クリーヴになり代わったのでペルヴィ曇らせのあらゆる要因を排除する   作:那珂テクス

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ペルヴェーレが可愛すぎたのでむしゃくしゃしてやった。


モンド編
1話『蒲公英酒ってどんな味なんだろう』


「クリーヴ、これをネルソンさんのところに。こっちはペインさんの分だ」

「はーい!」

「クリーヴちゃん、注文いいかな」

「今行きまーす!」

 よく晴れた日の昼下がり。バーテンダーと客の間を、私は忙しく行き来している。まだこんな時間なのに酒場は大盛況だ。

 

 ──あ、どうもクリーヴです。

 モンドの看板娘やってます。

 

 いや「モンドの」はちょっと盛りすぎたな。正確には「エンジェルズシェアの」だ。

 この地に足を踏み入れてから2年間、私は毎日飲んだくれどもの世話をしている。この「ド」が付く自由人たちの相手は骨が折れるが、それなりに楽しくもある。

 ただ………

「みんな難しい顔してますね、チャールズさん」

「ああ。この間なんて、サイリュスさんが一度も冗談を言わなかったくらいだ」

「それは一大事ですね」

 ……最近のモンドには、不穏な空気が流れている。

 

 

 約30年前、私は今と何も変わらない自我で「産まれた」。そしてどうにか自力で歩けるようになった頃、やたら美人な実母に連れられて孤児院で暮らすことになった。

 別に捨てられたわけではない。私の「母」は、孤児たちの「母」でもあったのだ。

 異世界親無しチャレンジの回避にホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。読み書きができるようになった私は、衝撃の事実を知ることになった。

 

 いやここ、フォンテーヌですやん。

 

 ほんでこの孤児院、ブーフ・ド・エテの館ですやん。

 

 そもそも私の名前、クリーヴですやん。

 

 え、じゃあ何?

 

 死ぬの、私?

 

 といった具合だ。

 それはもう激しく動揺した。せっかく得た第二の生。しかも大好きな原神の世界に生まれたというのに、(よわい)17そこらでの死が約束されているだなんて。こんな残酷な話があるものか。

 気力を失い絶望に打ちひしがれていた私は、ある日運命に出会った。

 

 私の最推し。私が生きる理由。

 

 そう。マイスウィートエンジェル・ペルヴィたんだ。

 

 まだ幼かった彼女を一目見た途端、心の澱みが綺麗さっぱり吹き飛んだ。それほどまでにペルヴィとの出会いは衝撃的で、なおかつ私の救いだったのだ。

 

 同時に私は誓った。

 

 この子を傷つけるあらゆる脅威を排除し、必ず2人で生き残ってみせると。

 

 それからはまさに怒涛の日々だった。力を磨き、技を磨き、ペルヴィといちゃつき、計画を練り、ペルヴィといちゃつき──そして、(クルセビナ)を手にかけた。

 その後いろいろあって離ればなれになってしまったが、今でも毎年一度は必ず顔を合わせている。本当は毎秒肌を重ねていたいが、全ては何の憂いもないペルヴィとの日々のため。一日千秋の思いで耐え忍んでいるのだ。

 

 

 さて。冒頭の話に戻るが、近頃のモンドでは不穏な空気が流れている。

 主な原因は2つ。「風魔龍」と「ファデュイ」だ。

 数ヶ月前に風魔龍が目覚め、モンド城付近に様々な被害を及ぼし始めた。おかげで国中の経済活動が滞り、人々の暮らしに暗い影を落としている。

 それに伴い、ファデュイがあちこちで幅を効かせるようになった。原因は西風騎士団だ。

 現在、騎士団の戦力はなんと8割が不在。大団長ファルカに引き連れられて絶賛遠征中だ。そんな状況下で風魔龍の被害が出始めたわけだが、たった2割の騎士団でカバーしきれるわけがない。

 ファデュイはこれにつけ込んだ。各地の防衛を担うという名目で好き勝手し始めたのだ。当然、モンド人の心象は最悪。誉れの欠片もない行為だが、あの「博士」が置いていった連中なのでさもありなんと言える。

 

 ちなみに、ペルヴィは執行官第4位になった。原作より1年早まったとはいえ、これが歴史の修正力というやつだろうか。

 

 え、私? ただのフリーターだけど何か?

 

 つらつらとここまでの経緯を整理してきたわけだが、ぶっちゃけ私はモンドの現状を喜んでいる。

 何故かというと──

 

(そろそろ旅人クル──(゚∀゚)──!?)

 

 ──これに尽きる。

 原作において、旅人が初めてモンドを訪れたのは風災の真っ只中だった。つまりこの世界の歴史が私の記憶通りに進むのなら、そろそろ旅人が現れることになる。

 

 そんなの絶対会いたいじゃん!

 

 壁炉の家を出てはや10年。様々な国でネームドキャラたちに出会ってきたが、当然ながら旅人の姿はなかった。そんな彼……いや彼女か? この世界ではどっちなんだろう。

 ともあれ、私は長いこと旅人との出会いを待ち焦がれてきた。

 ペルヴィの次くらいに。

「クリーヴちゃんはこんな状況でも元気だねぇ。何かいいことでもあったかい?」

「あはは! ただ能天気なだけですよ」

 へべれけのくせに変なところで鋭い客をいなしていると……

 

 ゴォオオオォォォオオオ!!

 

 外で突風──いや暴風が吹き荒れた。

 

 同時に響き渡る、苦悶する獣のような咆哮。

 

 間違いない。風魔龍だ。

 

「チャールズさん!」

「全員下の階に降りて屈め!! 最悪屋根ごと吹き飛ばされるぞ!!」

 間髪入れずに叫んだチャールズさんに呼応し、客が慌てて動き始める。

 一方私はというと、裏口から店を飛び出していた。

(来た、来た、来た!)

 角を曲がり、鹿狩り前の広場へと急ぐ。あちこちで竜巻が発生しているが、そんなものには目もくれない。

 到着すると同時に空を見上げ──見つけた。

 

 天を舞うは、哀れな風魔龍。

 

 そしてそれを追う──花のように白い少女。

 

(ほ、ほ……)

 

 ほたちんだーーーッ!!!

 

 

 騒ぎが起きてからしばらく後。風災が収まった城内で、人々は後始末に追われていた。

 暴風に加えて風魔龍と衝突した箇所もあり、かなりの数の建物がやられてしまったのだ。私もあちこち手伝いに行っていたら、いつの間にか夕方になっていた。

 ちなみに、人的被害についてはあまり心配ない。何人か負傷者が出てしまったものの、死者数だけはゼロだったのだ。モンド人なしてこんなに頑丈なん?

 作業を切り上げて店に戻り、早めに店じまいするか相談していると……

「チャールズ。クリーヴ」

 黒ずくめの青年が、赤い髪を靡かせて入ってきた。アカツキワイナリーとエンジェルズシェアのオーナー、つまり私の雇い主だ。

「ディルックくん!」

「お待ちしておりましたディルック様。ちょうど店を閉めるべきか相談しておりまして」

「ほう。そうか……」

 ディルックは腕を組んで押し黙ったが、そうかからずに答えを出した。

「いや、通常通り営業しよう。こういう状況だからこそ、人々には憩いの場が必要だろう」

「かしこまりました」

 一礼し仕事に戻るチャールズさん。さすが10年のベテランだけあって、動きがいちいち洗練されている。バーテンダーとしての秘めた熱意もすごいんだろうな。

 それに比べて私はというと……うん。普通に帰りたい。だって外で肉体労働までしてるんだもん。

「私はたまには羽を休めたいな〜って」

 なんて冗談めかして言ったのが良くなかった。

 その言葉を聞いた途端にディルックが……あの仏頂面のディルックが、ニヤリと笑ったのだ。

「つまり、もっと積極的に僕の手伝いをしたいということか?」

 ……手伝い。手伝いね。

 いやそれ例の治安維持活動やんけ!! こっちは休みたいんだっての!!

「勘弁してください闇夜の英雄様」

「そのあだ名、まさか君が広めたわけじゃないよな?」

 えっ。

「そ、ソンナコトナイヨ」

「……なるほど。クリーヴ、君はしばらく減給だ」

「そんなご無体な!?」

 この鬼! 悪魔! ノンストップ! 人の心とか無いんか!?

 私が涙目でディルックに縋っていると、チャールズさんが帳簿を手渡してきた。

「ディルック様、こちらが今週の帳面です」

「ああ……今度の風災、やはり影響が大きい」

「早く収まるといいですね」

 こ、こいつら、私をガン無視しやがって……!

 そっちがその気なら徹底抗戦だ! 減給取り下げまでコアラみたいにしがみついてやるからな!!

 決死の覚悟を固めていると、不意に酒場のドアが開いた。

「オーナー、えっと……人が少ないところないかな?」

 

 ファッ!? ウェンティやんけ!?




一応フォンテーヌ編までのプロットは完成してます。
ただ筆の早さが80族なのでご勘弁。
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