魔王の弟に転生したと思ったら魔王が女の子だった件   作:三世

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 原作からして相当重い想い向けてますけどねあの魔王


第1話

 

 

 

 

「あぁ……本当に可愛いね、与一……僕の弟よ」

 

 

 血がこびり付いた服を着たまま、しかし不自然な程に綺麗で真っ白な髪を持った()()に、少年は力強く……しかし割れ物を触るように繊細に抱きしめられる。

 

 

「今日は君が気に入りそうな物を持ってきたんだ……前にコミックが読みたいと言っていただろう?僕以外に興味を持つのはあまり気に入らないが……ほら、見つけたものはあるだけ持ってきたよ」

「……うん、ありがとう姉さん」

「あぁ……君の声は本当に美しい……」

 

 少女は、艶の無い瞳から更に光を無くし、少年の頭を撫でる。手櫛で髪を弄られながらも少年は考えた。

 

 

━━━なんで、こんなことなったんだっけ……?

 

 

 話は姉弟二人が産まれた頃まで遡る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ日本が国として機能していた時、双子はある川のほとりで産まれた。

 双子を産んだ母はそのまま死亡し、双子と遺体はそのまま増水した川に流され消える。双子は遺体から血を吸って生きながらえ、1年が経つ頃には姉が母親から「奪った」異能を使い他者から略奪することによって生きていた。

 弟はそんな姉を何度も止めたが、その度に姉に蹴られ嬲られ、そのうち弟は姉を止めることを諦めた。

 そうした生活を続けるうち、弟はふと、あることに気がつく。

 

 

━━━ここ、ヒロアカの世界じゃね?

 

 

 弟は転生者であった。不幸な事故で死亡し、魂だけがこの世界にたどり着き、胎児の時点で死にかけていた弟の体に転生したのだ。

 

 

━━━え、じゃあもしかしてあの鬼畜姉ってAFO?

 

 

 弟は困惑した、本来彼の知っている世界(原作)での彼女は男性であり、数世紀に渡り世界を脅かしてきた魔王だったのだから。

 

 

━━━てことは俺、殺されるってこと?

 

 

 弟は絶望した、原作で自分はAFOに追われている際に肉片だけとなって殺されたのだから。

 

 

━━━…………媚び売って何とか殺されないようにしなきゃ

 

 

 弟はできるだけ姉を肯定し褒めるよう努めた、できるだけ機嫌をとり、殺される可能性を少なくするためだ。

 ……しかし、それがいけなかった

 

 

「……お前だけは僕を真に愛してくれる、僕を認めてくれる……お前は、僕だけのものなんだ」

 

 

 全てを奪い、身の回りの全てが自身の所有物と考えている彼女が唯一他者から与えられなかった“()()”、初めこそ拒絶し受け入れなかったそれを気まぐれで受け入れた時、その甘美な感覚に彼女は魅了され、気がつけば彼女自身が弟へとそれを与える様になっていた。

 ……だが、それまで愛情を与えられたことの無い彼女にとっての“愛”は、おぞましくねじり曲がった物となっていたのだ

 

 

「与一、僕の可愛い与一、また新しい異能を手に入れたんだ」

「……うん、すごいね姉さん」

 

 

 弟は名前を与えられ、食事を与えられ、住む場所も与えられた……だが姉が奪った異能だけは、断固として受け取らなかった。

 

 

「僕は異能があればいくらだって生きれる……だが与一、君は違う……君は異能を持ってはいない……君はいずれ、僕を遺して死ぬのかい?」

「悲しいけれど仕方がないことなんだよ姉さん、俺は無理に永く生きたいとは思えないんだ」

 

 

━━━そのお前に殺されるんじゃいあほんだら

 そんなことを考えながら様子のおかしい姉をいつものように宥めていた……その時

 

 

「……僕を遺して、君が死ぬ?……ありえない、絶対に許されないことだ」

「……姉さん?」

「君は永遠に僕と生きるんだ、そのためならなんだって出来る……君が望んで居ないのだとしても……!」

 

 

 姉は弟の頭に手を当てると、弟の体に異変が生じた。()()()が姉の手のひらから流れ込んで来るかのような感覚と共に、弟は身体の不調が治っていくような感覚が生じたのだ。

 

 

「…………姉さん……今何をしたの?」

「異能を与えたのさ、『不老』や『栄養精製』に『再生』、万が一にでも君の命が脅かされることがないように沢山の異能を与えておいた……あとは自衛に使えそうな異能を一つだけ渡したよ」

「ッッッ!!なんてことを……なんてことをしてくれたんだ!!」

「あぁ、君が怒ることは承知の上だ……僕はそれだけ君に生きていて欲しいんだよ……とはいえ愛する者にそんな目を向けられるというのは、なかなか堪えるものがあるね」

「今すぐ俺に与えた異能を取り去ってくれ!!頼む!!俺はこんなもの望んじゃいない!!」

「……なんで、僕の想いを分かってくれないのかな」

 

 

 姉は弟の肩をつかみ、ぐんと顔を近づけると弟へ言い聞かせるように叫び出した。

 

 

「君はッ!!僕を愛しているんだろう!?なら僕と一緒に生きてくれよ!!僕はそれだけでいいんだ!!」

「ッ……それでも!誰かから奪った物で生き長らえるぐらいなら俺は死んでやる!!」

「……今、なんて言った?」

 

 

 吠えるように喋っていた姉が、いきなりしんと静かになり、先程まで変わらず薄い笑みを浮かべていた姉の顔が能面のように真顔となる。

 

 

「……ッそんなもので生きていくぐらいなら死んでやるって言ったんだ!!」

「僕の所有物が勝手なことをするな」

 

 

 瞬間、姉は弟の腹に手を突き刺し、今までにないほどの激痛が彼を襲った。

 

 

「ッ!?……あぁァああぁ!!!!」

「痛いかい?内臓を直接握っているからね……大丈夫、後で傷口は塞いであげるさ……けど君が悪いんだよ?勝手に死ぬだなんて……君は僕の所有物なんだ、僕の許可なく死ぬなんてことは絶対に許さない」

「止めッ……がアぁあァあああ!!!」

「あぁ与一、これでも僕の心の痛みには程遠いんだ……あんな言葉、二度と吐くな」

 

 

 腹を突き抜かれた痛みではなく、内臓を直接刺激させられる激痛。今までの殴られるような痛みとはレベルの違う痛みに意識が飛びそうになりながら、それでも与えられた異能のせいで弟は意識を失えないでいた。

 そして10分か1時間か、時間感覚が壊れるほどの痛みを与えられ続け、 気づいた頃には痛みは終わり、姉に抱きしめられていた。

 

 

「ごめんね、本当は僕もこんな事したくないんだ、けど聞き分けの悪い子にはお仕置が必要だろう?」

「…………はい」

「あぁ……痛みに悶える姿もいいけど、やはり君はその顔が一番可愛い……愛してるよ、僕の可愛い弟」

 

 

 その後、彼はただ通気口と扉がついているだけの真っ暗な部屋に何年も監禁され……今へと至った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕たちを否定しようとする羽虫がいるらしくてね、悪いけれど与一、待っていてくれるかい?」

「うん、大丈夫だよ姉さん」

 

 

 ……あれから何年経ったんだ?時計も陽の光も無いせいで時間感覚がよく分からないんだよな……()()が来るのは、もう少し後になるかな

 

 

「直ぐに片付けて戻るさ、大好きだよ与一」

「うん、俺も大好きだよ、姉さん」

 

 

 感覚的に『OFA』の元となった『力をストックする異能』は俺の体に入ってる、なら間違いなく彼らが来るはず……なんだが、何故かAFOが女体化してたり異常に俺に執着してたりで原作と相違点がなかなか多いせいで「彼らが絶対に助けに来てくれる!」と断言しにくくなっている。

 魔王になりたいとかそういう話も聞いてないし……そもそも根本から別人見たくなってんだよなあの人……いやまあ外道の屑なのは変わりないんだけど

 

 

「本当にここにあるのか?……その、切り札ってやつは」

「情報通りならな……もし本当ならヤツを倒す手がかりになり得るかもしれない」

 

 

 ……なんなら原作じゃ姉さんはとっくに『発光する赤子』を殺しているはずなのに姉さんからそんな話をされるようなことも無いし、姉さんが持ってくる新聞を見る限り思ったほど姉さんがとんでもない大犯罪者になってる訳でもないらしい。いやまあ世界的大犯罪者が、全国指名手配に変わっただけみたいなものなんだが……実際姉さんのシンパは既に相当数いるっぽいし

 

 

「この扉か?やけに丈夫に作られているが……」

「それだけヤツにとって重要な物が入っているんだろう、むしろ情報の信憑性が高まったな」

 

 

 …………とはいえ困ったのは姉さんが俺に『力をストックする異能』だけじゃなく『再生』やら『不老』やらととんでもない異能を無数に渡してきた事だ。本来こんな沢山の異能を一気に与えられたら体が耐えきれずに自壊する筈なのだが……そこはやはり異能を与えられた中に『複数異能が持てるようになる異能』のようなものも入っていたのだろう。彼女ならそんなものを見つけていてもおかしくは無い

 

 

「……やはり簡単には開かないか、異能を使ってもこじ開けるのは難しいだろう」

「にしても頑丈過ぎやしないか?あの女がそこまで大切にする物とは一体……?」

 

 

 ………………やっぱいるよな、誰か……声的に女の人が二人か?

 

 

「あの!すみません!!」

「「!?」」

 

 

 大分驚いてるみたいだ……まあ当然か、彼女らはここに誰かがいるとは思わずに来たんだろうし

 

 

「おい、奴らは全員出払ったんじゃなかったのか?」

「ああ……さっき来た連絡でも奴らが囮の場所に向かってると言ってたはずだ」

「あの、多分今ここ俺以外居ないです!それと俺はあなた達の敵じゃありません!取り敢えずこの扉開けて貰えませんか?」

「……どうする、駆藤

「…………」

 

 

 とは言ってもこの扉、姉さん以外じゃ絶対開けられないよな……確か厚さ10cmぐらいあったし……その癖して「何時でも与一と喋りたい」とか言って外からの音は少し聞こえるんだよな、マジどうなってんのこの扉

 

 

「……離れていろ」

「……はい!」

 

 

 なにかするんだろうか

 

 

「どうするんだ、どう見たって私たちの異能じゃ開けられないぞ?」

「手榴弾、今どのくらい持ってる」

「4個だが……おい待てまさか」

 

 

 ……しゅりゅ……ちょっとまってなにして

 

 

BOMB!!

 

 

「正気か駆藤!?下手したら私たちも纏めてここで死んでたぞ!?」

「……まあ言わなかったのは悪かった……そこの君!怪我は無いか!!」

 

 

 やっべえ耳鳴り止まんねぇ、イカれてんのかあの人……いやまあ結果的に助かったのはありがたい限りだけど……

 

 

「大丈夫でーす……なんとか」

「よかった……すまないな、荒い開け方になってしまって」

 

 

 吹き飛んだ扉の向こうから現れたのは、赤髪のショートカットで顔の真ん中に大きな傷跡のある少女、そしてバンダナを付けて青髪をポニーテールで纏めている少女の二人組だった。

 

 

「寧ろお礼したいぐらいですよ、ありがとうございます……で、お姉さん方……俺の姉さんの知り合いだったりします?」

「……姉、というのが、白髪のあの女のことなら……そうだな」

「そうです」

 

 

 そう言うと先程まで少し柔らかい雰囲気を出していた二人組が、一気に険しい表情へと変化する。……これもしかして彼ら、俺の事人質取りに来た感じか?

 

 

「……()()()だ、見た目も似通ってるし、AFOの血縁で間違いない」

「……もしかして俺、人質にされちゃったりとかします?」

「そんなわけないだろう、君を助けるに決まってるさ」

 

 

 よかった、それならまだこの人達が姉さんに殺されないようにできる。

 

 

「俺を解放してくれて、本当にありがとうございます……俺の名前は与一、AFOの弟です」

 

 

 さて、これからどうしようかな……彼らとは途中で別れるのは確定として……本来ここに来るはずだった()()にどうやって会うものか

 

 

「俺は駆藤、そして隣のこいつはブルースだ、反乱組織のリーダーをしてる……取り敢えずはいつ奴が戻ってくるかも分からない、早く移動してしまおう」

 

 

 そうだ、駆藤にブルース、彼ら二人を何とかして探さないと………………

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()

 

 

「す、すみません……ちょっと聞き取れなくて、もう一度名前を聞いてもいいですか?」

「?私が駆藤、こいつがブルースだ」

「…………」

 

 

 …………ああそうだ、確かに十分想像は出来たはずだ。AFOが女体化してたんだもんな……他のキャラの性別が変わっててもおかしくは無かったが……

 

 

 

 

 

 

 なんでよりにもよって二代目と三代目まで女体化してんだよォ!?!?

 

 

 

 

 

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