ウララ「トレーナー!この子飼ってもいーい?」ト「元いた場所に返してきなさい!(戦慄)」   作:コウハクまんじゅう

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 大変長らくお待たせしました!
 まだしばらく忙しいので、とりあえずこれを投稿します。来週中には片付きそうなので、そこからはまたガツガツ投稿していきます!
 他の作品もよろしくお願いいたします(小声)



にんじんさん、おいしいね

 

 

 冷たい水の底でじっと息を潜めて横たわる。

 どれくらいの時間が経ったのかも分からないが、上から薄っすらと光が差し込んできたので夜が明けたのだろう。首をもたげ、ぼんやりと光を見ていると、誰かが近づいてくる足音がする。

 

 軽やかで、無邪気なこの足音は…

 すぐに誰か勘付き、体を起こして上に向かってゆっくりと泳いで浮上していく。隣りにいた仲間もそれに呼応し、連れ添って水面へと顔を出した。

 

「やっほー!たくあん、けちゃっぷ!」

 

 顔に水しぶきがかかるのに構わず、こちらに目線を合わせて膝を折る。隣には、なぜか胃薬を装備し、幾分痩せ細った彼女のトレーナーがいた。

 

 何かあったのだろうか?

 遠い目をしているトレーナーをみていると、目の前にオレンジ色の物体が差し出された。

 

 鼻をひくつかせてみると、良く耕された土の匂いと甘い匂いが漂ってきた。反射的に尻尾がバタつき、水面を叩く。

 

「にんじんだよ!はい、どーぞ!」

 

 よしを出された途端、大口を開けてにんじんに飛びついた。口内にコリコリとした歯ごたえの良さと、にんじん特有の優しい甘みが広がる。隣でけちゃっぷもハムスターのように頬を膨らませている。

 

 僕達は初めてにんじんを食べて以来、すっかりにんじんの虜となっていた。ウマ娘が好むのもよくわかる。夢中になって齧っていると、コツリと靴の音が響いた。

 

 ピタリとにんじんを食べるのをやめ、音がした方を見てみると、風に揺れる青薔薇と小さな帽子が目に入った。む、彼女は確か…

 

「こ、こんにちは」

 

「あっ!ライスちゃん!こんにちわー!」

 

「あぁ、ライスか。こんにちは、足はもう大丈夫かい?」

 

「はい!もうすっかり良くなって…」

 

 そうそう、ライスシャワーだ。彼女とは部屋で一度会ったきりだったが、こんなところで再び会うとは。見知らぬウマ娘だったら混乱を防ぐため隠れようかと思っていたが、彼女ならば問題ないだろう。

 

 しかし一つ気になるのは今の会話と彼女の足だ。本人は良くなったと言っているが、足には薄い痣のような物ができていた。

 なにかにぶつけたのだろうか?

 気になって噴水から飛び出し、痣がある足に近寄った。

 

「あれ?どーしたのたくあん?」

 

「え゛っ、ちょ何して─」

 

「えっ!?何…あ、あなたはあの時の…」

 

 よかった、覚えててくれた。

 その事に安堵しつつそのままライスシャワーの足元まで進み、首をもたげてうすい痣をじっと見つめた。

 

「ん…?どうしたの…あ、これ?これはね、海でちょっと怪我しちゃって…」

 

 怪我…海…なるほど、この間あった夏合宿で怪我したのか。

 最近の出来事と今出た単語を照らし合わせ、すぐに大まかな経緯を推察する。何かにぶつけたのか?しかし、この痣は足の両側に不自然についている。これはまるで何かに挟まれたような…

 

「ええー!!ライスちゃん、たくあんの事知ってるのー!?」

 

 横から飛んできた驚嘆の声によって思考が中断された。そういえば、このことを二人には話していなかったか。最も、伝える手段もないのだが。

 

「う、うん…前にウララちゃんのハンカチを返しに行った時に、この子に助けてもらって…」

 

「ん?ハンカチ…ああ、そういえばメモ書きがあったような…」

 

「はい。そのメモは、この子からペンと紙を貰って書いたものです」

 

「なっ!?そんな事が…あれ?というか部屋の鍵開いてた?」

 

「あぅ…ごめんなさい、勝手に入っちゃって…」

 

「ああいや、いいんだよ。わざわざハンカチ返しに来てくれたんだし」

 

 三者が色々と話し込んでいる中、再び思考を再開していた。自分が考える限りでは、あのような痣ができる場合はたった一つしかない。

 それは先程も挙げたように、何かに挟まれること。

 そして彼女は「海で怪我をした」と言った…となると。

 

(…もしや、エビラ?)

 

 あり得なくはない。エビラは獰猛で、特に縄張りを侵した時は容赦なく攻撃してくる。

 …そういえば昨夜ミレゴジが学園に来た気配があった。その時にエビラがどうとか話しているのを聞いたが…

 

(……なんとなく繋がった)

 

 これはあくまでも推測だが、夏合宿の海でライスシャワーがエビラの縄張りに入ってしまい、襲われた。そこにミレゴジが現れて彼女を助けた。

 エビラのハサミは油断ならない。いくらウマ娘とて、一歩間違えたら命を落としてもおかしくはない。ミレゴジがいなかったらと思うとゾッとする。

 

 一人のウマ娘が守られたことに対する安堵と、もし自分がついていったら怪我をすることもなかったかもしれないという後悔がわき上がってきた。

 もっと水獣としての自覚を持たねばと気合を入れ直し、ウララと仲良く談笑する姿を見ながらにんじんに向き直った。口を軽く開き、絶妙に引き締まった体に牙を突き立て齧りつく。

 

 だが不思議なことに、たくあんの口は虚空をむなしく()むばかりであった。

 

「………?」

 

 あれ、どこいった?

 たった一瞬目を離しただけなのに、今しがた食べていたはずのにんじんが跡形もなく消えていた。キョロキョロと辺りを探すと、もっさりもっさりと何かを頬張っているけちゃっぷと目が合った。

 

 目が合ったけちゃっぷはそのまま自然を装って視線を外したが、エラから赤い液体がポタポタと垂らし、プルプルと震えているので焦っている事が丸わかりである。

 

「「……」」

 

 お前やったな?

 けちゃっぷの背中をじっと見据えていると、ふいに目の前が暗くなった。何事かと振り返ってみると、そこにはにんじんを持ったライスシャワーがたたずんでいた。

 

「はいっ、これあげる!」

 

 紫の瞳を優しく細め、にんじんを遠慮がちに差し出す。一体どこから?なぜ持っているんだ?困惑して食べられずにいると、こちらの意図を汲んでか、話してくれた。

 

「これはね、ライス達が一生懸命育てたにんじんなんだよ!」

 

 そう言って再びズイッと差し出す。しばらくそれを見つめた後、先っぽから少しずつ齧っていき最後には全て平らげた。

 興味深いことに、ウララから貰ったにんじんとは違い少し柔らかく、甘みが強かった。

 美味しい!そう伝えるためにピョコピョコと慣れないジャンプをしてみる。

 

「…ふふっ」

 

 こちらの思いが伝わってか、一連の様子を見ていたライスシャワーは幸せそうに笑った。

 

「次は違うお野菜さん持ってくるからねっ」

 

 そう言ってライスシャワーは去っていった。後ろ姿を見送っていると、ウララにトレーナー室に戻るかどうか聞かれた。

 けちゃっぷを振り返ると『まだここにいる』との事だったので、ここに残る旨を伝えた。

 

「うん、わかったよ!まったねー!うっらら〜♪」

 

「頼むから大人しくしていてくれよな…」

 

 そうして元気いっぱいなハルウララと今にも死にそうなトレーナーは連れ立って去っていった。

  

 

 

 

『トレーナー死にそうだったな』

 

『ね。どうしたんだろう』

 

 そんな事を言いながら再び噴水の底へと潜っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─トレセン学園内の畑にて─

 

 

 

 

 

 

 

 

 良く耕された土の匂いが漂い、色とりどりの野菜が広がる畑に一人の少女がいた。鼻歌交じりに自分が育てている野菜たちの調子を見ていく。

 

「さぁ〜て、元気かお前らー?」

 

 つやつやと光沢を持った野菜達を我が子のように愛でていると、不自然に盛り上がった土が目に止まった。思わず「げっ」と声を出し不快感をあらわにする。

 

「うわぁ、これモグラか?気をつけていたのになぁ…どこから入ったんだ?」

 

 畑の中に突然できる変な盛り土は十中八九モグラ塚(モグラが掘り返した跡)である。

 モグラはその可愛らしい見た目から想像がつきにくいが、農家にとっては畑を荒らす害獣である。放っておけば畑を豊かにしてくれるミミズを食われ、掘った穴からネズミが侵入し根を食い荒らされる。

 

 しかし同時に、害虫を捕食したり、トンネルを掘ることで土壌の通気性を高め、雨水の浸透を促進し、排泄物が土の中に蓄えられることで土壌の均質化に役立ったりする等、益獣の側面も持っている。

 

 更には法律によって許可なく捕獲・駆除することが禁じられており、見つけた場合は追い出すか、専門家に頼むのがよいだろう。

 

 

 いつの間に入ったのかと考えながら盛り上がった土に近寄っていくと、何やら様子がおかしい。

 

「うん…?これほんとにモグラか?にしちゃなんか…」

 

 でかい。

 そう、盛り上がった土が異常にでかいのだ。縦10cm、横は直径1メートル以上はあるだろうか。自分が見てきた中では、これほどのモグラ塚を掘る事ができるモグラは見たことがない。

 尋常でない大きさに思わず後ずさって周囲を見渡した。しかし巨大なモグラ塚と思わしき物はこの一つを置いて他になかった。

 

「こりゃあ理事長と要相談だな…うん?」

 

 足裏を通して、何かを踏んだ感覚が伝わってきた。気になって足をどけてみると、そこには地面からさつまいもが生えていた。

 

「ええ!?さつまいも!?こんなところに植えたっけかな…けど随分と立派だなぁ…」

 

 こんなところで放ったらかしにしておくのは勿体無い。どうせならスペ達と一緒に美味しく頂こうと思い至り、むんずと掴んで思いっきり引っ張った。

 

「ぬ、ぬぬぬ…け、結構頑張るな…大きなかぶならぬ、大きなさつまいも、ってか?」

 

 そのさつまいもは不思議なことに、ウマ娘の膂力を持ってしても簡単には抜けずむしろ奥へと沈み込んでいくようだった。

 

「うぐぐぐ…舐めるなよ〜反逆のエース、ここにありだッ!おりゃー!!」

 

 一気に力を込めて引っこ抜くと、ズボッと音を立てて地面から引っこ抜けた。弾みで尻餅をつき、腹の上にさつまいもが降ってきた。

 

「よっしゃあ…あ?」

 

 ボスン、と音を立てて着地したそのさつまいもは、さつまいもではなかった。正確に言うなら、さつまいもみたいな何か、だ。

 

「………」

 

「………」

 

 ザラザラとしていて肉厚な体皮、クリクリとした目、黄金の角、パタパタと象のように動く耳。自身の腹の上に乗ったそれは、動物であった。しかも、ただの動物ではなさそうな…

 

「「…………」」

 

 

 

 なんだ、これ。

 

 

 

「うわああああああああ!?」

 

■■■■■■■!?

 

 

 

 1人と1匹の叫び声が響き渡ったのであった。

 

 

 

 

 





 エースに引っこ抜かれたさつまいも、なんだろな?白濁した瞳の呉爾羅に果敢に挑むガッツと勇気がありそう(小並感)

 シンゴジ一家はゴジラ達の中でも知能高い部類です。そしてゴジラ同士はテレパシーで会話できます。姿が見えなくてもある程度何を話しているのかは聞こえたりします。遠すぎると聞こえませんが、位置は分かります。 
【追記】
 モグラは歓迎されない動物ですが、同時に益獣の側面も持っていると感想欄でご指摘頂きました。私自身、できる限り調べてはいたのですがやはり不足していました。自身の調査不足と詰めの甘さを痛感するばかりです…
 調べた情報を元に、モグラについての箇所を訂正させていただきました。もし間違えている箇所や、誤解を招くような箇所があれば指摘してくださると大変ありがたいです。今度ともよろしくお願いいたします!
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