ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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繋ぎの話

 

 

 

 少し嫌なことがありつつも文化祭は無事に終わり、僕たちは普通の生活に戻った。

 美桜さんとはあの教室での一件から、更に距離が近付いたように思う。 

 それだけでも文化祭は大成功と言っていい。

 そんなある日、僕は椎名薫先生に呼び出された。と言っても職員室ではなく、いつもの空き教室。おそらく退魔巫女関連のお話だろう。

 

「今後、校内で会う機会が減るので、佐間くんにはお世話になりましたしご挨拶をと思いまして」

「えっ、辞めちゃうんですか?」

「いえ、違います。私は現在、美桜さん達とは別の部隊で動いています。この町には少し厄介なのが複数いるんです」

 

 奪魔デートラヘレ・カーリタースと、黒衣の外法術師たる僕のことです。

 厄介判定されるほど動いてないはずなのに。

 

「もともと非常勤講師です。授業コマ数が減り、放課後校内に残ることもなくなる、といった形になります」

「な、なるほどぉ。ちなみに、その厄介なのについて聞いても?」

「奪魔デートラヘレと、名前は分かりませんが黒い外套に仮面を被った術師。もしも佐間くんが遭遇したら一目散に逃げて、美桜さん達に頼ってください。封印術を多少使えると報告は受けていますが、多少で抵抗できるような相手ではありません」

「了解です」

 

 純粋に僕を心配してるのに隠し事をするのは正直心苦しい。

 それに、退魔協会も奪魔の存在を重く見ているようだ。いつまでもひっそり行動なんて言ってられないのかもしれない。

 

「それとは別件ですが、こちらの調査で文化祭の時に魔力を持った何者かが感知されました。触魔の一件といい、もしかしたら春乃宮姉妹を狙っている可能性もあります。二人には伝えてありますが、佐間くんも君子危うきに近寄らず、ですよ」

 

 めっ、と注意してくれました。

 椎名先生かわいい。……ダメだ、百地くんに影響を受けている気がする。

 そして魔力って、僕? いや、隠蔽は使っていた。

 じゃあ僕以外の誰かがいた?

 

「ところで、最近は美桜さんといい仲だと聞きましたよ。青春ですねぇ」

 

 なんて考えていたけれど、急なぶっこみに意識を引き上げられる。

 ほふぅ、とちょっと色っぽく息を吐く椎名先生。

 

「いや、教師が生徒の人間関係に興味から首を突っ込むのは良くないです」

「興味じゃありませんよ、同じ退魔巫女としての配慮です。彼女は才能がある反面、少し己の力を過信してしまうところがあります。うまく、ブレーキ役になってあげてくださいね」

「あの、僕たち、付き合ってるとかそういうのではなく」

「まぁまぁまぁまぁ」

 

 手をひらひらさせてはる。

 見た目小学生なのにおばちゃんみたい、というのは絶対言ってはいけないやつだろう。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

『緊急企画……なかよしクイズぅ………』

『えーと、今回の企画はわたくし、サヨの持ち込みとなります。このクイズは私、ヒナちゃん、ララちゃんに関する問題に皆さんがコメント機能を利用して答える、という形になります』

 

『例えば“サヨちゃんの好きな食べ物は?”という問題が出たら、コメントで答える。早押しならぬ早書き込み式で、一番に正解を書き込んだ人にポイントが入る、という形になるのじゃ』

『そのためコメントが多すぎるとうまくできないので、今回の動画はメンバー限定とさせていただきました』

『コメントチェックはアシスタント(おにーさん)が対応……』

『優勝者には言ってほしいセリフをリクエストする権利が与えられるのじゃー。あんまり変なのは却下するので、あしからず?』

 

『第一問……さーちゃんの今日の下着の色は……』

『一問目から凍結の危機ありそうなのダメですよ!?』

 

 

 文化祭の経験から、サナちゃんはクイズ形式の企画を打ち出した。

 あくまでメンバーシップ限定の内輪の遊びだけど、もともと承認欲求を高めて魔力を回復するのがメインなので、ファンだけの雑談配信は効率的にも悪くない。

 

「お疲れ様ー、ジュース用意してるよ」

「ありがとうございます、ナオトくん」

「わーい、なのじゃ!」

 

 らっちゃんもサナちゃんが元気よく駆け寄る。

 だけど、ひーちゃんだけは少しぼんやりしている。かと思えば急に「あ……」と呟き、目を見開いた。

 

「おにーさん。ア〇ルねぶり芋虫が潰れた」

「え?」

「サアヤじゃない退魔師。複数人」

 

 この子は遠く離れていても淫蟲の状況を知覚できる。

 魔力回収用に放っていたそれらを討伐した退魔協会の方々の存在を、無感情に報告してくれた。

 

「映像、出せる?」

「ん」

 

 目玉羽虫の能力を使って、プロジェクターのように壁に映像を映し出す。

 二十代前半から中盤くらいの男女。わりと真面目そうな人たちだ。

 ……いや、ていうか中心人物は椎名先生だ。久しぶりに見たけど、ちっちゃいボディにえっぐい巫女レオタです。

 

「そう言えば、椎名先生が別働隊で動くんだっけ」

 

 先生の話の後、美桜さんに確認した。

 現状この町の退魔巫女の動きは三つ。

 美桜さん・咲綾さん・秋英寺さんの三人チームは通常の淫魔討伐に加えて宝珠の探索。

 別働隊の椎名先生と追加人員二人で奪魔デートラヘレの対応。

 学校の魔力に関しては、美桜さん達が探ると言った感じだ。

 ア〇ルねぶり芋虫を潰したのが別働隊。

 この街で活動していれば淫蟲と遭遇することもあるかもだけど、そういえば討伐されたのは今回が初めてだ。

 

「今までより、動きが大きく? すごく? なってる」

「活発になってきた、のかな」

「それ」

 

 淫蟲が潰されてもひーちゃんにダメージが入るわけじゃないけど、退魔協会の動きは気になる。

 こちらも注意しないといけないかもしれない。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 なんて考えていた翌日、お祖父ちゃんがウチを訪ねてきた。

 けっこうな量のよもぎ大福をお土産に。

 

「おお、直人や。すまんな、急に。ほれ、ここの大福美味いぞ」

「ありがと、お祖父ちゃん」

「わーい。妾、あんこ系好きー、なのじゃ」

 

 横から飛び出てきたらっちゃんが諸手を挙げて大喜び。

 こっちでの生活に馴染んできて、食事の好みも明確になってきた。

 サナちゃんは洋食系、甘いものはクリームメインが好物。

 ひーちゃんは食事よりスイーツ全般。中でも果物を押し出したタイプが一番。

 らっちゃんは和食系、特にお刺身。お菓子も和菓子の方が好きっぽい。

 

「お茶ー、これには緑茶なのじゃ」

「ふふ、じゃあ淹れてきますね」

「さなさな、いつもありがとうですなのじゃ」

 

 深々と頭を下げて感謝を伝えるらっちゃんは良い子です。

 

「ほう、ラエティティアは甘いものが好きか」

「好きー。もちもち触感は淫魔をも魅了するからの」

 

 ロリっ娘が並んで大福をもちもち食べてらっしゃる。

 それをお祖父ちゃんは優しく眺めている。 

 

「やっぱり大福は粒あんなのじゃ」

「私も好き。いちご大福が至高」

「妾も好きだけど、あれって生粋の和菓子党からすると邪道なのでわ?」

「ですが、本格的な和菓子店でも夏みかん大福とか置いてますよ?」

「むぅ、ならいちご大福も伝統的な和菓子……? あれ、お祖父さんあんまり食べてないのじゃ。だいじょぶ?」

 

 わちゃわちゃ騒ぐ皆を見るお祖父ちゃんは「儂はいいからたくさん食べなさい」モード。

 でわでわ遠慮なくー、とばかりにらっちゃんは三つ目の大福を口にする。

 サナちゃんもゆったりとよもぎ大福とお茶のコンビネーションを楽しんでいた。

 

「んんー、美味しいです」

「そうも喜んでもらえるとこちらも嬉しいのう」

「お祖父さんには、正直に言えば思うところもあります。でも、直人くんのお祖父さんなら私にとっても身内のようなものですし、なにより大福に罪はありませんからね」

「う、うむ?」

 

 お祖父ちゃんが少し戸惑っている。

 契約を通り越して、僕とサナちゃんが家族って言ってるようなもんだからね。事実ではあるから問題ないけどさ。

 

「買ってきてくれてありがとうです。あ、お茶、おかわり要りますか?」

「うむ。もらおうか」

「では、淹れてきますね」

 

 サナちゃんとお祖父ちゃんには微妙に因縁があるけど、和やかに会話ができている。

 ひーちゃんに至ってはくいくい袖を引っ張って「今度はフルーツ生クリーム大福がいい」とか、ちゃっかりリクエストまでしてる。

 

「なんじゃ、最近はずいぶんハイカラなもんがあるんじゃの」

「スイーツは幅広い」

「分かった、なら次の土産はそいつにしよう」

 

 なぜか現代日本について語る淫魔っ子と感心する老封印術師の図。

 和やかなお茶の時間を経て、三人は「ごちそうさまでした」と笑顔で言う。お祖父ちゃんは遠い目で呟く。

 

「サーナーティオ達、いい子じゃの。……さんざん忠告した儂、絆されとらんか?」

「いい子なのは間違いないけど返答に困るよ……」

「どうしよう、孫娘もいいのぉとか思っとるよ、儂」

 

 お祖父ちゃんはサナちゃんが新しく淹れたお茶を一啜り。実戦経験豊かなのに、この子のお茶を純粋に楽しめる時点で完全に魅了されてる気がしないでもなかった。

 

「ところで、今日は何か用があったの?」

「いいや。春乃宮の小僧っ子に相談を持ち掛けられてな。その前に、直人の様子も見ておきたかっただけじゃ」

「気にかけてくれてありがとう。その人って、咲綾ちゃんのお父さんだよね」

「うむ。なんの話があるのかは知らんが」

 

 四季家って退魔協会の中でも実力派らしいのに、それを小僧呼ばわりってお祖父ちゃんほんとにすごい術師だったんだろうな。

 表情を硬くしたのはサナちゃんだ。

 

「ま、まさか、また私たちを封印しようと?」

「にゃ、にゃにい!? この美味しいお大福は妾達を油断させるための罠!?」

「違うわい。さすがの儂も老いた今、下手に五大淫魔を刺激する真似はせん。協会がお前さんらを感知すれば、直人の処断に直結するしの。それに……いや」

 

 言葉を濁したけど僕には分かった。

 もう、サナちゃん達と敵対するのは、実力以上に心情的に難しいんだよね。

 実は以前のお祖父ちゃんの指摘は正しかったんだと思う。

 いい子で、優しくて、可愛らしい。これって、中途半端な強さよりもよっぽど戦いにくい要素だ。

 

「大丈夫。おじーさんは私たちに手を出せない」

 

 ひーちゃんはすくりと立ち上がり、お祖父ちゃんにきっぱりと告げる。

 

「なにかしたら、おにーさんに嫌われる」

 

 それがこの子の切り札らしい。

 一瞬呆気にとられたが、遅れてお祖父ちゃんは笑い出した。

 

「なるほど、道理だ。そいつは困る。やはり手を出すのは難しそうじゃの」

 

 ひーちゃんは満足そうに頷いた。

 たぶん意識はしていないんだろうけど、今のって「私たちは佐間直人にとっても大切にされています」宣言だ。

 同時に、僕に嫌われるのがけっこうなダメージになると思っていないと出てこない発想なわけで。

 つまりですね、わりとひーちゃんが僕との関係性を特別視してるとお祖父ちゃんにアピールしたのと同じなんですよ。

 見た目の幼さも相まって、微笑ましさからお祖父ちゃんが笑ってしまうのも仕方ないことだった。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

「校舎の設備調査に来たお姉さん、美人だよなぁ」

 

 翌日の休み時間、教室で只野くんがそんな話をしていた。

 文化祭終了後、学校に出入りするようになった秋英寺さんはキレイなお姉さんかつスタイルもいいので、巨乳好きな彼の心の琴線に触れたらしい。

 というか、只野くんに限らず一定数のファンを獲得していたりする。

 

「俺には春乃宮さんがいるけど、お姉さんも良き……」

「迂闊な発言すると、佐間に張り手でブチ倒されるんじゃないか?」

「うげっ」

 

 近藤くんのツッコミが決まるけど、咲綾さんの意思を無視して詰め寄るような真似さえしなければ僕はそんなことしません。

 

「お、俺としてはぁ、椎名先生が……。でも最近、授業が終わるとすぐ帰っちゃうんだよなぁ。先生に顎で使われるのが最高なのに……」

「お前ロリコン以外にも重篤な性癖発現してない?」

 

 近藤くん、相も変わらずツッコミ役ご苦労様です。

 

「そもそも、椎名先生は大人の女性。故にオールオアナッシング」

「たぶんオールオッケーだと思うけど、全然オッケーでもない」

 

 頑張れ近藤くん、三人組の唯一の理性です。

 ちら、と僕と目が合うと、彼はやれやれとばかりに肩を竦めた。 

 と、そんな時、話題に上がった人物が教室に顔を出した。椎名先生ではなく、キレイなお姉さんの方だ。

 

「おーい、咲綾、佐間。昼休み空けといてくれ。メシいっしょに食おうぜ」

 

 はい、その発言で咲綾さんでなく僕に視線が集まるのは自然の流れです。

「またあいつかよ」「調子乗ってる」とド定番な陰口を叩いていそうな男子生徒がちらほら。

 でもクラス女子のリーダーたる折原さんが僕の擁護に回ってくれるから、内心はどうあれ、表立って罵倒するような人たちは減った。女子に嫌われたくないもんね。

 そうしてお昼休み。僕たちは空き教室に呼び出された。

 到着すると美桜さんが軽く指を動かす。人払いの結界を張ったのだ。

 

「お見事」

「まぁね」

 

 短く笑い合う。なんか、やっぱり前より仲良くなれたと思う。

 腰を落ち着けた僕たちはご飯を食べながらの話し合いをする。

 僕と咲綾さんはお弁当、秋英寺さんが総菜パンを幾つか。美桜さんもお弁当だ。

 そうしてお弁当を食べ始める。メインは鶏肉のトマト煮込みだ。

 

「今日もありがとうね、咲綾さん。すっごく美味しい」

「よかった。鶏肉の臭みが出ないように香草を使ってるの」

「柔らかいし最高です」

 

 箸が止まらないとはまさにこのこと。

 美桜さんもお弁当に箸をつける。冷えても味が落ちないよう工夫された鶏肉の美味しさにびっくりしたようだ。

 

「おいし。……私も、料理の勉強しようかなぁ」

 

 珍しく美桜さんがそんなことを呟く。

 ちょっと、怖かった。

 もともと咲綾さんは、美桜さんへのコンプレックスを払しょくしようと料理を頑張ってきた。

 その分野に美桜さんが入ってくるのは、嫌なんじゃないだろうか。

 

「やってみると案外楽しいよ」

「そっか。じゃ、お母さんにちょっと教えてもらおっかな」

「うん。……ありがとね」

「さすがにお姉ちゃんに負担をかけたりしないって。負けないよー?」

「私だって」

 

 心配したけど、案外普通に対応していた。

 大丈夫かなと思ってみていると目が合う。

 

「平気だよ。醤油が少し入ってるから」

 

 秋英寺さんはよく分からないと言った顔をしていたけど、僕には理解できる。

 今日のトマト煮、若干醤油が入っていた。ぶっちゃけ、普通のモノより僕好み。料理経験が長く僕の好みを知っている咲綾さんは、僕の舌に合わせた調整ができる。

 そういう勘というのは一朝一夕では身につかない、だから私も負けないと言っているのだ。

 こくりと頷くと彼女は笑ってくれた。

 でも、“ありがとう”ってどういうことだろう?

 

 

「ちなみに楓は料理するの?」

「オレはあれだ、トマトスープのカップ麺にオムライスおにぎり入れたりだ」

「それ料理じゃないでしょ」

 

 美桜さんの質問に、秋英寺さんが快活に答える。

 姉妹揃って微妙な顔をしていたけど、僕はおずおずと手を上げた。

 

「……あの、僕もそういうの好きです。シーフードラーメンにチーズ足したり、たまごサンドにコンビニチキン挟んだり」

「おっ、分かってんなー。うまいよな? あとオレ、牛丼お持ち帰りで焼き飯作ったりすんのも好きでさ」

「美味しいよね、牛丼焼き飯。いや、あの、本格的な料理かと言われるとアレですが、この手のアレンジにはまた別の魅力がありまして」

「だよなだよな」

 

 ナカーマとばかりに秋英寺さんがっしり肩を組んでくる。

 この方は自分のお胸のサイズを測り違えている気がする。有り体に言うと当たってます。

 

「こーら、楓。そういうのはやめなさい」

 

 でも美桜さんが引っぺがし、逆に自分の方に引っ張る。

 それをさらに咲綾さんが引っぺがすという謎のピンボール現象だった。

 

「身体のことを考えると、そういうのは控えて欲しいけど、直人くんの場合は仕事の関係もあるし難しいよね」

「わりと人気なんだよね、“思いつくままちょい足しアレンジ全部やる”動画。地元応援の趣旨とは微妙に外れるけど」

 

 でも試せる手軽さは受けがいいので、偶にやったりする。

 一頻り料理談議に花が咲き、途中で秋英寺さんがハッとなった。

 

「って、違う違う。話が逸れ過ぎた。話し合いだよ、話し合い。つっても春乃宮のおじさんには報告済み、退魔巫女側では情報共有済みなんだけどな。文化祭の時。魔力、感じたぜ。淫魔に近いが、びみょーに違うヤツ。おそらく、淫魔と契約した外法術師があの場にいた」

 

 事前に椎名先生からも聞いていたからあまり動揺はしなかった。

 長芋の豚肉巻きを食べながら耳を傾ける。

 

「そんで、学校に現れた触手のこと、咲綾の報告を合わせて考えれば、容易に答えに辿り着いちまう」

 

 そこでキリッと表情を引き締め、真剣な口調で彼女は言う。

 

「大淫魔サーナーティオ、蟲魔ヒラルス。そして、触魔ブラキウム。……黒衣の外法術師は、三体の淫魔と契約している。ガッコの襲撃は、五大淫魔の思惑が絡んでるってこった」

 

 ぜんぜん答え、間違ってますけどね!?

 どうしよう、なし崩しで謎の外法術師の罪状が増えてる。

 

「佐間に伝えたのは、手伝ってくれ、とかじゃないから安心してくれ。ただ、オレらの中で黒衣が放置すれば安全な敵じゃなくなっちまった。咲綾も美桜も少し忙しくなるだろうし、一緒の時間が取りにくくなるから勘弁な、くらいの話だよ」

「それって」

「触魔の仕業っぽい事件が、既に起こってるって話さ。このガッコ以外でな。ちくしょう、黒衣の野郎……!」

 

 あれれ、外法術師活動最近してないのになんかすごい悪事を働いてることになってる。

 ひーちゃんの淫蟲を認めてるので大差ないという意見もあります。

 

「わ、私は、黒衣と触魔に繋がりがあると考えるのは、早計だと思います、よ?」

「だがな、咲綾。状況を考えれば可能性は高い。実際、雨尾山市では淫蟲と触手の動きが活発だ」

 

 咲綾さんのフォローは意味を成さなかった。

 僕は必死に冷静な顔を取り繕う。

 

「そ、そか、仕方ないね。美桜さんも、咲綾さんも、秋英寺さんも。あんまり無理しないでね」

 

 無理して黒衣を追ったりしないでね。

 保身まみれの進言に、何故だか美桜さんが笑顔で応えてくれた。

 

「もちろんよ。相手の戦力が読み切れない以上、安全第一。楓も無茶な特攻は勘弁してよ?」

「わーってるって」

 

 ほんと頼みますよ、お願いします。

 ていうかもしかして、春乃宮パパの相談って、これに関して?

 知らないうちに黒衣の外法術師が明確にヤバい奴になってきています。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

「ちが! うの! じゃぁぁぁぁぁ!?」 

 

 放課後。

 帰宅して昼の話し合いについて淫魔っ子たちに伝えると、らっちゃんが子供みたいに床の上でバタバタし始めた。

 

「わーらーわーなーのー! キモブタさんを支えるのは大淫魔さなさな! 蟲魔ひー! そして妾……夢魔らっちゃんなのにぃぃ! のじゃぁ!」

 

 夢魔ラエティティアは特に大きな動きを見せていないので協会側には認知されていない。

 だけど仲間外れにされたみたいで納得がいかないようなのだ。

 

「の、のぅ、キモブタさんや? 妾、退魔師の前で“やあやあ妾こそは偉大なる主の忠臣、夢魔ラエティティア・ソムニウムなり”とかやっていいかの?」

「できればやめてほしいなぁ。ほら、僕とらっちゃんの安全のためにも」

「うぅ……」

 

 わざわざ名乗りのために姿を晒すとかは本当にやめてほしい。

 涙ぐむらっちゃんを抱き締めて、よしよし頭を撫で続けるひーちゃん。そんな中、サナちゃんは真面目な顔で何かを考え込んでいる。

 

「……うーん、と。現状、謎の外法術師が、触魔を使って事件を起こしているということになっているんですね? 咲綾さんの方から紫水晶の話もいってるでしょうし、否定できる要素がありません」

「だよね……」

「どこかで探りを入れる必要はあるかもしれませんね」 

 

 今のところ僕の正体がバレたわけでもない。

 下手に動かない方が、と思っていたけどサナちゃんは逆らしい。

 その辺りを聞いてみると、困ったように小首を傾げられた。

 

「根本的な話をすると、なんで触魔ブラキウムがここにいるのかを含めて、取り巻く思惑はある程度明らかにしないといけないのが一つ。もう一つが、放置してると今後起こる事件は全部ナオトくんのせいにされません?」

「あ」

 

 その上で正体バレたら、どんな言い訳も絶対聞いてもらえない。

 そう考えると、触魔ブラキウム・インヴィディアは早めに対処しておかないといけない。

 非常に不本意ですが、僕は久々に謎の外法術師活動を開始することにしました。

 

 

 

 

 

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