クリーヴになり代わったのでペルヴィ曇らせのあらゆる要因を排除する   作:那珂テクス

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璃月編、始まります。




璃月編
9話『唯一の好物が杏仁豆腐とか可愛すぎるでしょ』


「クリーヴは本当に岩神と知り合いなの?」

「本当だよ。会ったのは片手で数えるくらいだけどね」

 中天が茜色に染まる頃。私、蛍、パイモンの3人は、千岩軍が警備する街道を歩いていた。目指すは岩王帝君のお膝元、璃月港である。振り返って蛍の顔を見てみると、若干の疲れが見て取れた。

 私たちがモンド城を出発したのはたった2日前のことだ。蛍がウェンティ経由で迎仙儀式のことを知り、璃月行きを即決してのことだった。その時点で私の旅支度は済んでいたのだが、せっかくの送別会をキャンセルする羽目になってしまった。無念。

「どうやったら会えるの?」

「1つは七星迎仙儀式に参加することかな。年に1回だけではあるけど、岩神が必ず姿を現すイベントだからね」

 顎に手をやりつつ答える。蛍は真剣に聞き入っているが、パイモンはもうへとへとでそれどころじゃなさそうだ。幻想の翼を酷使しすぎたのかもしれない。

 で、迎仙儀式の話だが、ぶっちゃけ式典の最中に対話をするのは無理だ。おまけにドラゴンフォルムで降臨するわけだから、顔の判別すら困難だろう。

 どうやら蛍も同じ考えに至ったようで、すぐに新たな疑問を投げかけてきた。

「じゃあ、会って話をするにはどうすればいいの?」

「えっとね、分かんない」

「え」

「おい! そんな適当な話があるかよ!」

「本当だって。毎回向こうから会いに来てたんだもん」

 あっけらかんと言い放つと、2人は顔を見合わせる。

 許せパイモン、ほたスケ……モラクスが子離れし、璃月が石ころからダイヤモンドになる為にも、ここでネタバレするわけにはいかないんだ。

 

 ──というわけで、義理立て終了。

 

「でも安心して! 方法を知ってそうな人に心当たりがあるんだ!」

 

 黙っといてあげるから『凡人』としてしっかり協力してよね、せーんせ♡

 

「本当か!? そいつは一体どんな奴なんだ?」

「往生堂の客卿をやってる鍾離先生って人だよ」

「お、おうじょう? かっけい?」

 困惑した様子でオウム返しするパイモン。見れば蛍も似たような顔をしている。

 うん。まぁ、分かりづらいよね。

 私も初見では意味不明だったし。

「分かりやすく言うと、葬儀屋の特別顧問ってところかな。璃月の生き字引みたいな人だから、もしかしたら岩神に会う方法を知ってるかもしれないんだ。向こうに着いたら紹介するね」

 なんていけしゃあしゃあと言ってみるが、実は私はまだ『鍾離』としてのモラクスに会ったことがない。私が璃月を発った4年前の時点で、彼はまだ現役バリバリの岩王帝君として活動していたのだ。

 つまり今回、私は原作知識だけを頼りに往生堂を訪れ、『鍾離先生の旧友』を自称することになる。最早不審者以外の何者でもない。

 本来なら不自然でしかなく忌避すべき行為だが、鍾離先生には既にある程度素性が割れてしまっている。あとこの前のロザリンの反応から、既に鍾離先生として活動している事実は確認できたので、今回だけの特例とする。

「……つまり今私にできるのは、儀式に参加することだけなんだね」

「現時点ではその通りかな。迎仙儀式では帝君──あ、岩神のことね。かの神が民の願いを直接聞いてくれるそうだし、お願い事として事情を伝えてみたら?」

「でも、私は璃月人じゃない。そんな私の願いなんて聞いてくれるのかな」

 そう言って目を伏せる蛍。

 いやー、むしろそんな君だからこそ会ってくれると思うんだけどな。降臨者の方から面会を希望されて、無視できる七神なんているのかしら。

 あれ、そういえば原作で初めて『降臨者』の解説があったのっていつだっけ? 割と中盤だったような気が……ダメだ思い出せない。というか私、まだ蛍に『テイワットの外から来た』って言われてないな。うっかり口を滑らせないように気をつけなければ。

「蛍、パイモン、悩みが尽きない時の対処法を知ってる?」

 後方の2人に問いかけつつ、遠くに見えるある物を指差す。

 それは目を瞠るような巨木と、蔦のように絡みつく建築物──世に名高い望舒旅館だ。

「美味しいものをたらふく食べて、思う存分寝るんだよ!」

 

 

 

 

 いやー食べた食べた。送別会を逃した胃袋が慰められたわ。

 蛍とパイモンが寝静まった後、私は1人きりで月見酒を堪能していた。望舒旅館の最上階という最高のロケーションのおかげで、気分はかつてないほど上々だ。

 盃に5杯目を注いでいると、不意に背後から物音がした。

「お、久しぶり魈仙人。杏仁豆腐食べる?」

「……いただこう」

 現れたのは、護法夜叉大将こと降魔大聖。またの名を、みんな大好き魈様だ。

 よしよし。事前に彼の好物を頼んどいて正解だったな。

「何故璃月にいる? あの者たちは?」

「ちょっと帝君に会いに、ね。あの子たちは蛍とパイモン。モンドで出会った私の連れだよ」

「……今度はいったい何を企んでるんだ」

「ただ会って話がしたいだけだって。それで、どうすればいいかな? 奥蔵山で会えたりする?」

 酒を呷りつつ、軽い調子で問いかける。どこまでも気楽な私とは対照的に、魈はますます深刻な顔つきになった。

「我にも分からない。帝君とは久しく顔を合わせていないからな」

 おやおや?

「え、何で? 喧嘩でもしたの?」

「そんなわけないだろう! お前が去ってしばらくしてから、忽然と姿を消してしまったのだ。今では誰も連絡が取れない」

 珍しく声を荒げる魈。私は無言で杏仁豆腐を差し出しつつ、帝君の動向に思考を巡らせる。

 

 うん、これ鍾離先生として活動し始めてから、ある程度時間経ってるな。

 

 仙人の誰とも会わなくなったということは、単純に考えてずっと引き篭ってるか、生活圏を変えた可能性が高い。長命種にありがちな長めの昼寝という線もなくはないが、時期的に璃月港で暮らし始めたと考えるのが妥当だろう。

「業障を抑える薬は?」

「不足しそうになるといつの間にか補充される。間違いなく帝君が用意してくださったものだが、やはり姿を見せてはくれない」

 モラクス定期便かよ。

「去年の迎仙儀式にはいたの?」

「いた。留雲が遠くから見ていたらしい。ただ、お告げをするとすぐお帰りになったそうだ」

 うーむ、見事な直行直帰ぶり。頑なに仙人との面会を拒んでるな。

 考えられるのは、やはりモラクスの策略。原作において彼は氷の女皇と取引し、神の死というペテンをものの見事に成し遂げた。何もかも計画通りに進んだが、実は唯一にして最大の懸念点が存在した。七星と仙人が共に璃月の危機に立ち向かえるか、という問題だ。万一失敗した暁には、「神の心」を利用して振り出しに戻るつもりだったという。

 言うなれば岩王帝君は試験官で、七星と仙人は受験者。

 その中でも試験官に近い者と遠い者で差が生まれないよう、しばらく突き放すことにしたのかもしれない。

「困ったなぁ。それじゃあ頼みの綱は迎仙儀式だけか」

「ああ。我も馳せ参じたいが……務めを放棄することはできない」

「無理しないでね、って言っても聞かないか。こっちにいる間だけでも手伝おうか?」

「必要ない。ただ、帝君に関して何か分かったら知らせてくれ」

 あっという間に杏仁豆腐を食べ終え、静かに立ち上がる魈。

 そのまま黒炎に紛れて消えてしまうかと思ったが、意外にも足を止めて振り向いてきた。

「近頃、璃月中で妖魔の群れが急増している。我が退治して回っている間、群れを統率する妙な連中と出くわした」

 …

 ……

 ………ん?

「アビス教団。奴らはそう名乗っていた。お前も用心するといい」

 そう言い残し、魈は姿を消した。

 

 え、ちょっと待って。ファデュイじゃなくてアビス教団なの? あいつら原作の璃月編では完全に空気だったよね??

 

 何でこのタイミングで璃月を騒がせてるわけ???

 

 




ついに始まる璃月編。ここからオリチャーがどんどん増えていきます。
果たして原作知識はどこまで通用するのやら。

感想お待ちしてます。飢えてます。
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