「…………な……なに……!?」
「…………………………」
無言でジレンに歩みを進める覚醒した悟飯。
ジレンは身を刺すような威圧感にたじろいでしまう。
その刹那……
「……!?き…消えた!?」
目の前から悟飯が消え去った。すると背後から…………
「ぐあぁぁぁッ!!」
「…………」
「悟飯…………」
第6宇宙の女サイヤ人,カリフラとケールがポタラで合体したケフラが悟飯によって落とされた。
再び身勝手の極意・兆となり,今にもケフラを打ち倒そうとしていた悟空は呆気にとられた表情を浮かべる。
……それを見て理解が追いついてないジレンの意識が戻った時には再び悟飯は消えていた。
「うがあぁぁッ!!」
「…………」
次に第3宇宙が宇宙の存続をかけ,決死の融合によって生まれた切り札,アニラーザがそんな事は知らないとばかりに悟飯によって一撃で撃墜された。
「…………チッ俺らで止めるぞ!!いくぞ!プライドトルーパーズ!!」
「…………」
ーーーいくら強かろうと当たらなければ意味がねぇ!!これで奴を……!!
第11宇宙屈指のスピードを持つディスポが自身の最速の速度で悟飯を撹乱する。
それは殆どのものなら反応できなかっただろう。
……殆どのものなら
「……ウスノロ」
誰も反応出来ない一瞬の結末だった。ディスポは自身の理解すら追いついていない速度でいつの間にか観客席にいた。
……健闘虚しくも悟飯によって脱落となったのだ。
ーーーば……馬鹿な!?コイツ俺のスピードに!?
まさに蹂躙。まさに無双劇。その後も悟飯は力の大会に残った各選手達を標的に目にも止まらぬ速度で刹那の間に次々と脱落者を生み出していく。
……それによってもう武舞台には殆ど選手が残っていない。振り返って観客席を見ても,もう大半の宇宙はこの悟飯の蹂躙劇でトドメを刺され,嘆きながら消されていった。
「……化け物め。我らプライドトルーパーズも殆ど奴に持っていかれてしまった。」
悟飯によって何とか落とされずに済んだトッポは顔を顰め,覚醒した悟飯を睨む。
ーーー
トッポが意味深な視線を悟飯に向ける中,当の本人はジレンと向き合い,相対していた。
「…………っ!」
「…………次は貴様の番だ」
凄まじい速度で悟飯はジレンの懐へと殴り込む。
……だが流石のジレンそう簡単にはいかず,ギリギリでその拳を受け止める。
しかし……
「ぐぅぅッ……!!」
ーーー何という破壊力だ……!!芯から受け止めているというのにとてつもない衝撃が伝わってくる……!!
「はぁぁぁッ!!!」
悟飯の止まらない連撃にジレンが徐々に押されていく。
「……ジ……ジレンが押されている!?そ……そんなはずは無い!?あ……あのジレンが!?」
「よぉぉし!!いいぞ!悟空の息子!!その調子だー!!」
ベルモッドがあのジレンの苦戦する様に愕然とする。
それに反してビルスはあの化け物であるジレンを倒せる可能性がある悟飯に大喜びだ。
「はぁ……!はぁ……!」
「…………」
ルナとの戦いでの消耗もあるのか,疲労が強く浮かんでいるジレン。だがそれを目の前にしても悟飯は油断なく見据えている。
「凄まじい気だ………今のお前は生半可な攻撃では倒すに至らんだろう。」
「……」
「ならば……俺の全力の一撃でお前を場外へと吹き飛ばすだけだッ!!」
このままではジリ貧で確実に負ける。それに今の悟飯を倒すことは不可能に近い……そう判断したジレンは自身の唯一の勝ち筋,場外負けを狙って全力の一撃を悟飯へと放つ。
「はああぁぁぁッ!!」
膨大な烈火のごとき気功波が悟飯へと迫る。
「……魔貫光ォォッ!!殺砲ォォォッ!!」
それに対して悟飯は魔貫光殺砲を打ち返した。ここでジレンを仕留めるつもりだ。
……ぶつかり合って拮抗したのは一瞬。すぐに悟飯の魔貫光殺砲が押し始める。
「ぐ……ぎぎ……ッ!!」
だがジレンも粘る。己の秩序と正義……そして強さだけを求めて生きてきたプライドが自身に敗北を許さない。
「オオォォォォッッ!!!」
力を……気力を振り絞った。ジレンは負ける訳にはいかない。こんなところで敗北を許してしまう訳にはいかない。
……だがそんなジレンの気力すら,今の悟飯の目の前ではただほんの少し粘った時間が増えるだけだ。またすぐに悟飯の膨大な気にそんな想いごと呑み込まれて行く。
しかしそのジレンがほんの少し粘ったことによって生まれた時間が運命を分けた。
「……ッ!?」
ーーーち……力が……抜け……!!
それは急激に成長したパワーの反動だった。今の悟飯はこの絶大な力を完璧に扱うことはできなかった。
……父である悟空と同じである。悟空が後一歩のところで身勝手の極意を扱いきれず変身が解けたようにあまりに膨大すぎるパワーはその負担も少なくなければ,その状態でいられる時間も多くはない。
…………それがたった今。少しの相手の拮抗と粘りによって精算の時間が来てしまったのだ。
「うわぁぁぁぁッ!!」
そのままジレンの一撃に呑まれ,悟飯は場外へと落ちてしまった。
「…………強き戦士よ。あと少し何かが違えば負けていたのは俺だっただろう……間違いなくお前は最も強き男だった……………………」
ほんの少しの時間が勝敗を分けてしまった。もしあと少しでも悟飯の変身が解けるのが遅ければ負けていたのはジレンだっただろう。
「…………くそッ!!僕は……ッ!!結局ッ……!!」
「…………悟飯。顔を上げろ。お前のしたことは決して無駄ではなかったようだぞ」
観客席で自身の弱さを嘆く悟飯に師であるピッコロは,決して何もできなかった訳では無いと……悟飯が今武舞台にいる選手達に与えた影響を見せる。
「…………チッどいつもこいつもムカつく奴らだぜ…」
ベジータは腹立たしそうにしながらも,何やら少し嬉しそうな表情を浮かべていた。
……それと同時に自身の進化も見据えて。
「……全くサイヤ人というのは本当に癪に障る存在ですねぇ…………さて。私もそろそろ動くとしますか」
フリーザは自身の障害となる敵が孫悟空だけじゃなかったことに苛立ちながら,とうとう動き出した。
「…………俺もそろそろ本気でやるとするか」
悟飯に触発された17号もようやく本腰を入れるようだ。
「…………へへ!オラも早く扱えるようになんねぇとなこの力を。悟飯に負けてらんねぇぞ!」
悟空は悟飯の活躍を見て,自身の先の可能性をしっかり見据えて,早くこの身勝手の極意を扱えるようになろうとさらなる決意を固める。
「……………………」
そしてそんな中。悟飯を見ていたルナは…………
ーーー初めて。自身と悟空くん以外のモノを見た気がした。
ーーー初めて……周りを省みれた気がした。
ルナはずっと聞こえなかった息子の声が今になって届いた気がした。ずっと見えなかった息子達の顔が今ならハッキリと分かる気がした。
ーーー私は貴方に何もしてあげれてないのに……
ずっと何もできなかった。悟空に執着していた自分はお世辞にも良い母親とは言えなかった。息子たちから何かをしてもらうことはあれど,自身はそれに対して何も返せていない。
……何より。ビルスによって悟空が破壊されてしまった後は,悟飯も,悟天も置き去りにして精神と時の部屋で修行をし続け,今この世界に来てしまった。彼らを捨ててここまでやってきてしまった。
『お母さん……!一体どうしてしまったんですか……!?その手首の傷は……!?』
『…………』
『悟天だって,何かお母さんがおかしいって僕とビーデルさんの元へきたんです。お母さん……もしかしてお父さんが死んでしまったのが……まだ……』
『………』
『無理しなくても少しの間休みましょう?悟天はその間僕達が見てますから……』
『……』
『お母さん?』
『だれ?』
『え?』
『貴方……誰なの?』
『ぇ…………』
悟飯は何も言えなかった……自身の母親の綺麗な宝石のようだった蒼き瞳がドロドロに濁った腐った汚水のような瞳になっているのを見てしまった。
『……お…お母さん……』
『……?』
『…………すみませんでした。ほら悟天行くよ』
『お兄ちゃん!?お母さんは!?お母さんはどうなっちゃったの!?』
『お母さんは少し疲れてるんだよ……休ませてあげよう』
そしてそのまま私の息子達は………………
「強いなぁ……」
ポツリと呟いた。覚醒した悟飯を見て,悟飯にかけられた声を聞いてようやく自分を省みることが……周りを見ることができた気がする。
「………………凄いな」
その言葉は今の悟飯に向けたモノでは無い気がした。
「ごめんね……」
その言葉は………………
「大きくなったなぁ……
自身の大切な家族に向けた
〜〜〜〜〜
その後。ルナはダメージと体力を回復させながら力の大会の戦況を見守る。
見れば,もうほとんど最終決戦に近い状況だ。残っているのは第7宇宙の悟空,ベジータ,フリーザ,17号,そしてルナ。
第11宇宙のジレン,トッポだ。
現状。ルナがまだ戦線復帰できない以上。4vs2ではあるが次期破壊神候補のトッポがその力を解放したことでフリーザがやられた。どうやら17号が脱落は防いだようだがしばらくは戦えないだろう。
……だがベジータが己の殻を破り超サイヤ人ブルーを覚醒させたことでそのトッポと互角の戦いを繰り広げている。これならばあるいは………………
そしてベジータが何とか自滅覚悟の一撃で,トッポを倒してくれた。これで残りは…………
「はぁ……はぁ……!!俺は負けん……何があろうと……!!信頼や絆など……そんなものは……!!
強さこそが……正義だッ!!」
「ちくしょう……!!」
ジレンは悟飯によってあそこまで消耗しても未だに圧倒的な存在として悟空を圧倒する。……もう一度悟空が身勝手の極意になれればもしかすると……
「ううぅおおぉぉッッ!!」
たった1人となったジレンはそんな事を全く気にも留めていないかのように,全力の気を解放する。……フルパワーだ。
それもそのはずである。なぜならジレンには仲間はいらない。信頼も,絆も,ましてや愛なんてものは全くもっていらない。
彼には力さえあればいい。全てを凌駕する力を。
……そしてジレン今それを証明する。
そこからは一瞬だった。17号を間接的にとはいえ自爆に近い形で撃破した……人造人間は気を感じられないため生きているのか,脱落したのか,それともまだ残っているのか分からない。
……その恐ろしい程の気の圧でフリーザを吹き飛ばす。
……消耗したベジータを容赦なく撃墜させた。しかしベジータは最後に悟空にその思いと共に気を託す。
その圧巻の戦闘に生き残った悟空は,託された思いを胸にもう一度神々の極地……身勝手の極意をーーー
だが残念ながらジレンの次の標的は悟空ではない……それは残り続けている…………
「………………え」
「今度こそおしまいだッ!!」
ーーーまずい……まだダメージが抜けてない……動けないッ!!
狙われたのはルナだ。まだ動けないこともあり,脱落を覚悟して咄嗟に目を瞑って衝撃に備えるが……
いつまでもその衝撃はやってこなかった。
ここで……1番の最悪の事態…………
……それはルナの元いた世界のように。
「か……がはッ…………」
「ぇ…………」
ジレンの一撃を食らい……完全に戦闘不能となり。その一撃によって無情にも武舞台の外へと落ちていく。
「
自身を庇い,代わりにジレンの一撃を食らって場外へと吸い込まれるように落ちていく悟空に必死に手を伸ばすルナ。
だが……もう…………
「第7宇宙……孫悟空さん。脱落です。」
感情の無い声色で無情にも大神官のそんな審判の声が響き渡った
大きすぎる絶望が,今ーーー
補足
〇ジレンと悟飯ビースト
ルナとの戦いの消耗もあり,悟飯ビーストのが強い描写としました。(この世界の悟飯はそもそも強化されているのもあるけど)
そして最終的には悟飯がギリギリでスタミナ切れでビーストが解け敗北という形になっています。
これは悟空の一回目の身勝手の極意の時もそうですけどジレンってただ強いだけではなくシンプルにタフだし,悟空たちサイヤ人の変身と違ってあまり消耗もないので,真の強みってあのパワーを持ちながらも凄い持続力があって安定感があるところだと思ってます。別の言い方をすれば隙がないってところですね。
その差が最後の勝敗を分けた……という感じです。
実際アニメ超で身勝手の極意・極の悟空もジレンをあと少しまで追い詰めましたが,反動で変身が解けて結局勝負は有耶無耶になってしまいましたからね。やはりジレンが1番やばいのは身勝手レベルの強さで反動や負担がほとんど無いという所だと思います。
あと余談ですが,恐らくこの小説の主であるルナは孫悟空キラーとかの属性がついてると思いますね。