ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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そうして僕は転がり落ちる

 

 

 

 

 

 

 春乃宮の現当主は、蛍火(ほとひ)神社の神主である。

 かつては名うての退魔師だったが、加齢で霊力が衰え今では前線に立つこともほとんどない。娘たちを淫魔との戦いに送り出すのは心苦しいと思いつつも、春乃宮の矜持と人々の安寧を重んじ、努めて平静な顔を作る。

 しかし政治的手腕という意味では今一つ弱く、夏雅城に対して強く出られないことを恥じてもいる。親と当主の間で苦悩する男性だった。

 

「そうか……椎名さんの手助けがあっても、倒し切れませんでしたか」

「私は美桜さんほどの才はありませんが。五大淫魔の一角の実力には触れました。複数の淫蟲の複合体。恐ろしいのは、核となる蟲が確認できなかったこと。一匹でも逃せば、再度繁殖しての復活も可能だと推測します」

 

 蛍火神社の本堂で、当主は椎名薫の報告を受ける。

 春乃宮は、協会の中枢で権威を持っている訳ではないが、実力においては一定以上の評価を受けている。

 その中でも十年に一度の天才と呼ばれた美桜が、実戦経験豊富な退魔巫女の援護を受けて尚も仕損じた。それだけで蟲魔ヒラルス・ラールアと、その主なる存在の厄介さが分かるというものだ。

 

「また、主なる存在にかなり心酔しています。今回の件も、明確に退魔巫女に狙いを定め、罠に嵌めようとしている。そう感じられました」

「それは……」

 

 放置すれば、通常の淫魔とは違った狡猾さをもって、娘たちが狙われるということ。

 不甲斐ない父であり当主だが、淫魔の主の所業を認めるわけにはいかない。

 

「分かりました。改めて協会上層部に報告し、対策を練りましょう」

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 作戦、普通に失敗です。

 むしろ蟲魔ヒラルス・ラールア及び主の存在を強くアピールする結果となりました。

 

「まことにごめん……」

「大丈夫、あんまり気にしないでいいからね」

 

 ちょこんと座るひーちゃんを慰めつつ、羊羹とお茶を味わってもらう。

 もむもむ食べれば「おいし」と一言、少し気分も戻ったようだ。ケーキやタルトだけでなく、和菓子もイケるようだ。基本甘いモノ全般が好きなんだろう。

 

「よくよく考えたら隠蔽と認識阻害を解かなければいい話ですから。感知能力が高い退魔巫女がくるかも、というのも考え過ぎの可能性もありますし。ねっ、ナオトくん」

「まったくだよ、サナちゃん。何かを変えるのも大事だけど現状維持も必要だよね」

 

 二人でそれとなくフォローをする。それとなくどころか、あからさまだった。

 だけど効果はあったらしく、ひーちゃんは安堵の息を吐いた。

 まあ実際、僕たちがネガティブに考えすぎていた、というオチだって十分にあり得る。

 なので僕たちは結局ひっそり生活しましょう案を採用することになった。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

「あー、もぉ、すっごい! 腹立つぅ!」

 

 後日、僕はまたも空き教室で春乃宮さんとお昼ご飯を食べていた。

 今日は彼女が荒れてらっしゃる。

 

「お、落ち着いて」

「でもさー、聞いてよ! 夏雅城のボンボン、作戦が失敗したのは私ら姉妹のミスで俺に責任はないとか報告しやがったのよ!? ざっけんなでしょ!?」

「座った状態で足で床をダンダン蹴るのやめてもろて?」

 

 スカートちらってするから。

 

「大変なんだね、退魔巫女も」

「そりゃあね。退魔協会って、四季家が中心っていう形だけど、実際はお金持ちの夏雅城と冬護院がメインなのよ。まあ、夏雅城会長はけっこー正義の人だからまだマシ。でも他の上層部がひっどい! 身贔屓の強い利益主義! いずれボンボンが会長に、なんて話まで出てるし! そうなったら普通に腐った組織一直線でしょ!」

 

 最近の僕の立ち位置は、退魔関係の愚痴を気兼ねなく吐ける相手、という感じだ。

 ひーちゃんの一件、ワンパンで沈んだ夏雅城先輩は、その責任を全部春乃宮さん姉妹におっかぶせたらしい。

 

「お父さんもさぁ、夏雅城に借りがあるからって」

「借り?」

「そ。昔、まだ私らのちっちゃい頃かな? 都市開発で神社に立ち退き話が出てたんだけど、そこを夏雅城が計画変更したおかげで助かったんだってさ。だからって。言いなり過ぎ」

 

 都市計画での立ち退きなら、きっと当時はいざこざがあったんだろうな。

 それに抵抗したのは幼い春乃宮さん達の生活環境を守る意味もあったと思う。なら、夏雅城に感謝も、強く出れないも仕方ないところはあるかな。

 そんな風に考えてしまうのは、僕がお金のあれこれにけっこう悩まされることが多いからです。自分の生活費を捻出するのも大変なんですよ。

 なので、両手を合わせてお祈りポーズを作っててみる。

 

「……なにしてんの?」

「え、春乃宮パパさんに感謝を。状況はよく分かんないけど、立ち退きとかのいざこざで住む場所変わってたら、こうやって一緒の高校にいることもなかったかもだから」

 

 怒ってる時にお説教じみたことしないよ。

 下手に春乃宮パパさんの擁護発言をするより、こっちの方がフォローになるかな、と。

 

「わりと恥っずいこと言うね」

「素直が美徳を信じるキモブタです」

「なにそれ」

 

 僕の返答を思い切り笑ってくれた。

 おかげで多少は空気も和らぐ。そこからは雑談を交えながらも、楽しく食事ができた。

 そうして食べ終わり教室に戻る途中、廊下で数人の女子グループが僕たちを指さした。

 

「あれ、美桜やん」

「あー、見て見て、キモブタだよ」

 

 春乃宮さんが軽く手を上げて応じる。たぶん同じクラスの友達、かな?

 僕は一切関わりがないんだけど、「ねね、こんどさー。ウチん店も宣伝してよー、電気屋だけど」と、軽い感じで話しかけられてちょっと焦ってしまう。

 

「こーら、困ってんでしょ」

 

 春乃宮さんが窘めてくれて、他の子達は「はーい」と素直に従った。

 かと思いきや、すぐにぶっこんでくる。

 

「てかさー、美桜。ブサイクとワキガは許せるけど、事情アリ以外のデブは嫌い、じゃなかったっけ」

「デブ嫌いっていうより、デブるくらい怠けるヤツが嫌いなの。佐間の場合はそうじゃないし」

 

 友達の前でも仲がいいと言ってもらえるのはちょっと嬉しいかもしれない。

 

「あたしはさー、“ブタちゃん”見てるから全然佐間くんいいよー」

「でもさ、美桜のお姉さん。イケメンの婚約者いたよね。うらやましー、とか思わんの?」

「思うかっ!? あんなのと比べたら佐間のが全然いいじゃん!」

 

 力いっぱいの否定。春乃宮さん、本当に夏雅城先輩のこと嫌ってるなぁ。

 その様子に、女子の一人がはちょっと不思議そうにしていた。

 

「なんかさぁ。噂とちょっと違う感じ? 普通に仲いいっぽい」

「まあ、仲はいいと思うけど。噂?」

「え、知らんの? 噂っていうか、今朝んことだけど。キモブタが春乃宮姉妹にちょっかいかけてる、って話してるヤツいたよ」

 

 へ?

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 教室に入った瞬間、男子から良くない視線を向けられた。

 戸惑っているとぼそぼそとした陰口が聞こえてきた。

 

「あいつ、春乃宮さんの妹にちょっかいかけてるんだってよ」

「セクハラまがいのこともしたんだって? クソじゃねーか普通に」

 

 男子だけでなく女子もヒソヒソと何かしゃべっている。

 なぜか、僕が春乃宮さんに手を出そうとした、みたいな噂が流れているようだ。

 困惑していると相沢くんに手招きされて席に戻る。

 

「春乃宮の婚約者の先輩。教室で昼飯食いながら、なんか垂れ流してたらしいぜ。俺も外で中華丼食ってたから詳しいことは知んねーけど」

 

 もしかしたら前の件で変にヘイトを買ったのかもしれない。

 夏雅城先輩は、僕が来る前にこの教室であることないこと喋ったのだろう。

 春乃宮のお姉さんの方は、「ね、ねえ。そう言うのは止めよう」と弁明はしている。ただ、先輩から何か言われたのか、どこか弱腰な諫め方だった。

 かなり雰囲気が悪い。居たたまれず小さくなっていると、相沢くんが足を振り上げて、机を勢いよく蹴って大きな音を立てた。

 

「あーあ! 事情もよく分かってねぇ外野が! ぶちぶちうっせーなぁ! あー、気分わりぃぃぃい!」

 

 叫ぶような怒声が教室中に響く。

 表情も苛立ちに歪んでいて、かなり怖い。クラスメイトもこれ以上機嫌を悪くさせないよう、陰口を止めて視線を反らした。

 

「だいたいよぉ、俺ら普通に飯食ってただろうが! それでちょっかいかけてるとか意味分かんねぇ! キモブタが美人とお近づきになったからって、やっかんでんじゃねえよ! まじ鬱陶しいなぁあああ!」

「あ、相沢くん。あ、ありがと。もう、大丈夫だから」

「うまい牛丼喰いてえなぁぁぁぁぁ!」

「奢る、奢るから」

 

 擁護は嬉しかったし、感謝もしてる。

 でもあんまり騒いだら相沢くんの評判がまた悪くなってしまうし、どうにか落ち着いてもらえるようお願いする。

 

「国産和牛を使った、高級牛丼のお店があるんだ」

「よう、キモブタ。今度いつ暇だ?」

 

 速攻で冷静になってくれた。

 先程とはまた違う変な空気にはなったけれど、僕にとっては有難い。

 相沢くんに改めてお礼を言って、ちらりと春乃宮さんのお姉さんを見る。

 

 彼女は、やんわりとでも諫めようとしてくれた。

 でもきっぱりとした否定はしなかった。 

 やっぱり、昔のままではいられないよなぁ。ちょっと寂しくなった。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 放課後。

 相沢くんのおかげでマシにはなったものの、居心地の悪い教室を抜け出し、こっそり帰ろうと昇降口に降りてきた。

 すると背後から、ばんっと頭を叩かれた。

 

「いたっ」

「おっ、ブタくんじゃねーか」

 

 振り返るとそこにいたのは夏雅城先輩だ。

 ニヤニヤと厭味ったらしい笑みで僕を見下している。

 

「ええと、先輩?」

「いやあ、大変だなぁ? だがよ、人の女にちょっかいかけんのが悪いんだぜ?」

 

 意味が分からない。

 というかそれ、嫌がらせに噂流しましたっていう自白じゃないか。

 

「別に僕、あなたの婚約者さんとほとんど喋る機会もないんですけど」

「美桜のことだよ」

「は、い? いや、俺の女だって」

「俺達は特別な間柄だからな。いずれは、あいつも俺の下につくんだよ」

 

 それはたぶん退魔協会の長になったら、みたいな話なんだろう。

 だからって自惚れが過ぎる。けっこうムカついてしまったので、僕は少しだけ嫌な言葉を吐く。 

 

「……そう言えば、なんか家のお手伝い? ですごい失敗したって聞きましたけど。も、もしかしてこれって、ストレス解消とかそういうのですか? なんか、春乃宮さん達にミス押し付けたって聞いたし。先輩んとこの家業って、スカッと系の動画の悪役とかもやってたり……」

 

 言い切る前に、頬に拳を叩き込まれた。

 脂肪というショックアブソーバーじゃ防ぎ切れなず、僕は廊下に倒れ込む。

 くそぅ、嫌な繋がり方したよ。

 この先輩、ひーちゃんに一発でやられたのにイライラして、その憂さ晴らしに色々やってるんだろう。

 なんだよ、こいつ。淫魔と戦うからって退魔師全員が清廉潔白とは思わないけどさ、それにしたって最悪じゃないか。

 

「イラつくな、このデブ。調子乗ってんじゃねえよ」

「なにやってんの!?」

 

 顔を歪め、更に殴ろうとしたタイミングで、春乃宮さんがやってきた。

 彼女は廊下に転がる僕を庇うように立って、先輩の頬を全力でビンタする。

 ぱぁんっ、と乾いた音があたりに響いた。周りの生徒も驚いて固まっている。

 

「……いってえなぁ」

 

 先輩は不機嫌そうな顔で春乃宮さんを睨む。

 位置的に彼女の表情は見えないけど、その小さな背中から十分怒りが感じられた。

 

「なにって、ちょっと遊んでただけじゃねえか。美桜こそなんでそんなデブかばってんだ」

「あんた、夏雅城でしょうが……! それを恥ずかしげもなく!」

「夏雅城だから、だろ。庶民に感謝されても、上等こかれる謂れはねえよ。お前だってそうだろ、春乃宮の娘(・・・・・)?」

 

 四季家として、淫魔を討伐してきた家系だから。

 夏雅城は庶民とは隔絶したお金持ちだから。

 僕みたいなデブサイクが反論するなんて許されない。自分は正当な罰を下しただけ。

 そういう傲慢さが滲んでいる。

 そして先輩の観点では、春乃宮さんもそちら側の人間だという。

 

「ふざけんな。私は、あんたみたいのが、だいっきらいなの!」

 

 でも、彼女は立場が上の相手に対して思い切り噛みつく。

 先輩は白けたような顔になった。

 

「ふぅん。それは姉の婚約者である、夏雅城の後継に対する意見でいいんだな?」

「こいつは……! いいに決まってんでしょ、協会出てけってんなら出てってやるわよ! その代わり一発殴らせろニヤケ面ぁ!?」

 

 もう今にも殴りかかろうとする春乃宮さんの腰に抱き着いて、どうにか彼女を留める。

 

「はっ、なっ、しっ、てっ!」

「おっ、落ち着いて! 相手、この学校にもめっちゃ寄付してるお金持ちなお家の人だよ!? 校内でなんかあったら絶対春乃宮さんが悪者になるから! というかもう殴ってる!」

「そんなん知らないしお姉ちゃんの婚約も神社ごと潰れりゃいいのよぉ!」

「キレすぎっ! キレ過ぎだからっ!?」

 

 うがーっ、と暴走する春乃宮さんを先輩は鼻で哂う。

 

「今後の処分楽しみにしてろよ、天才」

 

 最後にそんな言葉を吐き捨て、彼はふてぶてしい態度で帰っていく。

 その背中が見えなくなって、ようやく彼女は落ち着いた。

 

「だ、大丈夫っ、佐間!? とりあえず保健室で冷やして」

「あ、いや、大丈夫だから。なんか、ごめんね。変なことに撒き込んじゃって」

「たぶん巻き込んだのはこっち。あの阿呆ボンボン、どうせ仕事のミスでイラついてあんたに当たっただけなんだから」

 

 あ、彼女的にもそういう予想が経つぐらい先輩ってアレな人なんだ。

 でも、ひーちゃんに殴られたからの現状で、ということは僕が原因と言えなくもないんだよね。

 

「それより、よかったの? あの、なんか嫌なこと言ってたけど」

「いーのいーの。言ったでしょ、会長は正義の人なんだって。あいつの言う通りの処分なんてしないって」

 

 それでも、次期会長と目されてる先輩と諍いを起こした事実は、春乃宮さんにとってよろしくないんじゃないかなぁと思う。

 僕を庇ったせいで。

 

「ごめ……ありがとう、春乃宮さん。助けてくれて」

 

 でも、ごめんよりもありがとう、だよね。

 きっと謝られても彼女は嬉しくない。

 

「ほんと、いいって。保健室は?」

「あ、はは。すぐ帰って処置するから。今度また、お礼させてよ」

「そう? 一人で帰れる?」

「意外と心配性……うん、平気だよ。じゃあ、また明日」

 

 僕は急ぎ気味に話題を切って、走って帰る。

 まあデブの鈍足なので普通に追いつけるだろうけど、僕の心情に配慮してか、そっとしておいてくれた。

 一頻り走って、荒れた息を整えて辺りで、手乗りサナちゃんが僕の頬をさすさすと撫でた。

 

「痛くないですか、ナオトくん」

「実は、けっこう痛い。……手乗りサナちゃん。やっぱりさ、春乃宮さん、立場悪くなるよね?」

「退魔協会の内部事情はよく分かりませんが、次期会長というのが本当なら、あんまりいい想像は出来ませんね。あのなんちゃってイケメン、性格悪いですし」

 

 僕はすごくムカついていた。

 あの先輩のあんまりすぎる横暴に。

 

「いずれ、あんな人が退魔協会のトップに立ったらさ、僕たち的にもよくないと思うんだ。じゃあ、対抗しないといけない。ひっそり行動なんて言ったけどさ、ごめん。僕、ちょっと無理そうだ」

 

 そのための、力ならある。

 僕は、大淫魔と契約したんだ。

 

「…………夏雅城俊哉ぁ。この現代社会において、登録者十万越えの動画配信者を敵に回すのがどういうことかぁ、教えてあげるよぉぉぉぉっ!」

「えええええええっ!?」

 

 それに僕、キモブタパワーがあるしね!

 

「ちょ、おかしくないですかっ!? 私、大淫魔サーナーティオですよ? 契約したことで、ナオトくんは私の根幹たる能力<堕淫魔術>を使えるんです! 並みの退魔師なんて目じゃないパゥワーですからね!?」

 

「この殴られた顔のまま動画を投稿。コメントで話題に上がっても濁しつつ、掲示板を使って“同じ学校の先輩に殴られた”という情報を拡散。幸いにも相手は夏雅城グループの嫡男、いい具合に炎上をコントロールして、夏雅城の公式アカウントを燃やしてやるぅ! そして謝罪動画の名目でまとめサイトに乗りやすい言葉選びをしつつチクチク個人攻撃、夏雅城俊哉の名前がネットタトゥーとして残り続ける状況を作り上げてやるぅぅぅぅぅっ!」

 

「陰湿っ!? ナオトくん、反撃が陰湿ですっ!?」

 

 めちゃめちゃテンション上がってたけど、手乗りサナちゃんからお叱りを食らう。

 

「もう、冷静になってください。(本体)、ナオトくんが学校に行ってる間に色々動画を見たから知ってるんですよ? こういうネットでの騒ぎは双方にダメージがいくんですよね?」

「う、そうです。キモブタ地元メシちゃんねるの人気が下がる可能性も……」

「そうですよ。だいたい、春乃宮美桜さんを悪者になるからという理由で止めたじゃないですか。あんなののために、ナオトくんの評判を下げる必要はありません」

 

 反省する僕を、小さな手乗りサナちゃんが何度もなでなでする。

 

「せっかくの勘違いを利用しましょう。正体不明の淫魔の主として、行動するんです。私が力を貸します。淫魔的にもアレを放置したくありませんし」

「……できるかな? 僕に、先輩をどうにかすることが。春乃宮さんが無事なように」

 

 悪魔の囁き以上に優しく、サナちゃんは僕の心に触れる。

 

「それを可能とするのが大淫魔、サーナーティオ・ドゥルケ・スアーウィスの淫らな魔力です」

 

 きっとサナちゃんは本当に願いを叶える淫魔だ。  

 いじめられっ子の復讐という定番の願いを、彼女は肯定してくれた。

 

 

 

 

 

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