陽だまりに焦がれて   作:oir.1

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第十七話

 

 

 

 

 

その後マゲッタという機械っぽい選手やキャベという第6宇宙のサイヤ人だという選手が出てきたが,順番を変えたことにより1番手として試合に出ることになったベジータは特に苦戦することなく倒していく。特にキャベには同じサイヤ人ということもあって稽古をつけるように試合をしていた。

 

そして問題はその後。第6宇宙の最後の選手であるヒットという男である。明らかに只者では無い。ルナも相手側を観察している時に思ったが,他の選手に比べて飛び抜けた実力を持っていることを察せた。何よりあの雰囲気,何かとんでもない技を持っていそうだ。

 

別に戦闘狂ではないが,力を得て,相手を見抜く事に特化した技を得たルナは強者を見るとその実力や癖を観察するのが少し好きである。そのためベジータとそのヒットの試合は他の時とは違い興味深げに見ていた。

 

「……ガハッ!!」

 

「……アイツ。すげぇな攻撃が全く見えなかったぞ」

 

「……あの青いのなに?」

 

「あぁ!あれは超サイヤ人ブルーって言ってよ!超サイヤ人ゴッドの状態で超サイヤ人になると成れるんだ!」

 

「……色々髪色が変わる種族なんだねサイヤ人って」

 

ルナはベジータの姿を見て疑問に思ったことを口に出すと隣にいた悟空が答えてくれた。超サイヤ人ゴッドまでしか知らなかったルナはサイヤ人って髪色がよく変わる種族なんだなぁ……と呑気なことを思ったのだった。

……それはさておき武舞台で最初から超サイヤ人ブルーとなり,勇猛果敢にヒットに殴り込むベジータはそれを避けられ,突然相手の動作がないのにも関わらず,全く認識できないまま鋭い一撃を貰ってしまう。

それを見た悟空はヒットの()()()一撃に目を見張った。だが一緒にそれを見ていたルナの意見は違う。

 

 

 

 

ーーー違うね……

 

 

 

今の一撃は決して目で捉えられない程速い攻撃だった…って訳じゃない。アイツの攻撃は()()()()()()()()()

私だからこそ分かる。だってどんなに速い攻撃だろうと私なら絶対に認識できる。スロー現象を使えばね。

でも今見ていた感じアイツが何かを動作しようとした瞬間()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()見えた。そしてその後ベジータさんが攻撃を食らっている……これは……

 

「……チッ…くそったれ……」

 

「…………」

 

その後もベジータはヒットを中々攻略できず,不可視の攻撃に晒され続けた。戦況は明らかにヒットに傾いている。

……ベジータは滴る血を拭うために一瞬下を向いて顔を振る。するとあることに気づいた。

 

 

 

 

 

 

 

……1滴地に血液が垂れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……2滴

 

ズンッ!!

 

 

 

「ガハッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー血が……突然増えた……だと?

 

 

 

隙を見せたベジータをヒットが一撃穿つ。だがその時ベジータは気づいた。何故かヒットが攻撃を放つ瞬間。地に垂れた血液が急に1滴から2滴に増えたのだ。

元より戦闘センスは飛び抜けて高いベジータ。ここまで気づければ,ヒットの攻撃の種も大体想像がつく。

 

 

 

 

「……分かったぜ…貴様の攻撃の種がな……」

 

「…………」

 

ヒットは無言を貫き再び攻撃を仕掛けた。だがベジータは何故か下を向き続け地を見つめている。……勝負を捨てたか?…と思われたが……

 

 

 

 

 

1滴…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然血が2滴に増える。

 

 

 

 

 

「ここだッ!!」

 

「……!!」

 

初めてベジータがヒットの攻撃を防ぎ,反撃を当てた。

 

「…………貴様の技の正体は恐らく時を切り抜く……もしくはとばす技だろう?俺の地面の血が不自然に攻撃の瞬間に増えてるのがその証拠だ。

……種さえ分かれば簡単だぜ…これでようやく貴様をぶっ飛ばせるというわけだ……!」

 

「…………事前に俺の事を知らずにこの技の正体を見破ったのはお前が初めてだ……だが少し遅かったな……」

 

「……なに?」

 

技を見破られたはずのヒットは不気味なほど落ち着いていた。

その理由は……

 

「……なっ…ち……力が……!!」

 

突然ベジータは超サイヤ人ブルーが解け,体が言うことを聞かなくなる。

 

「……俺の時とばしを見破ったことは賞賛するが…()()()()()()……」

 

ヒットは正しく最強の殺し屋だ。それを何百年以上続けている。その技術は並じゃない。確実に人体の急所を突くヒットの一撃を何度も受け続けていたベジータは超サイヤ人ブルーの消耗の多さも相まって既に体はボロボロであった。

 

「……く……くそったれ……!!」

 

結局既に力を使い果たしたベジータに勝利の目はなく,惜しくも敗北に終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「時とばし……なんという技だ……」

 

「ひゃ〜ベジータの奴よく見破ったなぁ……やっぱすげぇぞ!」

 

選手席ではピッコロがヒットの時とばしに戦慄し,悟空はその技を自らの力で見破ったベジータに純粋な賞賛を送っていた。

 

「よし!そんじゃあ次はオラの番だな!」

 

次の選手である悟空は意気揚々と武舞台にあがる。

相対する2人は互いにラフな構えをしながらも隙は無い。

 

「……おめぇ強ぇんだなぁ〜やっぱり世界は広いなぁ!おめぇみてぇな奴が宇宙にはまだまだ沢山いんのかな!」

 

「…………ふっ……気楽な奴だ……」

 

まだ見ぬ強者との戦いにワクワクして,つい楽しそうな笑みを浮かべてしまう悟空。

ヒットはそれを見て雰囲気が和らいだと同時に今から自身の戦う相手は一筋縄じゃいかないと察する。

 

「それじゃあ始めっか!」

 

「……来い」

 

ベジータの戦いのおかげで既にヒットの手の内は割れてるため最初から超サイヤ人ブルーとなり,全力で挑む悟空。

何より出し惜しみして勝てる相手ではないという判断だ。

今。激戦が始まる。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

ーーー楽しそうだな……

 

 

 

 

ルナはボーッとヒットと悟空の戦いを眺める。超サイヤ人ブルーの状態で界王拳を重ねがけし,限界を超えた戦闘をしながらも,何処か心底戦いを楽しむ表情を浮かべている。

その時頭の中を占めるのは,自身の世界の孫悟空の事だった。

 

 

 

 

 

ーーー……こんな未来もあったのかな

 

 

自身が見たかった光景がそこにあったような気がした。いつも地球を,命を懸けた戦いに身を投じてきた悟空。しかし今は今までのような敵ではない,純粋な好敵手と互いに高め合う戦いをしている。それは正しく悟空自身が好きな,心の底から望んでいるであろう戦いだった。

……ルナはそんな悟空を見るのが好きだった。明るく何処か子供のように,気楽な太陽のような笑顔を浮かべている悟空が。

何のしがらみもなくただ平和な世界で幸せに,楽しく生きて欲しかった。

 

 

 

 

 

ーーーでもこんな未来を潰したのは紛れもなく私自身なんだ

 

 

 

 

 

自身は器となりえなかった。孫悟空の隣にいるパートナーとして相応しくなかった。そんな自分が何の間違いか,偶々その立場についてしまったのだ。その末路が……自身の世界であった結末。最初から狂ってしまった物語に幸せな終わりなんて訪れるわけがなかったんだ。

 

 

 

でもルナの望みは変わらない

 

 

 

 

 

 

ーーー私はただ貴方に笑っていて欲しかった。……そっか。だからこそ私は……………

 

 

 

 

全てを諦めた今。今だからこそ昔のような純粋な心に戻れたような気がした。……自身がしたかったことを思い出せた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッと顔を上げると,いつの間にか試合は終わっていた。どういう状況なのかは分からなかったが,どうやら結果だけで言えば,ヒットの勝利らしい。

正直予想外だったがベジータ,悟空を倒し,ルナの出番が回ってくるようだ。

 

 

「……いやぁ悪ぃな〜ルナ!後は頼んだ!だいぶ消耗したとはいえヒットは一筋縄じゃいかねぇぞ!」

 

「……おいお前。負けたら承知しないぞ…?」

 

悟空が能天気に頭を掻きながら,ルナに言葉をかける。ビルスもまさかベジータと悟空が2人とも抜かれることは想定していなかったのか,モナカの正体がバレないためにもとてつもない圧をかけてくる。

 

「……しょうがないか…」

 

渋々武舞台にあがるルナ。流石に出ざるおえないか…と堪忍する。

 

「……随分とお疲れみたいだね」

 

「構わん……まだまだ大丈夫だ」

 

「………何か武道家みたいな精神になってない?殺し屋じゃなかったっけ」

 

悟空との戦いを経て,自身も急速に成長し始め,武道家に近い精神力を得た。その影響か時とばしも含め,能力も凄まじい速度で成長していった。今のヒットはたとえ消耗していようと一筋縄ではいかない。

 

「……じゃあこっちから行こうかな」

 

 

 

 

ーーー速い……!!

 

 

ヒットは目を見開いた。ボソッと軽く一言呟いたルナは瞬く間にヒットの懐に飛び込んだ。

何も難しいことをした訳でも,特段素早い訳では無い。ただ単に普段防御・カウンターで使うスロー現象を攻撃を仕掛ける瞬間に使うことで相手の意識の切れ目を見て,一気に飛び込んだだけだ。恐らく相手視点は一瞬でルナが目の前に来たように錯覚するだろう。

 

「……くッ!!」

 

「…………」

 

懐からの大振りの回し蹴りでヒットの首筋を狙う。ヒットはそれを腕で受け止め,反撃のチャンスを伺う。

 

 

 

 

 

キィィィ……

 

 

 

だが,そんなチャンスを易々と与えるルナではない。スロー現象を用いて相手の隙がある部分を冷静に判断し,首筋を守ったことで疎かになっていた脇腹へ的確に攻撃を撃ち込む。

ルナは自身の戦闘スタイルの関係上,基本的に回避・カウンターによる堅実な戦いが多い。だが別にスロー現象を用いれば自身から攻撃を仕掛けることができない訳では無い。ルナの攻撃は別に重い訳でも特別速い訳でもないのだ……ただ正確で隙がなく,そして常に弱く,意識外の位置に攻撃を仕掛けてくる。純粋に受けづらく,効きやすい,厄介な攻撃である。

 

「……上手いな」

 

「……どうも」

 

強いではない。上手い……それがヒットがルナと戦って感じた感想である。

 

「……やはり不気味だぜ…。あの女の戦いは見てる限りそこまで苦戦するようには見えんが不可思議なくらい相手は苦渋を強いられる…どうなってやがるんだ……?」

 

「……そうですねぇ〜あの方の攻撃は一見してみるとそこまで素早くも,決して重くもない攻撃に見えますが……ただ常に相手の意識の切れ目や疎かになっている箇所に攻撃を仕掛けているので相手は苦戦を強いられているのでしょうねぇ……」

 

「やっぱりルナの奴避けるのがすげぇよなぁ……アレもどうやってんのかな〜」

 

顔を顰めてベジータがルナの強さを分析する。ウイスがそのベジータの疑問に答えるように流暢に答えるが,その表情は普段のようなにこやかな笑みではなかった。

悟空はヒットの攻撃を軽々と回避するルナにワクワクした笑みを浮かべていた。

 

「俺もそろそろ反撃させてもらう……!!」

 

「……」

 

 

 

 

 

ーーー時とばし……すごい技だけど…生憎私とは相性がいいらしいね

 

 

 

 

「……!」

 

「……ふふ…そんな驚いた顔してどうしたの?」

 

悟空との戦いを経て,さらに秒数が伸び成長した自身の時とばしを簡単に見切り避けたルナに驚くヒット。

 

今は皆知ることはないが,ルナは神々の技……身勝手の極意に類似した技術を極めている。それは相手の攻撃の予兆を認識し,回避の意識を取ることさえ出来ればルナは意識の伝達より先に肉体が回避行動を取れる。

要するにヒットの"攻撃の過程"をとばせる時とばしは"攻撃の起こり"さえ捉えることが出来れば避けることができるルナにとってはあまり脅威ではないのだ。

ただヒットほどの達人の起こりを見切るなんてことは簡単にはできない。それを見切れるルナの技量が優れているとしか言えないだろう。

 

「……そろそろ私からも仕掛けるとしようかな」

 

「……まだだ……まだ……!!」

 

スロー現象。意識の切れ目を縫って相手の死角に飛び込む。

そしてそのまま突っ込み,わざとヒットの時とばしを誘発させるように立ち回る。すると……

 

 

 

 

ーーー使った

 

 

 

 

見えた。時とばしの瞬間が。それはまさにルナの狙い通り。

 

 

 

 

 

 

ズドンッ!!

 

 

 

ヒットの時とばしを完全に読み,現れた位置に不意打ち気味で顎を,手首の振りを利用した手の甲の一撃で撃ち抜いた。一瞬ヒットの意識が飛んだ。

畳み掛けるようにスロー現象を使い,ヒットの体を全ての刻が遅れる世界で冷静に眺める。顎を打ったことで上半身の隙が見え,更に筋肉が弛緩している場所を見抜く。そして弱っている箇所に最も効果的な一撃を判断する。

 

 

自身の気を全て左腕に纏い,蒼色のオーラが左腕を包む。腕からは膨張するように血管が浮き出て,バチバチとスパークが走る。その刹那……一撃を……。

 

「………ふッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………っ……ぁ……」

 

まさに一撃必殺。相手にとって現状最も効果的な一撃を叩き込んだ。それを食らったヒットは崩れ落ちるように白目を向いてルナにもたれかかるように倒れた。決着は誰の目から見ても明らかだった。

 

「…………終わったね」

 

アナウンサーのルナの勝利を宣言する高々な声と共に第7宇宙から歓声が響いた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

選抜試合は第7宇宙の勝利で終わった。その後第6宇宙の破壊神が負けたことで暴れ始めるという騒動もあったが,全ての宇宙を統べる全王が現れ,事態は鎮静化された。

どうやら悟空がその全王に気に入られ,今度は全宇宙が参加する大会の開催をするかもしれないとのことだ。……正直ルナはその大会にも全王にも特段興味がなかったので,適当に寛いでいた。

その後超ドラゴンボールによって何の願いを叶えるかと思いきや,ビルスは第6宇宙の地球の復活を願ったようだ。なんやかんや仲の良い兄弟なのかもしれない。……超ドラゴンボールに叶えられない願いはない…………ルナは妙にその言葉が頭に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして皆地球に戻った。皆和気あいあいとする中,ルナは何も言わずにその場を静かに立ち去った。

 

「……ルナ!ありがとうな!試合に出てくれて!ヒットとの戦いも凄かっ……あり?」

 

「相変わらずいつの間にかパッと消えるわね……ルナちゃん。やっぱり気にしてるのかしら……?」

 

悟空がルナにお礼の言葉をかけようとするが,そこにもうルナはいなかった。ブルマは終始落ち着いて,元気が無さそうなルナを見て,やはり自身の過去を知られたことを気にしているのだろうか……?と考える。

……最もその真意はルナにしか分からないのだが

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

やっぱり嫌になるな……どうしてもあんなに和気あいあいとしてる皆を見るとモヤモヤしてしまう。嫉妬……なのだろうか。

楽しそうに何のしがらみもなく日々を過ごす悟空くんを見て,あの破壊神とも共存して楽しく過ごす皆を見て……どうしても私はその輪に混ざれない。

 

……やっぱりこの世界にカミサマがいるのならきっと性格が悪いんだろうなと思う。だって…私にとってこの世界はもう過去に戻った世界じゃなくて完全に別の世界なんだから……まるで自身の失敗を強く認識させられているようで……自己嫌悪に陥ってしまう。

 

超ドラゴンボール…か。何でも願いが叶う……………なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー私はやり直せるのかな………?ねぇ…悟空くん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は願い続ける。この願いが……全てを壊してしまう可能性があるとは知らずに

 

 

 

 

 

 

 






補足


〇ルナの実力

カウンターや回避の受け主体の戦闘スタイルに見えて,案外ガンガン攻めるスタイルもイけるタイプ。
今回でいうとヒットの時とばしに対してルナの持ってる能力であるスロー現象などがあまりに相性抜群すぎた。それにヒットの連戦の疲労も加味してかなり圧倒して勝利できた。
なお。具体的に明言しておくとルナの実力は少なくとも超トップクラスの実力であるジレン辺りには及ばない。正確に言えば,ルナは破壊神やジレンクラスともかなり互角に戦うことができるがルナはそいつらを殺す手段が無いため順当にやればジリ貧で負ける。


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