ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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触手下着と媚薬はR15では無理でした

 

 

 

 お祖父ちゃんは魔法使いだった。

 偶然、僕だけが知った、デブな弟も知らない秘密。

 アンティークショップにいる悪霊を、お祖父ちゃんは倒してしまった。

すごい、かっこいい。

 それが原風景。

 俺は幼い頃、本当の魔法使いに出会った。

 

 だったら、きっと。

 お祖父ちゃんの血を引いている僕は、いずれ魔法使いになれる。

 

 だって無能な弟に才能が受け継がれるわけないし。

 特殊な力は“一子相伝”と相場が決まっているんだ。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 学校の件以来、剣道部の皮の竹刀ケースで刀を持ち歩いていたのが幸いした。

 さすがに今から退魔巫女装束には着替えられないが、武器はちゃんとある。

 

「はっ!」

 

 武尊の操る触手は、咲綾めがけて波状攻撃を仕掛けてくる。

 うねうねと絡み付こうする触手を、霊力の籠った刀で切り落とす。

 最近は直人と訓練をしている。足捌き、跳躍。霊力の流れを利用した歩法は、以前よりも精度が上がった。息をつく暇もない強襲を捌き、的確に対処していく。

 

 

「さすが、退魔巫女というのはすごいな」

 

 武尊は呑気に賞賛をしている。

 しかし、少しおかしい。

 触魔の力を使えるとは言え、まだ新米の外法術師。協会所属の退魔巫女にこんなに簡単に正体を明かすなんて。

 

 

(それだけ自信がある? でも……)

 

 

 なんというか、退魔巫女を知っているのに退魔協会を警戒していないように感じられる。

 直人のように、組織的な追跡を避けるためにこそこそ動くのが常道なのだが。

 考えながらも咲綾は石を拾い、霊力で強化して投げる。

 

「どうした、明後日の方向に」

 

 石は武尊を狙ったわけではない。

 結界の性質を調べるためのものだ。

 

(……霊力を込めた投擲だけど、魔力に阻まれた感覚はない。なわばりが広いか、学校の時みたいな閉じ込めるタイプではないか)

 

 単純に人払いや認識阻害の効果しかないなら逃げられる。

 だけど、その前に武尊について観察しておきたい。

 あの触手は触魔ブラキウム本体ではなく、ヒラルスの淫蟲と同じ根幹たる能力で作ったもの。

 女の子を絶頂させれば、佐間武尊に魔力が還元されると見ていいはず。

 

「これだけの量の触手を産める。あなたは、どうやって魔力を」

「淫魔の食事なんて、一つしかないだろ」

 

 蟲魔ヒラルスの淫蟲創造は燃費が悪い。

 正確に言うと、初期コストが高い。

 淫蟲が魔力回収を担える反面、最初に作る時には多くの魔力を消費する。

 触魔ブラキウムの適応繁殖も同じ性質を持っているなら、これだけの量に作るには大量の魔力が必要になる。

 つまり、佐間武尊は既に女性を餌としている。

 

「ああ、俺だって人を殺すなんて真似はしていない。ただ、悦ばせてやっただけだよ」

 

 せせら笑う姿を見て思う。この男、本当に嫌いだ。

 だけど切り伏せる訳にはいかない。武尊は身体強化に魔力を回していない。斬れば、普通に死んでしまう。手間だが触手を退け、捕縛しないといけない。

 だけどヒラルスと同じ性質があるのなら。

 

「後は触手たちに任せるかな」

「くっ……」

 

 わざわざ退魔巫女の刃が届く位置に留まる必要はない。

 触手に相手をさせて組み伏せられるなら良し、負けてもそのまま逃げればいいだけの話だ。

 咲綾はまたも石に霊力を込めて投擲した。今度は、明確に武尊を狙った。

 しかし触手に阻まれる。

 

「おっと、怖い。じゃあ頑張ってくれよ触手ども。美味しいご飯は確保しておきたいだろ」

 

 言いながら紫の結晶を複数投げる。

 爆ぜて霧散した魔力を受け、触手たちは喜びにぐねぐねと蠢いていた。

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 夕暮れが陰って、空は藍色を帯び始めていた。

 冬の日が落ちるのは早い。もう少しすれば辺りは真っ暗になってしまうだろう。

 放課後、咲綾さんが登則さんの相談を受けることになったそうだ。

 除け者にして寄り道もあれだから、途中まで美桜さんと一緒だけど今日はそのまま帰るつもりだった。

 だけどその途中、退魔協会から美桜さんに指令が来た。“淫魔の気配を察知、至急討伐されたし”とのこと。

 それを聞いた手乗りサナちゃんは、とても真剣な顔でのたまう。

 

「しきゅうとうばつ……子宮討伐ってなんかえっちな響きですね」

「手乗りサナちゃん? 至急だからね?」

「退魔巫女・美桜があなたを子宮討伐しちゃいます♡ とかどうでしょう」

「絶対ダメだよ?」

「どうでしょうでなく。サナの頭ん中で私はどうなってんの?」

 

 発想がサキュバス過ぎる。

 色んな意味で問題なので話題はここで打ち切り、現場に直行する。おそらく咲綾さんにも連絡は言っているだろうが、位置的に美桜さんの方が早く辿り着く。

 一応用心のため、僕も黒衣の外法術師モードで控えておこう。

 

「あっ、ちゃんと着替えるんだ?」

「正直嫌だけど、これでも加護があるから霊的干渉を防げるのよ」

 

 早着替えで退魔巫女装束にチェンジした美桜さんは、そのまま指令にあった公園へと向かう。

 夕暮れから夜に変わる前の、わずかな時間。

 現場である公園に辿り着くと、確かに触手の存在が確認できた。美桜さんが速やかに人払いの術を行使する。

 美しい退魔巫女がいるのだ、快楽を糧とする触手たちは堪らないとばかりにすぐ襲い掛かった。

 僕は隠れながらも援護体勢に入る。

 

「魔力弾、スナイプパージョン……っ」

 

 説明しよう、魔力弾スナイプバージョンとは。

 いつもの魔力弾で相手をよく狙う技である。特に威力に変化はない。

 

「巫術、焔華(ほむらばな)……!」

 

 花のように咲く炎が一瞬で取り囲む触手を包み、消し炭に変える。

 さすがの威力だ。でも、実戦を経験して僕は美桜さんのすごさに改めて気づく。

 彼女の巫術、ほとんど溜め時間がない。滑らかで淀みのない霊力の操作が可能とする洗練された術の発動こそが彼女の真骨頂だ。ちらちら見えてる腋が僕の集中力を阻害するけど。

 とにかく、触魔ブラキウムの触手は決して強くない。数こそ多いけど美桜さんを脅かすほどではない。

 

「援護ナイス。これで、ラストっ」

 

 僕も魔力弾で触手を討ち落とし、数を減らしていく。

 最後に美桜さんが斬撃のように炎を振るい、触手を焼き切った。

 そうして襲撃がひと段落つきそうな時、ゆらりと公園に何者かが姿を現した。

 

 

 

「どもー、こんちゃーす」

 

 

 

 ノリの軽い、長身の男性。

 すらりとした体形に見えるが、実際にはかなり体格が良い。単に背丈が二メートル以上あり、そのせいで細身だと錯覚しただけ。縮尺を間違えたように感じられる。

 白のスーツ姿にハット、顔の片側をピエロの仮面で隠している。

 顔立ち自体は整った、長い銀髪をした美青年。ただし肌は紫、目はヘビのようにぎょろりとしている。

 明らかに淫魔……それも、上級種に類する存在だ。

 

「……ヤバいです、ナオトくん」

 

 手乗りサナちゃんもかなり焦っている。

 詳細を聞いている暇もない。僕は頷くと共に美桜さんのところに駆け寄った。

 

「ちょっ、なお……黒衣!?」

「魂霊契約、サーナーティオ・ドゥルケ・スアーウィス」

 

 退魔巫女と一緒に行動をしているのを見られるのはまずい。

 だから隠れながらの援護に徹していたけど、そんなこと言ってる場合じゃない。

 サナちゃんと契約して得た察知能力で、僕は感じ取ってしまった。

 あの淫魔は強い。たぶん、パイセンもふちょっ祖も比べ物にならないレベルで。

 

「おー、手乗りサーナーティオちゃんだー。おひさー」

「はい、おひさー、です。そこの少女は私のお友達です帰ってください」

「帰りませんですよー。俺くんも目的あってここにいますんで」

 

 同族だからか、意外とノリの軽い挨拶だった。

 ていうか、知り合い? 

 

「お、そこなるが噂の黒衣の外法術師。知ってるよー、我が女神サーナーティオちゃんの契約者」

「巫術、“鳳翼”……!」

「ぬわああああああああああああ!?  えっ、はやない!? トーク! 今明らかにトークタイムだったですが!?」

 

 なんか語ろうとしてたけど、それをキャンセルして美桜さんが大技を放つ。

 その名の通り圧縮された炎が翼のようにはためき、謎の淫魔を包み込もうとする。

 美桜さんもあいつの力量を察したのだろう。初手から倒しにいったのだ。

 淫魔はガチで慌てていた。

 しかし手をかざし、一気に魔力を集中させる。

 

「見よ、俺くんの必殺バリア!」

 

 ビシッと決めポーズをとったかと思えば魔法陣が空中に現れ、そこに炎が飲み込まれていく。

 強大な巫術を無効化され、僕も美桜さんも驚愕する。

 

「巫術を、かき消した……?」

 

 目の前の光景が信じ切れないのか、呟きは微かに震えていた。

 手乗りサナちゃんが静かに呟く。

 

「あれは、五大淫魔が一柱、デートラヘレの根幹たる能力。<心魂強奪(しんこんごうだつ)>です」

「そのっ、とぅり! 霊力を吸収し、己が魔力に変える淫魔ぢから! いわゆるエナジードレインなので、どちらかというと変身ヒロインの方に効果がある! 愛の力で変身する系の魔法少女から魔力を奪い取って変身解除させたいタイプ! なおっ! 特にポーズを決める必要はっ! ないっ!」

 

 ふざけたテンションだが実力は本物。

 道化た振る舞いのまま、目の前の淫魔は高らかに語る。

 

「さて、ご挨拶が遅れました! 我が名は奪魔デートラヘレ・カーリタース! 五大淫魔が一柱にして、あらゆる幼女を愛でし者! 実は巨乳は完全に守備範囲外なので、巨乳なら襲われる確率が極端に減るというある意味安全なインキュバスとの評価をいただいております」

 

 あ、こいつヤバいわ。僕は素直にそう思った。

 

「だからねー、蟲魔ヒラルスは微妙にストライクゾーンから外れるんですよねー。いや、かわいいよ? かわいいロリっ娘だよ? だけんども、ロリ巨乳はなんか違うんだよなぁ。余計なオプションつけたスーパーカーみたいな? その点サーナーティオちゃんはベストロリっ娘! ぶっちゃけ聞くけどさ、人間の目から見てもカノジョって美ロリっ娘よね?」

「それはそう。めっちゃかわいい。ただし、ヒラルスも美ロリっ娘」

「ほほう、その度量。さすがに契約者なだけあるね」

「なに敵と同調してんの!?」

 

 美桜さんのツッコミはごもっともだけど、僕は若干焦りを感じていた。

 デートラヘレは、さらりと僕とサナちゃんの契約について言及した。

 つまりこちらについてある程度把握しているということだ。

 

「そちらのツインテちゃんは……んぅん、ギリでロリ判定もおーけーなちっぱい具合だね。ひとまず認めてあげましょう。露出巫女服でなく幼稚園のスモックを着て出直してきなさい」

「うあぁぁ、なんかさいってーだコイツ!?」

「ていうか全然あらゆる幼女を愛せてないよね」

 

 イケメン淫魔だけど言動がアレ。

 容姿よりも胸の大きさの方が重要らしい。

 

「美桜さん、気を付けてください。奪魔デートラヘレは戦闘においては五大淫魔最強格。全力の私と互角でやりあえますよ」

「わ、分かってる。油断はしないからっ、ムカつくしっ」

 

 学校で見たサナちゃんは、魂霊契約モードでも全盛期には程遠い。

 アレを超える実力者だというのなら、僕たちは多分手も足も出ない。

 だからこそ意図を探る。そもそもデートラヘレは、なんでここに来たんだろうか。

 

「もうめんどいから普通に聞くけど、なぜここに?」

「えーと、時間稼ぎ的なサムシング? おっぱいの方の巫女が欲しいらしくって、足止め役としてきました。変な趣味してるよね」

 

 は? 咲綾さんを?

 

「だから安心して。足止めモードなんで、超手加減するから。それに俺くんは誰にも縛られないフリーダムヒーロー。簡単に魂霊契約はしないぜ? 俺くんと同調できるレベルのロリを愛でる心の持ち主が中々いないとも言う」

 

 ふざけた言葉が耳に入ったけれど、どうでもいいと通り抜けていく。

 それは、咲綾さんも同じタイミングで襲われているということ?

 なら、

 

「あと、黒衣くんの腕前も見ておきたいしね? サーナーティオちゃんの加護が、どのくらいのもんかと」

 

 一瞬の逡巡を蹴散らす踏み込み。

 警戒はしていたつもりだった。なのに、気付いた時には間合いを詰められていた。

 まっ正面からの直進なのに、不意を突かれたと錯覚するレベルのスピード。

 ぞくりと背筋が凍る。

 デートラヘレの腕が、僕に向けて突き出された。

 

「避けてくださいっ!」

 

 手乗りサナちゃんの叫びにムリヤリ体を動かす。

 同時に美桜さんが炎の刃を繰り出した。

 

「やっぱり女の子の方がいいっ!」

 

 デートラヘレは途中で軌道を変更。

 炎の刃を掻い潜り、美桜さんのある一部をがしっと掴む。

 怒りと羞恥で真っ赤になるが、彼女の頭がくらりと揺れた。

 

「しまった、こいつの能力は……霊力、の吸収」

「そうだよぉ? 巫術の無効化は応用。俺くんの本領は、女の子を組み伏せ! 抵抗しようが霊力を奪い! 全力で抱き潰す! 必殺のインキュバス・プレスぅ! あ、巨乳以外でお願いします」

 

 どうやら美桜さんは今の一合で霊力を吸われたらしい。

 この淫魔、最悪だ。

 触れられるだけで霊力を奪われるのに、シンプルに動きが速い。 

 

「デートラヘレの能力はあくまで“使い手が意識的に触れることで発動”するものです! 殴った場所から吸収は出来ません」 

「えっ、手乗りサーナーティオちゃんの助言ズルくない?」

 

 なるほど、こちらから触れるのに問題がないのなら。

 

「ピッグスラップ!」

「遅いよぉ、黒衣くんっ」

 

 デートラヘレはブリッジ状態になりそれを躱し、そこからバク転からサマーソルトで僕を蹴り飛ばしつつ距離を開ける。

 蹴りが、重い。しかも無駄に機敏且つ軽やかな動きだった。

 

「巫術、凍牙っ」

 

 でもその隙を見逃さず、美桜さんは氷を放つ。

 違う、バク転で地面に手を付く瞬間を狙いすまし、氷の牙をあらかじめ作っておいた。

 

「ぐぬぉ!?」

 

 それを察したデートラヘレは無理矢理にカラダを捻り、バク転に失敗。

 でもすぐに立ち上がる。その隙に僕は手乗りサナちゃんにお願いをする。

 

「本体を通じてひーちゃんたちに連絡してもらえる? 咲綾さんを、助けないと」

「はいっ。あの眼鏡っ娘が分断に関わっているなら、おそらく学校からそう遠くない位置で襲撃を受けたはず。ひーちゃんに目玉羽虫で咲綾さんを探してもらいます」

「頼んだよ」

 

 体勢を立て直したデートラヘレは、お返しとばかりに強襲する。

 

「やるじゃなぁい、ツインテちゃん!」

 

 再度手を伸ばす。ぶっちゃけ狙いは胸、一気に霊力を奪うつもりだ。

 速い、避けられない。

 しかし変態淫魔を前にしても美桜さんは冷静だった。

 

「つおぅ!?」

 

 美桜さんに触れようとしたその手が燃える。

 予想外だったのか、驚きに奪魔はバックステップで距離を取った。

 

「……いっっや、おっかしくない!? 俺くんの技、なに普通に……というか普通じゃない方法で避けてんの!?」

「避けれて、ないわよ……! だから咄嗟に、自分ごと焼いたんじゃん!」

 

 うん、正直僕もびっくりです。

 奪魔デートラヘレの動きは速かった。

 回避も迎撃も間に合わないと踏んだ美桜さんは、咄嗟に霊力で自らの防御力を水増しして、カラダに触れようとする掌を自分ごと巫術で燃やしたのだ。

 

「えぇ……嘘ぉん……。JK退魔巫女こわぁ。覚悟の決まり方が玉砕上等のバーサーカーですやん……。しかも溜めなしで俺くんがダメージ受けるレベルのスキルをこの年齢で使っちゃえるの……? この国の退魔巫女ヤバくない……?」

 

 比較対象そんなに知ってる訳じゃないけど、そんな覚悟の退魔巫女は多くないんじゃないかなぁ……?

 

「いや、すごい。バサ巫女ンのこと、ファイターとしては認めてあげましょう。ロリ判定からは遠のいたけど」

「むしろ嬉しいっての」

「だがぁしかし……って、あれ? 黒衣くんは?」

 

 無駄話してる間、待ってる必要もない。

 デートラヘレの後ろに回った僕は、声も立てずにファットチャージで襲い掛かる。

 魔力を纏った肉砲弾。シンプルな威力では僕の手札の中でも最大の一手だ。

 

「ううん、いいね」

 

 それを、ギリギリで察知したデートラヘレは片手で止めた。

 

「あ、うそ、けっこう強い。かっこつけて片手でやったけどやっぱ無理です」

 

 でも耐えきれなかったので結局両手になった。

 突進を受けて、踏ん張っても数メートルは退かせることができた。

 そこが限界。僕の全力の一撃を、ヤツはきっちりと防いでみせたのだ。

 だけどファットチャージは囮。

 

「ピッグ、スラップぁ!」

「おおうっ!?」

 

 振動張り手を顔面に叩き込む。

 直撃した。頭を揺さぶった。

 なのに、バランスを崩してさえいない。

 

「やるじゃなぁい。魔力を使ったオリジナルの術式。サーナーティオちゃんの堕淫魔術を自分の使いやすい形にカスタマイズした感じかぁなぁ? ちょぉっと、頭がくらくらするや」

 

 逃げようとしたけど、それより早くデートラヘレの手が僕の喉を掴む。

 でも魔力を吸収されはしない。ただ、おどけたような笑みが僕を捉えている。

 

「ねえ、黒衣くん。なんでダメージ少ないか不思議? なら教えてあげよう。シンプルに出力不足。魔力が足りないんですねー」

 

 ミスった。

 学校閉鎖事件でサナちゃんの魔力を消費し過ぎた。

 いくらサキュティちゃんねるが好調でも、上級種を相手できるほどには回復できなかった。 

 

「このっ!」

「はーい、バサ巫女ンは大人しくしててー?」

 

 僕を助けるために巫術を使おうとするも、蹴りが腹に叩き込まれる。

 いや、美桜さんも凄い。あの一瞬で強襲を察知して、きっちりガードした上に後ろに飛んでダメージを軽減してる。

 でも距離はかなり開いてしまった。

 

「外法術師は、基本的に淫魔と同じなのさね。エロいことして魔力を溜め込む。エロこそパワーなノリなの。だから、根本的にぃ?」

 

 片腕で僕を吊り上げたデートラヘレは、そのまま勢いよく。

 

「セックスしないで強いわけがねえんですよ、これが」

 

 地面に叩きつけた。

 

「がっ、はぁ」

「ふふ、俺くん決まった……っておおい!? 指が痛いでございます!?」

 

 勝ち誇っていたデートラヘレの慌てように、僕はにたりと笑う。

 いや、仮面被ってるから見えないだろうけど。

 

「ネットの与太話……。ハリガネムシって、細い寄生虫がいるんだ。その虫は昔、拷問に使われていた。爪の間に入ると、どんどん体内に侵入していくってやつ。これ自体は嘘だけど、今の僕なら再現できる。頭を掴んでる間に、淫蟲をあんたの指先に仕込んでおいた」

「なにこの子エグっ!?」

「人のこと、あんまり見下さないでもらえますかねぇ、木っ端淫魔ぁ……!」

 

 根本的な話。

 僕は、やられたら陰湿にやり返すタイプなんですよぉ……!

 

「なんかこの二人揃いも揃ってあれなんですが……。よいしょっ」

 

 爪から侵入した淫蟲を無理矢理引きずり出して、無造作に投げ捨てる。

 

「ま、まあこれくらいにしておこう。お手伝いに来ただけだからね。俺くんはホワイト淫魔。いっしょに好き勝手やってくれる者には優しいと有名なのです」

「なんの、話を……?」

「うぬ? そりゃあ、触魔のブラくんの話ですよ。サーナーティオちゃんだってヒラルスと仲いいし、こっちに繋がりあってもおかしくなくなくない?」 

 

 

 奪魔デートラヘレは、触魔ブラキウムと仲がいい。

 だから、利害どうこうじゃなく、ブラキウムを助けたくて協力したってことか。

 

 

「今回はさ、触魔のブラくんが面倒見てる子の援護なのよ。表立って動くのってあんま好きくないけども、友達の契約者の頼みなら聞いてあげるのが淫魔の仁義ってもんでしょうて」

 

 こんな軽いノリのくせに無駄に義理堅い。

 奪魔デートラヘレは背を向けた。

 

「ま、なかなかだけどまだまだ。強くなりなさいな。サーナーティオちゃんの契約者が、そんな程度じゃいけませんぜ」

 

 サナちゃんを狙っていたのかと思ったけど、特にそちらについては聞かず、僕に強くなれと言う。

 

「ちなみに、半端なお兄ちゃん戦は黒衣くんがメインで戦うなら邪魔しませんぜ? あれくらいは倒せてくれると助かるでござんす」

 

 

 意図を読むことができないまま、デートラヘレは去っていく。

 全然本気じゃなかった。足止め程度の力で、完敗した。

 くそう、どんなに頑張っても。童貞ではたくさんセックスしている相手には勝てないのか。 

 僕は悔しくて強く奥歯を噛んだ。

 




※主人公と出会う前の五大淫魔の関係性

 大淫魔サーナーティオ・蟲魔ヒラルス→友達として仲良し
 触魔ブラキウム・奪魔デートラヘレ→好き勝手やる時のツレ









 夢魔ラエティティア
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