クリーヴになり代わったのでペルヴィ曇らせのあらゆる要因を排除する 作:那珂テクス
ペルヴィの新情報が出てきて最高や!!
巨大なアーチ橋の向こう側は、正しくお祭り騒ぎだった。大小全ての通りに軒を連ねる屋台と、その前でひしめく人の波。商人、船乗り、冒険者──様々な人間が入り乱れ、その誰もが『岩王帝君』としきりに口にしている。
璃月よ、私は帰ってきた!!
「着いたぜ、ここが璃月港だ!」
最高のガイドさんが渾身のドヤ顔を披露する。その隣に立つ旅人は、人々が放つ熱気に圧倒されていた。
「こんなに人がいるなんて……」
「噂によると、帝君を見た奴はどんなものでも手に入るらしいぜ。ヒト、モノ、モラ、そして美食も!」
興奮気味にまくし立てるパイモン。見ればほとんどの店先に帝君ブロマイド(龍の姿)が並んでいて、そのどれもが売上にかなり貢献しているようだ。
ははーん、なるほどね。
商会みんなで欲張りセットみたいなご利益を喧伝して、大量の帝君ブロマイドを売り捌こうって魂胆だな。毎年のことではあるけど、今年は少々フカし過ぎな気もする。
流石に本人がおこ……らないな。真顔で『帝君にはそんな力もあるのか?』とか
裏事情を察して微妙な顔をしていると、蛍が意外な点に反応した。
「美食? それって高級料理店みたいな?」
「確かに目玉が飛び出るくらい高いとこもあるけど、それだけじゃないぜ! 手頃にい〜っぱい食べられる店だってあるんだ。万民堂とかな!」
うんうん、さすがパイモン。食に関しては誰よりも詳しいね。
「それって香菱がいるお店だよね」
「おう! 時間がある時に行ってみようぜ!」
……あれ。
なんか聞き慣れた名前が出てきたぞ。
「2人は香菱と知り合いなの?」
「うん。前に清泉町で出会ったんだ」
料理上手って褒められちゃった、とはにかむ蛍。
マジか。この前って言うと、龍災が終わってからモンドを発つまでだよね? あの短期間で友人になってそのまま料理大会に出るとか、バイタリティ半端ないな。
「そう言うクリーヴは?」
「顔馴染みだよ。万民堂にはよく通ってたんだ」
なんせ『安い』『美味い』『サービスが良い』と三拍子揃ってるもんだから、通わない選択肢が無い。斯くして私は万民堂の敬虔な信者となり、その信仰が千岩牢固揺るぎないことを誓ったのだ。
と、それはさておき。
「儀式のことで聞き込み調査してくるけど、2人はどうする?」
場所は例年通り倚岩殿だろうけど、日時がまだ分からないんだよね。
他にも解消したい疑問があるし、ぼちぼち動かないと。
「それなら、ちょっとだけ璃月港を散策してみないか? 初めて来たわけだし、お前も興味あるだろ?」
「うん。冒険者協会にも顔を出しとこうかな」
「じゃあ一旦解散しよっか。1時間後またここに集合ね」
即断即決。2人は冒険者協会の方へ、私はその逆方向へと歩き始める。
そして
◇
坂を上がって右折すると、程なくして琉璃亭に到着した。店の前は人で溢れているにも関わらず、みな一様に羨望の眼差しを向けたまま通り過ぎていく。この店の格式高さがよく分かる光景だ。
「すみません、今から1時間だけいいですか?」
受付のお兄さんに尋ねてみると、恭しく一礼された。
「かしこまりました。不躾な質問で恐縮ですが、お一人様でいらっしゃいますか?」
「連れが1人。支払いもあの子持ちです」
そう言って近くの物陰に目をやる。数秒後、ため息と共に追跡者が姿を現した。
女性だ。背は高めで、蠱惑的なボディラインを強調する開放的な服装。襟足あたりで切り揃えられた髪は絹のように美しく、翡翠色の瞳を気の強そうな睫毛が縁取っている。
彼女こそが天権お抱えの特別情報官、夜蘭その人だ。
璃月港に到着する少し前、具体的には望舒旅館を出てすぐに彼女の尾行は始まっていた。そのように私が仕向けたからだ。
──ことの発端は6年前に遡る。璃月での滞在中、私は凝光に目をつけられてしまった。別に重罪を犯したわけではない。よく奥蔵山に足を運んでいただけだ。とはいえ、素性の知れない外国人が禁足地に土足で踏み入り、あまつさえ複数の仙人と歓談しているのだから、警戒するのは当然と言える。結果として私は要注意人物に指定され、凝光が最も信頼する夜蘭に監視されるようになったのだ。
そして昨日、私は2つの目的があって望舒旅館に宿泊した。
1つ目は、魈に挨拶をすること。2つ目は、璃月七星に私の来訪を知らせること。
知っての通り、望舒旅館を経営する夫妻は七星直属の諜報員だ。つまり私が顔を出すだけで、自動的にお上へと報告が行くことになる。すると以前と同じように、お目付け役として夜蘭が派遣されるという寸法だ。
別に黙って璃月港に行っても良かったんだけど、変に警戒させちゃいそうだったからね。
それに夜蘭を釣った方が情報収集しやすそうだったし。
「……私は奢らないからね」
「えー、どうせ経費で落としてくれるでしょ?」
呆れ顔の夜蘭。対して私はポーカーフェイス──のつもりだったが、内心のルンルンを抑えきれずに口角が上がってしまった。結果的にすごく不敵な笑みになっちゃったぞ。
「ダメ、割り勘。あなたの接待は業務外だもの」
「つれないなぁ」
軽口を叩きつつ、案内された個室に入る。着席して早々にエビのあっさり炒め(ただし激辛アレンジ)を2人分注文し、部屋の中は私と夜蘭の2人きりになった。
「それで、一体どういうつもりかしら」
正面に腰かけた夜蘭が、ゲンドウポーズで口火を切る。大抵の人間は震えあがってしまうほどの威圧感だが、私にとっては慣れたものだ。
「手間を省こうと思って。私に聞きたいことがあるんでしょ? なんでも答えるよ」
くだけた物言いで返しつつ、2人分のお茶を注ぐ。そんな私に怖い顔を維持するのが馬鹿らしくなったのか、夜蘭は湯呑を受け取り、翹英荘の濃厚な新茶を味わい始めた。
「璃月港で何をするつもり?」
「帝君とおしゃべり」
「ッゴホッ」
お、むせた。珍し。
「大丈夫? お水飲む?」
「あなた正気!? そんなことできるわけないでしょう!」
「お水飲めないの?」
「帝君と話せるわけないって言ってるの!!」
かつてないほど語気を荒げる夜蘭。しかしすぐに口元を押さえ、周囲を警戒する素振りを見せる。自分で盗み聞き防止の結界を貼っていたのに、頭から飛んでしまったらしい。
「あー、やっぱり厳しいかな。迎仙儀式で忙しいもんね」
「それ以前の問題よ! いい? 岩王帝君は璃月の父祖にして最高権力者。数千年生きて地獄の魔神戦争を勝ち抜いた、あの岩神モラクスなの。ただの人間が謁見できるわけないでしょう」
「でも前はあっちから来てくれたよ?」
「ちょっと待ってちょうだい」
文字通り待ったがかかる。夜蘭はお茶を一気に飲み干し、目を閉じて深呼吸した。
「……帝君と会ったことがあるの? しかも向こうから現れたですって?」
「うん。4年前に」
「ふ~~~……」
2回目の深呼吸。どう見ても動揺している。こんな夜蘭の姿、誰も見たことが無いんじゃなかろうか。
そういえば向こうから現れたってことは、ペルヴィとほたパイ以外には話してないんだっけ。仙人たちはあの場に居合わせてたし。
今思えば、モラクスは私が監視されていないタイミングで現れたのだろう。でなければあの夜蘭が、こんなあからさまに慌てるはずがない。
後でこの事実を伝えなければならないのは気の毒だが、報告を受ける凝光はもっと気の毒だ。ただでさえ迎仙儀式で忙しいはずなのに、『帝君と不審者が密会していた』とかいう爆弾を投げ込まれるのだから。
いっそこちらから群玉閣を訪れて、つぶさに釈明した方がいいのかもしれない。
「ま、どうにかするよ。私の連れも会いたがってるし」
「……蛍という旅人ね。モンドの龍災解決の立役者で、西風騎士団の栄誉騎士に叙勲されたと聞いたわ」
「その通り。彼女は行方不明のお兄さんを探してるの。詳しいことは私も知らないんだけど、各国の神様に会って直接話がしたいんだって」
言葉を区切り、お茶で喉を潤す。対する夜蘭は椅子に深く腰掛け、無言でこれまでの話を整理し始めた。
しばらくすると、料理を持ってきたという店員の声が聞こえてきた。どうやら盗み聞き防止の結界は、外部の音が聞こえるようになっているらしい。つくづく器用なことだ。
店員を招き入れ、卓上に料理を並べてもらう。皿に盛りつけられたエビのあっさり炒めは、真っ赤な唐辛子の海に沈んでいる。
再度店員が退出したのを確認し、私たちは箸を手に取った。
「私からも質問なんだけど、アビス教団って知ってる? 最近モンドで見かけるようになった連中なんだけど、こっちにも出没してるんじゃないかな」
「……それを知ってどうするつもり?」
「潰しとこうかなって。放置してても良いことないし」
うわ、すごい顔。めちゃくちゃ警戒されてるわこれ。
「連中を潰すことで、あなたにはどんなメリットがあるのかしら」
「目標達成に近づく」
「目標? あぁ、帝君との『おしゃべり』に関係あるのね」
「まだ教えてあげない」
────これこそが、私の明確な線引きだ。
俗世の七執政と一部の人間を除いて、誰にも最終目標を明かさない。例えどんなに仲良しでお気に入りだとしても、
最近は蛍、パイモン、ウェンティ、ディルック、ジンの5人にまとめて明かしたわけだが、最初から彼らには話すと決めていた。蛍とパイモンは言わずもがな。ウェンティは七執政だし、ディルックとジンには拾ってくれた恩義と、今後の旅で2人の協力が欠かせないという確信があった。
夜蘭のことはもちろん大好きだし信頼しているが、このタイミングで明かすわけにはいかない。故に、『まだ』教えてあげないというわけだ。
ごめんね。他は全部正直に話すから。
「……確かに最近、その名をよく耳にするわ。私も何度か遭遇した」
ついに夜蘭が口を割った。
「1つ1つの戦力は大したことないけど、問題はその規模ね。璃月全土に現れるから、千岩軍の手が回らないの」
「全土に? でも璃月ってかなり広いよね」
「文字通りの意味よ。モンドとの国境からスメールとの国境まで、羽虫みたいにどこにでも湧いてくるの。一部地域では集団疎開が始まったわ」
一大事じゃん。マジで原作乖離が甚だしいな。
魈の話とも一致するし、もはや教団の暗躍は疑うべくもない。となると、問題は奴らが何をするつもりなのか、だ。
作中の教団が璃月でしたことと言えば、『魔神オセルの手足の回収』と『層岩巨淵における呪いの浄化』だ。前者は画面外で達成され、後者はダインスレイヴたちの手によって阻止された。手がかりがあるとすれば、この2つになるだろう。
前者との関連で考えられるのは、『封印された魔神の肉体を探している』説。確か回収された手足の用途は、機械化された神の材料だったはずだ。逆を言えば、強力な魔神の肉体であれば何でもいいということになる。璃月は魔人戦争の激戦区だったそうなので、封印された強力な魔神はいくらでもいるだろう。それを全土で探しているとなれば、一応の筋は通る。
後者との関連は……皆目見当もつかない。呪いの力を弱めるという謎の池も、その効果を増幅するという教団の装置も、詳細は一切語られなかった。何よりも、層岩巨淵以外に出没する理由が分からない。
となると、やはりまだ見ぬ魔神の肉体を探し求めているのだろうか。
それにしたって璃月中に一気に展開する必要はないと思うけどな……目ぼしい場所を1つずつ、かつ間を置いて調査すれば、千岩軍に察知される危険性も低いのに。
うーん、分からん。
「気味が悪いね」
「同感。正直なところ、手を貸してくれたらとても助かるわ。私も任務に専念できるもの」
そう言ってエビを頬張る夜蘭。あの真っ赤なトッピングを少しも避けず、汗一つかかずに咀嚼している。すごいなグゥオパァーでもドン引きするぞ。
「任務って私の監視じゃないの?」
「秘密」
こちらの詳細は教えてくれない。が、メタ的に考えると層岩巨淵関連だろう。
近い内にまた再会できそうで何よりだ。
「お願いだから騒ぎは起こさないでちょうだい。これ以上私の仕事を増やさないで」
「任せて。法令順守はフォンテーヌ人の得意分野だから」
「確かにその通りね。でも、スネージナヤのお友達はどうかしら」
いやファデュイとの関わりバレてるやんけ!!
恐ろしいなこの特別情報官!!
「言っとくけど私ファデュイじゃないからね! お互いに不干渉って決めてるし!」
「あら、思わぬ新情報。つまりあなたがあちらの謀略を知っていたとしても、見て見ぬふりをするわけね。これって外患誘致罪が適用されるのかしら」
「……璃月の警備体制についてちょっとだけ助言があるんだけど、聞きたい?」
「嬉しいわ。詳しく教えてちょうだい」
こうして私は、黄金屋と孤雲閣の重要性について滔々と語る羽目になってしまった。
許せ、アヤックスくん。
ナド・クライいきなりおもろすぎるよ!! 重要な伏線を回収しにいってる感がたまらん。
あとLuna1の新キャラみ〜んな好き。特にヤフォダとネフェル。
感想お待ちしてます。飢えてます。