ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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5章おまけ・サナちゃんの魔力回復計画

 

 学校から脱出した翌日、サナちゃんは真剣な顔で言った。

 

「魔力を回復しないといけません」

 

 肉塊相手に電撃をかなり使い、溜まった魔力をかなり減らしてしまった。

 なのでまた何かあった時すぐ動けるよう、早急に魔力を集めなければいけないのだという。

 

「うむ。妾もかなり減ったのじゃ」

「ひーはそんなに。淫蟲もいるから時間をかければ大丈夫……」

「妾は眠っている人を直接見ないといけないけど、気付かれずに行えるのじゃ」

「問題は、堕淫魔術を使うと隠蔽が切れてしまう私ですね……」

 

 サナちゃんはシュンとしてしまった。

 でもひーちゃんがフォローをする。

 

「さーちゃんのは、本当なら長所。一番人間にダメージを与えられる」

 

 例えば夢魔ラエティティアの<夢幻世界>は、夢に侵入するという特性上対象が一人に限定される。蟲魔ヒラルスの<淫蟲創造>は燃費が悪い。

 だが大淫魔サーナーティオの<堕淫魔術>は、複数を同時に相手できるし、容易く人間を再起不能にできる。パイセンみたく指一本で生かさず殺さずだって可能。

 大淫魔の名に相応しく、サキュバスとしては非常に優秀ではあるのだ。

 

「おにーさん経由でひーたちの魔力を渡せばいい」

「そうかもしれません。ですが、回りくどいやり方を常に、というのは良くないと思います」

「じゃあまた僕のオホ声乱舞やる?」

「それはもっとダメです。そもそも魂で繋がるナオトくんだと、半分は私みたいなものだから効率が良くないんですよね」

 

 ただ、サナちゃんは昔みたく無差別魔力収集をする気はない。

 変な話、「バレたら逃げればいーんですよ」の精神だったら、もっと話は簡単だった。

 堕淫魔術の微妙な使い勝手の悪さは「大暴れして事が明るみになった時、契約者である僕にも責任が発生する」という点を気にしたサナちゃんの優しさに他ならない。

 

「ということで、サナちゃん魔力回復計画をここに発動します!」

 

 白のワンピースを脱ぎ捨て、サキュバスフォームになったサナちゃんがビシッとポーズを決める。

 なにがすごいって、脱ぎ捨てた服を当たり前のように拾って「のじゃー」って畳むらっちゃんだよね。

 いい子です。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

「ということで美桜さん、咲綾さん。ナオトくんにイカされてくれたりしませんか?」

「なにこの子淫魔なの?」

「大淫魔です」

 

 初手は春乃宮姉妹。

 マンションに呼び出してこの提案は、わりと怒られても仕方ないと思います。

 

「直人……あんた、なに考えてんの?」

「直人くん……ちょ、ちょっと恥ずかしいというか」

「えっ、僕っ!?」

 

 怒られました、僕が。

 

「あっ、これは私の発案なんです」

「サナの?」

「はい。霊力に溢れた退魔巫女の絶頂は、純度の高い魔力を得られます。契約者であるナオトくんがそれを為せば……」

「ああ、サーナーティオ、あの時だいぶ魔力を使ったもんね」

 

 咲綾さんはサナちゃんのトンデモバトルを見てるから納得が早かった。

 だからと言って、そんな提案に頷くはずもない。

 

「で、でも、さすがにそういうのは、ちゃんと手順を踏まないと、ね?」

「あるぇ? お姉ちゃぁん、手順さえ踏めばおっけーに聞こえるけどぉ?」

「そ、そんなことは? うん、やっぱり駄目だよ、そういうのは」

「私も、いくら直人が友達だからって、ねぇ?」

 

 わちゃわちゃ姉妹、でも二人とも当然ながら反対。

 残念とか思ってません。本当です。

 でもサナちゃんは残念そうな顔だ。

 

「うーん、ナオトくんが恋人を作ってくれたら話は早いんですが。あ、チャンネル登録してる女の子に声をかけて、とかは」

「僕の企画を純粋に楽しんでくれるファンに立場を利用して手を出すなんて配信者の風上にも置けない。絶対有り得ないし今後も一切しないよそういう真似は」

「あの、未だかつてないほど強い否定なんですが。ご、ごめんなさい」

「あ、いや、サナちゃんを怒ったわけじゃないからね。ほら、たかいたかーい」

「わーい」

 

 ちょっと強く言い過ぎてしまったので体を抱えてたかいたかい、さらにグルグル回る。

 普通に飛べるはずのサナちゃんだけど楽しそうにしてくれるのでヨシ。

 

「私は何を見せられてんだろ…」

「妾っ、妾もそれしたいっ」

「ララまで……?」

 

 美桜さんがすごく呆れた目で見ていた。

 一頻りじゃれ合った後、サナちゃんが姉妹にぺこりとお辞儀をする。

 

「でも実際、必要だよね。本格的に学校にも調査の手が入るし」

「その時に魔力不足でサナちゃん達が捕まるのは、僕も想像したくないなぁ」

「私だってそうだよ」

 

 退魔巫女の中でもマジメな方の咲綾さんも、いつの間にか淫魔っ子たちにかなり肩入れしてくれている。

 

「今日は来てくださってありがとうございます。魔力収集は、また別の方法を考えますね」

「ううん、こちらこそ力になれなくてごめんね」

 

 咲綾さんも頭を下げる。

 僕はなんだか申し訳ない気持ちになってしまった。

 

「僕が情けないばっかりに……」

「いえいえー。魔力のために無理に恋人を作って、というのもアレですしね」

「………んん?」

 

 そのフレーズに何か引っかかるものでもあったようで、美桜さんが難しい顔をした。

 しばらく黙り込み、何か思いついたのか、ぽむりと柏手を打つ。

 

「ね、ねえ、例えばさ。黒衣が、特に問題ない人だけ狙うのは? 例えば、隣の市にネットでも有名なヤクザ事務所あるじゃん。時任組系列の。ああいう、悪いことをやってる奴らなら」

「いくらヤクザでも形としては、ナオトくんが一般人を襲うことになりますから」

「ああ、そっか。バレた時に直人が犯罪者になるのね」

 

 それじゃあ駄目だ、と腕を組んで考えなおす。

 次に出てきたのは、もっととんでもない案だった。

 

「直人にされるのは……あれだけどさ? サナは、そういう魔術使えるんでしょ? 手加減してくれるなら、ちょっとくらい魔力上げてもいいかなぁ、なんて」

「触ったりせず、びりびりっと快楽だけを与える魔術はありますが……」

「まあ、退魔巫女として耐える経験をするのも悪くないかも。これも修行ってことで。魔力ないと、困るでしょ?」

 

 にかっ、と笑う美桜さん。

 たぶん、申し訳なさそうなサナちゃんに同情したんだろうな。

 でも僕は全力で止めます。

 

「ダメだっ! 美桜さんっ! キミをそんな目に遭わせられないっ! 絶対ダメ!」

「ええっ!?」

「僕も受けたことあるけど、ほんとっ危険なの! 大淫魔サーナーティオまじ大淫魔だから!」

「し、心配してくれるのは嬉しいけどさぁ。そ、そこまで?」

「そこまで!」

 

 オホ声乱舞経験者として、次の犠牲者なんて出しちゃいけない。

 そんな決意を余所に、ひーちゃんがぽつりと呟く。

 

「おにーさんのオホ声連続絶頂より、ミオウの方が見る分にはイイと思ぅ。見苦しくない……」

「あれ、ひーちゃん? 僕の時、見苦しいと思ってた?」

 

 事実だろうけども。

 

「とにかく、この話はどうかナシでお願いしやす!」

「まあ、ナオトくんがダメというならやめておきましょう。ちょっと見てみたかった気もしますが」

 

 若干垣間見えるサキュバス感性。

 サナちゃんも思い直してくれて、美桜さんが犠牲になる事態は避けられた。

 もしも敢行していたらきっと色んな意味で大変なことになっていただろう。

 

「でも、それならどうするの?」

 

 こてん、と咲綾さんが小首を傾げる。

 僕は決め顔を作って切り出した。

 

「僕にも、考えが一応あるんだ。前にらっちゃんに頼まれていた企画、前倒しするよ」

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 初夏の頃から動画投稿サイトに登場したサキュティちゃんねるは、ある意味特殊なデジタルインフルエンサーだ。

 というのも、幼い少女の3Dアバターを使っており、中身も小学生くらいの女の子だと確定しているのだ。

 しかも事情通によれば「アバターよりも中身の方がかわいい配信者」とのこと。そのせいで変な荒れ方をするのではと心配されていたが、ファンたちの民度が高いおかげで写真も流出していない。

 それでもサキュティちゃんねるは中身が美少女でいい子だと分かっている、普段デジタル系を嗜まない層にとって“推しやすい”配信者。おかげで隙間産業的に登録者を獲得した。

 その結果、かなりのスピードで規定の再生時間数を獲得。収益化という運びに相成った。

 

『いつもサキュティちゃんねるを支えてくださる視聴者さん、おはようございますこんにちはこんばんはー。リーダーのララですのじゃー』

『隊長のヒナです……』

『チーフのサヨでーす』

 

『今回は妾達にとって嬉しい報告ー。なんと、収益化? が、通りましたのじゃ。これも視聴者さんがいっぱい応援してくれたから。とっても感謝していますっ』

『ありがと、皆……。なお手続きは全部さーちゃん任せでひーたちは何もしてない……』

『うむっ! ぶっちゃけ難しいことはサヨが考えてくれてる!』

 

 コメント:【おめでとう!】

 コメント:【隊長とリーダー頼りねえw】

 コメント:【ぶっちゃけこのチャンネルはサヨちゃんのマジメさで持ってるよね】

 

『(私もナオトくんに任せてたりするのは言っちゃダメなヤツですねこれ……)か、代わりにヒナちゃんとララちゃんがお家のお手伝いを代わってくれるので、私ばっかり負担してるわけじゃないですよー?』

 

『えと、サキュティちゃんねるがここまで成長できたのは、ひとえに初期から応援してくださった皆様のおかげです。今後も色々企画を考えて行くので、これからも末永くよろしくお願いいたします』

『お願いいたたたたしますのじゃー』

『ます……』

 

 コメント:【よっしゃあ! これで貢げる!】

 コメント:【おめでとー!】

 コメント:【大きくなって……】

 

『ということで、今回は記念にー、みんなで! サキュティメンバーで踊って歌ってにっこり笑顔なのじゃ!! なんと、衣装も新しいヤツ!』

『サキュティちゃんねるの公式テーマソング、ミュージックビデオが完成しました。どうぞ楽しんでくださいね』

『ふりふりひらひらアイドル衣装ー。本当は、おと、お友達の姉妹の趣味の服に似た衣装を提案したけど、デザインが攻撃的すぎるって却下されたのじゃ』

『残念でもないし当然……』

 

 コメント:【攻撃的衣装ってどんなだ】

 コメント:【趣味じゃないと思いますよたぶん】

 

「では、皆さん聞いてください! “Angels' share”!」

 

 

 ……画面が切り替わり、3Dアバターの新衣装がお披露目となる。

 コメントがさらに盛り上がる中、アップテンポな可愛らしい音楽が流れてきた。

 プロのような歌唱力ではないものの、三人の頑張りが伝わる歌は、ファンたちに好意的に受け入れられたのだった。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 もともとサキュティちゃんねる公式テーマソングは、魔力どうこう関係なく披露する手はずだった。今回はそれを前倒しした形である。

 もちろん外注です。

 曲もミュージックビデオも外注です。

 作詞は三人に好きな単語を言ってもらい、それを盛り込んでもらってやっぱり外注です。

 時間をかければ自作もできるだろうけど、僕には音楽センスはないし結局は出来るところに頼むのが安定する。

 さすがに歌は自宅録音というわけにはいかず、ちゃんとしたスタジオをレンタルすることになった。

 

『うわぁ……すごいですっ』

『た、高そうな機械がいっぱいなのじゃ……』

『らーちゃん、触っちゃダメ。爆発する』

『爆発するのっ!?』

『ナオトくんナオトくん、これ知ってます。ファーストなんちゃらで使うヤツですよねっ?』

 

 いえ、今回は別に一発撮りじゃありません。

 意外にも一番はしゃいでいたのはサナちゃんだった。歌ってみた動画に合わせて歌ったりしてるし音楽系が好きなのは知っていたけど、公式テーマソングに一番乗り気だったのもこの子だ。

 

『アイドル衣装の依頼? おっけーっすよ、俺得意っす』

 

 炎上シュウさんも新衣装製作を快諾してくれた。

 なんだかんだ結構な出費だけどこれは先行投資。収益化できたことだし、これから取り返せばいい。

 そのためにも一度つくった音楽はメチャクチャ擦っていく。

 ボーカルオフバージョンは動画のオープニングにも使おう。

 

「ああ、魔力が微量ながら回復していく感覚が分かります……」 

 

 皆に歌を聞いてもらって「かわいい!」「じょうず!」と反応を貰えて、サナちゃんはにこにこご満悦だ。

 らっちゃんも「むふーっ」てしてる。

 

「サナちゃんは歌が好きだからね。それを皆に評価されるのは、けっこうな快楽になると思ったんだ。今後は、歌ってみただけじゃなく、オリジナルソングも時折配信したいね」

「おぉ、ナオトくんプロデューサー……!」

 

 当初は乗り気じゃなかったサナちゃんもすっかり配信の魅力にハマったようだ。

 

「あとは、スポーツジムとか教団とかみたいな、奪魔の企みと出くわしたらそこで魔力収集。ひーちゃん・らっちゃんからも分けてもらって、しっかり積み立てていこう。魔力も貯金もコツコツと」

「あ、生活費に関してはようやく私たちもお力になれますね。収益化もしましたし、投げ銭も。テーマソング披露後の雑談配信で、さっそく視聴者さんから頂きましたよ」

 

 コメント:【三人ともカワイイ! 最高!】¥1000

 おお、初の投げ銭はアカウント“ヘカントンケイルの大地”さんから。

 ヘカトンケイルは百の手を持つ巨人のこと。

 百の手……大地……百……地……? うん、気のせいだな。

 こうしてサキュティちゃんねるの収益化と共に、少ないながらに魔力の定期収入を得られた。

 まあ、それも嬉しいんだけど一番は。

 

「ふーんふふーん」

 

 公式テーマソングを気に入って、鼻歌混じりでご機嫌なサナちゃんの笑顔が頻繁にみられるようになったことだろう。

 

 

 

 

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