ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話 作:自宅戦闘員
ちょっと臆病な猫耳ロリっ娘淫魔の印象が強すぎて忘れかけていた。
夢魔ラエティティア・ソムニウムの<夢幻世界>には、大淫魔サーナーティオの精神耐性さえ意味がない。
夢を介せば触魔の結界なんて簡単にすり抜けられるらしい。
「手乗りサナちゃんとのリンクが切れた時点でさなさながキモブタさんの危機に気付き、妾たちは独自に動いたのじゃ。でも学校は触魔の結界で覆われて、連絡も通じない。ならば、と妾は寝るタイミングを待っておった。それで……ちょっと待って」
らっちゃんはレオタと素肌の間からメモ紙を取り出す。
いや、なんてところに挟んでるんですか。
「えっと、触魔の
サナちゃんの言葉をそのまま読んだだけの説明っぽい。
しかし、改めて考えても厄介だ。
連絡遮断に脱出不可、触魔を退治する以外の解決策もナシときた。
「ちなみに、なわばりは知覚の助けもするから、退魔巫女や魂約者の存在は知られていると考えて間違いないのじゃ」
「淫魔はダメでも、退魔師とか退魔巫女なら入れたりする?」
「むぅ、試していないから何とも。エクソシストはいい餌だからフリーにしてる淫魔も多いしのう。一応、匿名のお手紙が春乃宮の神社に投げ込まれているとかなんとか」
淫魔っ子だから直接は頼れないもんね。
椎名先生の援軍、期待しています。
「あと、罠でもあるから、認識阻害ぷらす体感時間の狂いなんて効果もついておる。外からは何も起こってないように見えるし、今は夜の八時十分なのじゃ」
「……僕らの感覚では、もう深夜になってみんな眠ってるよ」
助けるには中に入らないといけない、でも認識阻害のせいでそもそも問題が起こっていることに気付けない。
その上、こちらの方がだいぶ時間が長く経ったと感じている。
もしかしたら退魔協会の援軍が派遣される頃には、とっくにおしまいって可能性もある。
だいたい、この街のメイン戦力って咲綾さん姉妹だし。結局僕らは脱出のために行動を起こさないといけないらしい。
「一応、脱出する手段なら、なくはない……かのぅ?」
「え、そうなの?」
「妾は今まさに、ひーの夢から入ってキモブタさんの夢に出ておる。<夢幻世界>の使い手ならば同じ要領で夢渡りができるのじゃ」
そういえば、らっちゃんは夢を媒介にした空間転移が使えるってサナちゃんがいってたっけ。
「なるほど! つまり僕が僕の夢に夢幻世界でカラダごと入り込んでひーちゃんの夢から出れば! ……起きている僕が、寝ている僕の夢に? どうやって?」
「……え、えと。そ、そう! 夢は深いところでは全ての人間が共有するモノ。魂霊契約のような繋がりがなくとも、ぐにゃぐにゃっと調整して通り道にすることも可能!」
らっちゃんは新たな提案しくれた。
ぐぐっと胸を張って自信満々だ。
「おお、すごそう! どうすればいいの?」
「うむ。まず夢渡りには条件があっての。<夢幻世界>の習熟と膨大な魔力、そして入り口と出口に前もってマーキングをしておく必要があるのじゃ」
「ごめんなさい、無理そうです……」
「のじゃ……」
術式的には前もっての準備が必要な奥義的なテレポートらしい。
一度僕が咲綾さんの夢に入って準備→次に美桜さんの夢に入って準備→咲綾さんと美桜さんの夢を通り道にして空間転移
みたいな感じかな。
この手間を魂霊契約している僕らの間では無視できるということなのだろう。
「こ、今後のために、練習は頑張ります」
「妾も協力するのじゃ。そうそう、妾はすぐにキモブタさんの傍に行けるけど普通に戦ったら触魔ブラキウムの方が強い。だから代わりにさなさなが援軍に行くって」
「え、サナちゃんも来れるの?」
「そこら辺はやりよー。あと、ひーから“なんで私の力使わないの?”ってツッコミが入っております」
「あ」
最後の最後に間抜けな反応をしてしまった。
それも楽しいとらっちゃんはくすりと笑う。
「それじゃあ、頑張ってね。露出レオタード仲間のみおーさんとさーやさんにもよろしくなのじゃ」
最後に、優しい言葉を残して、薄れ揺らめき消えていく。
そんな、夢を見た。
※ ※ ※
僕はそっと眠りから覚める。
クラスの皆は雑魚寝しており、只野くんと百地くんだけ寝ずの番をしている。
僕たちの番は、一番最後。だから夜の警戒というよりちょっと早起き程度なので負担は少ない。近藤くんが気を遣ってくれた形だ。
美桜さんと咲綾さんを起こして見張り交代をしよう。
……寝てる女の子を起こすってちょっと緊張するな、これ。
「んん、ベッドじゃないとカラダがカタくなるなぁ」
目を覚ました美桜さんは、あくびをした後ぐっと背中の筋肉を伸ばす。
咲綾さんは少し目を擦った程度。わりと寝起きがいいタイプみたいだ。
起き抜けで申し訳ないけど、今得た情報を伝えておく。
「らっちゃんの夢を見たよ。色々話した」
「え……と、それって」
夢魔の力だと察したのか、咲綾さんの目付きが変わった。
「ラエティティア、ちょっと凄すぎるよ……」
「あ、露出レオタード仲間の姉妹にもよろしくって」
「別に趣味で着ている訳じゃないからね?」
「分かってます、分かってますから」
さっきまでは鋭い雰囲気だったのに、むぅ、っとむくれてしまった。
らっちゃんも咲綾さんたちも危険水域な衣装だからね。
さて、ぼやけた頭も治ってきた。改めて僕たちは只野くんたちに声をかける。
「見張りお疲れ様。変わるよ」
「んあぁ。じゃ、頼んだわ」
只野くん、けっこう眠そう。
本当はまだ九時前なのに。体感時間の狂い、意識すると怖い。
「春乃宮さん、なにか合ったら起こしてくれていいからね」
決め顔で伝える只野くん。
咲綾さんはどう反応すればいいか分からなかったのか、困った顔をしていた。
それを見ていた百地くんが冷たい顔で告げる。
「そこで佐間や妹さんにも気遣いの言葉をかけられないから只野はモテないんじゃないかな」
「嘘だろ、ロリコンにそんな説教されることある……?」
「馬鹿にすんな。性癖は性癖、礼儀は礼儀。どっちも別口で大事だろ」
驚愕してるところごめんだけど、僕からすると只野くんより百地くんの方が大分常識人です。
先程の言葉の通り百地くんは僕たちに軽く声をかける。
「二人ともあとお願いね。佐間くん、サキュティちゃんねるの企画会議への参加要望、いつでも待ってます」
「あ、ありがとう。会議参加は勘弁してください」
再びごめん、やっぱり彼も微妙に常識人ではないわ。
※ ※ ※
しばらく経った後、姉妹に教室を任せて僕はひっそりと廊下に出た。
少し歩いた辺りで一度深呼吸、すると優しい声を聞いた。
「お疲れ様です、ナオトくん。ここからは私もお手伝いしますね」
隣には、久々のサキュバス衣装で小悪魔の羽をパタパタさせるサナちゃんが浮かんでいる。
「<夢幻世界>で自由に動けるのは使い手だけ。本来なら夢渡りも、らっちゃんかナオトくんしかできません。でも、魂霊契約による魂の繋がりを利用して送ってもらいました」
隠蔽の魔術を使っていただけで、実は教室の時点で彼女はいた。
らっちゃんと僕が魂で繋がっていて、僕とサナちゃんが魂で繋がっている。
なら、疑似的にだけど、らっちゃんとサナちゃんも繋がっている。
そしてひーちゃんと僕も繋がっているから、そこを経路として利用した。
僕を起点とした契約の繋がりを辿った、例外的な他者の強制夢渡りの敢行だ。
「魔力も微妙に回復しました。美桜さんや咲綾さんはいますが、自由に動ける私が役に立つ場面もあるでしょう。隠蔽で見つからずに行動できますから」
「ありがとう、来てくれて。戦力どうこうじゃなくて、サナちゃんがいてくれてすごく安心する」
「わーい」
こんな状況なのにぎゅーっとハグし合う僕たち。
「ここから脱出する。力を貸してもらっていい?」
「もちろんです」
サナちゃんは躊躇いなく頷いてくれた。
※ ※ ※
「じゃあ、ざっくりやることを決めようか。」
サナちゃんを交えて、廊下で軽い作戦会議。
「僕は淫蟲による索敵。咲綾さんは、まず刀とかを取ってこないといけないよね?」
「うん。空き教室に向かうつもりだよ」
「なら、護衛は私が。サキュティちゃんねるのおかげで細々魔力は溜まっているので、普通の戦闘くらいなら問題ありません」
咲綾さんはサナちゃんと行動を共にしてくれる。「お願いね」「はい、頑張りましょう」と和やかに頷き合っている。
「となると、私が教室の守り?」
「うん。いろいろできる美桜さんに残ってほしい」
「おっけ」
「じゃあ、行こう」
合図と共に僕たちは動き出す。
一人になった僕は教室からは見えない位置まで移動して、意識を集中する。
「魂霊契約ヒラルス・ラールア。<淫蟲創造>」
ひーちゃんとの繋がりを強めるとともに魔力を借りて、複数の媚毒バチと視姦用の目玉羽虫を作り出す。
状況が完全にゾンビとかが出てくる屋敷が舞台のホラゲーだったから、自ら探索に行かないといけないと思い込んでいた。
でもそんなことする必要一切ないじゃないか。
斥候は淫蟲に任せて僕は待っていればおっけー。
「さあさ、目玉羽虫たち。校舎内をじっくり視姦してね」
媚毒バチはお腹にたっぷりの媚薬を溜め込み、それを針で注入する紫色の厳つい蜂だ。
だけど目玉羽虫は、眼球に羽が生えたような異形の蟲で、針とか牙はない。
代わりにこの子達は見ることに特化した能力を持っている。僕以外にも映像を見せられるのがすごく便利だ。
ただ、情報が使用者に伝わる仕様上、あんまり数を多くし過ぎると情報が処理し切れなくてパンクする。なので僕が同時に扱えるのは三匹程度。……そう考えると、ひーちゃんって頭がいいのかも。
「でも、変なところないなぁ」
触手の姿はどこにもない。
しばらく各階を探っていると、三階に続く階段でキラリと輝くなにかを見つけた。
あれは……紫色の、水晶?
※ ※ ※
直人たちが動き出した後しばらくして、少しずつ生徒達が起き始めた。
かなり長い時間経ったのに外はまだ夜のまま。スマホの時計を見るが、それぞれ別の時間を示している。
触魔のなわばりは、人間の感覚だけでなく機械さえも狂わせてしまうらしい。
「よくよく考えたら、他クラスの私だけ残ってる状況って変じゃない……?」
「私もいますよー」
「そうだったね、サナ」
美桜はこっそりと、ミニミニな手乗りサナちゃんの頭を指でぐりぐりする。
連絡役として残された分体だが、これが非常によくできている。同じ結界内に入ったことで、本体と記憶をフィードバックが可能になった。
「咲綾さんは刀と退魔巫女装束を手に入れましたね。制服を脱いだら、たゆんってしました」
「なにが悲しくてお姉ちゃんの着替えの様子を聞かなきゃならないの?」
使い方はともかく、能力としては非常に有用。
今現在サーナーティオが知った情報を、手乗りサナちゃんから聞くことができるのだから。この実況に関しては意味がないとしても。
その上カワイイ。一応退魔巫女にも式神を使う者はいるが、このかわいさは出せない。ぶっちゃけ自分用にも手乗りサナちゃん欲しい。
「なんだよこれ!」
「朝になれば助かるんじゃなかったの!?」
時間的には朝くらいなのに辺りは暗いまま。
周囲の生徒は異様な状況に恐怖し、教室内が騒然とする。
「落ち着けって!」
「ったくだ。うるせえよ」
近藤と相沢が一喝して治まったものの、空気は決して良くない。
解決のために姉も直人たちも動いているとため美桜は落ち着いている。が、逆にそれのせいで焦燥感を覚える者もいた。
「ちっ、無茶しやがって」
どかりと床に腰を下ろす。
起きたら直人と咲綾がいなくなっていたことで、相沢は目に見えて苛立っている。
今にも教室を飛び出そうとしていたが、美桜が「あの二人なら大丈夫だから、とりあえず戻ってくるまでは冷静に待ってて」となんとか押しとどめた。
「りゅーちゃん、いい人ですからねぇ。前にお高い焼き肉ご馳走になりました。
何故りゅーちゃん呼び?
どういう状況ならサキュバスがヤンキーにご飯奢ってもらうことになるの?
変なことに頭を悩ませていると、文化祭実行委員の近藤が声をかけてきた。
「大丈夫か、春乃宮さん。お姉さんや佐間のこと、心配だよな」
「あー、うん。まあ、ね? でもさ、二人ともちょっと調べたら戻ってくるって言ってたから」
どうやら親しい人たちを案じて憂欝になっていると思われたらしい。
とりあえず当たり障りのない言い方をする。
「大丈夫だって。あれで、直人もお姉ちゃんも結構頼りになるんだから」
「そっか。春乃宮さんは」
少し近藤が言い淀む。
不思議に思ったが、追及する前にもう一人の文化祭実行委員、登則恵子が口を挟んだ。
「近藤くん、ダメですよ。今彼女は、想い人と姉が二人で逢瀬に行って傷心中です。そんなところにつけ込んでカラダの関係に持ち込もうなんて……。シチュとしてはそれなりですが、状況を考えてください」
「俺がいつそんな話をした? あと外聞悪すぎるの止めてくれ」
「まず、直人は別に想い人じゃないしお姉ちゃんもそんな関係じゃない!?」
なにこのメガネっ娘。いきなりぶっこんできたけど。
ただ、指摘されて気付く。
そう言えばこのクラスの人たち、春乃宮姉妹が直人を取り合っていると誤解していたんだっけ。
気にし出すと、こちらを見る視線が「あー、お姉さんにキモブタくんとられちゃったんだ」みたいな同情に思えてきた。
「うう……早めに戻ってきてくんないかなぁ二人とも」
優秀な退魔巫女の筈が、美桜は微妙な心細さを感じてしまっていた。
※ ※ ※
「お待たせ、直人くん」
教室から少し離れた場所で待っていると、咲綾さんとサナちゃんが戻ってきた。
咲綾さんはガチ本気の巫女レオタードバージョン。手には、日本刀もある。
「お帰り。臨戦態勢だね」
「……クラスの人たちに見られるとちょっと困るけど、この衣装には霊力の守りがあるから」
やっぱり恥ずかしいのか少し頬は赤い。
なのであまり深堀はせずにすぐに話題を変える。
「こっちは、ちっちゃな紫の水晶の欠片みたいなのを見つけたんだ」
「水晶? 退魔協会でもそんな話が出ていたけど」
「ああと、ジムの一件だっけ?」
「うん、そう」
以前、外法術師のいるジムから紫の水晶が出てきたという話があった。
それと関わりがあるのだろうか。疑問に思いつつも階段に向かい、落ちていたそれを拾い上げる。
でも少しの間眺めていると、ぱきんと勝手に壊れてしまった。
その瞬間、水晶の正体が分かった。
「魔力だ……」
魔力の結晶体、みたいなものなのか。
壊れて後は気化するように魔力になって消える。
そこで咲綾さんがなにかに気付いたのか目を見開いた。
「あ……」
「どうしたの?」
「触魔ブラキウム・インヴィディアは、本能で女性を襲う純粋な淫魔。外国に住処がある、そういう淫魔が、わざわざ海を渡って日本に来て、学校を餌場に選ぶなんておかしいと思ってたの」
彼女は鞘から刀を抜き、構えたまま階段を一気に駆け降りる。
遅れて、僕も気配に気づいた。
二階に辿り着くとほぼ同時に、ぬちゃりずるりと、湿ったヘビの這いずる音が聞こえる。
「はぁっ!」
一閃。
繰り出す刃が、醜悪な触手を切断する。
だけどすぐに追加の触手がうようよウネウネと。
「もしも、紫の水晶が魔力の結晶なら。それは、知能の低い淫魔に対する撒き餌として機能する」
淫魔にとって魔力はご飯だから。
咲綾さんはそれらを睨みながら、絞り出すように言う。
「つまり触魔を、悪意を以ってこの学校に呼び込んだ“誰か”がいる……!」