クリーヴになり代わったのでペルヴィ曇らせのあらゆる要因を排除する   作:那珂テクス

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ジン×ディルはありまぁす!!


3話『遺跡守衛を素手で八つ裂きにできるってマ?』

 はい終わり! 閉店!

 

 居座る酔っ払いどもを叩き出し、すぐに表の鍵を閉める。少々乱暴なやり方だが、2年も続けているので改める気は無い。というか営業中は心底愛想良くしてるので、これくらい多めに見てほしい。

 我ながら無駄のない洗練された手つきで締め作業を進めていると、不意に裏口のドアがノックされた。

「ジン!」

「こんばんは、クリーヴさん」

 そこにいたのは西風騎士団が誇る蒲公英騎士、ジン代理団長だった。どうやらディルックに呼ばれて来たらしい。

 カウンター席に案内し、よく冷えた水を出す。本当は酒の1本でも出してやりたいが、後で大事な話が控えているので自重した。

「今日はコーヒー何杯飲んだの?」

「えっと、3」

「嘘」

「よ」

「みんなには黙っとくから」

「……7杯です」

「程々にね」

「はい……」

 しゅんと縮こまるジン。常人ならカフェイン中毒で死ぬ量だが、これでもかなり減った方だ。

 少し前まで1ヶ月分のコーヒーを1日で飲み干してたからな。それが7杯まで減ったのだから、ようやく人を頼れるようになってきたということか。

 ……ん、ちょっと待てよ?

 ジンと最後に会ったのは2週間前。あの時は「まだ全然量を減らせていない」と嘆いていた。

 それがたった2週間で、7杯に?

(……まさか……!)

 脳裏に浮かんだ『仮説』を検証すべく、私は口にかけた安全装置を解除する。

 

「そういえば、ディルックくんとはどこまで行ったの?」

 

「──ッ!?」

 あっ、咽せた。しかも思いっきり。

 顔真っ赤じゃん。

「き、急に何を言い出すんですか!」

「違ったっけ。あっ、もしかしてリサの方だった?」

「違います! 私とディルックはあくまで」

「『ディルック』?」

「……!」

 

 ほう。

 

 ほうほう。

 

 ほうほうほう!

 

「そっかぁ。やっとそこまで進んだかぁ。お姉さんすっごく嬉しいぞお」 

 ニヤニヤが止まらない私。対面のジンは耳まで真っ赤になっていて、今にも蒸気が吹き出しそうだ。

 いやーそっかぁ。そうなんじゃないかなぁとは思ってたんだよね。特にジンからの矢印があからさまだし。

 まだ2人が「そう」だとは断言できないが、少なくとも良好な関係であることは分かった。歯茎止まらんわこれ。

 心の中で王騎将軍みたいになっていると、再起動したジンが勢いよく立ち上がった。

 

「クリーヴさん、鍛錬しましょうか。今すぐに」

 

 あ、これ八つ裂きにされるわ。

「待たせたな。今もど……何だその目は」

 いいぞ旦那!! ナイスタイミング!!

「べっつに〜? ね〜ジン」

「え、ええ。別に何も」

「? そうか」

 闇夜の英雄の登場により、私は難を逃れたのだった。

 

 

 間もなく蛍とパイモンも合流し、秘密の作戦会議が始まった。大まかな流れはやはり原作通りで、天空のライアーを取り戻すべくファデュイの隠れ家を襲撃するようだった。

 それにしても蛍とディルックって、今にして思えばひどい過剰戦力だな。不幸にもライアー防衛に配置されてしまったファデュイ諸兄に涙を禁じ得ない。

 心の中で合掌していると、唐突にディルックがこちらを一瞥してきた。

 え、何?

「あとはメンバーの話だが……」

 ……あー、そういうことね。

「メンバー? オイラと蛍、それからディルックの旦那だろ?」

「いや、今回はクリーヴにも同行してもらう」

「はぁ!?」

 素っ頓狂な声を上げるパイモン。隣の蛍も分かりやすく瞠目している。

 ふふふ。この新鮮な反応、悪い気はしない。 

「クリーヴって戦えるんだ」

「まぁそれなりにね」

 意外そうな様子の蛍に、私は冗談めかしてウィンクする。

 ジン、「それなり…?」とか溢さないの。これも1つの様式美なんだから。あとディルックはその呆れ顔をやめなさい。

「安心してくれ。クリーヴはこんな感じだが、腕は確かだ」

「ディルックく〜ん? 何が『こんな感じ』なのか詳しく教えてもらえるかな〜?」

 またガイアにあることないこと吹き込んでもいいんだぞ〜?

 ……と、ふざけ過ぎるのも良くないな。

 仮にも敵の根城に赴くのだから、このあたりで気合を入れなくては。

「あ、そうだディルックくん。1つ質問」

「何だ」

 

「殺しは?」

 

 その瞬間、酒場の空気が一変した。

 パイモンは石化。ウェンティは押し黙り、ジンでさえ身構えている。ディルックはちょっと眉が動いたかな。

「……不要だ。だがもしもの時は躊躇わないでくれ」

「了解」

 知ってた。

 問題はないけど、後処理が面倒だもんね。これ以上ジンに心労を掛けたくないし、命までは奪わないでおこう。

「こ、殺しって……急に物騒なこと言うなよ! びっくりするだろ!」

「えー、でも認識合わせは大事だよ? それに……」

 ぷんぷん怒るパイモンを宥めつつ、隣の人物に目を向ける。

 

「蛍は何ともなさそうだけど」

「……」

 

 その指摘にすら、旅人は微動だにしない。

 

 うん。これで確信した。

 今さっきの反応然り、ナタ編の描写然り、この子わりと修羅に生きてるわ。

 そもそも数多の星を巡って来たわけだしね。殺し殺されなんて日常茶飯事だったのかもしれない。

「……一応、お酒は飲める歳だから」

 …………ははっ!

 やっぱり面白いわ、この子。

「いいね、すっごく頼もしい。一緒に頑張ろうね、栄誉騎士さん」

 ──そして私を、旅の果てへと導いてくれ。

「ライアーのことは任せたよ。いってらっしゃい、ボクのファンたち!」

「あ、ウェンティいたんだ」

「いくら何でもそれは酷くない!?」

 いやだって、途中から完全に空気だったからさ……。

 正直すまんかった。

 

 

「ここがあの女のハウスね」

「どの女だよ」

 うーむ、このキレのあるシンプルかつ良質なツッコミ。やはりパイモンは職人だな。

 私たちは今、隠れ家の最後の部屋へと繋がるエレベーターに乗っている。ここまでファデュイをしらみ潰しに処理してきたが、こちらは誰1人として傷を負ってない。

 そうだね、道中全カットだね。

 だって出会ったら轢き潰すだけの簡単なお仕事だったもん。ディルックの強さは言わずもがなだし、特に蛍の戦いぶりがすごかった。

 

 というか、怖かった。

 

 足元で風を爆発させて一気に肉薄し、逃げ出そうとする敵をまとめて吸い込む。同時に相手の武器や環境由来の他元素を巻き込み、とどめに拡散フィニッシュ。常に風元素を無駄なく効果的に活用し、瞬く間に敵を殲滅していく。技の多彩さと熟練度が、ゲームとはまるでかけ離れていた。

 目覚めてから2ヶ月程度、かつ風元素しか扱えない状態でこの強さだ。ヒルチャールや宝盗団がいくら束になっても勝てるわけがない。

 そういうわけで、こちらの戦力があまりに強すぎた。

 圧倒的すぎて途中から罪悪感が湧いてきたからね。

「恐らくこの先に天空のライアーがある。油断するな」

「ディルックの旦那は真面目だよな。それに比べてお前と来たら……」

「蛍もディルックも強いんだし、私が手を出す必要なんて無いよ」

 伸びをしつつパイモンの小言をひらりと躱す。

 そもそも原作ではここにいないからね、私。何で連れて来られたのかもよく分かってないし。

「それはまあ、確かにそうかもだけど」

 納得いかない様子のパイモンに、ホタルがイタズラっぽく微笑む。

「パイモンは戦わなくてもいいの?」

 おお、ノリがいい時の蛍だ。初めて生で見た。

「ふん! オイラは蛍の師匠だ。師匠は弟子の戦いを見守るものなんだぞ」

 パイモンが不貞腐れてそっぽを向くと、ちょうど上階に到着した。

 

 うん、あるね。天空のライアー。

 真正面に。

 

 どう見ても罠だが、あれを奪還するにはどの道近づくしかない。

 意を決して部屋に足を踏み入れた瞬間、ライアーは案の定鉄柵に囲われてしまった。

 

「ネズミ、どこから湧いてきた……」

 

 そして現れたのは、赤い仮面を被った黒ずくめのファデュイ。

 デットエージェントだ。

 

「このようなこと、『シニョーラ』様が許さないぞ」

 

 胸に位置する邪眼が怪しく光る。独特な形状のナイフが炎を纏い、男の周囲で回転し始める。

 

「この私が、代わりに片付けてやろう」

 

 瞬間、男の姿がかき消えた。

 

 いやー見事な透明化だ。邪眼の力なんだろうけど、いったいどんな原理なんだろうか。

 素直に感心していると、隣のディルックから声を掛けられた。

「クリーヴ、出番だ」

「えー。私そこそこ働いたと思うんだけど」

「こいつを片付けたら減給を取り消してもいい」

 

「来いよデットエージェント! 武器なんて捨てて掛かってこい!!」

 

 私は即座に飛び出した。




次回、戦います。
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