ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話 作:自宅戦闘員
近頃、この街では女性の行方不明者が増加している。
警察の捜査は続いているが、未だに手がかりさえつかめていないのが現状だ。
青白い月の光に染まる夜の郊外を
視線の先には、ガラス窓がところどころ壊れた、薄汚れたビルがあった。
「お姉ちゃん、指令にあった廃ビルってここでいいの?」
「うん。美桜、気をつけてね。中には多数の淫魔がいるって話だよ」
「私は大丈夫だって。むしろ注意しないと~、はお姉ちゃんの方じゃない?」
けらけらと笑うのは双子の妹の
この子は悪意なしに姉を下げるような発言をする。仕方ないとはいえ、少しだけでもやもやとしてしまう。
年齢は共に十六歳の高校二年生。二卵性のため容姿はあまり似ていない。
咲綾は腰まである長い黒髪の先をリボンでまとめた、少し垂れた目の優しそうな顔つきの、穏やかな印象の美少女だ。グラビアアイドル並みにスタイルがよく、特に胸は同年代でも飛び抜けて大きい。
反対に美桜は釣り目がちなツインテールで、小生意気そうだが可愛らしい。
小柄でスレンダー、均整の取れた体つきをしている。
姉妹が着ているのは巫女装束をレオタードに改造したような、やたらと扇情的な衣装だ。
美桜は素手だが、咲綾は日本刀を携えている。
これは彼女達にとって正装のようなもの。春乃宮姉妹は、退魔協会に所属する退魔巫女なのだ。
洋の東西を問わず、淫魔は古くから存在している。
性的な快楽を糧とするこの化物は一個体一種族とまで言われるほど各々で外見も能力もまるで違う。
美しい女性の姿で男から搾精する者、魅了の力で女を操り性奴隷とする者、夢に入り込み精気を奪う怪異、触手の怪物など多種多様だ。
快楽を貪って強くなる性質から、積極的に人間を襲う危険な存在だった。
人を害する魔がいるのなら、それを滅ぼす者もまた古くから存在している。
淫魔に対抗するため、浄魔・浄霊を可能とする術師を擁する退魔協会が設立された。
ただ、魔を滅ぼす霊力は女性に宿りやすく、加齢と共に衰えていく。
そのため、どうしても若い退魔巫女が主戦力にならざるを得ない。
春乃宮姉妹も学生でありながら、協会からの指令で幾度も淫魔を討伐していた。
「はっ」
短い呼気と共に振るう白刃。
咲綾は日本刀に霊力をまとわせ、廃ビルに巣食う淫魔たちを滅していく。
数こそ多いが低級の淫魔。
七匹もの低級淫魔が霊力を帯びた刃に切り裂かれて消滅した。
「あ、終わったよー? そっち手伝おっか? お姉ちゃんよわよわなんだし」
「……大丈夫、なんとか倒せたから」
「そ? ならいいけど」
美桜が両手を腰に当てて笑っている。
背後には消し炭になった淫魔の名残があった。この子は、咲綾が七匹を討伐する間に二十匹以上を葬ってみせた。
呪符などの媒介を用いずに浄霊や結界術、火炎の術を行使できるほどの、圧倒的な霊力量と操作技術。
はっきりと言えば、その実力は咲綾を超えている。
退魔協会において、美桜は「十年に一人の逸材」と謳われ、将来を嘱望される退魔巫女だ。
咲綾も同年代では頭一つ抜けた実力者でありながら、賞賛の言葉は「やはり美桜の姉」だった。
姉なのに妹よりも弱い。それが咲綾のコンプレックスになっていた。
「ていうかホント淫魔ってキモイ。胸とか下とかに飛び掛かってくるし。いっくら私が魅力的だからってさぁ」
「そ、そうだね。……ねえ美桜。最近妙に協会からの指令が多くなっていると思わない?」
「そういえば? なに、春だし淫魔も発情期的なアレ?」
うげっ、と美桜が舌を出す。
冗談のような物言いだが、あながち間違いでもないのかもしれない。
事実として奴らの動きは活発になっている。そこになんらかの要因があるとすれば。
「分からない。でも、最近の女性の連続失踪事件もあるでしょう? 私たちの知らないところで何かが起こっているような気がして……」
街の片隅、光の届かない場所でこそ魔は蠢くもの。
微かに過る不安を振り切るように、姉妹は廃ビルを後にした。
* * *
土曜の朝、いつもより早く目が覚めたけど、起き上がらずにごろごろしていた。
ちらりとベッドを見れば、デブサイクの住むマンションにはあまりにも不釣り合いな、銀髪の美ロリっ娘が眠ってらっしゃる。淫魔って寝るんだ……とか変なことに感心してしまった。
しばらくすると、ベッドで眠る大淫魔サナちゃんが目を覚ましたようだ。
ちゃんと寝床は分けたよ。僕は予備の布団です。
「ふぁ……ナオトくん、おはようございます」
「あ、う、うん。おはよう」
つっかえながら挨拶を返すと、サナちゃんがくすりと楽しそうに笑う。
それが無邪気な幼女にも、妖艶な女性のようにも見えてドキリとしてしまう。
今日が休みでよかった。こんな浮ついた気持ちで登校したら絶対何かやらかすに決まっている。
「そう言えば、サナちゃんってご飯は食べるの?」
「栄養の摂取という意味では、対象のエクスタシーそのものが
「よくある淫魔のイメージだと、精気を吸い尽くして殺す、みたいな感じだけど」
「そういう搾精ができるかできないなら、できます。するかしないかなら、しません」
あんまり怖い子じゃないみたいでちょっと安心した。
「あ、もしかして夜眠ってるうちに襲われたらー、とか考えてます? 大丈夫ですよ、私は下級淫魔とは一線をかくしゅ存在でもあります」
サナちゃんは、さらりとそんなことを言う。
噛んだけどそこはスルーしてあげるのが紳士たるデブの嗜みです。
「下級淫魔はえっちで魔力を集めます。でも私は、最上級の淫魔ですから。魔術によって指一本触れることなく快楽の魔力を吸い上げられます。ただ生態として18禁行為を好む者が多いので、あいつ変なヤツー、扱いはされていますね」
「それはやっぱり、むやみに人を傷つけないために?」
「あ、そういうのじゃないです」
速攻否定された。
サナちゃんは、「理由は別にあります」と重々しい雰囲気で答える。
「……親しくない人とえっちするのって、嫌じゃありません?」
「自分の種族全否定やめてもろて?」
たぶんね、淫魔って「親しくない人とえっち」で生きてる方がほとんどだと思います。
「え、でも無防備な姿を晒すんですよ? やっぱりよく知らない人とは嫌だと思う方が普通じゃないですか」
「そう言われると、そうなんだけど」
「そもそも私、経験ありませんし。ちょっと怖いなーと」
「大淫魔なのに!?」
「なのに、です。オオサンショウウオだって生まれた時からオオが付いているじゃないですか」
「あっ。大淫魔って、淫魔がレベルアップしたすごいの、じゃなくて最初からそういうモノなんだ?」
変なところで勘違いが是正された。
「まあそんな感じで、男の人を干からびさせるような真似はしませんよ。人間の食事に関しては、栄養にはなりませんが味覚はあるので、娯楽として美味しいものを味わう、くらいでしょうか」
「一応食べられはするんだね。今から朝ごはん用意するけど、食べる?」
「せっかくなのでいただいていいですか? ご飯を食べがてら色々と説明しちゃいますね」
「うん、分かった」
といっても簡単にトーストを焼いただけの朝ごはんだ。
しかしジャムはキモブタ一押し、高級スーパー・ルアミリア限定のいちごジャムである。
サナちゃんも「甘いのにくどくなくて美味しいですね」と喜んでくれた。
物の五分で食べ終え、中断していた話を再開する。
「まずは、私という存在について説明しますね。たぶん信じられないことも出てくるでしょうけど、そういうものだと飲み込んでください」
淫魔の衣装だと肌色成分が多めなので非常に集中しづらい。
でも務めて意識の外に追いやって、真面目に耳を傾ける。
「一般に認知されていないだけで、世界には淫魔と呼ばれるエロい化物がいます。そのカテゴリーの中でも大淫魔と呼ばれる強力な存在が私、サナちゃんです。淫魔は一個体一種族と言われるくらい外見も能力も生態さえ各々で違います。同じ淫魔でも私みたいな少女型がいれば、女性を襲う男性型や獣型、触手生物とかも普通にいますよ」
よかった。
うちに来てくれたのがサナちゃんで本当に良かった。
「次に、契約について。これはよくある悪魔の契約を思い浮かべて頂ければ。何かを代償に願いを叶える。ただ勘違いしてはいけないのは、どんな願いも叶えてあげられるわけではないんです」
「そうなの?」
「はい。本来、この手の契約は願いに対応する魔を召喚して行います。泳ぎが上達したいなら水に関わる者を、お金が欲しいなら幸運を呼ぶ者を、といった具合に。私の場合は言わずもがなですね」
大淫魔なら、そりゃあエロ目的以外になかろうて。
僕の場合は契約の副次効果で命が助かったけども。
「私たちは、病気に対する緊急処置ではありましたが、契約をしました。使い魔じゃないですよ、淫魔だけどアクマで対等です。だから契約も双方の同意がなくては切れません。そして重要な点。契約している間は、私の持つ力をナオトくんも使えるようになります。自身の能力の把握の仕方、分かりますか?」
「う、うん。一応」
契約の影響か、教えられていなくてもやり方が分かる。
たぶん契約とは魂に刻まれるのだ。目を瞑れば、現在の状態をはっきりと確認できた。
──────
【素人術師のキモブタ】
<
・大淫魔サーナーティオ・ドゥルケ・スアーウィス。
<所有スキル>
・堕淫魔術:★☆☆☆☆
・手乗りサナちゃん:★☆☆☆☆
──────
……うん。
「堕淫魔術は、大淫魔たる私の根幹をなす能力。分かりやすく言うと、強制発情とかアクメビームとか、女の子をふたなりにしたりとかのエロ魔術です。その一端がナオトくんにも宿ったのです」
サナちゃんはすっごくドヤ顔だった。
それはそれとして気になることがちらほらと。
「ねえ。この“素人術師のキモブタ”ってなに?」
「称号ですね。契約して力を得たと言っても、最初から十全に発揮できるわけではありません。淫魔の魔力を使いこなすには相応の修練が必要です。力量が上がれば自然と称号も【威風堂々としたキモブタ】とか【誰もが振り向くキモブタ】になりますよ」
キモブタは変わらないのか……。
「じゃあ、手乗りサナちゃんっていうのは?」
「ミニマスコットな私の分体を召喚することができます。私を連れていけない状況もあるでしょうし、けっこう便利ですよ」
「なるほど、確かに」
「ちなみにレベルが上がるとローションとか出せるようになります」
「強くなるわけではないんだね」
さすが淫魔、そちら方面に特化している。
「やっぱり、契約したばかりだからレベルは低いね。僕の熟練度不足、みたいな感じかな」
スキルは二つとも星一つ。
そこを指摘すると、サナちゃんが目を逸らす。
「えー、と、ですね。慣れてない、というのも勿論あります。ただ……ほら、ロリロリしい私ですけど、もう十年以上封印されておりまして。人間でも寝たきりで、起きたばかりだと筋肉が衰えたり、その」
「そう言えば、封印されてた影響でよわよわって言ってたっけ?」
「はい、そう、なります。スキルレベルが低いのは、熟練度に加えて私自身が弱くなっているせいです。大淫魔なのに。私、大淫魔なのに……」
あ、マジへこみしてる。
でも顔を上げて、自分を鼓舞するように声を張る。
「で、ですが! 力さえ戻れば、ナオトくんも影響を受けてぱわーあっぷしますよ!」
「おお! で、力を戻す方法って?」
「そこは淫魔らしく、快楽を魔力に変えて己を満たすこと。有り体に言えばえっちなことして相手を絶頂させればいいのです」
ぐっ、と握り拳を作り両手でガッツポーズ。
無邪気な子供って感じでなんか可愛らしい。言ってることはアレ過ぎる。
「これまでは契約者のメリットばかりを上げましたが、淫魔側にもメリットがあります。例えば、ナオトくんが女の子を絶頂させた場合でも、私は快楽のエナジーを得られます。つまり、一度契約さえしてしまえば、だらだらしていても食事を用意してもらえる、みたいな感じですね」
「……わりと簡単に契約した理由って、もしかして」
「弱体化した私にとっては、契約自体が得に繋がるんです。ちなみに力が戻ったからと言って大人になったりしません。魅惑のつるぺたボディが私の基本です」
そういう話を聞くと逆に安心した。
偶然得られた力に裏がないなんて、そっちの方が信じられない。
あとロリが大人に戻るのは僕的には解釈違いなのでそこも安心です。
「私が力を取り戻すにはとにかくエクスタシーなエネルギーが必要です。なので、ナオトくんは、恋人とどんどんイチャイチャしてください!」
「ごめんなさい。言う必要もないかと思っていましたが僕はカノジョいない歴=年齢を絶賛更新中のキモブタです」
「えっ」
えっ、じゃないよ。えっ、じゃ。
顔見れば分かるでしょ女の子にモテないのよ僕。
「では、ナオトくん→私ラインで得られるはずの魔力は……?」
「ご、ごめんなさい。むりっぽいです」
「あ、じゃあ淫らな魔力で行きずりの女性とワンナイトカーニバルとかは……」
「そんなん出来るマインドがあったら普通に恋人作る方向で頑張るよ」
周囲の声に負けて幼馴染と疎遠になるようなヘタレには無理な行いだ。
「だ、大淫魔サーナーティオの力で、その、好き放題やっちゃうみたいなのは……」
「エロ魔法で女の子に強制は、遠慮したいなぁなんて思うキモブタです」
「そ、そうですかぁ……ですよね。自分から提案したけど、私もそういうの好きじゃないです」
すごく残念そうな顔をされた。
申し訳ないけど、モテないし誠実でもない僕だからこそ、ちゃんと線引きのできる人間ではいたい。
「例えばさ、力を使わなかったら、僕にペナルティってあるの?」
「若干、あると言えばあります」
「そっか……ちなみに、どんな?」
「ナオトくんラインが望めないのなら、別途に魔力を調達する必要があります。本来なら私は魔術でそこら辺を歩いている方からエクスタシーを集められるのですが、今はよわよわなのでエクソシストに目をつけられたくはありません。つまり、ナオトくんにご飯になってもらわないと困ります。そう、あなたは私に貪られることとなるでしょう……!」
つまりサナちゃんによって快楽を与えられると。
僕はペナルティの言葉も間違えて覚えていたみたいです。
「もしくは快楽に相当するもの、“心地よさ”が必要になります」
「ええと、具体的には」
「美食とか、マッサージとか。スポーツの爽快感、娯楽の楽しさ……でしょうか。つまり性的絶頂よりも薄いけれど、心を満たす快楽ですね」
なるほど……ということは、だ。
「掲示板スレで相手を煽って論破しまくっても魔力を得ることができる?」
「できますよ? 事実、パゥワーが小さくて実戦ができないからネットに張り付いている淫魔もいるそうです」
ジョークのつもりが普通に肯定されてしまった。
でも、ひとまず健全な方法を提示された。
僕なりの方法で彼女を満たしてあげればいいということだ。
「分かったよ。じゃあいくつか質問させて。サナちゃんの姿って、テレビとか動画に映るの?」
「幽霊じゃないですからちゃんと映ります」
「映像から、正体が淫魔って分かるのかな」
「それも大丈夫です。安心してください、弱体化したとはいえ大淫魔の認識阻害・魔力隠蔽は完璧です。映像どころか、一緒に並んで歩いてもエクソシストに気付かれることはありません」
つまり……僕に用意できる魔力を得る手段は!
※ ※ ※
『みなさんおはようございますこんにちはこんばんは、始まりましたキモブタ地元メシちゃんねる……のお時間、ですっ。いつもご視聴ありがとうございます』
『今日もいい具合にお腹が減ってるんですけど、皆さん経験ありませんかね。甘いモノ食べたい。テイクアウトのお店でじゃなく、なんていうか、オシャレ? メルヘン? 可愛らしい内装のお店で。全体的にブサイクな男だと入りにくい系の場所で、心ゆくまでスゥゥイーッツを堪能したい。そういう気持ちが』
『僕もですねー、正直甘いモノ大好きなんで行きたいです。でもですよ、いきなりそういうお店にキモブタが現れたらみんな思うわけじゃないですか。おい、モンスターが来たぞ、って。景観を大事にする店に、景観を損ねる僕が来店する。それはもう営業妨害で訴えられても仕方がない。ということで、えー、考えました。僕がそういう店でも許される方法。はい、どうぞ』
:キモブタの拍手、間を置かず白いワンピース姿のサナが入ってくる。
:立ち振る舞い注意。
初めてなので喋る前にお辞儀必要。手を振るのは「自分のファンがいる」と考えているように取られかねないので固定客を掴むまで厳禁
『初めまして。キモブタ地元メシちゃんねる、臨時アシスタントのサナです』
『銀髪からも分かるように異国のお嬢さんです。ぶっさいくな僕に女の子の知り合いがいるなんておかしいと、疑ってかかってる人もいるでしょう。実はこの子、親戚の子です。知り合うも何も親戚が美形で、僕一人ブサイクなキモブタ特異点なだけです』
『見ての通り、ウチの“またいとこ”、超かわいいでしょ? 身贔屓入ってるから他の皆さんからしたらどうか分からないけど、僕にはかわいい親戚の子なわけですよ。ということはだよ。僕の存在がマイナスでも、サナちゃんが超プラスなら平均すれば基準値をクリアできることになりますよね? え? 不審者度が上がる? ちょっとよく分からない』
『ナオトくんはやさしいおにいさんです』
『ほら、サナちゃんもこう言ってくれている。なんで、今後は男一人だと入りにくいお店にはサナちゃんについてきてもらって紹介していくことになります』
『よろしくおねがいしまーす』
「……ってなんですか、これ!?」
「え、キモブタ地元メシちゃんねる新アシスタントのサナちゃん。僕、大食い+お店紹介系の動画配信やってるんだ。そこにサナちゃんに出てもらってテコ入れをしようかと。あわよくばサブ垢でサナちゃんねる開設もアリ。動画でコメントをもらってお金も稼ぐ。自己顕示欲を満たすって、絶頂に似た快楽だと思うんだよね」
「わりとナオトくんが俗物でした……!?」
サナちゃん動画出演案は了承が得られず保留となりました。