クリーヴになり代わったのでペルヴィ曇らせのあらゆる要因を排除する 作:那珂テクス
ファデュイの隠れ家襲撃後、蛍たちは天空のライアーを修復し、今朝になってトワリンと再会した。
ウェンティが穏便に説得しようと試みるも、突然現れたアビスの魔術師がこれを妨害。トワリンが再び飛び去ってしまい、計画は失敗に終わってしまう。
が、ここでまたもや旦那のファインプレーが炸裂した。あっという間に敵の拠点を割り出したのだ。
龍災の原因がアビス教団であると判明した今、最早一刻の猶予もない。再び私も合流し、カチコミ第二弾に繰り出すはずだったのだが──
「さて。心の準備はできているな、クリーヴ」
──何故か酒場の椅子に縛り付けられてしまった。
いや用件は分かるよ。
だがまさか酒場で、しかもほたパイジンウェンの目の前でやろうとは。
このリハクの目を持ってしても読めなかった……。
「先生、質問よろしいでしょうか」
「許可する」
腕組みしてこちらを見下ろすディルックに、私は最後の抵抗を試みる。
「弁護人が見当たらないのですが」
「面白い冗談だ。それでは公聴会を開始する」
魔女裁判の間違いでは?
というかそこの酔っぱらいショタジジイはさておき、何でジンまでちょっと面白そうにしてるの? 見てないで助けて?
「1つ目。君の出身は
「はい……」
項垂れつつ答える。
カチコミ第一弾から数日。ディルックは私に何も言いつけず、通常通り酒場で勤務させていた。その間に地下情報網との繋がりをフル活用し、私と
つまり、この件に関しては誤魔化しようがない。
まあいい。出身については素直に認めよう。
どうせ他には何もバレてないだろうし。
「今も所属しているのか?」
「まさか。10年くらい前に抜けたよ」
「その割にはよく贈り物をしているようだが」
「君だって地下によく贈ってるでしょ。同じ理由だよ」
同じ理由。すなわち『有用な情報源とは付かず離れずの距離を保ってお付き合いしましょうね』理論だ。
本当はゴリゴリに個人的な事情(ペルヴィ)なのだが、話がこじれるので伏せておく。
「では今の所属は? 誰の指示で動いてる?」
「エンジェルズシェア所属。指示役はディルックくん」
「おい」
「本当だって。君が一番よく分かってるでしょ」
端的に指摘してやると、ディルックは黙ってしまった。どうやら図星らしい。
出会ってから1年間ず〜〜〜っと私の身辺調査してたもんな。んでもっていくら掘り下げても何の成果も得られず。実に空虚じゃありゃせんか?
こちとら生まれた時から諜報の世界に身を置いてきたんだ。旦那がいくら地下に通じてるとはいえ、私の素性を知るのは至難の業だろう。なんなら私自身よく分かってないし。
逆にこっちは原作知識で君に詳しいけどなグエヘヘヘ。
「な、なあ。そのハウス・オブ・ハースってのは何なんだ?」
ギャラリーで唯一緊張した様子のパイモンが問いかける。私が答えようとすると、ディルックがそれを遮った。
「表向きはフォンテーヌの一般的な孤児院だ。だがその実態は、ファデュイの養成機関に他ならない。実際、
うーん、見事な要約だ。
反論の余地がねぇ!
「ということは、お前ファデュイなのか!?」
「ちーがーいーまーすー! ただの一般美人看板娘ですー!」
「自分で美人とか言っちゃうんだ」
蛍の淡々としたツッコミが耳に痛い。しょーがねーだろ、顔がいいんだから。
というか冗談でも何でもなく、名乗れる身分が『看板娘』しかない。冒険者協会すら未所属の根無し草だもん、私。
だからせめて『美人』くらい自称させてくれ……。
「確かに、君とファデュイの繋がりは見つけられなかった。では何故モンドまでやって来たんだ?」
苦虫を噛み潰したような顔になるディルック。その疑問は、どこぞの呑兵衛詩人と全く同じものだった。
結局のところ、彼らの懸念は一致している。
ディルックにしろウェンティにしろ、私がモンドの脅威になることを案じているのだ。
ずっとはぐらかしてきた負い目もあるし、いい加減話しておこうかな。
私はディルックから視線を外し、ウェンティの方へとスライドさせた。
「……え、僕?」
うわ白白し。100点満点の『今初めて知りました』顔をしてやがる。
悪いけど、密談したことは開示するからな。
内容は黙っとくけども。
「モラクスに言われたの。『そろそろあの呑兵衛詩人が起きる頃だから、用があるならモンドに行くといい』って」
「お、オイラの聞き間違いか? 今モラクスって言ったよな!?」
「クリーヴさん、それは……」
「うん。璃月の岩神だよ」
突然出てきたビッグネームに、さすがのジンも目を丸くする。ついでにウェンティも面食らっててウケるな。
実はこれ、半分嘘である。
後半は確かに鍾離先生の台詞だが、前半は私が勝手につけ足した。皆を納得させるための方便ってやつだ。
ただ、真っ赤な嘘というわけでもない。というのも、私はモンドを訪れるにあたり、ウェンティが目覚める時期を原作知識から逆算したのだ。あくまでそれを鍾離先生が言ったことにしただけである。
ま、あの老骨のことだし、実は把握してるのかもしれないけどね。
「……じいさんめ」
珍しいトーンで独り言ちるウェンティ。
その様子をじっと見つめていたディルックが、再びこちらに目を向ける。
「その用というのは」
「もう終わったよ。内容は秘密だけどね」
会話が止まり、沈黙が流れる。
密談の内容を話さないのは不誠実かもしれないが、私はディルックがそこまで追及しないと確信していた。
ほとんどのモンド人と同様に、彼は心の奥底で風神バルバトスを信仰している。一見するとまるでウェンティをぞんざいに扱っているようだが、言葉の端々に敬意が見え隠れしているのだ。
以上を前提とすれば、彼はこのように考えるのではないだろうか。
数百年間も身を隠していた風神が、今になって現界した。歴史的な経緯を踏まえると、これは破滅的な危機の前触れかもしれない。実際、近頃のモンドは龍災に悩まされている。
そしてほぼ同時期、この謎の女が酒場に流れ着いた。本当に岩神の知己かはさておき、最初から風神の正体を知っていたのは間違いない。ウェンティと名乗る吟遊詩人が転がり込んできた時、この女は異様なまでに確信と喜びに満ちた視線を送っていた。
密談の内容は不明だが、時事的に龍災関係の可能性が高い。あるいはそれ以上の脅威か。
いずれにせよ、風神はこの女に沙汰を下す気がないようだ。つまりモンドの脅威となる可能性は低い。だが念のために、今まで通り監視しておく必要がある。
ざっとこんな感じだろう。
「……いいだろう。では最後の質問だ」
読みが大体合っていたのか、ディルックは締めに取り掛かる。
「君の最終目的は何だ?」
…………今日の旦那はやけに真っ直ぐ訊いてくるな。疲れてるのだろうか。
ただまぁ、これについては私も正直に話せる。
「恋人と添い遂げること」
私が呟いた直後、ウェンティが思いっきり咽せた。
ついでに女性陣がしばし瞠目した後、真っ赤になる。
「……恋人がいたのか。だがそれだけか? たったそれだけの為に各国を巡り、モンドに流れ着いたと?」
「人が生きて死ぬには十分な理由でしょ」
────そう。ただそれだけ。
それだけの為に、私は生きている。
「……分かった。それでは判決を言い渡す」
いや判決って言っちゃってるじゃん。
やっぱり裁判じゃないか!
「先の作戦の成果をもって、減給処分を取り消しとする」
「ッッッシャア!!!!!!!!!!」
ガッツポーズ……は出来ないので、代わりに全力のヘドバンをキめる。
ディルックが私を縛る縄をほどき始めるのと同時に、ジンが歩み寄ってきた。まだほんのり紅潮している。
「ク、クリーヴさん! その、恋人というのは……」
ゴニョゴニョとそんなことを聞いてくる。
ふふふ。乙女だねぇ、ジンちゃん。
でも残念だけど、その答えは決まってるんだ。
「秘密♡」
酒場の窓に、私のとびっきりの笑顔が映っていた。
マーヴィカめっちゃバイク乗るやん!! シトラリも有り得んくらい可愛いし5.3が待ちきれねぇ!!
ってか予告番組の真ん中のシルエットってスカークだよね??? 5.Xで来るの??? マジで?????
次回:風龍廃墟にて。