クリーヴになり代わったのでペルヴィ曇らせのあらゆる要因を排除する   作:那珂テクス

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「師匠、我を呼んだか?」

「うむ。お前に少しばかり頼みがある」

「?」


11話『主神の遺体を目撃するってかなりSAN値ピンチだよね』

「クリーヴー! ここだぞー!」

 人混みを掻き分けつつ集合地点に向かっていると、壁際に寄ったパイモンたちを見つけた。2人の手には大ぶりのモラミートが握られていて、それぞれ半分ほど欠けている。

「はいこれ。クリーヴの分」

 蛍が包まれたものを差し出してくれた。買ってからそれほど時間が経ってないのか、まだ温かい。

 礼を言ってから受け取り、大口を開けて齧りつく。

 

 うん、OC(た〇ぞう並感)

 

 焼餅に挟まれたたっぷりの肉はジューシーだが脂っこくなく、上品な甘さを際立たせている。この絶妙なバランス、なかなか良い店の品のようだ。

 

 唐辛子過多の胃袋に染み渡る~!

 

「初めての璃月港はどう? 大体は見て回れたかな?」

 食べながら問いかけると、蛍が静かに頷いた。

「お店にはほとんど入れなかったけど、地形はちゃんと覚えたよ。迷子にはならないと思う」

「そういうお前はどうなんだ? 儀式のことで聞き込みしてたんだよな」

 完食したパイモンが問い返す。その口周りを拭き取ってあげる聖母・蛍を横目に、私はメモを取り出した。

「例年通りみたいだね。会場は倚岩殿で、時刻は正午。今から移動してお願い事をすればちょうどいいくらいだよ」

 ちなソースは特別情報官サマ。テロ対策で大まかな時刻しか公示されていないため、正直かなり助かった。

 もっとも、『儀式が終わるまで見てるからね』と釘を刺されたわけだが。

「じゃあ早速行こう! 蛍のお兄さんが早く見つかるように頼まなきゃな!」

 無邪気に笑うパイモンを先頭に、私たちは歩き始めた。

 

 

  ◇

 

 

 倚岩殿は璃月上層の玉京台に位置する。その歴史は古く、3700年前には既に存在していたとされている。

 雨垂れが石を穿ち、山が丘になるように、ここでは様々な建造物が出現と消滅という輪廻を繰り返してきた。この絶え間ない千変万化の中で、唯一変わらなかったのが『帝君を祀る』という使命である。病める時も健やかなる時も、璃月の人々は常に岩王帝君と共にあった。

 その最たる例が、七星迎仙儀式だ。

 例え飢饉や戦乱の最中だろうと、あるいはだからこそ、人々はこの儀式を一度たりとも欠かさなかった。明日をも知れぬ身であるが故に、彼らは帝君という絶対的な指導者を渇望したのだ。

 時代は移ろい今や泰平の世となったが、それでも尚彼らの信仰は揺るぎない。こうして玉京台を埋め尽くす人々がそれを証明している。

「うぅ……人が多すぎて、オイラちょっと酔ってきたぞ」

「毎年こんな感じなんだよね。千岩軍も七星もよくやってるよ」

 パイモンの背を優しくさする。

 私たちは今、参拝の待機列に並んでいる。最前の香炉で1つ目の願い事をした後、次の香炉に直行して2つ目を終わらせるという手順だ。眩暈がするほどの大行列だが、千岩軍が剥がしを担当しているおかげか、回転率はそれほど悪くない。

 歩きつつふと蛍の方に目をやると、何やら首を傾げていた。

「『七星』って何?」

 そう問いかけてくる。

 あーそっか。そこに関しては触れてなかったな。

 ちょうど本人(・・)もいることだし、今の内に解説しとくか。

「あそこにいる白髪の女性が見える?」

 広場の中央あたりを指さすと、蛍はすぐに該当人物を見つけ出した。というか髪色も服装もあまりに派手すぎて、自然と目が止まったようだ。

 

 分かるわー。

 どう見ても星4のビジュじゃないよね。

 

「あれが璃月七星の1人、『天権』凝光様だよ。迎仙儀式を仕切ってるのもあの人なの」

「その名前ならオイラも聞いたぞ。偉い人なんだろ?」

「帝君の次に偉い人、かな。でも実際に璃月を統治してるのは七星だから、事実上の最高権力者と言っていいかもね。『天権』はその中でも立法とか軍事担当だったと思う」

 以上、解説終了。蛍はちゃんと理解できたようだが、パイモンの頭上には『?』マークが浮かんでいる。ちょっと一気に詰め込みすぎたかもしれない。

 ──当然っちゃ当然だが、帝君ただ1人が璃月の全てを決めるわけではない。年一で運営方針を伝えはするものの、委細については七星の手に委ねられている。

 つまるところ、この国はとっくに岩の揺り籠から巣立つ準備が出来ているのだ。

 

 そして今日この日が民と神、双方にとっての最後の一押しとなる。

 

「つまり……すっっっごく偉い人ってことか!」

「その通り! パイモンちゃん天才!」

 わしゃわしゃと頭を撫で回すと、パイモンが得意げに鼻を鳴らした。

「ふふ、ワンちゃんみたい」

 聞こえてまっせ蛍ちゃん。

 本人に気づかれなくてよかったね。聞かれてたら絶対に拗ねてたよこの子。

「それにしても、やっぱり人が多すぎないか? このままだと玉京台が落っこちちゃうぞ」

(なま)の岩神を拝める超ビッグイベントだからね。せっかく珍しいものが見られるんだから、もうちょっとだけ頑張ろ?」

 げんなりするパイモンをフォローすると、また蛍が首を傾げた。

「やっぱり神様って滅多に見れないの?」

「ん〜、半々ってとこかな。モンドはあんな感じだし、璃月では年一くらい。稲妻は戦でよく見かけるけど、スメールでは何年も姿を現してない。でもフォンテーヌとナタでは割と気軽に話せたりするよ」

「スネージナヤはどうなんだ?」

「まだ行ったことなくて……」

 ちなみに私が会えたのは、バルバトス、モラクス、バアルゼブル、ハボリムの4名だ。ブエルは恐らく監禁中、フォカロルスは諭示裁定カーディナルの中なので会えなかった。フリーナについては見かけない日が無いほど頻繁に目にしたが、人気者すぎて逆に会えた試しがない。氷の女皇は言わずもがな。

 これからの旅で全員と会うことになるんだろうな。ワクワクが止まらないや。

 そうこうしている内に、やっと私たちの手番が回ってきた。千岩軍に促されるがまま香炉の前に立ち、全員で瞳を閉じる。

 

 願い事、願い事ねぇ。

 

 本当にモラクスが聞いてるから下手に念じられないんだよな。どうしよ。

 

(……私たち全員が旅の目的を果たせますように)

 

 こんなところか。

 私は恋人との穏やかな日々、蛍は本当の意味でお兄さんと再会すること、パイモンは──分からないが、少なくとも悪辣な願いではないはずだ。全員の幸せを祈りつつ、プライバシーに配慮した完璧な願い事と言える。

 持ち時間が終わった。そのまま次の香炉に移動し、再び目を閉じる。

 

 さて。

 

(えー、業務連絡、業務連絡。あとで降臨者と一緒に往生堂にお邪魔します。『鍾離先生の旧い知り合い』の(てい)で行くのでよろしくオナシャス)

 

 よし、これで報連相もバッチリだな!

 先生の演技力に期待してるぜ!

 

 真剣な表情を取り繕いつつ、私は2人が願い終わるのを待つのだった。

 

 

 しばらくすると、ついに迎仙儀式が始まった。

 隣人の声すら聞き取れないほどの喧騒がすっかり収まり、厳かな静寂の帷が降りる。会話という逃げ場を失った人々の熱気は最高潮に達し、岩の神が降臨する瞬間を今か今かと待ち構えていた。

「もう少し前に行こう! 後ろにいたら何も見えないぞ」

 パイモンがひょいひょいと飛んでいく。人混みであれが出来るのズルくない?

 蛍と2人してどうにか最前列に体をねじ込むと、ちょうど凝光が両手を掲げているのが見えた。

 

「時は満ちた」

 

 朗々とした声が静寂を打ち破る。神の目が励起し、彼女を取り囲むようにして4つの石つぶてが踊り始める。

 円を描きつつ飛翔していたそれらは、凝光の手掌に従って香炉へと吸い込まれた。

 瞬間、香炉から凄まじい光が発せられる。

 光は柱となって天地を繋ぎ、局所的な竜巻を生み出した。人々は帝君の降臨を確信し、熱狂的な歓声を上げている。

 

 ここまでは例年通り。

 だが、ここからが異なる。

 

 突如として蒼穹が翳った。

 

 空気が嫌な湿気を帯び始める。透明感のあった竜巻が、瞬く間に墨を吸い上げたような様相に変貌する。

 

 誰もが困惑の表情を浮かべる中、細長く、巨大な何かが地に堕ちた。

 

 砂ぼこりが晴れた先に見えたのは、半分が麒麟、半分が龍の姿をした巨大な何か。

 

 それは間違いなく、岩王帝君の遺体だった。

 

(こっっっっっっわ)

 

 滅茶苦茶演出に気合入っとるやんけ。現実で目の当たりにしたらムービーの億倍恐ろしいわ。

 そりゃこんなもん見せられたら『帝君が死んだ』と思い込むわな。

「帝君が殺害された! この場を封鎖しろ!」

 凝光が叫ぶや否や、玉京台はたちまち封鎖されてしまった。この判断の早さ、流石はモラクスが認めた人間の1人だ。

 千岩軍が取り調べを始める傍ら、私はこの場からこっそり立ち去ろうしていた2人組の首根っこを掴んだ。

「お、おいクリーヴ! 何するんだよ!」

「離して! 岩神の信者に捕まっちゃう!」

 小声で抗議してくるのは、ご存知蛍とパイモンである。

「2人とも落ち着いて。この包囲網をバレずに突破するのは無理だよ。確実に見つかるし、そうなるともっと面倒なことになる。大人しく取り調べを受けよう」

「「でも」」

「安心して、証人ならちゃんといるから。ほら──」

 こちらを監視中の夜蘭に声をかけようとした、まさにその時。唐突に元素力の嵐が吹き荒れた。

 

 直後、巨大な氷壁が現れる。

 

 発生地点はピンばあやの定位置周辺。また微かにだが、同地点から剣戟のような音が聞こえてきた。

 

 ──戦っている。

 それもかなりの手練れ同士が。

 

(待て待て待て待て待て待て)

 

 こんな展開知らないぞ!?

 

「ッ凝光!!」

 反射的にその名を叫ぶ。

 現場を指揮していた凝光は私の姿を認めた途端、一瞬の躊躇いもなく言った。

「行きなさい」

 瞬間、私は神の目を励起させた。

 自身を地を這う稲妻と化し、数百メートルを一瞬で走破する。

 目的地に足を踏み入れると、すぐに戦闘中の人物が特定できた。

 

(ぬし)が、暗殺の下手人か」

「さぁね。力尽くで聞き出してみたらどうだい?」

 

 そこにいたのは、槍を構える白髪の天女と、双剣を構える赤毛の無頼漢──申鶴とタルタリヤだった。

 

 いや何してんのキミたち?????




初期の旅人って七神をすごく警戒してるんですよね。帝君殺害の現場から逃げ出した理由も「岩神の信者に囚われたくない」だったし。
ただ今作だと夜蘭のおかげでアリバイ完璧なので、クリーヴがその場に引き留めるという運びになりました。


ていうかLuna2予告にペルヴィいるよね!?!?!? また会えるの!?!?!?!?!?!?!?!?!?!? 会いたいよペルヴィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


感想お待ちしてます。飢えてます。
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