【一発ネタ】もしもドリスコールの代わりに石田宗弦の師匠が“O”の聖文字を授かっていたら   作:クソ雑魚ナメクジ

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初投稿です。
クオリティはお察しください。


第1話

 

「どうしても行くのですか? 今ならばまだ──」

 

「申し訳ありません、師よ。……ですがこれは既に決めた事、私は己が心に背きたくはないのです」

 

「……そうですか。ならば思うままに進みなさい。決して後悔はせぬように」

 

「我が師エーデルワイス、これまで本当にお世話になりました。貴方から頂いた数々の薫陶は、決して忘れません」

 

「どうかお元気で、宗弦。貴方の進む道に幸多からんことを」

 

***

 

随分と懐かしい夢を見た。

 

既に吹っ切れたと考えていたが、存外未練がましい女だったらしい。

 

そんな自らの気持ちを洗い流すように顔を洗って、歯を磨き、朝の身支度を整える。

 

気分を切り替えようと朝食のメニューを考えていたところで、側近であるベアトリスが入室してきた。

 

「おはようございます、エレオノーレ様。本日のご予定なのですが、召集命令が出ております。正午に謁見の間に来るようにとのことです」

 

「おはよう、ベアトリス。召集の件は了解したわ。今から朝食を作るんだけど、貴方も食べていく?」

 

「是非ご相伴に預からせていただきます」

 

今日の朝食はイングリッシュマフィンに、カリカリに焼いたベーコン、そしてスクランブルエッグのシンプルなモーニング、付け合わせにシーザーサラダと淹れたてのコーヒーを添えれば完成だ。

 

手慣れた手順で料理を作り、ベアトリスに食器の配膳を手伝って貰い、手早く食事の支度を整える。

 

自ら作った朝食を部下と楽しみ、人心地着くと会話が始まる。

 

話題は今日の招集の内容についてだった。

 

「エレオノーレ様は今日の招集の内容をご存知ですか?」

 

「まあ順当に考えれば、尸魂界(ソウル・ソサエティ)に対する宣戦布告でしょうね。陛下が力の9年を終えられるまで、あと僅か。陛下の性格上、安易にあのお力に頼ることは避けられるだろうし、そうなるとそれまでに尸魂界侵攻の命令が星十字騎士団(シュテルンリッター)全員に下される筈。けれど召集されたのは私一人だけ、そうなると宣戦布告くらいしか私には思いつかないわ」

 

「何故あのお力を使うのを避けられるのですか? あのお力さえ用いられれば、此度の戦争での我々の勝利は確実なのに」

 

「ベアトリス、蟻を踏むことに愉悦を感じたことはあるかしら?」

 

「いいえ、ありません」

 

「それと同じことよ。もしも陛下があのお力を用いれば、それこそ人と蟻以上の力の差が生じる。敵うものは誰一人として存在しなくなるわ。けれどそれでは千年前の敗戦の雪辱を果たしたと陛下は思われない。それ故に力の9年が終わる前に尸魂界侵攻を開始し、あのお力を用いずに敵の総大将である山本元柳斎を討つことで雪辱を果たす。そうお考えなのではないかしら」

 

「……エレオノーレ様はお辛くはないのですか?」

 

「死神を殺すことについて? 心構えは常にしているわ、心配しないで大丈夫よ」

 

「ですが、ここ最近のエレオノーレ様は常に物思いに耽っていらっしゃいます。以前のように笑われる回数も目に見えて減りました。全てはこれからの侵攻が──、」

 

「ベアトリス……」

 

「……失言でした。どうかお許しを」

 

「事実だし、許すも何もないわ。だけど陛下が命令なさるのなら、聖章騎士(わたし)には敵を殺す義務がある。たとえ、それでどれだけ恨まれることになろうともね」

 

彼女の言う通りだ。これから始まる戦争を思えば憂鬱になる。

 

沢山の命を殺し、その仲間や家族を泣かせることになる。

 

恨まれるだろう。憎まれるだろう。もしも怨嗟だけで人が殺せるなら、数えきれない程死ぬことになるだろう。

 

だが私はそれを断行する、否しなければならない。そうでなくば我々、星十字騎士団(シュテルンリッター)の存在意義が消失するのだから。

 

少しでもこの戦争で失われる命に意味を持たせると自らを誤魔化し、陛下の築く平和の礎となるのだと自らに説く。平和のためと謳い、戦争を行う矛盾を理解しつつも。

 

「少し話題を変えましょうか。先日、現世で新しい紅茶の茶葉を見つけてね……」

 

「エレオノーレ様、私のために話題を変えて頂けるのはありがたいのですが、少し弛まれすぎでは?」

 

「ベアトリスはお堅すぎるわ。こんな時だからこそ気分は明るく行かないとね」

 

こんなたわいも無いやり取りを出来る時間が、私にどれほど残されているだろうか。

 

そんな益体のないことを考えながら、愛しい部下とのコミュニケーションに興じる。

 

一秒、一秒自らに刻む込むように。僅かでも戦いまでの時間が遠のけばいいと願いながら。

 

 

 

定刻が迫り、謁見の間へと赴く。

 

到着したことを陛下にご報告し、(いら)えが帰って来るのを待ち、許しが出てから入室する。

 

「エレオノーレ・エーデルワイス、ご用命とあり参上致しました」 

 

「よく来たなエーデルワイス。早速で悪いが、来たる尸魂界侵攻に向け、お前に任せたい任務がある。問訊はあるか?」

 

「いいえ。星十字騎士団(シュテルンリッター)は陛下の為にあり。如何なご下命であろうと、聖章騎士(ヴェルトリッヒ)としての誇りに掛けて成し遂げましょう」

 

「良い答えだ。これから我々は尸魂界への宣戦布告を行う。その開戦の口火として、山本重國の右腕、雀部長次郎を殺せ。如何なる手段を用いても確実に息の根を止めろ」

 

「はっ! 謹んでお受け致します。必ずやその(しるし)を上げてみせましょう」

 

「これは星十字騎士団(シュテルンリッター)の中でも、随一の強さを誇るお前にしか任せられない任務だ。期待しているぞ」

 

「光栄であります」

 

陛下から語られたのは予想通り、瀞霊廷への宣戦布告について。ただ少し違ったのは、()()雀部長次郎を殺せという命令が付け加えられていたこと。

 

紛れもない大役を任されて歓喜する自分と、未だに敵を殺すことを憂う自分がいる。どちらも私の本心であり、今に至って生半可な覚悟しか持たない私は星十字騎士団(シュテルンリッター)として失格なのだろう。

 

だが私にも滅却師(クインシー)としての矜持があり、星章騎士(ヴェルトリッヒ)としての責務がある。陛下のために死神を殺すことに否やはない。たとえそれでどれほどの血と涙が流れようとも。

 

故に祈ろう、これから殺す者たちの為に。欺瞞と知りながら、悪辣と知りながら、それでも尚祈ろう。願わくば、私を殺す者が現れることを。

 

***

 

 瀞霊廷(せいれいてい)黒隆門(こくりょうもん)

 

旅禍の少年たちが尸魂界に侵入してから、幾つかの騒動が立て続けに起きている。それに伴い瀞霊門の警備の重要性が上がり、元柳斎殿から一番隊の隊士へ瀞霊門を守護するようにと命令が下された。

 

私が指揮する班は黒隆門の守護を任され、昼の休憩から午後の任務に移ろうとした時だった。

 

突如として幾本もの矢が襲い掛かってくる。

 

斬魄刀を用いて斬り払い、矢が飛んできた方向に目を向けると、そこに居たのは白い装束を纏った敵の姿だった。

 

顔は黒い覆面のようなもので隠されているが、体格や佇まいから推察するに性別は女。

腰には帯剣しており、剣術を得意とするのだろう。

感じ取れる霊圧からしてかなりの使い手。

何よりも敵に侍るように浮かぶ霊子の弓。

間違いなく敵の正体は……。

 

「白い装束に霊子の弓、貴様滅却師(クインシー)か」

 

「ご名答、貴方の仰る通り私は滅却師(クインシー)です。本日は貴方たち死神を討つため、こちらへと参りました」

 

妙だ……。殆どの滅却師は二百年前の戦いで滅び、生き残った者はその全てが監視されている。

 

我々に戦いを挑むほどの力を持たない上、そもそもその兆候があれば報告が来るだろう。だが私の知る限り、その様な報告はなかった。

 

ならば此奴は一体──、

 

「愚かな! この数の隊士相手に一人で戦いを挑むなど、無謀にも程がある!! 何より此方には雀部副隊長がいらっしゃるのだぞ!!」

 

矢を射掛けられて血気に逸る一人の隊士がそう声を荒げ、その声に他の隊士が追随する。

 

言葉は悪いが、間違ってはいない。如何程かの強さを持つことは疑いようがないが、これだけの隊士を相手に一人で挑むなど明らかに無謀な戦いだ。

 

だが何の勝算もなく、そんな戦いに臨むだろうか……。

 

「無謀? 烏合の衆を恐れろとは中々愉快なことを言いますね。恐れるに足るは雀部長次郎ただ一人。そして牙も爪も抜けた今の彼ならば、その恐怖すら無用」

 

腰から抜いた剣を構え、そう易々と言ってのける。

 

その言葉に限界が来たのだろう、一人、また一人と斬魄刀を抜き放つ。

 

先ほどから言いようのない不安が募る、この状況は不味い。先ずは逸る隊士たちを納めねば。

 

「待て、お前たち! 逸ると敵の思う壺──、」

 

しかし僅かに間に合わなかったのだろう。我先にと斬魄刀を振り上げ、滅却師へと駆けていく。

 

光の雨(リヒト・レーゲン)

 

襲い掛かって来る隊士に対し、滅却師が唱えたのはたった一言。その一言で霊子の弓が上空に浮かび、光の雨が降り注ぐ。

 

そして光の雨が降り注ぐ中、滅却師は舞うかの如く隊士たちを斬り伏せる。

 

矢で射抜かれ、剣で斬られ、瞬く間に隊士たちの命は潰えていく。

 

光の雨に対処しつつ厳霊丸で雷を放とうとするも、射線に味方を挟むことで躱される。

 

ならばと直接斬りかかってみるも、凄まじい技量の剣術で捌かれ、援護に来た隊士は切り裂かれる。

 

光の雨が降り終わった頃には、私を除いた116名の隊士は全て血溜まりに沈んでいた。

 

「さて、邪魔者も排除したので、改めてご挨拶を。お久しぶりですね、雀部長次郎」

 

「貴様は何者だ。私の事を知っているような口振りだが、生憎と貴様のような知り合いは居ない」

 

「……ああ、そういえば顔を隠したままでしたね」

 

納得したようにそう言うと、敵はゆっくりと覆面を外す。そこから現れたのは美しい女の顔だった。

 

いや待て、どこかで見覚えが……そうだ此奴、確か千年前の戦で卯ノ花隊長と切り結んでいた女か。

 

ならば紛れもなく此度の敵はユーハバッハ、そしてこの女は滅却師(クインシー)側の隊長格といったところか。

 

天挺空羅で応援を呼ぶべきか? 否、これほどの敵がそのような隙を見逃す道理もあるまい。斯くなる上は──、

 

元柳斎殿、どうかお許しください。

 

卍解(ばんかい)黄煌厳霊離宮(こうこうごんりょうりきゅう)

 

二千年振りに解放した卍解が、眼前の敵を屠らんと唸りを上げる。それに対して女は恐れるでもなく、金属板のようなものを掲げ──、

 

「……卍解が、奪われた……だと!?」

 

星章化(メダライズ)。貴方たち死神の卍解を奪うため、我々の技術の粋を集めて完成させた技術の結晶です」

 

「貴様ッ! 始めからこれが狙いだったのか!!」

 

遅ればせながら自らの失態を痛感する、これは最早勝負以前の問題だ。

 

敵は準備を万端に整えて戦いに臨んでいた。卍解を扱うことのできる私が黒隆門の警備に当たることを知っていた上で、卍解を奪うという秘策をもって仕掛けてきていた。

 

始まる前から勝敗は決していたのだ。

 

「ご理解いただけたようで何よりです。さて、陛下のご下命では如何なる手段を用いても貴方を殺せと命じられています。ですので──、」

 

大聖弓(ザンクト・ボーゲン)

 

矢を番えられた巨大な霊子の弓の姿に、己が命運を否応なく理解する。数瞬の後、間違いなく私は死ぬことになるだろう。

 

だが……、たとえ死が避けられないとしても……、この情報だけは! 死んでも元柳斎殿にお伝えしなければならない!!

 

「さようなら、雀部長次郎忠息(ささきべちょうじろうただおき)。最期まで誇り高き貴方の勇姿に、敬意を表します」

 





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