ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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タイミングとモブの話

 

 おめでとう、僕。

 ありがとう、炎上シュウさん。

 夏休み前に投稿できたコラボ動画のおかげで、キモブタ地元メシちゃんねるの登録者数が二十五万人を突破しました。

 男同士のふざけた掛け合いが好評だったっぽい。

 あと、サキュティちゃんねるからの誘導がかなり効いた。逆にサナちゃん達も登録者数を順調に伸ばしている。

 これは収益化も遠くないかもしれない。

 上機嫌になった僕とシュウさんは、おまけとしてコラボショート動画も公開した。

 

『なあ、キモブタさん。俺、豪華な昼飯が食いたい』

『それなら駅前のオムライス屋さんがおすすめ。そこの限定ランチが、トリュフオイルとトリュフ塩を使ったオムライス。ホワイトソースと削ったトリュフを散らして、お値段なんと税込み1680円。ちょっとお高いけど、もうお味は高貴なる騎士の一言だよ。早速行ってみようか」

『トリュフ!? まじか……現実に存在すんだな』

『シュウさん? 驚いてるところおかしくない?』

『いや、ファンタジーの食材なのかと……』

 ───それよりも、オムライスが私の好物と知っていながらシュウさんと食べに行こうとするキモブタさんはどうなのでしょう?

 

 こちらもかなりの再生数を稼げたが、シュウさんがワイルド系から天然ボケキャラに移行してる気がしないでもない。

 意外な一面が見れたと向こうのチャンネルでも人気は上がってるみたいだけどさ。

 ともかく、コラボ【チャーシュー企画】は大成功と言っていい。ただ乱発すると希少価値が下がるので、しばらくはお休みかな。

 僕は毎日の投稿ができていないため、登録者が多いわりに収益が伸び悩んでいた。

 しかし過去動画の閲覧が増えたことで、八月九月には期待が持てる。お祖父ちゃんへの返済も滞りなくできそうだ。

 

 楽しみと言えば、海も。

 夏と言えば海水浴、僕たちも一泊二日の旅行に出かけることになった。

 なので皆の分の水着も購入しよう。そう提案するとサナちゃんは首を横に振った。

 

「私たちは自前の魔力で用意できますよ? 三人分の宿泊費もありますし、出費は押さえてください」

「ん。おにーさんで魔力補給してるから大丈夫」

「妾もー。キモブタさんの好みのを作るのじゃ」

 

 淫魔っ子たちは水着はいらないとのこと。

 ありがたくはあるけど申し訳なくもある。もっと頑張って、サナちゃん達がお金の心配をしなくてもいいように稼ごう。でも拝金主義は嫌なので、ちゃんと自分で納得できるようにやっていきたい。

 決意を新たにしつつ、とりあえず自分の水着は買ってこなくちゃ。

 まあ男だし、デパートで安いの選べばいいや。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 ……と思ってたんだけど、僕はガッチガチに緊張をしています。

 デパートの水着売り場にいる僕は周りからは不審者に見えていることでしょう。

 実際、お客様な女の子がチラチラ僕の方を見てるし。

 

『ねえあれ……』

『変態? 通報した方がいい?』

『ヤバいよ、このデパートのフードコートめっちゃ美味しい可能性があるっ。ちょっと行ってみない?』

『なにあのデブ。覗こうとしてるんじゃ……』

『おそらくこの時期だと冷たいスイーツ系、新商品のブルーハワイフロート狙い。キモブタセレクション、SNSにあげとこうよ』

 

 あ、僕の視聴者さんが混じってる。

 なんか僕が来たから「フードコートの新メニューが超美味しいのでは?」みたいな話になってる。

 別に僕はデパートに来たら必ずご飯を食べるわけではありません。

 どうにも居心地が悪い。でも逃げる訳にもいかない。

 

「直人くん、買うの決めたよ」

 

 試着室から咲綾さんが出てきた。

 デパートに行こうというタイミングで、彼女から連絡があった。海旅行の準備をするから一緒に買い物でもどうですか、と。

 せっかくのお誘いだ、僕は一も二もなく了承した。

 で、旅行用の必需品をデパートで買ったのだが、話をするうちに咲綾さんも水着がないという事実が発覚。なら……と、お互い緊張しながら水着売り場に、という流れだ。

 

「ありがとう、付き合ってもらって」

「いっ、いえいえ。得難い経験をさせていただきました」

「あはは、私も。こういうの、じ、実は初めて。じゃあ、買って来るね」

 

 咲綾さん、これまでは夏雅城パイセンが優先で友達も作れなかったもんね。

 何度か着替えた後、気に入った水着があったらしく購入を決めたようだ。定番の「この水着、どう?」みたいなやりとりはなかった。僕らには難易度が高すぎました。

 少し話していると、水着売り場にやってきた相沢くんや早瀬さんと偶然出くわした。

 

「お? 珍しいとこで会うな、キモブタ」

「あれ、相沢くんに早瀬さんも。どうしたの?」

「へへーん、あーしら今度海行くから水着買いに来たん。鬼キワドイの。想像すんなよー、デブくーん?」

 

 相変わらずの仲睦まじさ。人目をはばからずイチャイチャで羨ましい限りだ。

 

「そっちは?」

「あーと、僕も、海に行く予定で、水着を買いに来たんだ」

「旅行か? サナ達と」

「うん」

「……そうか。楽しませてやれや」

「だよねー、この先も何度も思い返せる夏にしてあげてよね?」

 

 重さがありつつ優しい笑顔を浮かべておられます相沢くんです。

 相変わらず彼の中では「親に捨てられていく当てのない子供達」ということになっているらしい。

 ギャルギャルしい早瀬さんも気遣ってくれてるし、騙してる感が半端ないです。

 でもサナちゃん達の安全のためにも話を合わせ、色々雑談してるところで、会計を済ませた咲綾さんが戻ってきた。

 

「お待たせ……あれ、相沢くんに、早瀬さん?」

「あら、咲綾さんじゃん。どしたの?」

「私は、直人くんと水着を買いに」

 

早瀬さんはその発言に目を輝かせる。

そう言えばこの二人、エロ教団の時に顔を合わせているんだっけ。

 

「え、なになに。もしやブタくんとそういう関係な?」

「あ、はは。実は、幼馴染みで、最近また仲良くなって。今度、いっしょに海に」

「じゃあ海でキメちゃう感じかぁ」

「きっ、キメちゃう!?」

「だぁかぁらぁ、夜の海、満天の星、見つめ合う二人、全裸で見つめ合い、そのまま肌を重ねて……ひと夏の思い出ってやつですぜお嬢ちゃんげへへ」

 

 ないから。

 僕と咲綾さんでそんなイベント起こらないからから。

 うまく話に入れない僕に、相沢くんが声をかける。 

 

「マジメな話よ、お前春乃宮姉妹に挟まれてっけど、どっちかと付き合ってんのか?」

「え、あ、二人とも大事な友達、だよ?」

「ほぉ? ま、それならそれでいいがよ。……俺ぁ、不釣り合いだとは思わねえぞ」

 

 僕と春乃宮姉妹は、並んでいると基本美女と野豚獣扱い。

 なんであんな奴が、とヒソヒソされることもしばしば。

 でも、相沢くんはそう思わないと吐き捨てる。

 

「キモブタはブサイクだが、やるヤツだ。そういうお前に入れ込むなら、外面じゃなく中身を見ようとする真っ当な女だろうよ。だが真っ当な女なら、中身も顔も整った男がいつ近寄ってくるか分かったもんじゃねえ。その時になってへこむなって話だ。慰めんのも面倒だしよ」

 

 あ、へこんだら放置っていう選択肢はないんだね。

 相沢くん、本当に面倒見がいいお人だ。

 

「うん、ありがと」

「おう。俺は味が濃くて白飯がうまくなるもんなら何でも好物だ」

「また今度奢らせていただきます」

 

 ばんっ、と背中を叩かれた。

 たぶん応援なんだろうな。だいっぶ、痛いけど。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 俺の名前は、只野栄吉(ただの・えいきち)

 市内の高校に通う、運動でも勉強でも特別目立つことのない、彼女いない歴=年齢の男子高校生だ。

 普段は近藤正樹(こんどう・まさき)百地貫太郎(ももちかんたろう)というクラスの男子三人組で行動することが多い。

 全員帰宅部で、近藤はややイケメンだが、俺と百地の顔は中の下なのでまあモテない。

 夏休みに入っても相変わらず、恋人のいない男三人でつるんでいる。今日はゲーセンで昼飯をかけた勝負だ。

 

「くっそ、負けた」

「はっはぁ、まだまだだな近藤」

 

 対戦格ゲーで近藤を下した俺は、ぐっとガッツポーズを見せつける。

 この日のためにかなりやり込んだのだ。

 

「これで最下位は近藤な? うっしゃー、ゴチになりまーす」

「高いのは止めろよ?」

「近くの丼チェーンでいいじゃね?」

 

 二位の百地からの提案もあり、昼飯は親子丼だの天丼など、さまざまな種類の丼物を取り扱うチェーン店に決まった。

 三人で騒いでいたが、ゲーセンにもカップルで来る客はちらほらいる。

 ちょうど俺達の台の近くを、腕を組んだ男女が通り過ぎたため、俺は思わずため息を吐いてしまった。

 

「はぁ。しっかし、男三人って寂しいよなぁ。あぁ、カノジョ欲しい……」

 

 嘆く俺に近藤が「またかよ」と呆れたように息を吐く。

 

「そればっかだな、お前は」

「うっせーよ。春乃宮さんと夏を過ごしたかった……」

 

 俺が今一番気になっている女子は、春乃宮咲綾さんだ。

 長く艶やかな黒髪で、穏やかな性格をした、クラスどころか学年でも一位二位を争う美少女。だけど制服の上からでも分かるくらい大きな胸のふくらみ。彼女は痩せているのにグラビアアイドルなんて目じゃないレベルの巨乳で、水泳の授業がある度に男子の間でひそかな騒ぎになっている。

 モデルみたいなキツイ美人じゃなくて、控え目で優しそうな可愛らしさで、俺はそんな彼女に入学当初から目を奪われていた。

 

「そんなに言うなら、夏休み前に誘っておけばよかったのに。婚約解消されたんだから、ある意味チャンスだろ?」

 

 そう、彼女には夏雅城俊哉という婚約者がいた。

 親が複合企業の総帥で、本人も文武両道かつ顔もいい。俺様な性格だから男子受けは悪かったけど、女子にはかなり人気が高かった。

 でも、とある事件を起こして夏雅城先輩は引きこもり、春乃宮さんは今フリーだ。

 もっとも、これを好機と告白した男子も多いが、ものの見事に全員撃沈しているらしい。

 

「……なんか。みんなフラれてるらしいし、ちょっと様子を見てんの、俺は。夏休み明けの、落ち着いた時期がベストかなって」

「只野、お前なぁ……」

 

 呆れたような目を近藤が向けてくる。

 だが俺は、勇み足で失敗するなんて馬鹿な真似はしない。釣り人と同じ、ベストのタイミングを計っているのだ。

 

「つーか、なんで佐間とばっかりいつもいるんだよ……手作り弁当とかさぁ」

「学費、親から打ち切られたとか前に騒いでたしな。一人暮らしだし、幼馴染みなら見捨てられないんだろ」

 

 佐間を嫌っている奴はそこそこいるが、俺達はそこまでのアンチじゃない。

 俺個人としては羨ましい、納得いかねーくらいの気持ちはある。

 しかし近藤はけっこう佐間擁護派だ。

 

「お前さ、意外と佐間を庇うよな」

「単純にすごいとは思うぞ。俺は母さんに色々やってもらってるから、一人暮らしなんて出来そうもないし」

「そうかぁ? 俺は一人気ままとかイイなぁ、って思うけど。母ちゃん、うるせーもん」

 

 全部自分で好きにやれるとか気楽そう。

 

「まず幼馴染みだけで学校トップの美少女と一緒にいること自体ずりーよ」

「いやどう考えてもトップは椎名薫先生だろ」(迫真)

 

 しかし切ない恋煩いなんてどうでもいいとばかりに百地がのたまう。

 俺も近藤もまるで反応ができなかった。

 

「いやどう考えてもトップは椎名薫先生だろ」

「別に聞こえなかったわけじゃない」

 

 近藤が思わずツッコむ。

 非常勤講師の椎名薫先生は確かに整った顔立ちをした、若々しく綺麗な先生だ。

 若々しいっていうか、中学生か小学校高学年くらいにしか見えない。

 だがそんな椎名先生に、百地貫太郎はご執心である。俺は冷たい視線を送ってやった。

 

「変なことすんなよ、桃・痴漢太郎」

「だから発音!? まったく、大切にしたいモノを傷つけるなんて、ロリコンの道理に反するのだ……」

 

 意味の分からないことを語る百地に、マジメな顔で近藤がツッコむ。

 

「俺はまず教師をロリ扱いすること自体が傷付けてるに含まれてると思うんだが、そこんとこは道理に反しないのか?」

「ガチトーンで言うなよそういうこと……」

 

 近藤の発言にわりと納得したらしく、がっくりと肩を落とした。

 どんだけ語っても女っ気がないことには変わらない。微妙に気落ちしたまま、俺達は駅前を歩く。

 

「まあでも、春乃宮さんがフリーなのは事実。二学期は文化祭もあるし、徐々に距離を詰めてだな。ってことで、昼飯は天丼大盛りな」

「かつ丼特盛で」

「分かったよ、くっそ。手痛い出費だ……」

 

 顔をしかめる近藤を見て、俺達は大笑いする。

 佐間と比べれば、明らかに俺の方が顔はいい。俺にだって十分チャンスがあるということだ。

 自らを奮い立たせ、俺達はゲームセンターを出た。その瞬間、俺は目を見開く、

ゲーセン前で出くわしたのは、今の今話題にしていた黒髪の美少女。春乃宮さんその人だった。

 

「は、春乃宮さんっ……と、佐間……」

 

 あと、佐間もいた。

 ちょうど二人が歩いているところに、ばったり出くわしたのだ。

 

「あれ、こ、近藤くんたち?」

 

 佐間の方も気付いたようだ。

 近藤が「よう」と軽く手を上げると、ぎこちなく笑って返した。

 

「変なところで会ったな」

「は、はは。ちょっと、デパートの買い物帰り。近藤くんたちは、ゲーセン?」

「ああ。佐間はゲームとかするんだっけ? 実況とかはやってないみたいだけど」

「あ、動画見てくれてるんだね、ありがと。最近はサンドボックス系を、けっこうやってるよ」

「へえ」

 

 近藤はこういう時、物怖じしない。

 続いて、意外にも百地が前に出た。

 

「サンドボックスならサキュティちゃんねるのヒナちゃんだな。うんうん、あの子は素晴らしい。下手だけど、リアクションが可愛くて即日チャンネル登録したよ」

「あ、ありがとう、百地くん」

「あれって、佐間くんの親戚の子だよね。声で分かる。俺、機械を通してもロリっ子の声は耳で照合できるんだ」

「えぇ……」

 

 佐間がドン引きするって相当だと思う。

 偶然とはいえ、せっかくここで会えたんだ。俺は思い切って、春乃宮さんと……まあ、佐間も。昼飯に誘おうと声をかける。

 

「あっ、あの!」

「それじゃあ、私たちはこれで。直人くん、行こうか」

「うん。じゃ、みんな」

 

 けれど躊躇っているうちに話は終わって、俺が何かを言うより早く、二人はその場を後にした。

呼び止めることもできず、それを見送るしかできなかった。

 近藤が、ぽんと俺の肩を叩く。

 

「何事もタイミングだぞ?」

「うっせーよ……」

 

 躊躇っているうちに消えたチャンス。

 俺は、夏の暑さの前に項垂れるしかなかった。

 

 

 




次の話が海です
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