陽だまりに焦がれて   作:oir.1

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無印編
第一話


 

 

 

緩やかな眠気と共に目を覚ます。

……()()()()()()天井が見えた。夢だろうか……?とそのベットに寝ている少女はどこか白昼夢のような気持ちのまま考える。

 

ーー体が上手く動かない,というか何か小さい気がする。

………………時間はどんくらい経ったんだろ。

 

ふとその言葉に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と少し内心で驚きながら,何となく時間を確認してみると,とある事に気づく。

 

「戻っ……て……る?」

 

今までの自身より子供っぽい声を自分の耳で捉えながら,興奮した気持ちを抑え,冷静に現状を把握しようとする。

 

「………………あは……」

 

きっとここは私が望んだ世界なんだ…と浮ついた感情を抑えきれずに狂気的な乾いた笑みを浮かべてしまう。

 

ーーーそうかこれはカミサマがくれたチャンスなんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは陽だまりに焦がれた少女の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生きる価値を無くしてしまった哀れな少女の物語だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……ここら辺にある筈なんだけど……アンタ家より更に奥の森にあるんだし何か知らないの?」

 

「……オラ腹減った」

 

「はぁ……もう!ほんとさっきから腹減った腹減ったって煩いわね!!」

 

パオズ山の奥の奥。

深い深い森を抜けて歩く少年と少女の名前は孫悟空とブルマ。

 

この2人はつい先程出会い,共にドラゴンボール探しの旅に出た仲であるが,この会話を見るとおり幸先不安な状況である。

 

「……ん?あそこに何か家があるわ」

 

「……もう腹減って動けねぇぞ……」

 

「あーー!!もう!!ほらシャキッとしなさい!行くわよ!」

 

ホント手のかかる野生児だ…と腹がすきすぎて動けない悟空に喝を入れて無理やり連れていくブルマ。

その先にはポツンと1軒だけ建っている少し古びた一軒家がある。

 

「あのーー!スイマセーン!誰か居ますかーー?」

 

ブルマが中に人が居るのか確認するために声を上げる。

誰も居ないのかしら?…などと思った刹那,ギィィ……という古びた木の音と共にその扉が開いた。

 

「……こんにちは!何の御用ですか?」

 

「……えーっと…………」

 

その扉から出てきた者を見て思わず言い淀むブルマ。

中から出てきたのは黒く綺麗な髪に,青みがかった何処か吸い込まれるような宝石を思わせる瞳を持ったおそらく悟空と同じ程の少女だった。

 

「あの……お家の人は居る?」

 

「……いえ?この家は私がひとりで住んでいるので私以外の人は居ませんよ」

 

「えっ!?一人暮らし!?その歳で!?」

 

まさかの返答に度肝を抜かれるブルマ。

こんな危険な深い山奥の家でこの歳の少女が一人暮らしをしているなんて考えられないだろう。

だがブルマは隣で腹をすかせ意気消沈している悟空を見て

…今時の子ってそんなものなのかしら?……なんて考えるが,どう考えても悟空やこの少女が異常でブルマの感性が普通である。

 

「えーっと……じゃあこんな球を知らないかしら?」

 

するとブルマは懐からオレンジ色の球……ドラゴンボールを取り出し,その少女に見せる。

 

「あぁ!それなら家に綺麗な球として飾っていますよ?何か必要な物なんですか?」

 

「えぇ……そうなのどうしても必要なんだけど譲ってくれないかしら?」

 

「はい。いいですよ」

 

「何か代わりに欲しいものがあるなら…………えっ?」

 

何かこのくらいの子が欲しがるような物はあったかしら…?ちょっと便利なポイポイカプセルを1,2個くらいあげれば…と

ブルマはその少女に対してドラゴンボールを要求し,その代わりの対価を提案しようとするが,すんなりと譲ってくれた少女に拍子抜けしてしまう。

 

「え……と本当にそんな簡単に譲ってくれるの?」

 

「はい。特に飾り以外に使い道はありませんし,必要ならば譲りますよ」

 

「本当に!ありがt…………」

 

 

グゥゥゥー

 

「もうダメだ……腹が減って死んじまうよ〜……」

 

「もう……!アンタは少しくらい我慢しなさい!」

 

肝心な所で悟空の胃袋が限界を超えて腹を空かしてしまい,遮られた。

せっかく話がすんなり進みそうだったのに間の悪い…とブルマはそんな悟空に非難の目を向ける。

 

「……良かったらご飯。食べていきますか?」

 

「え……?そんな何からなにまで悪いわよ。あたし達はドラゴンボールを貰ったらすぐに……」

 

「飯!?食う!食う!」

 

「だぁぁっ!!もう!アンタは落ち着きなさい!」

 

わざわざ世話になる訳にはいかない…と少女の提案に遠慮するブルマだが,悟空はそんな言葉は知らないかのようにその提案に食いつく。

 

「……私もこんな所に一人で生活していると少し寂しくて……初めてここまで人が来たのでおふたりの話とか聞きたいです。」

 

「…………そうね。なら少しご馳走になろうかしら」

 

あぁ…このくらいの年頃だもの,きっとこんな所に独りで人恋しいのね…と

その少女の言葉に絆され,結局ブルマも少女の家でご馳走になることにしたのだった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「まあ……!美味しいわね!」

 

「こへほんほうにうんめぇぞ!!」

 

「ずっと一人で暮らしているので家事は結構得意なんです。」

 

少女の家で夕食を食べるブルマと悟空。2人はその料理の味をとても気に入り,悟空に関しては口に詰め込み人の言葉を喋っていない。

その食卓に出てきた料理は1人の少女が作ったにしてはかなり豪勢でどれも美味しい料理ばかりだった。

 

あたしだって頑張ればこのくらい出来る………はず…と

ブルマの女子力が密かに傷ついたことは言うまでもないだろう

 

「それにしても……何でこんな所で一人暮らしをしているの?」

 

「……私はこの森に捨てられていたらしいんです。それを元々この家に住んでいたおばあちゃんに拾って貰って……ですがそのおばあちゃんも3年前に……」

 

「…………そのごめんね……辛いこと聞いて」

 

あこれ地雷踏んだかも…と少女の身の丈話を聞いて,想像していた以上の重い話に申し訳なくなるブルマ。

 

「オラと一緒だな!オラもじいちゃんに拾って貰ったんだ!もう死んじまったけどな!」

 

「コラ……アンタそんな軽く……」

 

「ふふ……大丈夫ですよ。ブルマさん」

 

そんな雰囲気を気にせず軽く話す悟空にブルマは注意するが,その少女は何故か少し嬉しそうに悟空を見ていた。どうやらあまり気にしていないらしい。

ブルマはこんな所に住んでいるから久しぶりに人と話せて嬉しいのだろうか…と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして夜も更けていき,今森に行くのは危険だと言うこともあって結局ブルマと悟空は少女の家で1晩泊まることとなった。

お互いの話をして,少し時間が経つとブルマは今日の旅の疲れからか早々に寝てしまった。

悟空もそろそろ寝ようとしていたが,ふと少女から声をかけられる。

 

「…………ねぇ悟空くん。少し外に行かない?」

 

「……?うんいいぞ」

 

突然の提案に少し疑問を浮かべるが,特に拒否する事無く悟空は着いて行く。

 

「どこに行くんだ?」

 

「……んー私のお気に入りの場所……かな」

 

何やらその少女はお気に入りの場所とやらに案内してくれるらしい。

そこへ行くまでの道のりは夜の森というのもあり,静かで草木の揺れる音や虫や動物の音など自然の音がよく聞こえ,最初は割と話していた2人だったが,段々と会話は少なくなっていった。

気まずさはない……最も悟空がそんな事を思うのかは微妙だが。

 

「……着いたよ」

 

「ひゃ〜すげぇな〜!」

 

綺麗だなぁ…と着いた場所はそんな感想しか出てこないほどとても綺麗な花畑だった。

夜の花畑は色鮮やかな花にそれを照らす淡い月の光,そして自然の落ち着く音にその夜の雰囲気を合わさって幻想的な場所となっていた。

 

「……ねぇ悟空くんはさ,何か1つ願いが何でも叶うなら何を願う? 」

 

「……うーんオラは腹いっぺぇ飯が食べてぇ!」

 

「……あはは!悟空くんらしいね!」

 

にこやかに笑うその少女の様子を見て,悟空は少し驚いた。それは今日見てきた雰囲気とまるで違う様子だったからだ。

少し大人っぽくてクールな印象が強かった少女だが,今は年相応でとても明るい笑顔を浮かべていて,ずっと何処か緊張して取り繕っていた雰囲気も無くなり流石の悟空もその変化を感じ取っていた。

 

「…………おめぇは何か叶えてぇ願いがあんのか?」

 

「……うん!私はねーーーー」

 

くるりと振り返って,笑顔を浮かべながら話す彼女はその花畑の雰囲気と淡い月の光が合わさって,とても儚く綺麗に見えたのだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「それじゃあ本当にありがとうね!」

 

「いえ私も久しぶりに人と話せて楽しかったです。」

 

翌日。朝日と共にブルマと悟空は,その少女の家を出ようとしていた。

ドラゴンボールを受け取り,感謝の言葉を述べるとブルマは旅立とうとする。

 

「…………なぁ!おめぇ名前はなんて言うんだ?」

 

「……あら?そういえば聞いてなかったわね」

 

 

 

すると少女は少し間を空けてぐっと喉を詰まらせると…

 

 

 

 

 

「私はルナ!またいつかご縁があったら!」

 

「えぇ!また会いましょうねー!」

 

「またなー!ルナー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして物語は幕を開けたーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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