クリーヴになり代わったのでペルヴィ曇らせのあらゆる要因を排除する   作:那珂テクス

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ペルヴィ復刻中ですね!!!!!!!!!!!!!!

お迎え!!!!!!!!!!

しよう!!!!!!!!!!!!!!!


13話『モラを多めにもらう……どうだ? おもしろくないか?』

「急にやって来たかと思えば、言うに事欠いて『遊ぼう』とは何事だ。ここが死者を弔う場だと理解しているのか?」

 対面に座る鍾離先生が、腕を組んだまま訓戒を垂れる。反論の余地の無い自明かつ正当な主張に、私はただ項垂れるしかない。

 私たちは今、往生堂の客間にいる。例の業務連絡をばっちり聞いていた先生が、あらかじめ部屋を押さえてくれていたのだ。その証拠に、長机の上で先生特製のお茶が香り豊かな湯気を立てている。

「大変申し訳ございませんでした……久々の再会に浮かれてました……」

「分かっているのならそれでいい。旧友との再会というのは、俺にとっても喜ばしいことだからな」

 シワシワになった某電気ネズミのような面を晒したところ、鍾離先生は意外にもあっさりと赦してくれた。そのまま慣れた手つきで飲杯に茶を注ぎ、私の方へと差し出してくる。

 

 それにしても、「旧友」か。

 ほんの6年前に知り合ったばかりの私がねぇ。

 

「凡人らしいことが言えるようになってきたね、モラクス」

 軽い調子で揶揄ってみると、先生は澄まし顔で首を横に振った。 

「そうでもない。俺は常に『普通』の振る舞いをしているつもりだが、どこかしらで必ず奇異の目を向けられるんだ。人の世の奥深さは測り知れない」

「……とりあえず、モラを持ち歩けばいいんじゃないかな」

 あらゆる支払いを葬儀屋に肩代わりさせる輩なんて、はっきり言って目立たない方がおかしい。それさえなければ『博識で妙に貫禄のある青年』くらいには落ち着くだろう。

 今度服に財布を縫い付けるよう、胡桃に提案してみようか。

 仙人連中の怒りを買いそうな思考を巡らせていると、先生が重々しく口を開いた。

「それで、お前はどこまで知っている(・・・・・・・・・)?」

「……」

 珍しく単刀直入に切り込んできたな。2、3時間は世間話に付き合うつもりだったのに。

「深いとこは何も知らないよ。全ての契約を終わらせる契約、対価は神の心、使者は『淑女』、現状は七星にも仙人にも話していない──ざっとこんなとこかな」

「……そうか」

 鍾離先生は短く返すと、目を閉じて黙り込んでしまった。その様子を見守りつつ、私は濃厚なお茶に舌鼓を打つ。

 

 

 ────私の正体を正確に知る人物は、このテイワットにただ2人。

 ペルヴィと鍾離先生である。

 

 

 本来はペルヴィ以外の誰にも明かさないつもりだった。実際、6年前までは上手く隠し通せていたのだ。が、たかだか四半世紀そこらで培った浅知恵では、最古の七神の目を誤魔化すことはできなかった。

 というか、私が浮かれポンチになっていた。

 原神プレイヤーなら誰しも複数の推しがいるはずだ。私の最推しはもちろんペルヴィだが、他にも各国に推しがいる。その中の1人が留雲借風真君、もとい閑雲だ。

 璃月を初めて訪れたその日から、私の頭は閑雲のことでいっぱいだった。何か月もかけて各地の人里や商店を練り歩き、ついに禁忌滅却の札を入手した私は、満を持して奥蔵山に乗り込んだ。登頂した私はかの仙人をクロックワーク・マシナリーでおびき出し、そのまま親交を深めることに成功したのだ。

 ひとたび仙人と友誼を結べば、自然と他の仙人も寄ってくる。足繫く通っている内に理水畳山真君や削月築陽真君とも知り合い、茶会や宴を開くようになっていった。

 で、いつも通りルンルンで奥蔵山を訪れたある日のこと。

 いた。

 帝君が。

 しかも今とは異なり、威厳たっぷりの七神フード姿で。

 それはもう滅茶苦茶に焦った。私の顔はみるみるうちに青ざめ、全身の毛穴から汗という汗が噴き出ていた。

 当然、岩王帝君はそれに気づいた。すかさず『誰も紹介していないのに何故俺のことが分かったのだ』と激詰めしてきたので、私は咄嗟にこう言い放った。

 

『私は「内と外より来たりし者(・・・・・・・・・・)」だよ』

 

 その言葉を聞いた瞬間、帝君は目を見開いた。仙人たちは何も分かっていないようだったが、彼だけは私が「降臨者」、あるいはそれに類する何かであると気づいたのだ。

 

『契約よ。今から3つだけ、嘘偽りなく質問に答えてあげる。ただし問答は2人きりで。内容についても私が同意するまでは他言無用。代わりに私は貴方の事情を追究しないし、璃月にも絶対に危害を加えない。どう?』

 

 そう畳み掛けると、彼は逡巡した末に条件を呑んだ。

 以下が当時のQ&Aである。

 

Q,「内と外より来たりし者」とは?

A,この肉体はテイワットの賜物だが、この魂はテイワットの外からやって来た。魂がいた元の世界で、テイワットは物語として語られていた。この肉体の本来の魂がどうなったか、この魂の本来の肉体がどうなったかは定かではない。なんなら前世の自分の名前も性別も来歴も分からない。ただこの世界に関する未完の記憶だけが残っている。

 

Q,璃月を訪れた目的は?

A,有力者と親交を……(葛藤)……推しである留雲借風真君と親交を深め、同意の上でその人間態のたわわな胸に顔を埋めるため。叶うならば若かりし姿の歌塵浪市真君の胸も堪能したい。やめろそんな目で見るな。

 

Q,最終目的は?

A,恋人と添い遂げること。

 

 以上が過不足無いありのままの要約だ。ちなみに未だ閑雲の胸をぱふぱふできていないので、今回こそは成し遂げるつもりである。尚、これは仲の良い同性への健全なスキンシップに過ぎず、決して浮気などではないことをここに明記する。

 重要なのは、鍾離先生は私が原作知識持ちであると知っているということだ。

 テイワットが物語の世界だと聞かされた時、彼は大して驚かなかった。6000年も生きてきた彼からすれば、その程度は既に想定済みだったのだろう。あるいはテイワットが物語──もしくは作り話などではなくて、実在する並行世界の1つだと考えているのかもしれない。これまで大小様々な原作乖離を観測した私からしても、後者は十二分にあり得る話だと思っている。というかそうであって欲しいと願ってさえいる。

 

 お前はどこまで知っている?

 

 この問いは、そして私の答えは、彼の計画を左右する重要なピースに違いない。

 今彼は何を考え、何を選び取り、何を切り捨てるつもりなのだろうか。ガチ考察勢でもない私には皆目見当もつかない。だが私はこれまでの付き合いから、鍾離という男の善性を信じている。

 

 

 用意されたお茶を私1人で飲みきった頃、先生はようやく沈黙を破った。

「つまりお前は、何も知らないのだな」

「最初からそう言ってるじゃんね???」

 思わず強めのツッコミを入れてしまう。鍾離先生だからこの程度で済ませたが、他の誰かなら間違いなくグーが出るところだった。

 それにしても、こうもはっきり言われると落ち込んじゃうな。魔神任務クリア後の知識を以てしても、肝心なことは何一つ分かってないと突きつけられたわけだ。

 鍾離先生といいウェンティといい、古株の魔神は抱えてる秘密がデカすぎて恐ろしい。

「それで、今日はどんな用件だ?」

「ちょっとこれを預かってもらいたくて」

 懐からシンプルな装飾の茶器を取り出すと、先生は眉をひそめた。

「お前の塵歌壺か?」

「そ。中にファデュイ、というか私の弟弟子が入っててね。しばらく千岩軍から匿って欲しいんだ」

「……聞きたいことが山ほどできた」

「ごめんて」

 ファデュイと私の関係を問い詰めたいのだろうが、どうせディルックとの問答の焼き回しにしかならない。よってその件に関しては、風流の分からない呑兵衛詩人に任せることにする。

「何故俺が預からねばならない」

「七星がとにかくファデュイを警戒してるの。元はと言えば先生が撒いた種だし、ちょっとくらい面倒見てくれてもいいでしょ」

 そう言いつつ、飲杯に新しい茶を注いでやる。それを片手で受け取った鍾離先生は、しかし迷いなく首を横に振った。

「それはできない。今回の全ては俺が民に、人に与えた試練だ。故にどのような事態に発展しようとも俺は手を貸さないし、人の手で解決されなければならない。でなければ意味が無いからな」

 茶を一気に飲み干し、『話は終わりだ』と言わんばかりに杯を置く先生。

 

 ま、そう言うだろうとは思ってた。

 

 そろそろこちらのカードを切るか。

 

「本当にいいの? せっかく第三降臨者(アヤックス)と話せるかもしれないのに」

 

 長机の上から引っ込もうとしていた手が、ピタリと動きを止めた。

 

「……どういうことだ」

「執行官第十一位『公子』タルタリヤ、本名をアヤックス。当代のアヤックス(・・・・・・・・)だよ。それが私の弟弟子。氷の女皇に聞かされてない?」

 塵歌壺を鍾離先生の目前に置く。

 琥珀の瞳は質素な茶器だけを映し出し、再び沈黙が訪れた。

 

 ──第三降臨者。それは原作でも謎に包まれた、テイワット史における重要人物だ。

 

 私の原作知識はナタ編途中までだが、それまでに彼、あるいは彼女について語られたことはほとんど無かった。唯一明らかなのが、その遺骨から神の心が作られたという事実だ。裏取りは出来ていないものの、情報源がスカークなのでかなり信憑性が高い。

 また聖遺物や書籍のテキストから、その正体は「アヤックス」という名の人間だと考察されている。興味深いのは、様々な時代や場所に「アヤックス」が存在し、それぞれの人生を送っていた痕跡が見られることだ。これらの情報から推察するに、第三降臨者は死後何度も転生していて、現代では通称タルタリヤとして活動している可能性が高い。本人にその自覚は無いだろうが、所謂「中の人」的な存在が各所で仄めかされているのだ。

 タルタリヤの立場もその説を補強している。

 氷の女皇は、執行官1人1人に重要な役割を充てている。であれば何故あんなにも若く、戦闘力以外に特筆すべき技能を持たず、同僚からの評価も芳しくない彼が、第十一位という座に登り詰めたのだろうか。それは転生した第三降臨者としての彼を、女皇がどうしても手放したくないからではなかろうか。

 

 以上が、前世で考察動画を視聴して得た知見だ。今回はこちらの意見を全面的に取り入れ、鍾離先生を引き留めるためのダシにさせてもらった。

 重ねて言うが、私はガチ考察勢などではない。人の考察にフリーライドするだけのただのエンジョイ勢だ。そんな自分の浅ましさに嫌気が差すが、考えても分からないのだから仕方ない。生き残ってペルヴィと添い遂げるために、利用できるものは何でも利用させてもらう。

「……もう一度聞く。『内と外より来たりし者』よ、お前はどこまで知っている?」

 居住まいを正した鍾離先生が、射るような目でこちらを見つめてくる。私はそれを真正面で受け止めつつ、おどけたように肩をすくめてみせた。

「初歩的な推理だよ、往生堂の客卿さん」

 実際は人のふんどしで相撲を取ってるだけだけどね。だがこの反応からして、鍾離先生がタルタリヤの重大な秘密を握っていることは確定した。それが分かっただけでも大収穫だ。

 今思えば、ロザリンだけでなくタルタリヤまでこの地に派遣されたのは、先生と女皇との取引で定められていたからかもしれない。璃月が神から巣立つまでの筋書きにおいて、正直タルタリヤの存在は必須ではなかった。いろいろ引っ掻き回してくれたおかげでかえって七星と仙人の絆を深めることにはなったが、仮に彼がいなかったとしても、「人の時代の到来」という目的は達成できていたはずだ。となると、先生の計画とは関係の無い、別件かつ重大な目的があったと考えるのが自然だろう。

 

 あれ? もしかして原作の鍾離先生って、最初からタルタリヤの正体を何もかも把握した上で彼に接触してる? 

 むしろ向こうから接触してくるように仕向けた説ワンチャン?

 

(だとしたらちょっと怖すぎるな)

 

 いつも通り内心で滝汗を流していると、先生は深いため息をついて立ち上がった。

「茶を淹れ直してくる。しばらく待ってくれ」

 茶器を回収し、台所へと姿を消す。

 ひとまず会談が終わらなかったことに安堵しつつ、私は塵歌壺のふちを優しく撫でた。

 

 待たせてごめんね、アヤックス。

 これから存分に『俺が払うよ』してもらうからな。 




一生ネフェルの聖遺物厳選してます。ラウマ・アイノ・完凸ディオナ編成で重撃1回につき9万・9万・12万は出るようになりました。なんとか全部10万超えに引き上げたい。

次回ガチャはヤフォダ狙いの泥沼になりそうな予感……。


感想お待ちしてます。飢えてます。
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