ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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魔術の訓練その2

 

 

 

「では、ナオトくん。状況を整理しましょう。現状、なんちゃってイケメンは学校で直人くんの悪評を立てています。学校に多くを寄付する夏雅城という家のお坊ちゃんなので、教師の助けは期待できません。しかも、春乃宮美桜にもなんらかの処罰を与えようとしています。これをナオトくんは止めたいと考えている。ここまではいいですか?」

「うん、でもキモブタ地元メシちゃんねるを使ったネットリンチ的報復は、僕のデメリットが大きい」

「ならば、正体不明の“淫魔の主”として、彼を処理する。その後は、主は退場。これが私たちの当面の目的です」

 

 処理って別に殺すとかじゃないよ。失脚を狙う、というか。

 二度と僕や春乃宮さんに手出しをしないようにしたい。

 そのための力をサナちゃんは僕にくれるという。

 

「それを為すためには二つ。根幹たる能力<堕淫魔術>の習熟、および魔力の蓄積が絶対条件です。より大きな問題は、魔力の方でしょう」

 

 そう、サナちゃんは淫魔っ子。

 本来なら性行為による絶頂、もしくは魔術で魔力を集める。 

 しかし弱体化しており、退魔巫女が常駐するこの町では難しい。そもそも性的接触が好きじゃないっぽいし。

 僕も恋人がいないし、性行為に寄る魔力の回収はぶっちゃけ無理。

 ゆえにエンターテイメントやグルメによる“うっすらとした快楽”で魔力をじわじわ回復させていくつもりだった。

 その予定がここで崩れた。夏雅城俊哉は、可能な限り早く抑えるべき。

 ならば魔力は早急に回復するために、僕が思いつく現状最高の一手を繰り出すしかない。

 

「分かっている。だからこそ、今晩は全力を出させてもらったよ。A5ランク国産和牛によるステーキ……シャリアピンソースっ! 飲み物は、百パーセント巨峰ジュースっ! バケットも国産小麦・天然酵母の一級品。デザートのアイスクリームに関しては、北海道直輸入のバニラアイス+ストロベリーアイスを用意させていただきましたっ!」

 

 ベタもベタな高級ステーキ。これも快楽の一つである。

 ソースは玉ねぎの甘みとワインの深いコクがお肉と相性抜群。

 ぶどうジュースはワイングラスに入れて、ちょっと大人っぽさを演出。

 ぶっちゃけグラスも晩ご飯用に買ってきた。

 めちゃめちゃ財布にダメージが入った夕食である。

 

「おいひい……。おにくやわらか」

 

 当然ながらひーちゃんの分も用意しています。

 ナイフどころか箸でも切れるその柔らかさにびっくりしている様子だ。

 サナちゃんもステーキを一口食べる。

 

「わ、ほんとだ。柔らかいですねー。うん、美味しいです」

 

 思ったよりリアクションが大きくないのは本来食事が必要ない点に加え、人間世界の高級品にあんまり思い入れがないせいだろう。

 ただ味自体は美味しいので、喜んではくれているようだ。

 

「アイス。二種類のアイス。しかも、こっちは赤き天上の宝珠(いちご)が入ってる」

「んー、おいしー。私は、バニラが好きですね」

「ひーは圧倒的にいちご。いちごアイスをステーキにしたい……」

 

 それはただ鉄板の上で溶けるだけです。

 A5ランクの牛肉よりもアイスの方がよっぽど喜ばれています。

 僕、ネットで焼き方調べまくってメチャクチャ緊張して焼き上げたのに……。

 でも二人が悦んでくれてよかった。

 ごちそうさまの後は、再び今後の計画についての話し合い。内容は魔力の回収案がメインだ。

 

「ごはん、美味しかったです。でもグルメで得られる快楽は微量。まだまだ足りません。……本当は、手っ取り早い方法もあるのですが、絶対イヤなのでする気はありません」

「ちなみにどんな方法?」

 

 僕の質問にサナちゃんは沈黙する。

 代わりに、ひーちゃんが食後ののんびりタイムを楽しみながら答えてくれた。

 

「複数人の男性を引っ掻けて一晩中乱交プレイ。さーちゃんの堕淫魔術でも魔力は集められるけど、搾精の方が効率はいい」

 

 純正淫魔な手段でした。

 そりゃ嫌だよね、しかたない。僕としても正直あんまり想像したくない絵面だ。

 ちらりとひーちゃんの方を見ると、サムズアップで返された。

 

「漫画を嗜む私は知ってる。さーちゃんが他の男の人と搾精えっちしたら、おにーさんの脳が破壊される。だから、あくまでおにーさんのために、その手段はとったらいけないと説得した」

 

 ありがとう、ひーちゃん。

 最初からするつもりはないだろうけど、いい感じに僕を言い訳にして、サナちゃんが気に病まないようにしてくれたのだ。 

 いい子だなぁ、五大淫魔。

 

「そう……私も、契約者をないがしろにした方法で魔力を得るなんて、イケないことです。相手への気遣いは忘れちゃダメですよね」

 

 サナちゃんはものすごい勢いでコクコク頷いていた。

 だから、と彼女は次善の策について説明してくれる。

 

「さて、まず重要なのは、私の能力を使えるようになったナオトくんも、自らの内に魔力を貯められるという点です」

 

 淫魔と契約者の関係性の話だ。

 淫魔は、契約者が性行為で誰かを絶頂させた場合、魔力の恩恵を受けられる。

 ただし、契約者の取り分がない訳ではない。

 サナちゃんに魔力が溜まるように、僕にも魔力が溜まる。報酬を半分こ、みたいな感じだ。

 なので、僕がスキルを使う場合、この溜まった魔力を使用することになります。

 

「ただ、私たちは魂で繋がっています。その繋がりを利用して、私が魔力を貸すことも、逆にナオトくんが魔力を貸すこともできます。そしてもう一つ魔力のルール。“淫魔は快楽のエナジーを魔力に変換している”、です」

 

 つまり、魔力持ちを絶頂させてエナジーを吸収しても、相手の魔力自体は減らない。

 あくまで快楽が魔力になるだけだから。

 

「ここまで言えば、分かりますよね?」

「……うっす」

「私としても、非常に心苦しいです。ですが、あれです。戦時下の緊急徴税の親戚だと思ってください」

 

 つまりです。

 僕が絶頂しても、魔力自体は回収できるということ。

 ただ、契約者の場合は魂で繋がっている以上、半分自分みたいなもの。なので変換効率がクッソほど悪い。

 だから普通はそういう対象にならない。

 でも、現状を考えれば、とれる手段は他にない。

 

「本当、あれなんですけど。緊急魔力収集。魔術によるナオトくん強制絶頂乱舞、実行させていただきます」

「むしろお願いします。誰かが犠牲になるより、そっちの方がずっといい」

 

 まあ格好いいこと言っても、ここから超情けない姿を晒すのですが。

 そこからの僕は、もう本当に世に出しちゃダメな喘ぎ方をしました。

 どこにも需要のないキモブタのオホ声です。

 汗だくのぐちゃぐちゃなデブが芋虫みたいに動き回る。

 顔を背けて魔術を行使するサナちゃん。

 ついに作ったダイヤの兜に目を輝かせるひーちゃん。

 こうして、和やかな夜は過ぎていった……。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 次の日、僕は学校を休んだ。

 体調を崩したわけではなく、堕淫魔術の訓練のためだ。

 講師役のサナちゃんはメガネを直す素振りを見せる。メガネはかけてないのに本当に素振りだけです。

 

「前回は隠蔽と認識阻害を習得してもらいました。今回は、なんちゃってイケメン対策に、実戦で使える魔術を学んでもらいます」

 

 僕の熟練度不足とサナちゃん自身の弱体化により、スキルのランクは最低になっている。

 なので練習は絶対に必要だそうだ。

 

「やっぱり、実力差でレジストとかされちゃうの?」

「はい、多少は。いくら性格が悪くても退魔師。相応の実力はあると考えるべきでしょう」

「ひーの方が強い」

 

 ひーちゃん、何故が自慢げ。実際、淫蟲パンチの一撃で気絶させたというし、五大淫魔というだけあってこの子はかなりの実力者だ。

 でも、それを基準に夏雅城先輩に舐めてかかるわけにはいかない。

 戦闘どころか喧嘩もマトモにしたことのない僕だ。臆病なくらいがちょうどいい。

 

「ところでナオトくん、先程から何故目を背けているんですか?」

 

 サナちゃんは、ものすごく真面目に話してくれている。

 でも僕はそんな彼女を直視できないでいた。 

 

「いや、あの……ひさびさのサキュバス衣装がとても眩しく……」

 

 だって出会った初日に着てた、露出過多な淫魔姿だもん!

 抱き締めれば折れそうなくらい儚げなサキュバスが、真っ白な肌を惜しげもなく晒している。

 容姿が幼いのでものすごく背徳的である。

 

「え? でも、私の場合はこちらが正装ですよ?」

「そ、それはそうかもしれないけど、やっぱり、ね」

「この魅惑のつるぺたボディに照れてしまうのは仕方がない、と捉えるべきでしょうか……」

 

 ほふぅ、と息をはく。

 実はサナちゃん、かなり自分の容姿に自信を持っています。

 

「ですが、魔術の訓練です。しっかりと私を見てもらわないと困ります」

 

 サナちゃんは小さな手で僕の頭を固定して、赤い瞳を僕に向ける。

 まるで心まで覗かれているみたいだ。幼さに見合わない雰囲気に緊張してしまう。

 

「まずは、発情の魔眼をマスターしてもらいます」

「発情?」

「はい。前回は飛ばしましたが、魔眼は堕淫魔術の基本。目を合わせることで、性的な欲望を掻き立てる。媚薬とも洗脳とも違う、内からの情動を引き出す力です。さぁ、じっと私の目を見てください」

 

 力は既に僕の中にある。

 あとは使い方を覚えるだけ。何度かの試行錯誤のあと、眼球自体に不思議な熱を感じた。

 

「分かりますか? 発動している感覚」

「うん。なにか、目が熱くなって、力を発しているような感じがする。でも、あんまり効果ない?」

「発情や媚薬、他にも精神干渉の類は淫魔には効かないんです。だから今は私の目を見て、発動の感覚と維持の仕方だけを掴んでください」

 

 僕はサナちゃんと向かい合い、発情の魔眼を繰り返し使う。

 至近距離で改めて見ると、サナちゃんは本当にキレイだ。白くきめ細やかな肌、すらりとした顎のライン、長いまつげ、大きな赤色の瞳。まるで芸術品のような整い具合だった。

 

「ナオトくん、上手ですよ。かなり慣れてきましたね。それが、魔眼の感覚です」

「う、うん」

「では、せっかくです。もう二つ堕淫魔術の基礎を、使えるようになりましょう」

 

 さすがに、発情の魔眼では戦えない。

 新たに覚える魔術に期待しよう。

 

「次は、振動の魔術、そして電流の魔術です」

「お、おぉ……なんか攻撃魔術な感じが」

「振動はその名の通り、指や手のひらを震わせます。具体的な使用例は、ピンクローターとか、電気マッサージ器と似たような真似ができます。ぶるぶる震える系大人の玩具な魔術です」

 

 めっちゃ淫魔なヤツだった。

 な、なら、電流の魔術は!?

 

「電流はピリピリと快楽の刺激をカラダに送る魔術です。変身ヒロインに対する電気責めのすごく弱い版ですね。エロ漫画とかで絶頂シーンに電流エフェクトかかるじゃないですか。淫魔と電流は切っても切れない関係にあるんです」

 

 こっちも淫魔なヤツだった……!

 あれ、もしかして僕が戦えるようになるのってものすごく遠い?

 

「さあ、頑張って覚えましょう。これを習得すれば電流バイブレーターのキモブタの称号は手に入れたも同然です!」

「ごめんね、サナちゃん。その称号はあんまり欲しくないかな……」

 

 でも、あれだ。

 基礎を疎かにする者は基礎に泣く。動画だってまずは編集ソフトの使い方を熟知しないと投稿なんて出来ない。

 だからこれらを軽んじちゃいけない。僕は必死に振動と電流の魔術を学ぶのだった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 結果、僕の指先はどんな高性能なピンクローターにも負けないくらい繊細な振動を得ることができました。

 それだけじゃない。手のひら全体を振動させ、今や体の外からお腹にえっちな刺激を送れるレベルです。

 

「とりあえず基礎的な堕淫魔術を修めました。これでナオトくんも立派な外法術師です」

 

 外法術師は、淫魔の術を使える人、みたいな意味らしい。

 立派なエロ術師になっただけの気がしないでもない。

 相変わらずのぼんやりフェイスなひーちゃんが、しゅたりと手を挙げて提案をする。

 

「手のひら全体を振るわせる魔術は、お菓子作りに役立つ気がする……。小麦こねこねしたり」

 

 なんの話?

 夏雅城俊哉撃退作戦は、前進している。してる? してるよね?

 僕は無理やり自分にそう言い聞かせた。

 

 

 

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