そしてセルゲーム当日。決戦の場には,戦士達……そしてルナもその場にやってきた。
ルナがこの場に来た理由は単純。悟空からセルのご指名があったと伝えられたからだ。……まぁセルが呼んだ理由は大体察しがつくが
そして時間となり,第1試合目でまさかのミスターサタンという地球人が無謀にもセルに挑んで,適当にあしらわれるという事件もあり,一部の戦士達は呆れた目を向けるが,……悪い人ではないんだけどねとルナは1人心の中で思った。
「さて……どいつからやるんだ……フッフッフ…お前からやるか…?ルナ」
「…私はただ観戦に来ただけだから気にしなくていいよ」
セルは誰からやるか品定めするような視線を向け,ルナの姿を見つけると馬鹿にするような口調で煽る。
…だがそれに対してルナは冷ややかな雰囲気であしらった。
「……つれないじゃないか…ルナ……それとも
瞬間セルの首元を掠るように鋭い気弾が飛ばされた。
「……駄目…」
「……ほう?やる気になったようだな。貴様がどうやってその力を付けたのか私としても不可思議だったのでな…さぁ品定めをするか」
セルはルナの様子を見て,ルナがどこまでの実力を持っているのかその力の底を見るために更に煽る。
…だがそれは裏目となった。
「…余計なことを言うな……!」
「なに…!!」
その刹那。大気を揺るがすように恐ろしい程気が膨らみ,まるでルナの殺気が具現化したような鋭い圧に場は呑まれる。
…だがすぐにそれは嘘だったかのように収まった。
「落ち着けルナ……!抜け駆けはずりぃぞ!…まずはオラから行く…!」
ポンっと軽く悟空がルナの肩に手を置き,どこか空気を読まない呑気な言葉でルナを落ち着かせる。…ルナはそれだけで不思議とその圧は収まった。
「………一体…何故アイツにあそこまでの力が………
ふん。まぁいい孫悟空か…。貴様の実力なら初戦としては丁度いいだろう…孫悟飯の前座としてな」
「……へへっ!オラだって簡単に負けるつもりはねぇぞ!」
セルは一瞬だけ顕現したルナの力に呆気にとられるも,武舞台に力強い足取りで上がってきた悟空を見て,すぐに意識を戻し,軽い口調で悟空を煽った後に構える。
それに対して悟空も軽く返した後,武舞台の上で運命を分かつ戦いが始まったのだった。
〜〜〜〜〜
リングの上で悟空とセルのあまりにも次元が違う戦闘が白熱していくのを見て仲間たちは,皆そのレベルの違いに戦慄する。
唯一その戦いを特に驚くことなく見ているのは,ルナと悟飯くらいである。
…しかししばらくその戦闘が続き,悟空もセルもお互い少なくないダメージを負った頃。悟空が衝撃の宣言…降参をした。
それを聞いたセルは何処か予測してたかのように不敵な笑みを浮かべ,悟空がそれを見て次に戦う戦士を指名する。
…恐らくその戦士が誰か分かっているのはこの場で3人…悟空,セル,ルナだけである。
「…おめぇの番だぞ!悟飯」
「…!!」
「な…ご…悟飯だと!?」
悟空がその戦士の名を呼び,その戦士…悟飯は少し驚いた様子を見せる。
「な…馬鹿を言うな!貴様が敵わなかったセルに勝てるわけないだろう!!」
「なら…本人に聞いてみるか?悟飯…おめぇはオラとセルの戦いを見て,ついていけねぇって感じたか…?」
「……思わなかったです。…だってお父さんはーーー」
ピッコロは悟空の無茶な要求に声を荒らげて反対する。…しかし当の本人である悟飯は何処か冷静に戦闘を見ており,悟空から何かを感じ取っていた……否。前から感じ取っていた。
「…セルは分かんねぇけど…少なくともオラは本気でやってた……だからそんな心配すんなピッコロ。悟飯ならでぇじょうぶだ。」
「……僕は薄々分かってたんです。お父さんと精神と時の部屋で修行してる時もあそこを出たあともお父さんは多分セルに勝とうと思っていないって
……多分僕の怒りに呑まれた時に発揮する大きな力に期待してるんだって」
「…………あぁ。そうだ」
悟飯は気づいていた…それはルナによって精神的な成長をし,戦いに対する見方が変わったからは分からない。だが少なくとも悟飯は冷静に戦いや力量を分析し,自身の父の意図を察するくらいには大きく成長していた。
「……だから悟飯…おめぇが平和な世界を取り戻すんだ…立派な学習さんになりてぇんだろ?」
「……分かりました。やってみます…でもお父さん…」
悟空は悟飯に対して激励の言葉をかけ,その戦場へ送ろうとする。…悟飯はそれに対して頷き,リングの上へ上がろうとするが,その前に父へと一言ある事を伝えようとしていた。
「…僕は怒りにはもう呑まれません。怒って我を忘れて滅茶苦茶になった僕がセルを倒すんじゃない…しっかりと僕自身の力でセルを倒します。」
「……!!悟飯…?」
少し非道とも思えるような作戦で自身の息子がセルを倒してくれるよう画作していた悟空が,その時初めて悟飯からの予想外の言葉で目を見開いて驚く。
「……僕は,たとえ悪いやつだろうと殺したくない…そう昔は思ってました。でも…今はもうしっかり戦う理由が僕の中にはあります。
…地球も,みんなも,そしてお父さんだって護ってみせるために身に付けた力で僕がお父さんの代わりにセルを倒します。…そう僕が…!!!僕自身がっ!!!自分の意思でそう思ってます。」
「……悟飯」
その時悟空は初めて罪悪感を感じてしまった。自分が息子に対してどんな非道なことをしようとしていたのかを理解してしまった。…そして自身が息子のことを何も理解出来てなかったことを察してしまった、
…悟飯は凄まじい潜在能力を持ってるが戦いが嫌いなんだと,そう昔の悟飯を見て勝手に思ったままだった。だが悟飯は悟空がいなくとももう大きく成長し,自身の意思や,そして心を強く持っている。
今の悟飯はもう戦いも,敵も,自分の力にも恐怖なんて持っていない。もうその潜在能力に振り回されなんかしない。
…いつの間にか自身の息子は自分よりも立派に成長していた。
そんな息子を無理やり戦いに出そうと画作し,その怒りを引き出すような非道な作戦を立てていた自分にその時初めて嫌気がさした。…そんな事を思う資格などないはずなのに。
「……セル!お前は僕が倒して,そしてお父さんの代わりに僕が地球を守ってみせる!!」
「…ふ…フッハッハッハ!!そうだ…そうだ孫悟飯!!その目だ!!その強く,希望に満ち溢れた目!!そして絶対に折れない不屈の闘志!!貴様が間違いなく最強の戦士だ!!貴様を倒して…その目を絶望に染めてやろう…!!」
…だがそんな自分をまだ父として尊敬している悟飯を見て,悟空は更に罪悪感が募り,そしてそんな頼もしく,自身が望むような成長をした悟飯を見て寂しくもなった。
「……何かさ子供の成長って早いもんだよな。」
「……どうやらもう悟飯は俺や貴様に心配されるほどやわな戦士じゃないようだぞ…孫。 」
「…あぁそうだな」
悟飯と付き合いが長いクリリンが昔を思い出して,その悟飯の成長をしみじみと語り,ピッコロが立派に成長し,自身を軽く超えるほど強くなった弟子を見て少し寂しさと嬉しさが混じったような様子で話す。
……そう。悟空も父親として,自身の元から離れるように感じてしまうほど成長した悟飯を見て少し寂しさを感じてしまったのだ。
「………」
ーーーやっぱり君は誰にだって負けないよ。
ルナは…ルナだけは知っている。この悟飯の強さを。自分が見た通りだから,実力だけなら悟空よりも強いその悟飯の姿を誰よりも知っているから。
……だからこそ…
ーーーーごめんね
何かを想うかのようにルナはそう罪悪感に苛まれた悲しげな表情を浮かべた。
「はぁぁッ!!」
「……ぐっ!!そうこなくてはな…孫悟飯!!」
悟飯の猛攻にセルは劣勢を強いられる。今の悟飯は超サイヤ人状態だろうと父である悟空よりも強い。
…だがセルはそれだけなら悟飯相手に
だが悟飯は学者を目指そうとも,いつ来るか分からない平穏を脅かす敵から自身の大切なものを護るために,母であるチチを必死に説得し,日々地道でも鈍らないよう鍛錬をし,そして積極的に自分から力を付けようとしていた。
更に精神と時の部屋で父との修行を経たことで,今の悟飯はただ戦闘力が高いだけではない,しっかりとした技術と武,そして強い心を持ち,本当の意味で父である悟空よりも強い戦士となっていた。
「だが…その程度では私を倒す事など出来んぞ!!」
「くっ…うわぁぁぁ!!」
セルも本気を出して悟飯に反撃する。悟飯はそれよって弾き飛ばされるが,すぐに体勢を立て直し迎撃する。
「ッ!!!」
「チィッ!!面倒な!!」
悟飯は気弾を闇雲に放ち,セルを撹乱する。
これが圧倒的格下であれば,殆どダメージにはならないものの相手は自身に匹敵しうる孫悟飯。
たとえ適当な軽い気弾とはいえ,何度も当たればダメージは少なくない。
「ほら…食らってみろ!!か〜め〜は〜め〜……」
「…!!かめはめッ!!」
両者が放った技はお互い爆ぜて,周りは煙幕に包まれて一時的に姿を目視することが困難となる。
…しかしその煙を切り裂くように金色と翠色の影が弾け出てきて,その刹那に激突する。
その影は何度も何度もぶつかり合い,互角の戦いを見せる。だが次第にお互いダメージが少なくなくなり,…そして劣勢なのは悟飯であった。ここにきてセルとの地力の差が明確に出た。
「…はぁ…はぁ…」
「…はぁ…ぐっ…フッ…フッフッフ……随分と辛そうじゃないか…孫悟飯」
「お前も…随分と肩で息をしているじゃないか…そろそろ限界なんだろ…!」
悟飯とセルの戦いが更に加速していく。
最初は悟空による無茶な指名だと考えている者が多数であったが,今の悟飯の戦いぶりを見てその指名は決して間違いではなかったと察せられてしまう。
「……あ…あの餓鬼が…な…何故あそこまでの力を…」
「……す…凄い…い…行ける…行けるぞ…!!」
ベジータは嫌でも今の悟飯が自分でも歯が立たない悟空の力を更に超えた力を持っていることを察して,怒りの前に疑問と驚きによって表情を歪ませる。
トランクスはその悟飯の戦いを見て,別の世界とはいえ,死んだ自身の師だった悟飯の姿を思い出し,感慨深い表情を浮かべている。
「セルッ!!」
「孫悟飯ッ!!!」
周りの景色が見る影も無くなるほど激しい戦いが続く。
次第にお互い消耗していくが,両者決定打がないまま戦闘は長引いていく。
……しかしセルがこのままでは埒が明かないと考え,勝負を仕掛ける素振りを見せる。
「……やはりやるな…孫悟飯……だが…勝つのは私のようだな…」
「……まだ決着はついていないはずだ。随分と強気なことを言うじゃないか!」
「…フッフッフッ……ならば受けてみるがいい……私の最大パワーのかめはめ波を……!!!」
「なにッ……?」
その言葉の後…セルは宙へと浮かんでいき,そのままゆっくりと構え始める。
その構えの最中,セルの気が恐ろしいほど溜まっていくのを感じた。
「…くッ…くそ!!」
「……避けたいなら避けるがいい………ただし!!太陽系が吹き飛ぶ程の威力だがな!!!」
「そんなことはさせないッ!!僕が…守りきってみせるんだ…あの時の…誓いをッ!!…果たすんだッ!!」
悟飯もそれに対し,対抗する為に構えて気を溜める。 …その心中には,自身に戦う理由を授けてくれた…自分が変わるキッカケになったであろう,悟飯にとって特別なあの日に言われたルナの言葉が反復するように心に響いていた。
セルと悟飯のフルパワーによって地球が危険を察知したかのように震える。
「「…か〜め〜は〜め〜ッ!!」」
お互い気が充満すると…刹那。その気が洪水のように両者から一気に放たれる。
「みんなぁぁッ!!伏せろぉぉッ!!!」
「「波ァァァッッ!!!」 」
悟空の叫び声が響くと同時に,その瞬間世界から音も景色も何もかもが消え,空間が爆ぜた…
全員がその膨大な気の衝突に吹き飛ばされる中,セルは悠然と宙に浮かびながらその煙幕を見つめて悟飯の反応が無いことから勝ちを確信し,構えを解く。
……その気の緩みがセルの1番の失敗だったのだろう。
刹那セルの目の前を覆っていた煙幕が晴れ,しっかりと景色が認識できるようになったその目の前には…………
「…なにッ!?!?!?」
「セルゥゥゥッッ!!!」
爆風に自爆覚悟で突撃した悟飯がセルの隙をついて,その爆炎を掻き分け,目の前までやってくる。
……悟飯の握り締めた左拳を見て,セルは何故かその姿に孫悟空が重なった。
「…孫悟飯ッ!!!」
セルは悟飯を止めようと手を向けるが,もう遅い。
「貫けぇぇぇぇッ!!!」
悟飯の拳がセルを穿つように打たれた。
「が…がはッ!!!ぐッ…オェェッ!!!」
悟飯からのダメージによってセルに異変が起こる。
「あっ…あれはッ!!」
クリリンはセルが嘔吐したものを見て驚愕の声をあげる。
……嘔吐した場所には吸収された18号がいた。
「も…戻った!!セルが18号を吐いて俺たちと戦った時の姿に…!!」
「ご…悟飯の奴…本当にやりやがった…!!」
トランクスはセルが自分たちと戦った時の姿…第2形態に戻ったのを見て,勝利を確信する。
ピッコロは悟飯が本当に自分自身の力だけで悟空でも敵わなかったセルを剋したことに驚きの声をあげた。
「ちっ…チクショォォッ!!こ…この私が負けるなんて……!!孫悟飯…!!こ…ここまでとは」
だが悟飯はそんなセルに対しても油断なく身構え,その掌に蒼く強い光が集まっていく。
ーーートドメだ…!!セルッ!!
「か〜め〜は〜め〜ッ………!!」
「ぐぅぅぅッ!!この程度ッ!!!この私がッ!!負けるはずがッ!!!」
セルは悟飯の渾身のかめはめ波をも受け止めてみせる。ここまで追い込まれてもまだ抵抗できるのは死に際の底力とでも言うべきか
だが…悟飯は決して1人じゃない。
「悟飯!!!行くぞッ!!ーーー見せてくれよ!!オラ達2人で作った力をッ!!」
「お父さん!!」
「孫悟空ッ!!くっ…瞬間移動かッ!!」
瞬間移動によって現れた悟空が悟飯の隣に立ち,同じくかめはめ波を放つ。
……今親子によって作られた力が解き放たれる。
「こんなはずは…ッ!!こんな……はず…はッ!!私…が!!!負けるはずがァァァッ!!!」
「今だァァッ!!!」
「ああぁぁぁぁッッッ!!!」
ーーー待ってるよ…小さなヒーロー
僕が守ってみせる…地球も…みんなも!!あの時の約束を…僕は…!!
悟飯から一瞬迸るようにスパークが舞い,髪が逆立つ。
そして親子で放った渾身のかめはめ波にセルは呑み込まれていった。……間違いなく今決着がついたのだ。
「お…おい!!やったぞ!!アイツら本当に!!」
「凄い…凄いですよ!!悟空さんも悟飯さんも!!」
ヤムチャやトランクスを始めとして仲間達もその決着に喜びの声をあげる。
「へへっ…やったな!!悟飯!」
「…お父さん……!僕…守れました!!地球も…!!みんなのことも…!!」
「……あぁ本当にすげぇよ…立派になったな…悟飯…」
本当は倒せるなんて思っていなかった。
あの完全体のセルを倒すにはきっと怒りによって覚醒した悟飯の力でないと無理だと…そう思っていた。
でも悟飯は怒りによる力になんて頼らなくても,自分自身が培ってきた力だけで自分ですら敵わなかったセルを倒してみせた。
……途端に自分が酷く情けなく思えた。
自分の力だけで強者を倒してみたいという考えを持っている戦士としての自分が感じる悔しさと,悟飯の父親としての自分に感じる罪悪感に悟空は強く苛まれた。
「お父さん…!早く帰りましょう!お母さんが待ってますよ!」
「ははっ!そんな焦んなって悟飯。よーし!!みんなーー!!帰ろうぜーー!!」
「おーい!お前らちょっと待てよ!!18号も連れてってやらねぇと……」
悟飯は平和が訪れたことによって安心し,急いで母の元へ帰ろうと悟空を急かす。
悟空はそんな悟飯を微笑ましく思い,落ち着かせながらもまだ呆然と立ち尽くす仲間たちに声をかけつつ帰ろうとする。
「俺も手伝おう……」
「16号!悪いな…」
「よし俺達も一旦神殿に帰るとするか!」
16号とクリリンが18号を連れ,仲間達もそれぞれ帰ろうとするがーーー
まだ戦いは終わっていない
ズンッ!!!
「ゴプッ!!!」
「え……」
突如としてトランクスが貫かれた。
なんで…どうして…なんて疑問の前に理解が追いつかずそれを見た皆はただ唖然と立ち尽くす。
……その瞬間感じるのは気が遠くなるほどの膨大な邪悪な気
「フッフッフ…当たったのは誰だ…?トランクスか…」
ーーー絶望が舞い戻ってきた。
補足
〇悟飯が原作より精神面に大きめのバフが入ったことにより,超サイヤ人のままセルと普通に戦いました。 (プラスして戦闘力面はそこまで差が無いかもしれませんが技術面や戦闘中の判断力などにバフが入ってるため総合的に見れば原作より強いです)
更に悟空がその影響で従来の悟飯を怒らせる作戦を決行することに戸惑いが出たためセルに仙豆を渡さなかったので
悟飯のバフ+セルのナーフで割と互角に戦え,最終的に覚醒せずともセル撃破に至りました。
個人的に悟飯は圧倒的戦闘力で敵を蹂躙することはあっても,同格や格上相手には絶対に勝てないような感じがあります。
悟空は逆に格上相手との戦闘でもかなり善戦したり,最終的には撃破することもあります。
これは悟飯が悟空に比べて戦いに意欲的では無いため,修行を積んでる回数も少ないです。悟飯の戦闘は基本的に圧倒されるか圧倒するかの2パターンというのもあります。
なので勘の衰え+経験不足+技術不足+消極的な精神面などがあるからなのかなと思います。
この作品ではそこら辺が少し改善されたため今回のような展開となりました。