第十八話
「…………どうしたの」
「……いやぁ〜あのさぁ〜」
時が少し過ぎ,ルナ家には何時ぞやのように悟空が訪ねてきていた。その顔は少しバツが悪そうだ。
「実はさ………」
悟空から事情を伺ったところ,力の大会という8つの宇宙が入り乱れる大規模な武道大会があるらしい。
最近まで再び未来のトランクスがこの世界に助けを求めに来ていたり,全覧試合なるモノに悟空,悟飯,魔人ブウの3人で出たりしていたのに忙しい人だなぁ……とルナは思う。
……なお。ルナが事情をしっかり知っているのはよく気の探知で悟空達が何をしているのか探っているからである。ストーカーとは言ってはいけない。暇なのだ。
「………力の大会に優勝すればさ!すげぇ賞金も貰えるかもしんねぇんだ!どうだ?出ねぇか?」
「……ふーん」
ルナは興味無さげに悟空の話を聞く。それを見て悟空は何とか必死にルナに大会に出てもらおうと説得するが,ルナが冷たい理由は別にあった。
「……まぁ色々説得してくれるのはいいけどさ。それより悟空くん…………」
「……へ?」
「……嘘ついてるでしょ。悟空くん」
ルナはジトっとした目で悟空を見る。その目は完全に自身を見透かすような目だった。
「………賞金の件とか完全に嘘ってわけじゃなさそうだけど…そもそも力の大会っていうのがもっと別のナニカがあるんじゃないの?」
「………えーっと…その」
「………人の事騙して大会に出させようとしてたんだ」
「……いや……違くてさぁ……なんちゅうか……」
「……酷いね。悟空くん」
「…………わりぃ」
……何か雰囲気は全然ちげぇけど,チチに説教されてるみてぇだ…と。悟空は何処かしおしおと枯れたように大人しくルナの説教を受け入れた。チチと違って声を荒らげ,怒鳴る訳ではないが,静かに冷たい目で自身を諭すルナはまた別の意味で逆らえなかった。
「………ふーん負けたら宇宙が消滅しちゃうんだ。」
「……あぁ」
どうやらその力の大会とやらで負けるとその宇宙は全王によって消滅してしまうらしい。恐らくそんな事を言っては皆にいらない不安を与えてしまうし出てくれない可能性があるため,言わないで大会に誘ったのだろう。
……こんな大切なこと言うべきだろうし,そもそもいつかはバレるんだから最初から言っておいてもよくない?と。ルナは思った。
「ま,いいよ。出場しても。流石に宇宙消滅とかたまったものじゃないし」
「本当か!?」
「……あーでもそうだなぁ折角だから出場する条件というか報酬を頼もうかなぁ……」
「……なんだ?」
お金とかだったらブルマに頼めば何とかなっかな……と。最低なことを考えながら悟空はルナの言葉を待つ。
「……悟空くん」
「……へ?」
「ん?だから悟空くん。報酬。」
突拍子も無いルナの言葉に悟空は思わず固まってしまう。
「……もし力の大会で優勝したら,悟空くんが私のモノになってよ。チチさんじゃなくて私と一緒に生きて」
「い……いやそれは」
「……嫌?でも私なんでもしてあげるよ?悟空くんが望むならなんでも…………」
何処か妖艶な笑みを浮かべてルナはずいっと自分に体を近づけてくる。悟空はそれに対してつい後ずさりしてしまった。
「……浮気とか気にしなくていいよ?だって悟空くんは私とここで2人で暮らしていくんだからさ。大丈夫だよ何も気にしないで…ねぇ……悟空くん」
悪魔の囁きのような甘い声で語りかけてくるルナ。
「……い…いやオラそんなことしたらチチに殺されちまうよ……」
「…………じゃあ嫌じゃないの?」
「……オラはちゃんとチチのこと好きだぞ。だからすまねぇけど…………」
「ふふ……」
「え?」
悟空が困った顔でルナの話を断ろうとした時,突然ルナがいつもの雰囲気に戻って小さく笑みをこぼした。
「あはは!冗談だよ冗談!本気にした?流石にチチさんから悟空くんを取ろうとは思わないよ。悟空くんが大会について嘘ついた罰だよ罰。」
「……いやぁそりゃ心臓にわりぃぞ……ルナ。だっておめぇは……」
もうルナの過去を全て知ってしまった身としてはかなりシャレにならない冗談である。こんな笑えない冗談はあるだろうか。
「……言ったでしょ?もう私の中でしっかり精算してるって。大丈夫大丈夫。こんな冗談言えるくらいの余裕は出てきたからさ。それより大会はちゃんと出るよ。別に報酬はいらないただの冗談だからね」
「あぁサンキューな……何かドッと疲れたぞ……」
「ふふ……でも嘘ついた悟空くんも悪いんだよ?」
……これからは嘘つかず正直に言っていこう…と。悟空は決意し,ルナを第7宇宙の選手に加えて帰っていったのだった。
「……まぁ嘘ついてるのが分かったのは何となくなんだけどね」
悟空が去り,静かになった家で独りボソリと呟く。ルナが悟空の嘘を見抜いたのは何となくだった。ただ何となく悟空の表情を見て読み取れたのだ。
……いくら相応しくなかったとはいえ伊達に悟空の妻として何十年も生きてきたわけではない。ある程度の誤魔化しや嘘は見抜ける程度には長年共に過ごしてきたのだ。
「……半分本気だったのになぁ…」
ーーーやっぱり悟空くんもちゃんとチチさんのこと愛してるんだ
未練たらしく悟空を誘うような真似をしてしまった自分に嫌気がさすが,でも仕方ないだろうとも思う。
完全に終わってしまったものだと思っていたのに,何だかんだ悟空は未だに自身と変わらず接してくるし,あっちにそんな気はないのだとしてもこんな場所で2人きりになったら多少縋ってしまう。
「………私は,何がしたいんだろう」
そう問いかけても答えは出ない。
〜〜〜〜〜〜
「よし!皆揃ったな!これがオラ達第7宇宙のメンバーだ!」
カプセルコーポレーションにとうとう力の大会へと出場する10人のメンバーが集まった。どうやら悟空が頑張って何とか集めれたようだ。
「このメンバーなら絶対に負けないですよ!お父さん!」
「……だが前の第6宇宙との交流試合に居た
メンバーである悟飯とピッコロが話す。中でも悟飯はこの10人でトップクラスの力を秘めている。それは潜在能力も勿論だが,平和ボケせず時間がある時に少しでも修行を積んでいた悟飯はその力が鈍ることなく武道家としての技量もある。これ程頼れるメンバーはいない。
「……ふん。お金のこと忘れるんじゃないよ」
「まぁまぁ18号さん……」
クリリンが18号を宥める。どうやら悟空はブルマに頼んで18号をお金で釣ったらしい。これを許してくれるブルマが優しいというか正直悟空が結構ヤバいだろう。
「…………それより本当によいのか?天津飯よ」
「……はい。俺より武天老師様が出るべきです。きっと武天老師様の経験値や搦手が必要な場面もあると思います。」
「………こんな老いぼれに何か出来ると思えんがのぉ…」
「……それに知ってるんですよ。武天老師様が皆に触発されて,少しづつ修行を積んでいるのを。」
「……ほっほっほっ!何。今更何の足しにもならんわい。じゃが若者に託されたんじゃ,宇宙の命運もかかっていることだしのぉ……儂は悟空達が足元をすくわれかねん相手を倒す役目じゃろう」
どうやら天津飯が自らメンバーとして武天老師を推薦したようだ。確かに武天老師の老猾さは悟空達には無い力である。
「……まぁぼちぼちやるとするか」
「……はは!頼むぞ17号!」
意外なメンバーとして人造人間17号がいた。見たところ佇まいから随分と力を付けてるように感じた。……一体どうやってあそこまで……と1人静かに座っていたルナは思う。
「……おいカカロット。なぜよりにもよってこの野郎がメンバーなんだ」
「……なんでって…そりゃ
何処か機嫌が悪そうに悟空に問うベジータ。それに対して悟空はチラリとベジータが言うメンバーの1人に視線を向けるそれは……
「……ホーッホッホッホ。随分と嫌われてしまったものですねぇ…ベジータさん」
「チッ……」
まさかのメンバーはフリーザである。どうやら前に復活して倒されたようだが,その実力は悟空達にも劣らないものだったらしく今回のメンバーに加えたようだ。
「……ふん。まぁ悪くないんじゃないか」
その錚々たる面子にビルスの反応も悪くなさそうだ。悟空,ベジータ,悟飯,フリーザ辺りは他の宇宙ならエースを張れるであろうメンバーの中でも主力な4名だ。ビルスも満足気である。
……そして特に
「……お前もいることだしな。大体の相手は大丈夫だろう」
「……きも。何か信用されてるし。」
「その生意気な性格を除けばな……!!」
どうやらその中でも破壊神様のご期待はルナにかかってるらしい実際に自分で戦ってその実力は分かってるからか,ルナが入れば相当なことが無ければ負けないと確信してるようだ。
……なお。ルナにとって自身が最も憎んでる相手からの要らない信用なんてキショイ以外の感想は出ない。
こうしてメンバーは
孫悟空,ベジータ,孫悟飯,ピッコロ,クリリン,18号,17号,武天老師,フリーザ,ルナ
の10名となった。
そして集まった最強のメンバーたちはウイスとビルスに連れられ,力の大会の開催場所…無の界へと行くのだった。
〜〜〜〜〜
「…ひゃ〜ここで力の大会が開かれんのか〜」
「確か…舞空術は禁止なんだよね」
悟空はこれから始まる激闘に胸を躍らせ,ルナは冷静に大会のルールを再度確認する。
「……あれが他の宇宙の破壊神や天使たちか」
「…とんでもねぇ気だ…やっぱ宇宙にはまだまだ強ぇヤツらがいっぺぇいんだなぁ…」
「……地獄みたいな光景だけどね」
ベジータが他の宇宙の破壊神たちに目を向け,悟空もそれに釣られて意識を向けると,流石破壊神。今の自分たちでは到底太刀打ちできない者ばかりだ。
…最も個人的に破壊神という存在を嫌っているルナはその光景に辟易していた。
そしてその後。大神官から大会についての説明があり,2人の全王が大会に対して楽しそうな目線を向けていた。
大神官の説明も一段落し,とうとう力の大会が始まる予感を胸に,第7宇宙10人の戦士は舞台へ上がる。曲がりなりにも宇宙の存続がかかっているからか,皆やる気に溢れている。
…それはルナも例外ではない。最も,ルナのやる気は別にあるのだが
「……勝たないとね。」
〜〜〜〜〜〜
『あのさ。悟空くん。』
『どうした?ルナ』
力の大会の直前,ルナは悟空にあることを聞きに来ていた。
『……超ドラゴンボールっていうのはさなんでも願いが叶うんだよね?』
『あぁ!地球とかのドラゴンボールと違って,本当になんでも願いが叶うすげぇドラゴンボールらしいぞ!』
『そっか…』
ーーーなんでも願いが叶う…なら
破壊神に破壊された者も生き返れるんだろうか?
悟空くんを生き返らせられる?私の世界の…悟空くんを…
まだ…私はやり直せる…?
また悟空くんと一緒に生きてられるの?また彼は私に笑いかけてくれるの?また彼に抱きしめてもらえるの?
……あぁ
力の大会を優勝したら…超ドラゴンボールを使える。
勝たないとね…負けられないよね…負けた時にこの宇宙がどうなろうと私は知らないけど…でもあの時の日々を取り戻せるなら…私は……
きっと今まで培ってきた力はこのためにあったんだ
「……………………私が,勝つ」
1人の少女は,その願いを求めてこれまでにないほどの決意と本気を滾らせたーーー
補足
〇ルナが力の大会に出場する
ルナがメンバーに組み込まれたため,代わりに天津飯が抜けてしまう形となりました。天津飯ファンの皆様すみません。
〇力の大会の他メンバーの本来との違い
基本的に本来と同じですが,唯一悟飯は実力が変更されています。この小説の悟飯は幼い頃からの精神的な成長で悟空のように修行をかなり取り組んでるということはありませんが,少なくとも実力が落ちないよう,大切なものを守れるよう鈍らない程度には日々のトレーニングはしているので
戦闘の勘の衰え無し+鈍っていない戦闘力+日々の積み重ねによる技術
が今の悟飯にはあるので,原作単体最強からさらに+α程度には強くなっています。具体的なメンバーの中での立ち位置は
ブルー悟空,ベジータ>ゴルフリ≧悟飯
程度には強いので,かなり頼もしい存在になってます。