ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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蠢くもの

 

 青白い月の光に染まる町並み。

 僕は黒外套に仮面の、謎の外法術師スタイルで、気味が悪いほど静まり返る夜を泳ぐ。

 目の前にあるのは日付が変わってもまだ灯りの消えていないスポーツジム。

 しかしそれを気にする者はいない。隠蔽の魔術と人払いの結界が張られており、視界に入っても誰も気にしないのだ。

 逆に言えば、ここには得体の知れない何かが存在している証明でもある。

 僕は……面倒くさいからファットチャージで玄関から突入した。

 建物内に侵入し、トレーニングエリアに足を踏み入れると、そこは汗の匂いと淫らな臭気で満ち満ちていた。

 

「あぁ……ひぃ。やめ、てぇ……」

 

 深夜だというのに、ジムには複数人の女性がいる。

 まともなトレーニングはしていない。いや、させてもらえていない、だろうか。 

 妙に甘ったるい匂いの充満したルーム内。熱に浮かされたような瞳。ここがマトモでないのは容易に想像ができた。

 その中心には、マッチョな外法術師の姿が。

 

「美しい……自らを鍛えようとする女は、こうも美しい」

 

 恍惚と言った表情で淫らな景色を眺める術師は、三十代前半くらいだろうか。

 かなり鍛えているのは見た目からも分かるが、トレーニングパンツ一丁だ。あんまり近寄りたくないなぁ、と思いつつも僕は彼の前に立った。

 

「ふぅんっ! きさま、何者だ!」

「同じ穴のムジナ、だよ。お前も、淫魔の力を得たんだろう?」

「なんと、俺以外にも、いるというのか……!?」

 

 魂霊契約、サーナーティオ・ドゥルケ・スアーウィス。

 驚いている隙に、僕はファットチャージをぶちかます。

 魔力をまとう全身砲弾は、らっちゃんと契約し魔力の確保が容易になったことでさらに強力になった。

 だって、僕にエロい夢を見せるだけでらっちゃんの魔力になるんだから。

 

「ぬごぉほっ!?」

 

 マッチョ術師は正面から受け止めようとするも、勢いに負けて吹き飛ばされる。

 しかし、相手はこのスポーツジムでエロいことをして魔力を相当溜め込んだらしい。すぐに体勢を立て直し、自身の筋力と魔力を複合した剛腕を振るう。

 だけど、基本スペックで負けても、僕にはサナちゃんの加護がある。

 

「ピッグスラップ」

「ごぼっ、ぐおうぉ!?」

 

 逃げずに正面から振動張り手、その一撃でマッチョ術師は沈んだ。

 乗り込む前はちょっとビビッていたけど、けっこう楽に片が付いて安心した。

 正義の味方を気取るつもりはない。ぶっちゃけると放置している淫魔もいるし。 

 ただ、地元でこんなスポーツジムを運営しないでほしい。調子に乗ったマッチョ術師は女子高生ともヤリたいと思ったのか、レディースデイと学生限定入会金無料キャンペーンとダイエットヨガを同時に実施し、女子高生なら超お得に痩せられるコースを作りおった。

 

 ……しかもね、早瀬さんがっ! 「竜を、惚れ直させちゃる!」とか言って! このジムに入会しようとしたんだよっ!

 なんなのあのギャルっ娘。本人全然悪くないけど自分からエロい罠に飛び込もうとしてるんですよ。

 それが一番の理由ではあるが、うちの学校の女子が手籠めにされるのも寝覚めが悪い。

 そういった経緯であんまり目立ちたくないけど叩き潰しに来たのだ。

 

「ナオトくん、苦労性ですね」

「しゃーないです。友達のためなら僕だって体張るよ」

 

 手乗りサナちゃんのくすくす笑いに、小さく溜息を吐く。

 目的を達した僕たちはジムを後にして、夜の街に消えていった……。

 

 

 

 

 という、流れになるはずが。

 すぐ近くで、ぐぉぅっ、と空気を抉るような音が聞こえた。

 

「っ!」

 

 バットだ。フルスイングで僕の頭が狙われたのだ。

 ぎりぎりで、躱せた。でも背筋が冷えた。

 僕はファットチャージの応用で、魔力を爆発させて一気に退避する。

 

「ちぃ、意外と動けるじゃねえか」

 

 木製のバットで殴りかかってきたその人を、僕はひーちゃんからの情報で知っている。

 淫蟲巨人と戦った、四季家・秋英寺からの援軍だ。

 

「だが体術はお粗末。オレにゃ、勝てねえよ」

 

 秋英寺楓。

 バットを片手に勝ち誇るような笑みを見せつけるのは、茶色の髪を乱雑に背中くらいまで伸ばした、態度と胸の大きいオレっ娘退魔巫女だった。

 流儀が違うからなのか、咲綾ちゃん達姉妹が来ているようなレオタード調の巫女装束ではない。

 ちらちらふんどしが覗けちゃう、すっごい短い緋袴っぽいスカートのミニミニ巫女さんである。

 

「こ、黒衣の外法術師め……この町で好き勝手するのは、私が許さないっ」

 

 あと美桜さんです。ちょっと表情ぎこちないです。

 久々の退魔巫女装束な美桜さんです。

 正直ね、同級生で仲もいい美少女さんの露出過多レオタ姿って非常に背徳的です。

 好きか嫌いかで言ったら好きです。

 

「らぁっ!」

 

 煩悩に囚われそうになった僕に、再びバットが繰り出される。

 美桜さんみたくすごい術が使えるとかじゃない。バットに霊力をまとわせて戦う純粋な近接格闘タイプだ。

 

(今の魔力なら、できるはず)

 

 接近は不利。

 ならば、と僕はエロ教祖が使った魔力弾を模倣して放つ。

 けれど、バットで叩き落とすのではなく、素の防御力で防がれた。

 たぶん、霊力の扱いでは咲綾さんに軍配が上がる……でも、こっちの秋英寺の退魔巫女の方が強い。

 技術ではなく、そもそもの霊力量が咲綾さんより多い。だから攻撃力も防御力も速度も、全てが順当に高い。

 

 その上で攻撃の瞬間には緻密に一点集中した霊力をぶつけてくる。

 高水準の基本スペックだけでなく、自身を上回る相手にさえダメージを与えられるだろう一撃を持った、硬い前衛。

 タンクで防ぎアタッカーで決めるという戦術を一人で実行できるのが秋英寺楓という退魔巫女だ。

 うん、ヤバい。

 なので、さっさと逃げよう。

 

「魂霊契約、ラエティティア・ソムニウム」

 

 オレっ娘退魔巫女は、僕の頭蓋を叩き潰そうとバットをフルスイングする。

 しかし、その一撃がすり抜ける。

<夢幻世界>の本質は夢への侵入・改変など、夢にまつわるすべての掌握。だけど、夢の世界の現象の一部を現実に引っ張ってくることもできる。

 分かりやすく言うとイリュージョンとか、幻影系の能力だ。

 彼女が殴った僕は夢。そういう幻でしかない。

 

「なっ!?」

 

 驚愕しているうちに隠蔽で速攻離脱。

 戦っても損しかない相手に拘らないよ、ごめんね。

 唖然とする退魔巫女二人を置き去りに、今度こそ僕はその場を去った。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 とあるスポーツジムで起こった事件の顛末である。

 一人のトレーナーが、多くの女性会員を集め夜な夜な淫らなトレーニングを強要していた。

 最低な性犯罪者としてニュースでも報道されたが、実際には外法術師が起こしたものだった。

 

 奪魔デートラヘレ・カーリタース。

 

 トレーナーは修行を重ねて淫魔の術を身に付けたのではない。

 五大淫魔に数えられる化け物の使い魔として、簡易的な契約で限定的な力を与えられた術師。

 つまりスポーツジムでの淫行は、デートラヘレに魔力を献上するための儀式だろう。

 ことを重く見た退魔協会の会長、夏雅城幸太郎(こうたろう)は、春乃宮の当主を呼び出した。

 場所は自身が代表を務める会社、その社長室である。

 

幹司(みきつぐ)よ、急なことですまなかったな」

 

 親しかったわけではない。

 ただ二人とも、若い頃に封印術を得意とする術師の指導を受けた経験がある。その際、多少会話したことくらいはあった。

 

「いえ、幸太郎会長」

 

 春乃宮幹司。

 咲綾や美桜の父であり、かつては退魔師として多くの淫魔を討伐した凄腕である。

 対して、幸太郎は同い年の退魔師だったが、決して才能に恵まれてはいなかった。

 しかし夏雅城グループ総帥の弟であり、今では子会社の一つを任され、退魔協会の会長も務めている。

 また、春乃宮の蛍火《ほとひ》神社が都市開発計画に巻き込まれそうになった際、神社を残せるよう口添えをしてもらった。

 現役の頃とは違い、立場の面でも恩義から言っても、幹司にとっては逆らえない相手だった。

 

「五大淫魔が雨尾山市に集まっている件は報告を受けている。黒衣の外法術師とやらも」

「はい。赤き天上の宝珠などの呪具を集め、説話に準えた儀式を行おうとしているのでは、と推測しています」

「そうか。五大淫魔は厄介だが、人死には出ておらん。現状では、あまり多くの戦力は割けん。だが、できる限りのことはせねばな」

 

 幸太郎は、多少身内には甘いところはあるものの現場寄りの人だ。

 淫魔による被害を軽んじることはしない。

 

「本当は冬護院(とうごいん)に打診して、真白(ましろ)嬢に参戦してもらうつもりだった」

「現当主の、ご息女でしたか」

「うむ、美桜嬢に迫る才の持ち主だ。しかし冬護院は現在、強大な淫魔と事を構えており、戦力を動かせないと返答があった。どこも人手不足で嫌になるな」

 

 幸太郎が溜息を吐く。

 冬護院はホテル・観光業で有名な家だ。夏雅城と同じく協会にかなりの出資をしており、協会幹部にも冬護院の縁者は多い。

 つまり夏雅城に次ぐ家であり、事実上、夏・冬の二大派閥が形成されてしまっていた。

 動かせない、というのもどこまで本当なのかは分からない。

 

「代わりに中堅どころの退魔と、複数の調査班を送る。春乃宮の当主として、事態の収束に向け励んでくれ」

「はい、分かりました」

 

 淫魔を討伐し、人々を守る。

 立場は違えど、退魔としての矜持だけは共通していた。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 蛍火神社の本堂で、春乃宮の当主から会長の指示が伝えられた。

 その場には秋英寺楓(しゅうえいじ・かえで)や、蟲魔の際に協力してくれた椎名薫(しいな・かおる)の姿もある。

 

「じゃ、オレらはどうなるんすか、おじさん?」

 

 楓の質問に、咲綾たちの父は穏やかな調子で答える。

 

「うん、そうだな。まず、今この街には二つの勢力がある。大淫魔サーナーティオ・蟲魔ヒラルスを擁する黒衣の外法術師。そして人間を使い魔とする奪魔デートラヘレ。この両者が争っており、その中心にあるのが複数の宝珠であると考えられる」

 

 巫女たちは息を呑み、咲綾は視線を逸らす。

 そわそわと、どこか落ち着かない様子だ。

 

「で、でも、サーナーティオの一派は、今回のジムの件でも、女の人たちを助けてるよね? そこまで、危険はないんじゃない、かなぁ?」

 

 咲綾の言に、美桜も強く同意する。

 

「そうそう! どころか、うまくしたら私たちの味方になってくれるかも!」

「それは、どうでしょうか?」

 

 春乃宮姉妹の意見に異を唱えたのは、椎名薫だった。

 彼女はなにやら紙の資料を持ち込み、真剣な表情で語り始める。

 

「これは、佐間くんに紹介してもらった、郷土研究をしている教授から頂いた資料です。ここに記された土着神“いしひめさま”の伝承において、宝珠に似通った記述があります」

「ボフゥッ!?」

「み、美桜さん? どうかしましたか?」

「あ、なんでも、なんでもないっ。唾液が、変なところに入っただけ。気にしないで……あは、あはは」

 

 何故か宝珠の話題になった途端、美桜は噴出した。

 咲綾は、微かに肩を振るわせた。やはり、五大淫魔の実力を見ただけに、宝珠に関しては警戒していたのだろう。

 

 

 雨尾山市は、「いしひめさま」と呼ばれる土着の神が祀られていた。

 いしひめさまは石の神様。鉱石を捧げると、その者に繁栄を与えてくれるという説話が残っている。

 

 それと現状が酷似していると、椎名薫は指摘する。

 

「赤き天上の宝珠、輝ける翠玉、神秘の青水晶……これまで五大淫魔が口にした宝珠です」

 

(薫せんせ、赤き天上の宝珠ってそれただのいちごのタルト……!)

(ヒラルスは好きだからね、フルーツ系……)

 

「これらは、伝承と照らし合わせると、特別な呪具というより純粋な魔力の結晶だと推測できます」

 

(ぜ ん ぜ ん 違 う ! うっ、ふぅ、お腹が……)

(五大淫魔が口にした……。分かってる。“言った”の意味だって分かってるけど、“食べた”でも話が繋がるのが……)

(あ、これお姉ちゃんも必死になって耐えてる。私も我慢しろ。ここで笑ったら絶対ダメ……っ!)

 

 春乃宮姉妹は険しい表情だ。

 それだけ五大淫魔が難敵なのだということが伝わってくる。

 

「つまり黒衣の外法術師は、呪具の効果で五大淫魔を従えているのではなく、純粋に忠誠を誓わせている。その上で宝珠を捧げ、魔力を溜め込んでいるのでしょう」

 

(あの子達、直人くんが大好きだから……)

(う、ぷぷ。捧げてる……直人が日常的に捧げてるんだってば……!)

(大筋では間違ってないのが、また……。わ、私も笑いそうになってきた)

(なにこれ、報告会ってこんな苦行だったっけ? そろそろ私限界がくるんですけど)

 

「宗教団体【心光の癒し】も今回のスポーツジムも、奪魔デートラヘレの痕跡が見られた。今回の件で用意周到な黒衣が姿を現したのは、明確に奪魔と敵対しており、対処を急いだ結果でしょうね」

 

(腹筋が、つるっ! やめてっ……直人が、用意周到とかっ! あいつわりとノリだけで生きてるんだから!)

(ダ、ダメ、がまん。まだ直人くんから聞いてないけど、間違いなく“友達が困ってたし……”とかそういう理由です椎名先生……っ!)

 

 今度は、当主が重々しく協会からの情報を伝える。

 

「そして、今回……宝珠が見つかった」

「……………………え?」

「協会の調査で、名称は分からないが、紫の水晶のようなものがジムから発見されたんだ」

 

 退魔巫女たちはそれぞれ驚愕の表情をしている。

 その中でも大きく反応したのは、当然ながら春乃宮姉妹である。

 笑いも吹っ飛んだ。

 なぜなら、彼女たちはその宝珠が町の洋菓子店で売られているケーキの詩的な表現でしかないことを知っていた。 

 なのに、何故。

 

「紫の結晶が“単なる魔力の塊”だったら、椎名さんの推測はほぼ確定する。黒衣の目的は、神代の儀式を再現することだと」

 

 絶対違う。

 そのはずが、当主は確信を持った風に語っている。

 

「奪魔が紫の結晶を所有していたからには、狙いは同じなのかもしれん。そのため、同時進行で黒衣と奪魔を追う。春乃宮の行動方針としては、デートラヘレは別働隊に任せ、今後は黒衣及び宝珠の捜索となる。別働隊のリーダーは椎名薫が担当をしてくれる」

「協会よりさらに二名派遣され、春乃宮の三名・別働隊三名で動くことになりますね。そちらの戦力は減るので、より一層の注意をお願いします」

 

 薫は、真剣な表情で退魔巫女たちを見た。

 

「いしひめさまは、鉱石を捧げられることで土地に恵みをもたらした。では、大淫魔サーナーティオは、黒衣からの捧げものによりどのように変質するのか。現段階では分かりません。ですが、決して良いモノとはならないでしょう」

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

「ねえサーナーティオ? 直人くんから赤き天上の宝珠を捧げられたら、貴女はなにになるの?」

「笑顔になりますよ」

 

 咲綾さんの質問に、サナちゃんが明るく返す。

 なんぞこれ。

 夏休みに入ってすぐのことだ。

 美桜さんと咲綾さんが、サナちゃんに質問があるとウチに来た。

 で、退魔巫女側のあれこれを明かしたんだけど、肝心のサナちゃんはこてんと小首を傾げている。

 

「紫の結晶……何ですかそれ?」

「サーナーティオも、知らないの?」

「はい。特に聞き覚えは……あ、いえ、魔力を結晶化する能力を持つ淫魔はいないでもないですね。武器にしたり、クリスタルの中にお姫様を閉じ込める系のアレです」

「貴女は、できる?」

「堕淫魔術にも拘束・封印系はありますけど、あんまり綺麗じゃないですよ? どろどろぐちょぐちょな感じの肉檻ですから」

「そっか……」

 

 なんか、マジメに宝珠が発見されたとか。

 僕からしたらなんでやねん、なんですけど。え、あるの? 本当に宝珠あるの?

 嘘から出たマコトみたいになってる。妙な符号にびっくりする僕を余所に、「じゃあ、デートラヘレの?」と咲綾さんが質問を重ねる。

 けれどサナちゃんは腕を組んで困ったような顔をした。

 

「うーん、どうでしょう。そもそも五大淫魔は人間側で付けた称号ですからね。ひーちゃん以外とはそれほど交流もありませんでした。らっちゃんとも、ここに来るまでは仲良くなかったですし」

「ごめんね、サナちゃん。部屋の隅でのじゃってるから手加減して上げて?」

 

 仲良くなかったとはっきり言われて、「のじゃ……」と指で床をいじいじしてます。

 

「だから、根幹たる能力もある程度しか知らないんですよね」

「それでもいいから、教えてもらって良い?」

「はい。奪魔デートラヘレ・カーリタースの根幹たる能力は<心魂強奪《しんこんごうだつ》>。いわゆるエナジードレインです。他者の霊力を吸収し、自らの魔力にする。彼もまた能力の特性上、性行為に頼らず魔力を収集できるタイプ……なんですけど、遊び感覚で女性を犯したりもしますねー」

 

 そこに嫌悪感がないのは、淫魔特有の感覚なんだろう。

 最後に「もちろん、私の知らない切り札の一つや二つあるでしょうが」と付け加える。

 

「やっぱり、サナ達が例外なだけで、淫魔自体はさいてーなのしかいないってことね」

「妾たちも魔力をちゅっちゅしてるから、あんまり変わらんのじゃ。昨日も好きだった漫画の打ち切りに悲しんで道端で寝てるおじさんに、主人公とヒロインがベッドで結ばれる淫夢を見せて魔力をいただいたしのう」

「それで快楽のエナジーが調達できるのはおじさん側のバグじゃない?」

 

 美桜さんはたぶん、おじさんがいい歳して夢精した事実に気付いていません。

 ですが僕は指摘しない、空気が読めるタイプのデブです。

 

「サーナーティオ、色々情報をありがとう」

「いえいえ」

 

 咲綾さんはサナちゃんから、あらかた話を聞き終えたようだ。

 退魔巫女と淫魔なんだけど、もう全然仲良しである。

 

「咲綾さん達が色々知り過ぎてると、変な疑いかけられたりしない? 僕が外法術師スタイルで、デートラヘレの能力は……みたいな感じでばらそうか?」

「ありがとう、直人くん。じゃあ、黒衣が忠告してきた、みたいな言い訳をさせてもらっていい?」

「ぜんぜんおっけーです」

「……でも、不思議だな。なんでこんなに淫魔が集まるようになったんだろう?」

 

 悩む咲綾ちゃんに、サナちゃんは申し訳なさそうに小さくなった。

 

「……ごめんなさい。それは私の、私たちのせいかもしれません。彼は、ある意味ナオトくんに近しい存在ですから」

 

 どくりと、心臓が鳴った。

 僕と、五大淫魔が近しい存在……?

 なにを言っているのかがよく分からない。咲綾さんも美桜さんも微かな動揺を見せた。

 

「どういう、こと?」と僕はかすれた声で問う。

「あれが、ここに来る理由となりそうな事実を、私は知っています」

 

 重々しい空気。

 絞り出すように、苦々しくも彼女は告げる。

 

「デートラヘレはナオトくんと同じく……ちっちゃい女の子が大好きです」

「違うからね!?」

 

 なにを言ってるのかがよく分からない!?

 

「僕ロリコンじゃないから!? ちっちゃい女の子が好きなんじゃなくてサナちゃんとひーちゃんとらっちゃんが好きなだけ!」

 

 サナちゃんがすっごく満足そうな顔してる。

 普通に恥ずかしいんですが? 僕らのやりとりを、美桜さんが半目で見てるし。「直人さぁ、もうちょっと言葉選んだ方が良くない?」とか言われてしまいました。

 

「ありがとうございます。でも、私が言いたかったのは、デートラヘレはナオトくんを狙って……な可能性もあるんじゃないかな、と。なにせロリサキュバスハーレムの主ですから」

「ハーレム言わんでもろて? その割に僕、別に攻撃とかされてないんだよね」

「そこは……うーん」

 

 結局は答えが出ないまま。

 あとはもう、僕よりも事情を知っていそうな人に話を聞くしかないだろう。

 踏み込み過ぎると、お祖父ちゃんを見る目が変わりそうで怖かった。でも、もうそんなことを言っていられない。

 幸いにも昨日、お祖父ちゃんから「直人のところを訪ねる日程が決まった」と連絡が入ったのだ。

 

 

 

 

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