン学園、三女神様の噴水にて─
「「…………」」
上の方で、常に人が動く気配がする。まぁ、昼間なので人がいるのは当然といえば当然であろう。現在たくあんとけちゃっぷはトレーナー室ではなく、噴水の底に潜んでいた。
何故トレーナー室ではなく噴水に潜んでいるかと言うと、この前けちゃっぷが熱暴走を起こして火事一歩手前まで行ったことがあるからだ。
トレーナーがいればエアコンをつけたり、氷水に漬けてくれたりするのだが、あいにく合宿に行ってしまっていて学園にはいない。なのでこうして水に漬かって熱暴走を防いでいる、といった次第だ。
ちなみに、たくあんは熱暴走はしないためトレーナー室に残っていてもよかったが、どうやらけちゃっぷと一緒に居たいらしく噴水までついてきたようだ。
噴水の底に張り付いてピクリともしていなかったけちゃっぷが、突然首を持ち上げ、たくあんの方を向いた。
『……本当に俺達ついていかなくてよかったのか?今からでも間に合うと思うけど』
けちゃっぷがテレパシーでたくあんに話しかける。たくあんはけちゃっぷの方を向くと、答えた。
『うん。僕達は行かなくても大丈夫だよ。あの子が向かった海には彼がいる。』
『彼?誰かいたっけ』
『こっちに来ている中では一番気が荒くて、一番頼りになるやつだよ』
ぴたりとけちゃっぷが動きを止めた。エラをパクパクと動かし、「彼」とは誰なのかを考えているようだ。しばらくすると何かを閃いたようにピタッとエラを閉じ、頭を動かした。
『…あぁ、あいつか。なら大丈夫だ』
それで満足したのか、首を下げて体を丸めて再び沈黙した。
─夏合宿、浜辺にて─
「じゃあ、行ってきまーす!」
「ら、ライスも頑張るよ…!」
「2人とも、あまり遠くに行きすぎるんじゃないぞー」
桃色の髪と漆黒の髪が炎天下の空に元気に跳ねる。砂浜は陽の光を吸い込みキラキラと輝き、海もまた無数に折り重なった漣が陽の光を撥ねていた。
その漣の中を2人は波をかき分けて素晴らしい加速力で進んでいった。
トレーナーは目を細めて太陽を眺めた後、隣でウララとライスを眺めている長髪の女性へと視線を移した。彼女はライスシャワーのトレーナーだ。
「今日はありがとうございます」
「いえいえ、いいんですよ。私は水着のウラライスが見れて満ぞ…じゃなくてライスにとってもウララちゃんにとっても良い影響があるので願ったり叶ったりです」
うふふ、と2人から視線を外さずに若干早口でお淑やかに微笑む。
「そ、そうですか…」
そんな何とも言えぬ雰囲気の前にそう茶を濁すことしかできず、とりあえず2人が戻って来たときのためにタオルとスポーツドリンクを用意するのであった。
「うっらら〜♪どんどん進んじゃうよー!」
潮の流れに揉まれながらも、それを感じさせない綺麗なフォームでぐんぐん沖へ出ていく。隣を泳ぐライスもそれに負けじと力強く波をかき分けていく。
「ふぅ…はぁ…疲れたぁ…ライスちゃん、私先に戻ってるね!」
「うん、わかった。ライスはもう少し泳いでるね」
「うん!またね!」
そう言うとウララは浜へ、ライスは沖へと泳ぎだした。ウララが去ってしばらくすると、突然バラバラになった木片が浮いてきた。
「何だろう、これ…?」
元は何らかの部品だったのか白く塗装されている物が散見された。あまり日は経っていないのか、腐敗はさほど進んでおらず状態は比較的綺麗なように見えた。
「どうしてこんな所にあるんだろう?」
そう呟き、胸に小さなざわめきを感じながら周囲を見渡した。すると次々と機械類や金属片が次々に浮かび上がってきていた。
「…そ、そろそろ戻ろうかな…お姉様にも心配かけちゃうし…」
何かただならぬ物を感じ取り、ここに留まるのは危険だと直感で感じると、急いで浜へ引き返した。
しかし、周囲に浮いている木材や金属片が邪魔をして思うように進めない。やっとの思いでどかすと、再び進みだした。
(早く…はや、くっ!?)
突然、右足を何かに掴まれた。混乱したライスは必死にもがくが、抵抗むなしく海の中へと引きずり込まれてしまった。
「が、がぼ…」
(だ、誰か…助け…)
引きずり込まれたライスは海水を飲んでしまったことで意識が急速に遠のいていった。全身から力が抜けていき、為す術なく海の底へ沈んでいった。
混濁した意識の中ぼんやりと見えたのは、自身の右足を掴むエビのような生物と、揺らめく炎のように鋭い背鰭だけであった。
「「■■■■■■!!!」」
かん高い鳴き声と、海を震わす咆哮を聞いたのを最後にライスは静かに意識を手放した。
─────────────────────────────
水中で、その巨大エビと赤い背鰭の生物は向かい合っていた。エビはハサミで少女の右足を掴んで離す様子はない。
「■■■■■■■■■■!!!」
少女に息の限界が来ない内に、かつ少女が怪我をしない内に決着をつけるため、赤い背鰭の生物は一気に突っ込んだ。巨大エビのハサミを掴み、少女を開放しようとするがエビは暴れて中々離さず、それどころか、腹にハサミを突き刺してきた。
「■■■■■!!」
苦しげに呻く様子を見て巨大エビはさらなる追撃を試みたが、それは最悪の一手だったと身を持って知ることになる。
ジジジジジ……
瞬間、周囲の海水の温度が凄まじい勢いで上昇していく。それに合わせて赤い背鰭がオレンジ色に染まっていき、喉元には眩い光が溢れ出していた。
「■■!?」
慌ててハサミを引き抜こうとするが、既にハサミは溶けており使い物にならなくなっていた。
怒りに顔を歪めた赤い背鰭の生物は、一瞬口の端を釣り上げたかと思うと巨大エビの顔面に容赦なく赤い熱線を浴びせた。
「■■■■■■■!!」
巨大エビは絶叫しながら体が四散し、少女を拘束していたハサミも粉々になった。
体が自由になった少女は爆発の衝撃で投げ出されたが、赤い背鰭の生物が素早く少女の下に回り込んで体を海上へと押し上げた。
「………」
そして少女をそのまま静かに岩場へと運び、横に寝かせた。
「…………」
グルル、と低く唸り、刺された腹を抑えたかと思うとあっという間に傷が癒えていった。そして何かを感じ取ったのか、首を明後日の方向に向けると素早く海へと戻っていった。
「う、う〜ん…」
まだ微睡んだ視界の中に、自分に背を向けて海へと帰ろうとする大きな赤い背鰭を持った生き物が写った。
ふと自分の体を確かめると、右足の他に怪我は無く、今こうしてここに横たわっているのは、ひょっとして目の前の生き物が助けてくれたのではないだろうか?
そんな考えに至り、口からぽつりと溢れた。
「……ありがとう…ござい、ましゅ…」
それだけ言うと再び意識を失った。
赤い背鰭の生物は、とがった耳をピクリと動かして動きを止めたが、少しすると動き出して海へと戻っていった。
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「やっほ〜トレーナー!」
「おお、お帰りウララ。あれ?ライスはどこ行った?」
「ライスちゃんはまだ泳いでるよ!私は疲れちゃったから上がってきたの!」
海から飛び出して駆け寄ってきたウララはその勢いのままトレーナーに飛びついた。それを受け止めながらトレーナーは着替えてくるように促すと、元気よく駆け出していった。
「ウララちゃんはいつも元気でいいですね。見ているこっちも癒やされます」
「ええ、本当に。」
ウララの自由奔放さと天真爛漫さに一緒に微笑んでいたが、「では私も、ライスが戻ってきたときのために飲み物やタオルでも用意しますか」と離れていった。
しかし。それからいくら待ってもライスが戻って来る気配は無く、不安になったライスのトレーナーは捜索に乗り出した。
「ライス、大丈夫かしら…もし遠くに流されでもしていたら…」
「とりあえず近くの岩場や浜辺を探しましょう。それでも見つからなかったら、ライフセーバーに報告を。」
「ライスちゃん、大丈夫かな…」
それからは捜索に当たっているが中々見つけられず、ついにライフセーバーの力も借りるがそれでも見つからずに徐々に焦りを募らせていっている中、ウララがようやくライスを見つけた。
「あっ、ライスちゃん!」
ライスは岩場の影に倒れていた。幸いなことに息はあり、右足に薄い痣ができている以外はこれと言った外傷は見当たらない。
ライスに大きな怪我が無いのを確認して安心すると、ライスのトレーナーを呼びに行こうと立ち上がった。
「…うん?あれは…」
トレーナーの視線の先には、浜辺に打ち上げられている木材や金属片があった。しかしそれだけではなく、何やら砕けた赤い殻のような物も打ち上げられていた。
恐る恐る近づいていくと、どうやらその殻はエビのそれであるらしい事が分かった。しかしその大きさは普通ではなく、砕けているのにも関わらず、大きいものはおよそ1,2mはあった。
「…結構でかいな」
これほど大きな外骨格を持つエビは見たことがない。これは下手をすると人間にも被害が出るのではないかと思うほどだった。
ちょうどその時、ザブンと何かが潜るような音がした。音のした方へ目を向けると、そこには揺らめく炎を連想させる背鰭のような物と長い尻尾が海面から飛び出ているのが見えた。
トレーナーからはその何かの全身を見ることはできなかったが、直感でその正体が分かった。
「……
しばしトレーナーは呉爾羅と思わしき謎の生物を姿が見えなくなるまで見送っていた。
体を張ってウマ娘を助けて、何も言わず颯爽と去っていくミレゴジパイセン…まじかっけぇっす!え?密漁船ぶっ壊したろって?そりゃあお前ぇ、あれはエビラがやったんだよ(真実)
けどライスにお礼言われて嬉しくなっちゃって中々海に潜れなかったの可愛いね♡