陽だまりに焦がれて   作:oir.1

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第八話

 

 

 

「な…何故お前が!?」

 

「フッフッフ……とことん私は運が良いらしい…私はこの頭の核さえ残っていればどんな状態からも再生する事ができる…あのかめはめ波で吹き飛ばされた時…頭の核が運良く無事だった。」

 

死んだと思っていたセルが突如としてこの場に現れたことに悟飯は驚愕する。

…それに対してセルは生き残っていたことによる高揚なのかヤケに流暢にその疑問に答える。

 

「さらに嬉しいことに私の中にあるサイヤ人の細胞のおかげなのか私は死の淵から生き返ったことで大きく力を増した……貴様とは随分と差が出来てしまったようだ…なぁ?孫悟飯……」

 

「くっ……やってみないと分からないさ…!!」

 

「フッフッフ…勇ましいようで何よりだ…少し遊んでやるとするか……」

 

悟飯は分かっていた。今のセルと自分では天と地の差があることを。

だが…悟飯は諦める訳にはいかない。父の代わりにこの地球を守ってみせると…ルナとの約束で大切なものを守れるようになると…そう誓った。

その悟飯の誓いがその歩みを止める事を許さないのだ。

 

 

 

しかし悟飯の前に…1人怒れる戦士がいたのだった。

 

ーーー分かっていた…この未来からきた野郎は俺の………

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

『何の用だ…地球人の女……』

 

『………』

 

そうそれは人造人間襲来に備えるために戦士たちが修行を積んでいる時の一幕。

今日も訓練を終えたベジータの目の前には地球人の女…ルナがいた。

 

『………ブルマさんと結婚するの?』

 

『……そんなどうでもいいことを聞きに来たならさっさと帰るんだな…生憎俺は暇じゃないんだ。ただでさえ貴様はこんな辺境の星の女の身でありながらフリーザと対等に渡り合った不気味な奴だ…何なら今この場で殺してやろうか?』

 

ベジータは許せなかった。同族のサイヤ人である悟空が…超サイヤ人へと至った悟空に負けるのは,まだ飲み込むことができる。

…だがこんな辺境の星で呑気に暮らしている女がフリーザと渡り合って,自分が情けなく殺されたという事実はベジータには許し難い事だった。

 

『今の貴方じゃ無理だよ。それより答えてブルマさんと結婚するの?』

 

『チッ…ハッキリ言いやがって本当にスカした癪に障る野郎だ…それで?俺がそうだと言ったらどうするつもりだ…俺を殺してでも止めるか?』

 

ルナはそんなベジータの態度を気にすることなく再度同じ質問をする。

ベジータはそれに腹立たしげにしながらも挑発的に答えた。

 

…コイツは随分とあの下品な女と仲良さげにしていた。大方俺なんぞと結婚する事が許せなかったという所か

 

と…口では雑に答えつつもルナがわざわざここまで来た理由をベジータは冷静に理解していた。

 

『別に…ただ確認しにきただけ。結婚には賛成だよ。まぁブルマさんを傷つけるようなことがあったら許さないけど…まぁ貴方なら大丈夫だとは思ってるよ。』

 

『なに…?貴様は随分と俺の事を勘違いしているようだな。生憎と俺はカカロットのように甘くはないんでな…あんな下品の女なんぞ興味は無い。ただあいつの誘いに乗ったら偶々俺のガキが出来たというだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。』

 

どうでもいい質問だと思っていたベジータだが,まさか賛成されるとは思わず,ルナの自分を愛妻家で家族愛に溢れた何処ぞの誰かと勘違いしているような言葉に強く言い返す…甘く見られ,舐められているような気がしてプライドが許さなかったからだ。

 

『なら…あなたは仮に私が誘ったら…その誘いに乗ったの…?誰でも良かったとあなたはそう思ってる?

………ブルマさんだったから誘いに乗ったんじゃないの?』

 

『ふん…誰がお前のような気味の悪い女の誘いに乗るか…無駄な時間を取らせやがって…殺されたくなかったらさっさと何処かへ行くんだな…』

 

ベジータは取り付く暇もないといったように話を終わらせる。

ーーーそれはルナの言葉がベジータの本心に対して図星だったからなのかは分からない。

 

『ブルマさん…良い女だよね。』

 

『チッ!!しつこい女だ!!結局貴様はなにを言いに来た!!』

 

『悟空くんを超えたいんでしょ…()()()()()()

 

『なに…!?』

 

中々折れないルナに遂に激昂するベジータ。

…だがルナの一言によって怒りの感情は収まり,驚きつつもルナの話を聞く姿勢になった。

 

『家族を大切にしなよ…ベジータさん。今のあなたにとってはどうでもいいものかもしれないけど…きっと失ってからしかその大切さは分からないよ。それは家族の死かもしれないし…自分の死かもしれない。………私がよく分かってる』

 

『……』

 

『それにベジータさんならきっと…そうするだけで何時か悟空くんを超えることができると思う…いや…できるよ絶対に。』

 

何故その言葉をベジータは黙って聞いていたのかは分からない。ただ妙にルナの言葉が重く,まるで本当にその言葉が質量を持っているのではないかと感じられるほど強い気持ちが篭っているような気がした。

 

『ブルマさんも…これから生まれるあなたの息子も大切にしてあげてね。特に息子さんの方は色々大変だと思うから…これを伝えにきただけだよ。』

 

ーーー本当は本来の流れから変わるようなことはしない方がいいと思うけど…でもブルマさんや…未来のあの子には幸せになって欲しいから…

 

『ふん…余計なお世話だ…話はそれだけか?なら俺はもう行く。二度とその面を見せるなよ』

 

端的にそう言うとベジータはその場から足早に去っていった。

……このルナの言葉がベジータにどう響いたのか…それは本人にしか分からない。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「…………トランクス」

 

「……!?ベジータ…!?」

 

その時悟空が気づいた。ベジータの異変に…

ベジータの視線の先には胸を貫かれ息絶えたトランクス(自分の息子)がいた

大気が大きく揺れる,地が軋む音が聞こえる。大きくスパークが迸る。

 

「き…さまぁぁぁぁッッ!!!!!」

 

「!?ぐふッ!!」

 

その瞬間。目にも止まらぬ速度でベジータが飛び出し,セルを殴りつける。すると死の淵から蘇り,大きく成長したはずのセルが吹き飛ばされていった。

 

「調子に乗るなよ…!ベジータ!!」

 

「はぁぁぁッッ!!」

 

自身に手が届きうるのは孫悟空と孫悟飯…ただ2人だけだとセルは思っていた。…だがその2人も今死の淵から生き返り,サイヤ人の特性で強くなった自分の前には無力…そう思っていた。

……しかしその自分と今対等に戦えているのは,取るに足らない雑魚だと思っていたベジータだ。…その事実がセルを苛立たせる。

 

「………ベジータの奴…完全に孫を超えている…!!」

 

「す…凄いベジータさん…!!」

 

「やっぱり…貴方ならそうなれるよね…ベジータさん」

 

ピッコロと悟飯が覚醒したベジータの力に驚く。

…ルナは知っている。ベジータが本当は誰よりも家族に対する情がある男だと。それに気づくのが早ければきっと悟空をも超える力を持ってる男なんだと。

…今のベジータは悟空を越えようとした訳では無い。……ただ自分の息子が殺された…その事実に言いようの無い怒りを感じ,その本能のままセルに向かっていっただけだ。

 

……今までどれだけ越えようと思っても全く追いつけなかった悟空の背に,地球に来て培った人の(こころ)の力によって追いついた。

 

「………ダメだ」

 

「ご…悟空…?どうしたんだよ?」

 

そんな中悟空の小さな呟きがクリリンの耳に届いた。あのベジータならきっと今のセルだって倒せる…そう思っていたクリリンは不安そうに悟空に聞き返す。

 

「ふん……まさかこれ程までの力を持っているとは予想外だったぞ…ベジータ。………だがまだ1歩私には及ばないな」

 

「はぁ…はぁ…クソッタレ…!!」

 

超サイヤ人2…本来ならばそう呼ばれる形態にベジータはなったはずだった。

……だが悲しい事にベジータがその領域に至るにはまだ力が足りなかった。何故ならベジータはまだ超サイヤ人を極めていない。

これが悟空か悟飯だったのなら超サイヤ人2に成れたはずだ。……今のベジータはそれに片足だけ踏み入れた状態…………擬似的な超サイヤ人2までにしか至れなかったのだ。これではまだ今のセルには1歩届かない。

 

鍵はあった,ただその先へ進む力が1歩足らなかった。その差が命運を分けた。

 

「ぐわぁぁぁッ!!」

 

「ふん…中々楽しめたぞ…認めてやろうベジータ。今のお前は間違いなく最強の戦士だったと」

 

 

ーーー死ねベジータ

 

セルが無造作にベジータを殺す一撃を放つ。

……だがそれを見捨てる訳がなかった。

 

「ベジータさん!!!」

 

「待て!!悟飯!!」

 

ーーーちくしょう!!あの攻撃の速さじゃ瞬間移動が間に合わねぇ!!

 

悟飯がベジータを庇うようにセルの一撃に背を向ける。

…今の悟飯がセルのあの攻撃を食らったら間違いなく死ぬ。悟空はそれを理解し,瞬間移動で2人を助けようとするが,如何せん今のセルの一撃は悟空の反応を大きく超える速さのため,間に合わない。

 

ーーーだがそんな中,セルがベジータと戦っている最中。己の気がないことを利用し,虎視眈々とセルの隙を狙い近づいていた者がいた。

 

…これほどとは……これでは俺の自爆だろうとセルは恐らく殺しきれない。

 

 

 

 

 

ーーーなら俺がするべきことは

 

 

 

「……ぇ」

 

悟飯が目にした光景は見覚えがあった。

それはサイヤ人が襲来してきた時の戦いでナッパの攻撃から庇ってくれた自身の師であるピッコロの姿。

 

…………まだ弱く未熟な自分を庇ってくれた光景。

 

悟飯が強く後悔し,もうそんな光景を見ることないように力をつけたはずが,何の偶然かその時と今,目の前の背中が重なってしまった。

瞬間辺りが爆煙に包まれる。それを食らったのは…………

 

「ふん…ガラクタが…命拾いをしたようだな…孫悟飯…」

 

「16号ッ!!!」

 

バラバラに砕けた16号を見て,叫ぶクリリン。

そう…悟飯を庇ったのは16号だった。

死の淵から蘇ったセルを殺そうと16号は自爆を狙っていたが,ベジータとの戦いを見て今のセルは自身の自爆で殺せるほどヤワな存在ではないと考え,ならば……と自分の役目を察したのだ。

 

「……どうして…」

 

「…………孫悟飯。お前のその力は護るために身につけたものと言ったな……なら…頼みがある。」

 

ーーー俺の好きだった自然や動物達を守ってくれ

 

16号は首だけとなった状態で悟飯に語る。

 

「俺は…孫悟空を殺すために作られた存在だ……俺にとって戦いというのはその手段でしかなかった。

………だが孫悟飯…お前は護るために戦うといった。それは俺にはない発想(プログラムされていないもの)だった。お前は誰よりも優しく強い戦士だ。

…………他の誰でもないお前だからこそ頼める。ただの機械である俺が……覚えるはずのない事だが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー信頼しているぞ…小さなヒーロー

 

 

 

 

 

 

悟飯の中で何かが膨らんだ。それは正しく力。悟飯はその力を感情のまま解き放とうとしーーー

 

 

……だがそれを止めるように悟空がやってきた

 

 

 

 

 

「悟飯…大丈夫か」

 

「お父さん…」

 

「悟飯……悪かったな」

 

「え……?」

 

悟空が悟飯の傍に寄ってくるが,その表情は何処か憂いに満ちている。しかし悟空は何かを決意したように悟飯の瞳を真っ直ぐ見て謝罪をした。

 

「………オラはおめぇの事を信用してなかったんだ。最初,オラはおめぇの怒りの力じゃねぇとセルは倒せねぇ…そう思ってた。」

 

悟空は悟飯に背を向けながら語った。その背中は悟飯にとって見たくないもの(ピッコロや16号に似ていた)だった。

 

「けどおめぇはそんなオラの予想を超えてセルを倒してみせた。

強くなったなぁ……悟飯」

 

「お父さん……」

 

自身を撫でる父の掌はとても優しく暖かかった。父にこうやって撫でられるのは久しぶりだった。それと同時に父がしようとしていることを何となく分かってしまった。

 

「………悟飯。おめぇは優しくて強ぇ立派な子だ。

………オラよりもずっとずっとな。だからもう無理に怒りを引き出すことはねぇ。嫌な事をする必要はねぇ……おめぇが自分自身の力でセルを倒したみてぇに今度は父ちゃんがセルを倒してみせる。」

 

悟空は決意を宿らせた目で言う。それは自身の運命を理解した上での決意だった。

 

「これがせめてものオラの罪滅ぼしだ。おめぇが尊敬してくれてるような父親として最期くらいやってみせるさ………

………母さんにすまねぇって言っといてくれ」

 

 

ーーー後は任せたぞ…悟飯

 

 

悟飯が怒りによって力を引き出せばセルを倒せる,そんな事は分かっていた。だが悟空は成長した息子の姿を見て,今はそれに頼ろうとは思わなかった。悟空が今からしようとしている事でセルを倒せるかなんて分からない。もし倒せなかった場合は結局悟飯頼みになってしまうだろう。

 

しかし悟空は父親として最低な事をした罪滅ぼしとして………戦士としての自分じゃなく,父親としての自分の最期を選んだ。

合理的な判断でも現実的な判断でもない,だが今のままではきっと悟空は悟飯に純粋な顔向けは出来ない。ずっと後悔するだろう。

………だから最期はせめて悟飯が尊敬してくれているような立派な父親になろうと思った。

 

「お父さんッ!!」

 

「悟空くん………」

 

悟飯は父に必死に手を伸ばして引き留めようとするが,無常にも瞬間移動によってその手は空を切った。

そして悟空はセルの傍に立つ。……その姿は肉体の限界を超え,今にも爆発しそうなほど溢れんばかりの気に満ち溢れていた。

 

ルナは察する…悟空の心情とそのやろうとしていることを

 

 

「バイバイ…みんな」

 

「貴様ッ!?」

 

その瞬間。悟空がセルを連れて消えた。

 

「悟空ッーー!!」

 

1番の親友であるクリリンが咄嗟に叫ぶ。

……それは自身の親友の死を察してしまったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪ぃな…界王様。ここしか無かったんだ。オラの身勝手な判断に巻き込んじまってすまねぇ……」

 

「あ…あわわ…」

 

「貴様!!死ぬ気だなッ!!………私がッこんなところでッ!!」

 

「あぁ……最期くれぇ父親として悟飯の為に命を懸けてみせるさ…………

……幾ら瞬間移動を覚えたおめぇでも,まだ慣れねぇ技でこの界王星から遠くの気を探知して一瞬で瞬間移動すんのは無理なハズだ……一緒に死のうぜ……セル……!!!」

 

その瞬間界王星が爆発した。……それは孫悟空の気による爆発だった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

「悟空とセルの気が…消えた…」

 

悟空はセルを道ずれに死んだ。その事実が皆に少なからず動揺を与えた。

 

「お父さん…っ!!」

 

「………終わったな悟飯。お前ら親子が終わらせたんだ…凄かったぞ」

 

16号が自身を庇って死んだだけでなく,父親までも失った悟飯はやり場のない怒りに涙が溢れ出しながら地を叩く。

クリリンはそんな悟飯の肩を持ち,優しい声で励ます。

 

「……クソッ…タレ…結局俺はただの足でまといか…!あのガラクタに庇われ…カカロットにも結局勝ち逃げされ…最低だッ………すまなかったな…悟飯」

 

「ベジータさん……」

 

ベジータは屈辱的だった。息子は殺され,結局自分は何も出来ずに悟飯と16号に庇われ,己のライバルである悟空はセルを連れて自爆した。こんなにも屈辱的なことはなかった。

 

「俺達も帰ろう。俺はトランクスを運んでいく。ドラゴンボールを使えば生き返れるはずだ。」

 

「あぁそうだな……」

 

皆何処か消化不良な結末に苦虫を噛み潰したような気持ちに包まれるが,ヤムチャがトランクスを持ち,神殿へ帰ろうと提案したことを皮切りに仲間たちはそれぞれこの戦いが終わった戦場を後にして飛んで行った。

 

「………手を貸してやろうか?ベジータ」

 

「いらん……余計なお世話だ!さっさと行け……」

 

「ふん……そうか」

 

最後に残っていたピッコロが皮肉か,何か思う所があったのかベジータに手を貸そうとするが,ベジータが素直に受け入れるわけがなく初めから予想していたかのように飛び去っていった。

 

「……………俺は」

 

ーーーあの時一瞬だけ自分でも明確に分かるほどカカロットを超えたことがハッキリと分かった。

 

何故だ。ベジータの中にはそんな疑問が渦巻いている。

………ベジータは今までどれだけ必死に己を鍛えようと悟空には追いつけなかった。なのにあの瞬間だけは明確に悟空を超えることができた。

 

『家族を大切にしなよ…ベジータさん。今のあなたにとってはどうでもいいものかもしれないけど…きっと失ってからしかその大切さは分からないよ。それは家族の死かもしれないし…自分の死かもしれない。………私がよく分かってる』

 

ルナの言葉がベジータの脳内に過ぎる。今のベジータにはハッキリと分かった。嘘も虚勢もつかない,自分はあの時明確にトランクス……自身の息子が殺されたことに怒りを覚えた。

 

ーーー分からない

 

ベジータは誇り高きサイヤ人の王子だ。そんな自分が家族愛なんぞ持ってるはずがない,自分自身以外のために力を振るうなんてことがあるはずがない。

 

だがどうしてもルナの言葉がベジータから離れない。

………地球の居心地は悪くなかった

………あの女(ブルマ)を何処か心の底から信頼してきている自分がいた

………未来から来たであろう息子を,大切に思ってしまう心があった

 

……そんなはずはない自分は残忍で冷酷なサイヤ人ベジータだ。こんな心は要らないはずだ………

だがその心によって明確に孫悟空(カカロット)を超えてしまった。

 

認めない……違う……そんなはずはない

何度自分の中で自問自答をしても,否定をしても,その靄が晴れることはなかった。

………自然と,その答えを出すことに恐怖すら覚えた。サイヤ人としての自分が変わってしまう気がしたからだ。

 

 

 

 

 

「俺は…………もう戦わん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてセルは悟飯と悟空の力によって打ち倒された。

………だがこの戦いは悟飯にとって勝利とは言い難いものだった。言葉にするならハッピーエンドでもバットエンドでもないビターエンドである。

16号に庇われ,その頼み(自然や動物を守って欲しい)を果たすことはなく,結局セルを倒したのは自身の命を引き換えにした父である悟空だ。

 

………精神的にも肉体的にも大きく成長した悟飯。しかしそれでもまだまだ足りないものが多かった。

恐らくこの戦いは"護ること"を理由に戦う悟飯にとって明確な初めての敗北となった。

 

しかし悟飯はここで終わらないだろう。今の悟飯には戦う理由も,護るという約束も,父から託された想いもある。きっとこの戦いを糧に更に成長するはずだ。

 

16号の死も父の死も忘れることはない。

この戦いは悟飯にとっての初めての敗北だけでなくあの日誓ったヒーローとしての1歩でもあるのだからーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「いいの……?チチさん」

 

セルが倒されてから少し経ち,ルナは孫家に来ていた。それはある提案をするためだ

 

「いいんだ……いいんだ……悟空さの事だ。きっとあの世でも楽しくやってるべ」

 

「………チチさん自身は,いいの……?」

 

「………寂しくねぇって言ったら嘘になるべ……でもオラはそれでも悟空さの人生を尊重するだ……悟空さが悟飯ちゃんに後を任せて死んじまったっていうならオラはそれを信じるべ……」

 

ルナがした提案はただ1つ悟空を生き返らせるということだ。きっとナメック星のドラゴンボールがあれば悟空でも生き返れる。地球のドラゴンボールで悟空を生き返らせることが不可能だと言われた時,悟空は界王を通してあの世でも肉体をもって暮らせるということで,別に無理に生き返らせなくてもいい……そう言っていた。

 

しかしその悟空自身の意見を曲げればきっとナメック星のドラゴンボールで生き返れる。家族の望みならば流石の悟空も受け入れてくれるだろう。

………だがチチはそのルナの提案を断った。

 

「わざわざオラのこと心配してくれてありがとなルナさん。思えばルナさんは何時もオラのこと心配してくれるだな。優しい人だべ」

 

「……………いえチチさんが大丈夫そうならいいんです。」

 

 

ーーー強い人だな。

ルナは率直にそう思った。やっぱり悟空くんとチチさんはお互いの心の底の信頼で繋がってる夫婦なんだと感じた。

 

ーーーそれじゃあ今回は本当に私がする事なんてなかったな

 

そう思い,ルナは孫家を後にする。

今回。少しベジータに対して本来しなかった行動を取ったことでベジータがセルとの戦いで覚醒してみせたということがあったが,結局()()()()()()()()()()

……特に他に変化はなかったよね?………と。自分の中で今回の戦いを振り返って考えてみる。

 

 

 

 

ーーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

カチッ

 

 

 

 

 

………………嵌ってはいけなかったピースが嵌ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー変化?変化って…………………今。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うチガウチガウチガウチチガウチガウチガウガウチガウ

 

 

 

 

 

そんなはずはない

 

 

 

 

 

 

 

そんなことが有り得ていいはずがない

 

 

 

 

 

 

 

 

なら……最初から私の今までの意味は……とっくに……

 

 

 

 

 

ーーー私……は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ォェ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喉の奥から痛みと共に吐き出した吐瀉物には絶望と憎悪が混じっていたーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





補足


〇この作品のセル編はハッピーエンドじゃなく,消化不良的な部分もあるビターエンドとなりました。
悟飯超2覚醒してないけどこれから大丈夫そ?という心配があるかもしれませんが,代わりに若干バフが入ったベジータが一時的にその可能性を見せているため,悟空とベジータは勿論,この作品の精神バフ入ってる悟飯も魔人ブウ編までに超2を習得していると思います。

〇悟空が自爆してパーフェクトセルを倒したという結末ですが,セルは原作の自爆から生き残ったのも運が良かったと言っている且つ,悟空はその気なら超サイヤ人と界王拳の掛け合わせで命を度外視すれば,馬鹿みたいな気の爆発を起こせると思うので,可能と判断しました。(さすがに運使い果たして核ごと逝った)











独自解釈(ベジータが擬似超2になれた件について)

〇覚醒するために必要な要素は力(資格),怒り(鍵)だと考えています。

〇原作ベジータは力(超1の第四段階まで極めていない)が足りないのと怒り(鍵)自体は持ってますが,原作ベジータにとって初めて他人を思って怒りの感情を持ったため(超1覚醒時は自分への怒り),自分の中でその感情をまだ処理出来ずよく分からない怒りだったので鍵を持ってても回し方が分からない状態だった。(独自解釈)

〇この小説のベジータはルナとの会話で少し自分の中で家族というものを意識できたため,明確に息子が殺された怒りと処理できました。なので条件のうち怒り(鍵)を満たしたため力は足りずとも擬似超2までは至れました。





……あと大体ここ最近の2話くらい主人公であるルナの影が薄い気がしますが,これから物語の中核あたりに突入するので大丈夫だと思います。
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