ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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文化祭一日目

 

 

 

 

 文化祭の当日はまさに秋晴れといった、雲一つない透き通った空だった。

 せっかく頑張ったんだ、いい天気でよかった。これなら外部からの来場者もそこそこ来るだろう。

 開催期間は二日間。 

 初日は各クラスの出し物の他に体育館で軽音部の演奏とスピーチコンテストなんかをやる。昔はミスコンもあったらしいんだけど、最近の風潮に負けて行われなくなったとか。

 

 準備期間には色々と問題が起こったものの、近藤正樹くんと登則恵子さん、二人の実行委員を中心に僕たちのクラスの出し物は完成した。

 抹茶ラテや紅茶、コーヒーなどに簡単な和スイーツを添えてお出しする和カフェ。

 飲み物は業務スーパーで仕入れたけど、お菓子はキモブタ交渉により商店街の和菓子店のものをいくつか提供してもらえた。普通にお得なお店に仕上がっております。

 また女子のリーダーである折原さんの奮闘により、制服にも気合いが入っている。 

 女子は着物にフリルやエプロンを加えた和風ウェイトレス、男子は作務衣に似たショップコート。売り物でもおかしくないくらいのクオリティだ。

 

「おー、す、すごい。咲綾さん、似合ってるよ」

 

 咲綾さんはモミジの刺繍があしらわれた、オレンジの着物。それに白のヘッドドレスとフリルエプロンが合わさっている。普段の服がわりと落ち着いているので、明るめのコーディネートだとまた違った印象を受けた。

 

「その、すっごい可愛いです」

「あ、ありがとう。ちょっと照れるけど、嬉しいな」

 

 僕なりに精一杯勇気を出した。

 喜んでくれたなら僕も嬉しい。

 

「直人くんも、一緒に店員さんやれたらよかったのにね」

「僕は裏方で十分だよ。ブサイクがホールに居座ったらお客さん減るって」

「……真面目な話私たちがウェイトレスをするより、“キモブタくん”がウェイターやってるお店の方が、売りとしては強くないかな?」

「その二つの選択肢だったら僕は迷いなく咲綾さんを選びます」

 

 キモブタ知名度より絶対に咲綾さんの美少女度の方が高いです。

 

「身贔屓がすごいよ」 

「純然たる事実でございます。そだ、咲綾さん。今日は、サナちゃん達が来るんだ。いっしょに文化祭回らない?」

「ああ、椎名先生がいないものね。うん、いいのなら、私もご一緒させてもらおうかな」

 

 にっこり笑顔で答えてくれた。

 近藤くんが実行委員権限で、僕と咲綾さんのシフトが同じなるように組んでくれた。

 初日は午前中に少し入ったら後はフリー。僕たちは二日目の午後からがメインの作業だ。

 僕たちに気を遣ってくれてるのは事実だけど、スタートから咲綾さん効果で客引きしたいっていう若干の思惑が見え隠れしています。

 ともかく、今日はサナちゃん達も来るし、めいっぱい文化祭を楽しもうと思う。

 

「おー、佐間。浮気かぁ?」

「ちゃいます。そもそも本気の方が成立してないです」

「じゃあさっさと成立させとけよ、せっかくの文化祭だぞ」

 

 折原さんの彼氏くんからそんな言葉が飛んだ。

 あくまで冗談のテンションで、悪意はない感じです。

 どうも彼の中では僕と美桜さんは恋人一歩手前らしい。実際は、一定以上の好意を向けてくれるのは事実だけど、色恋に発展するような雰囲気ではない。

 カノジョの折原さんは、じーっと咲綾さんを見ている。 

折原さんは茶髪で派手なキレイ系。桃色のミニ着物が良く似合っている。ていうか咲綾さんのヤツよりだいぶ丈が短いよ太ももが眩しいよ。

 

「うーん、何度見ても私のセンスいいわぁ。春乃宮のスタイルも顔もいいかんね。過度なフリルは邪魔になるから、けっこー計算してんのよ」

「ちょっと恥ずかしいけど、かわいいデザインだね。それに、着心地もいいし」

「でっしょ? 男子どもは私を崇め奉れー」

 

 けたけた機嫌よさそうに笑う。

 僕も男子として心から感謝をしておりまする。

 

「本気でありがとうございます。あっ、と。折原さんも似合ってよね。すごいね、服。ぴったりだし、職人さんみたい」

「ま、ね。しょーらいはそう言う仕事目指してるもんで」

 

 容姿は褒められ慣れているのか、裁縫の腕前に対する評価の方が嬉しいらしい。

 トップカーストの女子と普通に話すなんて、ちょっと前まではあり得なかった光景だ。

 

「は、春乃宮さんめっちゃ似合ってる!すっげーかわいいよ!」

「あはは、ありがと」

 

 こっちはこっちで、只野くんが咲綾さんの着物姿にめちゃくちゃ興奮している。

 さらりと流してはいるけれど、お客様からも注目されるんだろうなぁと思うと少し心配だ。

 折原さんがけらけら笑いながら僕の肩を叩く

 

「店にいる時はキモブタくんがウチの女子のボディーガードだから。張り手一発かましたって」

「そりゃあいいや。吹き飛ばしてやれや」

 

 相沢くんまで乗っかるしまった。

 触手に対する立ち回りを見られたせいで僕に間違った認識が持たれている。

 なんか近藤くんもウンウン頷いてるし。

 ところで、気になることが一つ。 

 

「相沢くん……ガタイいいから作務衣似合うね。それになんというか、慣れてる感が」

「あー、俺ぁ普通にバイトでこの手の服は着るからな」

「バイト先って確か」

「チェーンの和食屋。まかないがうまいんだよ」

「ああ、大衆食堂スタイルのとこ」

 

 金髪強面で身長も高いし、和風衣装はかなり迫力があってかっこいい。

 ちょっとうらやましいなぁとか思ってしまう。

 

「しっかしよ。普通に文化祭を迎えられたのが、今一つ信じられねえわ」

「そこは言わないお約束ってやつだよ」

「世の中にゃ、俺らの理解が及ばねえもんがあるんだな」

 

 その言葉に咲綾さんが「そうだね。だから……」と話し出そうとしたけど、相沢くんの声に遮られた。

 

「だからよ、バイト代はたいて買ったんだ……世界UMA図鑑。イエティにチュパカブラ、ツチノコにアルターゴゾ・エルバッキー・ムニューダー。俺が思うにあの触手も、そういったUMA……未確認生物だ。地球って、奥深えな」

 

 すっごい決め顔だけど違います。UMAじゃないです

 さんざん確認されているINMAです。

 

「UMAマジやべえ。血ぃ吸うヤツとか普通にいんぞ。お前らも気をつけろ。キモブタもよ、あんときは助かったが、あんま無謀な真似すんな」

「あ、ありがと。はは……」

 

 あと咲綾さんがちょっといじけてます。

 たぶん退魔巫女として皆に注意を促そうとしたんだろうけど、完全にお株を奪われた形だ。

 しかもわりと納得しちゃってる生徒がちらほらと。

 

「だけど、大丈夫だ。この学校には、超すごいおっぱいの人がいるからな……」

「ひぅっ!?」

 

 めちゃくちゃ決め顔で折原さんのカレシがそんなことをのたまう。

 悲鳴は当然ながら咲綾さんのものです。

 冷静に考えたら男子生徒が教室でおっぱいって単語を口にするって普通にセクハラだと思う。

 実際、閉じ込められなかったクラスメイトは変な顔をしている。

 でも触手を経験した人たちは普通に「そうだね、超すごいおっぱいの人が助けてくれるよきっと」とか賛同しちゃってる。

 なんぞこれ。

 そんな感じで雑談もひと段落。そろそろ時間になり、登則さんが両手をぽん、と叩いて皆の注目を集めた。

 

「はい、それでは皆さん、今日までの準備ありがとうございました。本番も、よろしくお願いします」

 

 彼女も和風ウェイトレス。三つ編み+メガネな女の子だから、そこはかとなく大正ロマン調で素敵だ。

 実行委員さんは今回本当に頑張ってくれた。

作務衣風ショップコートの近藤くんが一歩前に出て、皆の前で号令をかける。

 

「さあ、開店だ!」

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 初日は最初だけ入ってあとはフリー。僕たちの仕事は二日目の午後が本番だ。

 なので気楽に……と思ったけれど、和カフェの客入りは開店時点からかなりよかった。

 内装も制服も凝ってるし、注目している人が多かったみたいだ。

 バイトでこの手の接客に慣れているのか、意外にも一番スムーズに動けているのが相沢くん。折原さんの彼氏くんもイケメンだし評判がいい。

 でもやっぱり注目を浴びてしまうのが、和風ウェイトレスな女子たちだろう。

 咲綾さんや折原さん目当ての男子もそこそこいた。

 近藤くんと相沢くんがさり気なくフォローをしてくれたおかげで、変なのに声をかけられずに働けている。

 でも中には、そういうお店よろしく、「店員は○○さんを指名で」なんて言ってくる厄介お客様もいる。

 

「店員はおにーさんを指名で」

 

 厄介なお客さまっていうかひーちゃんだった。

 いつの間にやら淫魔っ子三人が和カフェに来ていた。

 明らかに日本人ではない少女たちの来店にクラスメイトがざわついている。それぞれ趣は違うし幼いけれど、とびきり可愛らしいからね。 

 

「アイドル……?」

「銀髪とか金髪の美少女って実在してたのか」

「つーかあのパーカーの子、ズボンもスカートもはいてないんじゃ……」

 

 いけない、ひーちゃんの危険性が気付かれ始めている。

 今が秋でよかった。夏の頃のメスガキホットパンツらっちゃんだったら騒ぎのレベルがもう一段回上がっていた。

 

「店員はおにーさん指名で」

「妾もキモブタさんで!」

「皆で決めたルールがびっくりするくらいのスピードで破られてます。え、約束しましたよね? ナオトくんに迷惑かけないようにって約束しましたよね?」

 

 引率のおねえさん役サナちゃんです。

 だけどひーちゃんはキリッとした表情でのたまう。

 

「さーちゃん……おにーさんは、私たちのご指名を迷惑だなんて思わない。そういう人」

「ええ、そうですね。それは間違いないです。でも、その理論でぶっちぎるのはちょっと剛腕が過ぎません?」

「キモブタさーん、妾ねー、おかしと抹茶ラテ。おー、さーやさんなのじゃ。フリフリお着物かわいい!」

「二人とも自由ですか?」

 

 窘められてもなんのその、らっちゃんは飲み物を準備してる僕に直接声をかけ、咲綾さんにも手を振り振りしている。

 おかげで僕にも「え、なに、どういう関係?」みたいな視線が集まっている。

 咲綾さんは無邪気な子供の相手をするように、「仕方ないなぁ」みたいな優しい笑顔で接客へと向かった。

 

「いらっしゃい、サナちゃん。ひーちゃん、らっちゃんも」

「咲綾さん、こんにちわです。今日はせっかくの機会だからと文化祭を見にきました……いえ、当初の予定では騒ぎを起こさないこと前提だったんですけど」

「お祭りだからね、気分だって盛り上がるよ」

「そう言って下さると」

 

 なんだかんだ和やかな雰囲気だ。

 クラスメイトの困惑は続いていたけど、ひとまず今いるお客さんの注文・接客を完全に終わらせてから相沢くんも軽く挨拶をする。

 

「おう、サナらも来たのか」

「あ、りゅーちゃん。お邪魔してます」

「俺をそう呼ぶ時点でお前も相当自由だからな?」

 

 サナちゃんたちの中ではもう彼の呼び名はりゅーちゃんで固定されています。

 そんな呼び方でも怒らないので、周囲はちょっと驚いてる。

 

「で、こちらはご注文の佐間直人でございます、だ」

 

 なお僕も首根っこ掴まれて連れてこられました。

 で、本人は普通に仕事に戻った。らっちゃんが「りゅーちゃんさん、ありがとうなのじゃ」と背中に投げかければ、軽く手を挙げて返事にする。いいなぁ、ああいうのが絵になるって。

 

「ナオトくんは普通のエプロンなんですね」

「あはは、予算の問題で、直接接客しない人の分まではね」

 

 僕の容姿的なアレコレでなく、裏方組の分まで手間もお金も回らなかったという話だ。

 残念そうにしてる淫魔っ子たち。僕と美ロリっ娘のやりとりを、「やべえ、めっちゃかわいい」「ロリコン……」みたいにヒソヒソしているクラスメイト、をシメる相沢くん。

なかには「この声、どっかで聞いたことが……」みたいな人もいる。

 わりとカオス。

 それらを視界に入れないようにしながら、咲綾さんが会話を続ける。

 

「今日は、これからどうするの?」

「えーと、正直私たちは今日以外来れられないので、しっかり見て回ろうかと」

「おにーさんオススメ屋台巡り……」

「遊ぶやついっぱいするのじゃ!」

「既にこのぐだぐだなので、だいぶ信用度は薄れてますけど。ナオトくんや咲綾さんに迷惑にかけないようにしますね。ひーちゃんもらっちゃんも、今度は絶対ですよ。時間厳守です」

 

 いえっさー、と敬礼する淫魔っ子。

 その後、ひーちゃんは咲綾さんの袖口をくいくい引っ張る。

 

「サアヤとも遊ぶ。これ、1のC教室の輪投げ。勝負」

「うん、わかった。いっしょにやろうね」

 

 退魔巫女と五大淫魔の対決がここに実現。

 まだ仕事の途中なので戻ろうと思ったけど、それより早く近藤くんが小さく手で合図をする。

 

「春乃宮さん、佐間も。もういいぞ」

 

 まだ五分くらい時間が残ってるけど、上がるよう促してくれた。

 申し訳ないと思いつつも感謝を伝えると、いいよと軽い調子で笑ってくれた。

 そうして僕たちは、皆で文化祭を回ることになった。

 背後に突き刺さる好奇の視線には気付かないふりをした。

 

 

 

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