ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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少女たちの悲しい過去が明らかに!

 

 

 炎情シュウさんのコラボ動画の制作はとんとん拍子で進み、夏休み前におすすめの冷たいスイーツを紹介する動画を配信できた。

 

『キモブタさん、このお店が噂のパフェ専門店だ! 今日は俺がいるから不審者に思われることはないぜ!』

『僕単品だと不審者みたいな言い方やめてもろて?』

 

 中の人と違って【炎情シュウ】はワイルド系な外見に似合った乱暴な喋り方だった。

 でもコラボ相手である僕のことはちゃんと“さん”をつけて呼んでいる。

 僕の動画にはミニシュウさんが登場。

 手乗りサナちゃんとの掛け合いを参考に作った僕たちの動画は思いのほか受けてチャンネル登録者がまた増え初め、有難いことに過去動画の再生数もけっこう上がっている。

 初回から「シュウさんレギュラーでもいいんじゃね?」とのコメントも書かれていた。

 

『こ、こんなところにライバルがいるなんて……! ナオトくん付きのミニキャラは私だというのに……っ!』

『サナちゃんさんはなにに対抗心を抱いているの?』

『おおん? ナレさんよぉ、俺だって負けてねえぜ?』

『シュウさんも煽らないでもらえませんかね……』

 

 なお、ナレーションのサナちゃんさんとシュウさんのバトルという予想外の一幕も。

 初のコラボ「チャーシュー企画」は成功、八月の収益にも期待が持てる。

 これなら夏は生活に余裕を持ち、お爺ちゃんへの返済分を確保しながら貯金もできそうだ。

 

「サナちゃん達の動画も好調だね。まさかひと月経たずに登録者数一万を超えるとは思ってなかったや」

「ふふ、ひーちゃんのおかげですね」

 

 順調な滑り出しを見せたサキュティちゃんねる。

 その躍進のきっかけは、ひーちゃんの提案したゲーム配信である。

 内容としては伝統的おちものパズルゲームで三人が対決するというモノ。配信時点ではプレイしたことがあるのはひーちゃんしかおらず、『サヨもララも、ひーがやり方を教えてあげる』とおねーさん風びゅーびゅー。

 そうしていざ対戦が始まると、

 

『ぬおおおお、なのじゃぁ!』

『負け、ない……たぶん』

 

 らっちゃんは単純に指の動かし方や判断が早いが、ゲーム自体はひーちゃんの方が慣れている。

 お互いにちょっとずつの連鎖の応酬をした後、三本勝負でギリギリひーちゃんが勝利した。

 しかし続く第二戦。

 

『なるほど、連鎖を組んで一気に消していくといいんですね』

『あっ、えっ、あっ』

 

 頭の回転が速いサナちゃんは、パズルゲーム自体は初めてなのに効率的に連鎖を組んでみごとひーちゃんを下した。

 結果、ガチへこみ。からの、らっちゃんによる『ひ、ヒナ!? だだ、大丈夫なのじゃ!? ほら、妾負けてるし!』という必死の慰め。 

 先程まで意気揚々とルールを説明していたはずなのに負けて項垂れる姿に【ヒナちゃん……w】というコメントが殺到。

 多くの視聴者の笑いのツボと庇護欲を刺激し、登録者数を増やしたのである。

 本人はどうしてるかって。

 

「おにーさん、早く相手する。リベンジ……」

「あ、はい」

 

 僕のお膝で必死にパズルゲームの練習をしております。

 

「これ、たぶんパズルバトル第二回、けっこう早めに来るのじゃ」

 

 さすが<夢幻世界>の使い手。

 らっちゃんは難解なる未来を見事に看破してみせたのだった……。

 

 

 

 

 そうして一学期の終わりまであと五日。

 僕は放課後、ヤンキー然とした恰好でクラスでも怖がられている相沢竜太《あいざわ・りゅうた》くんにお呼ばれした。

 

「キモブタ、ちっと付き合え」

 

 学校帰り、商店街でお菓子を購入してから彼の家に向かう。

 玄関先で待っていたのは、日焼け肌のスタイルがいい女の子だった。

 

「よ、竜。……と、ブタくん」

 

 早瀬夏凛。

 相沢くんの恋人の、ダンサー系ギャルな女の子。

 心光の癒し事件で、彼女は一か月にも満たない短い期間とはいえエロ教団に身を寄せていた。

その際に色々あったようで精神的にダメージを負い、今は学校をお休みしているそうだ。

 それでも相沢くんは早瀬さんを見捨てることなく、折を見てこうやって外に連れ出している。

 

「おう、夏凛」

「撫でんなし」

「最近はこいつ、うちに泊まったりもしてんだよ」

「竜がしつこいからじゃん。ま、あーしもあの家にいるよりはいいけどさ」

 

 頬が少し強張ってはいるけれど早瀬さんはちゃんと笑っている。

 そうなれるまで相沢くんは通い詰めて、無理矢理にでも引っ張り上げたんだろう。

 魔力だの根幹たる能力なんてなくても、大事な人のために頑張れる。本当は、強さってそういうものを指すのかもしれない。

 相沢くんの部屋に案内され、僕はおみやげのお菓子を広げる。

 

「はれ? ケーキじゃないん?」

「うん、今日のお菓子は抹茶マドレーヌさ。和の食材を使った洋菓子を邪道・B級グルメと捉えるきらいは一部にあるそうだ。僕は大好きだけどね。その中で、この抹茶マドレーヌはちょっと毛色が違う。宇治の抹茶を練り込んだ生地に、北海道産の小豆をちりばめた逸品。特筆すべきは厳選された素材以上に、その焼き方。少し硬めに焼き上げていると見せかけて柔らかく、中はしっとり。かりっ、なめらかぁーに喉に堕ちる優しい苦みと甘さ……和と洋、折り重なる二つの要素が生み出す美味。調和せし愛の(つむぎ)、と言ったところかな」

「ブタくんめっちゃ語るやん」

 

 あと内緒だけど、白いクリームと細長い形状のお菓子は避けた。

 深い意味はない。

 

「てか、なんで愛なんだ?」と相沢くんも眉をひそめている。

「マドレーヌの由来は諸説あるんだけど、日本だと貝に似た形状から合わせ貝をイメージして、夫婦和合の縁起物としても扱われるんだ。これは和洋の融合でもあるし、相沢くんと早瀬さんへのお土産にはぴったりかなぁと」

「き、キモブタぁ……! おま、お前ときどきぶっ飛んだことやりやがるな……!?」

 

 ぶっちゃけ「YOU! 結婚しちゃいなYO!」って言ってるのと同じ意味だからね。

 

「うわぁ、いつものツレとはノリ違うけどブタくんけっこうおもろいじゃん」

「ど、ども」

「おいしーし」

 

 早瀬さんの方はマドレーヌをぱくつきながら相沢くんの慌てようを楽しんでいる。

 

「というか僕、今日は何で呼ばれたの?」

「夏凛に頼まれたんだよっ! ったく」

 

 早瀬さんが?

 どういうことかと思えば、彼女は居住まいを直して僕に小さく頭を下げた。

 

「あー、さ。教団でのこと。みおちーから聞いたけど、あーしを助けるために一番カラダ張ってくれたのブタくんなんだって? 今さらっぽいけどお礼いっとこーと。……あんがとね」

「い、いやあ。僕は相沢くんに頼まれただけだし。というか、みおちー?」

「美桜だからみおちー」

 

 あれから交流が続いていたらしい。

 美桜さん、コミュぢから高いなぁ。

 

「てかさぁ、竜に頼まれて潜入捜査するとか凄すぎ! そういうの映画の話やん!」

「マジでな。つーか、俺もそこまでお前が無茶するとは思ってなかったよ。感謝はしてるぜ」

「あ、はは。その話は軽くスルーしてくださると嬉しいです」

 

 下手な掘り方すると僕のヤバい情報をぽろっと漏らしそうなので。

 

「その……早瀬さんは、平気?」

「どうなんだろ。さいてーなことしたとは思ってる。うにゃ、さいてーだって、気付けた、って感じ? あの施設にいた頃はさ。教祖サマ……きょ、教祖のやつの言う通りにしてたらって、本気で思ってたんよ」

 

 それが思考誘導の魔術だから。

 早瀬さんに罪はない。悪いのは、淫魔の力を悪用する外法術師だ。

 僕も同じ穴のムジナではあるんだろう。

 

「ま、マインドコントロールって、受けてる間は気付かないものだっていうしね。悪いのは、早瀬さんじゃないと、お、思う」

「そん通りだ。過ぎたことぐちぐち言ってんな」

 

 相沢くんが乱雑に吐き捨て、早瀬さんを抱き寄せる。

 大きな胸板に頭を押し付ける彼女。

 優しく頭を撫でる彼。

 流れる甘い雰囲気。

 それを見る僕。

 どう考えても場違い。これもうひっそり退室させていただいた方がよろしいんじゃないでしょうか。

 

「おい、どこ行くんだキモブタ」

「え? いや、ははは……」

 

 抜き足差しあ……の時点で見つかり止められました。

 

「今日呼んだのはな。俺からも改めて礼ってことで、晩飯奢ろうと思ってよ。最近、金困ってんだろ?」

「そ、そうなんだ。ありがとう、でもさ。僕、うちに預かってる子が……」

「親戚のガキ預かってんだっけか。そいつらの分も奢ってやるから心配すんな」

「あ、いや、本当に気にしないで」

「あん?」

 

 親しくしてもらっててるからそれほど怖くはないんですが、相沢くんは押しが強く。

 結局僕は断り切れませんでしたとさ。

 はい、マジメな話はここで終了でございます。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 相沢くんにしろ早瀬さんにしろ僕に感謝してご飯を奢ってくれるという。

 しかも個室の高級焼き肉店「紀命苑(きみょうえん)」でというのだから、すごく嬉しい。

 さらには、うちで預かってる子達の分までご馳走してくれるという大盤振る舞い。

 感謝しかないのだけれど。

 

「サナです。今晩は、お招きありがとうございます」

「ひー、です」

「ら、ら……ララ! ララなのじゃ!」

 

 ウチの子、全員淫魔です。

 しかも超が付く美ロリっ娘です。

 もう可愛らしい女の子たちを僕の家で預かってるっていうだけで犯罪臭がすっごい。

 らっちゃんは自分の名前の略称が思いつかず、結局配信で使ってる名前をそのまま流用したようだ。

 

「おう」

「ちゃーっす」

 

 相沢くんも早瀬さんも普通に挨拶しているけれど、どう思っているのか。

 まずサナちゃん。

 彼女は銀髪ロングで赤い瞳の正当派美少女。かわいい。白いワンピースも良く似合う、清楚系な雰囲気を醸し出している。

 この子はある意味、安心していられる。

 

 ひーちゃん。

 肩までかかる紫髪に、褐色肌のロリ巨乳。眠たそうな表情で独特のペースではあるけどこの子もかわいい。

 ただ、ね。服装が、ね。

 長いパーカーをどろっと着こなしているんだけど……裸なんだよね。

 裸パーカーなんですよ。

 い、いや、それでも完全に隠れている。これもワンピースと言っていい。

 椅子に座ると大変ではあるが掘りごたつ式のお座敷だから他の人の視線もないので問題ない。

 

 らっちゃん。

 釣り目がちな金髪ボブカット。顔立ちは強気っぽく見えるけど実際はよわよわなところが可愛い。

 ……のだけど。

 服が……服がチューブトップ+ホットパンツのきわどいメスガキスタイル……っ!

 全体的に大事なところさえ隠せば問題ないやろの精神を反映した露出である。

 どう見ても女子小学生にしか見えない子に、こんな格好をさせてるなんて思われたら僕が終わる!

 

「俺は、相沢竜太。キモブタ……あー、佐間、くんの。とと、友達、だ」

「あーしは早瀬夏凛ねー。みんなめっちゃ可愛いじゃん。ララちゃんも極めってるー」

 

 ありがとうギャル!

 ひーちゃんもらっちゃんも普通に受け入れてくれたよギャル!

 そうだよね、ギャル的にはこれくらいのファッション日常茶飯事だよねギャル!

 相沢くんだって派手な恰好は見慣れてるのか、最初はびっくりしたっぽいけど特に騒ぎはしなかったギャルよ!

 なんかギャルが語尾みたいになってきた。

 

「おー、褒められたのじゃ」

「よかったですね、らっちゃん」

「焼き肉焼き肉」

 

 はしゃぐ女の子達の意見を聞きつつお肉を注文。

 最初はタンから……とか焼き肉の作法とかあるけれど、僕はそこまで気にしないタイプだ。

 高級店なら注文の並びを見て網が汚れるようならお店側から交換の声掛けをしてくれる。

 結局好きなものを好きな順番で食べるのが一番なのだ。

 

「うぅん、おいしいです」

「そいつぁよかった。カルビ食うか?」

「わーい、いただきます。あ、私に焼かせてください」

「おう」

 

 個室内に肉の焼けるいい香りが充満している。

 僕と相沢くんとらっちゃんは白ごはんを注文したけど、他の子は飲み物とお肉で楽しんでいた。

 サナちゃんはお肉の美味しさもさることながら自分で焼くのが楽しいらしく、わくわく顔で肉が焼けるのを待っている。それを微笑ましそうに見る相沢くんという中々珍しい光景である。

 

「美味しく焼けました……」

「はいはーい、こっちももう焼けてるよ」

「かりんさん、ありがとうなのじゃ」

 

 早瀬さんは意外と面倒見がよく、自分のを食べつつ、二人にもお肉を勧めてくれていた。

 うちの淫魔っ子たちも高級焼き肉の味に舌鼓を打ち、どうなるかと思った夕食は想像していたよりも和やかだった。

 でも肉をおかずにがつがつと白米を食べていると、早瀬さんがひーちゃん達に何気なく話しかける。

 

「へー、ブタくんと仲いいんだねぇ?」

「当然。ひーは、おにーさんの魂約者」

「妾も魂約者なのじゃっ!」

 

 ひーちゃんとらっちゃんも何気なく返す。

 が、前に少し説明した相沢くんはともかく、早瀬さんの目には若干の疑惑が宿ってしまった。

 

「え、マジで……?」

 

 あの目は絶対僕がこの子たちに夜な夜なエロいことをしているって風に認識しちゃってる。

 だけど僕の窮地を助けてくれる天使がいた。

 サナちゃんだし淫魔だった。

 

「こらー、らっちゃんもひーちゃんも。あんまりナオトくんをからかっちゃ、だめですよー」

 

 やんわり窘め、箸をおいたサナちゃんは穏やかに微笑みつつ説明を始める。

 

「えーと、私たちは。ナオトくんの、お祖父さんの、親戚の子供です。いつもお世話をしてくれるナオトくんは、私たちにとって大好きなお兄ちゃんみたいな人なんです。だから私、お兄ちゃんと結婚するのー、以上の意味はありません。なので、私も魂約者です」

 

 最後に若干対抗心いれたね、サナちゃん?

 でも一定以上の納得は得られたのか、ほふぅと早瀬さんが安堵の息を吐いた。

 

「あ、ああ。そーゆーのね。もー、ブタくんびっくりさせんでよ」

「は、はは。ごめんね……」

「俺は少し話を聞いてたが、ずいぶん懐いてんだな。てか、お前ひとり暮らしだろ? なんで三人も預かってんだ? 小学校とかも、いろいろ手間があるだろうに」

 

 相沢くんの零した疑問に、答えたのはひーちゃんだった。

 

「みんな学校にはいってない」

「あん? じゃあ、」

「昼間は、私はゲームと配信やってる」

 

 だめだ、事実なんだけどひーちゃんが単なる引き籠りみたいになってる。

 そもそも僕、淫魔が通える学校とか知らない。ロリサキュバス小学校とかって世の中にあるのかな?

 

「おい、親は、どうした?」

「よく分からない。おにーさんのところに来るまで、友達はいても家族はいなかった」

「妾もなのじゃ。だから、キモブタさんのおうちは楽しい!」

 

 らっちゃんも乗っかっちゃた。

 僕が混乱している間に、何故が相沢くんは表情を歪めた。

 

「そういう……ことかよ……!」

 

 どういう……ことだよ……!?

 

「あ、あの、ね、相沢、くん?」

「言わねえでもいい。何となく察しはついた。お前の祖父さんが、預けた理由。この子ら、家族に冷遇されて捨てられたんだろ?」

 

 そう、だったのか。

 なんて奴らだ、サナちゃん達の家族め。

 

「親が投げ出して、学校にも行けず。だが佐間家もたいがいタチ悪ぃからな。祖父さんからしても、お前に預けるしかなかったってとこか」

「そうです(即答)。私たちは、家族に見捨てられてナオトくんのところに来ました」

 

 あ、サナちゃんも全力で乗っかりに行った。

 この機に僕の家に三人がいる理由、僕と仲がいい理由を構築しちゃうつもりだよ、この子。

 

「それぞれ問題を抱えたり、いじめのような目に遭ったりして。でも、家では引き籠ることさえ許されなくて。そんな時、お祖父さんがナオトくんの家に逃がしてくれたんです。今は、心を休める時期だって」

 

 さっきの棒読みが嘘みたいな演技派サナちゃん。

 早瀬さんがちょっと涙ぐんでいる。無関心な親は彼女もだし、つい最近まで自分も引きこもっていたから、共感する部分があるんだろう。

 

「だから、私たちナオトくんに救われてるんです。ね、ひーちゃん、らっちゃん」

「ん。おにーさんは、嫌われてた私をお膝に乗っけて、一緒にゲームしてくれる」

「妾も、なのじゃ。誰にも仲間に入れてもらえなかった。だけどキモブタさんは、ちゃんと話を聞いてくれて、ダメなことはダメって叱ってくれて。それがわたしには、本当に嬉しかった……」

 

 蟲魔だからね。

 五大淫魔最恐だからね。

 でも相沢くん達は完璧に違う意味に変換しているよ。孤独な小学生への同情で、奥歯を強く噛んでいる。

 

「私も、もちろん。魂約者は、そういう気持ちの表れで……そうやって甘えているせいで、ナオトくんがロリコン、みたいに言われているの、知ってるんです。でも、やっぱり……」

「……はっ、ガキが、変な気遣いしてんじゃねえよ」

 

 サナちゃんの寂しそうな声をかき消すように、相沢くんは僕の背中を力強く叩く。

 

「なにも考えず甘えてりゃいいんだよ。細かいこと気にするような奴なら、ここまでデブっちゃいねえさ」

「うん……うん……! 三人とも、辛かったんだねぇ……! もー、ブタくんいい奴じゃん!」

 

 なんか早瀬さんも感涙してる。

 どうしよう。彼女の中で僕が寂しい女の子達を助ける優しいお兄ちゃんになってしまった。

 実際そんなもんじゃねえべさ。

 

「とりあえず食え。肉もっと追加するか? ああ、デザートも。遠慮なんかすんな」

「アイス食べたい」

「おお! 全種類食え!」

 

 さらっとおねだりしちゃうのが実にひーちゃん。

 これは、誤解を解いたと言うべきか。それとも誤解が深くなったのだろうか。

 分からないけれど、とりあえず僕はカルビを五人前追加することにした。

 

「おい。お前は、やる奴だよ」

「あ、あは、は……どうも」

 

 相沢くんがニッと笑う。

 色々勘違いはあるけれど、訂正する方がヤバいので何も言えなかった。

 ともあれ、イイ感じな言い訳ができたのは喜ぶべき点だろう。

 

「サナちゃん、ありがとね」

「いえいえ。特別なことを言ったわけでもないですしね」

 

 小声でサナちゃんにお礼を言うと、柔らかな笑みが返ってきた。

 嘘を吐かせてしまったのに軽い調子でなかったことにしてくれる。

 本当に、うちの子達はいい子です。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 翌日。

 この前のビリヤードから、美桜さんの距離感は更に近付いたように思う。

 

「んー、あと少しで夏休み! 海、楽しみだなー。直人、宿の手配はまかせちゃったけどよかったの?」

「うん、ご希望に近いところを予約できたと思うよ」

「やった、おっきいお風呂の和風旅館!」

 

 美桜さんの発言にクラスメイトが若干ざわつく。

 やっかむ男子がぼそりと「ロリコンのくせに……」とか呟いていた。

 僕は別に気にしてなかったんだけど。

 

「おう、おもしれえこと言ってんじゃねえか。あの子らを馬鹿にすんなら、俺が相手になんぜ、クソがよぉ」

「ひ、ひぃ!?」

 

 相沢くんがその男子の胸倉をめっちゃ掴んでました。

 僕への暴言だけでなく、不登校で大人を信じられなくなったサナちゃん達の精一杯の甘えを穢されたという気持ちが彼の怒りをものすごく増幅させている。

 ありがたいけれど、今はひとまず相沢くんを落ち着かせるために頑張ろうと思います。

 

 

 

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