ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話 作:自宅戦闘員
「ちなみに、半端なお兄ちゃん戦は黒衣くんがメインで戦うなら邪魔しませんぜ? あれくらいは倒せてくれると助かるでござんす」
というセリフを追加しています
申し訳ありません
淫魔は快楽のエナジーを魔力に変換する。
霊力に優れた女性からは特に良質な魔力を得られる。
そのため退魔巫女が敗北すると、その時点で相手が強化されてしまう。
だから退魔巫女にとっては退路を確保することもまた、重要な戦略の一つだ。
「広い……っ」
一人で上級種のなわばりに踏み込んでしまった咲綾は、触手を撃退しながらまっすぐ走った。
しかし端っこに辿り着かない。学校の時のように監禁するような形ではないが、逃げ出すのも一苦労のようだ。
息をつく暇もなく触手が襲い掛かるも、それを刀で切断する。
勘違いされることは多いが、春乃宮咲綾は霊力を籠めた刀で多くの淫魔を葬ってきた実力者である。
ただ十年に一度の天才と言われる美桜が内側の技も外側の術も扱え、既に単独で任務にあたり結果を出しているため、“妹に比べれば物足りない”という評価が付いてしまうだけだ。
霊力量も美桜や秋英寺楓よりは少ないが十分にあり、体術・剣術も高水準。ここ最近外法術師になったばかりの武尊が倒せる相手ではない。
静かに振り下ろされる刃。
既に何体倒したかは分からない。孤軍奮闘を続ける咲綾は、少しずつこの状況のおかしさを理解し始めていた。
「与しやすい……」
触魔ブラキウム・インヴィディア。
五大淫魔に名を連ねる上級種……その筈が、産み出される触手は確かに強力だが、同時に倒しやすくもある。
これは比較対象として蟲魔ヒラルス・ラールアと、その契約者である佐間直人を知っているからこその理解だ。
同質・同格のヒラルスの淫蟲と比べても触手の群れは攻略しやすい。それは性能の差よりも、“大雑把さ”のおかげだ。
直人は淫蟲創造で媚毒バチや目玉羽虫を斥候や伏兵として使っていた。完璧とは言わないまでもある程度淫蟲を統制・操作し、視覚を同調して状況を把握していた。
けれど適応繁殖の触手の群れは動きが大雑把だ。
「咲綾を襲う」「武尊への攻撃を防ぐ」程度の動きしかできていない。波状攻撃というよりも、ただ押し寄せているだけ。
ただし、学校では違った。
食堂で戦った時は咲綾の斬撃を避け、連携や足止めを行い、攻撃の優先度を咲綾や直人ではなくクラスメイトに移すなど、こちらの嫌がることを的確にやってきた。
契約者である武尊が現場に来たというのに、むしろ動きの精度が下がっているのだ。
ちなみに適応繁殖の特性上、その形状を総合すると咲綾さんの性感帯がモロバレになるため形状の描写は控えさせていただきます。
「ふぅ……」
走りながらまた一本触手を倒し、一度足を止めて呼吸を整える。
与しやすいが、断ち切るには相応の霊力を籠めねばならず、一人で対応していれば当然体力も消耗する。
雑な攻め方でも量が多いため厄介ではある。そこが、咲綾にとっては腹立たしかった。
武尊は直人と違って魔力を多く溜め込んでいる。退魔協会でもそれに関しては把握していた。
淫蟲は大規模な被害を出していないが、触手は明確に女性を襲っている。つまり触魔ブラキウムは暴行によって魔力を得ていることになる。
淫魔としては正しい行いなのに怒りを覚えるのは、少しサーナーティオたちに毒され過ぎたのだろう。
(カタい。少し、感触が重くなってきた……)
触手の防御力が上がったのではない。
多数を相手にして疲弊してきているのだ。霊力の収束も精度が落ちてきた。
実力ではなく単なる物量。だとしてもこのままだと劣勢に陥る。
だが脱出口は見つけられていない。なるほど、触手の責め方は甘いが、これが武尊の戦略なのだろう。
広範囲のなわばりと絶え間ない触手の群れで咲綾の霊力と体力を削り捕縛する。単純だが悪くない手だ。
(けれど、学校の時のような完全な隔離空間じゃない。なのに走ってもなわばりの外に出られない。たぶん、“迷いの森”だ……)
方向感覚と咲綾の認知能力を誤魔化して、同じところをグルグルと回らせているのだと思う。
とすれば、脱出する方法はあるにはある。
「これやると、たぶん協会から怒られるけど」
あくまで狭い範囲を迷っているだけだから、目印を作って正確に進めば逃げられるはず。
つまり、
「霊力を集中してなわばりの干渉を軽減。あとはアスファルトを壊して、壁を壊して、本当に“まっすぐ”の道を作る……」
普通に器物損壊だけど、美桜とか直人が好きそうな方法です。
なんなら地面を抉っていけば、迷う可能性は減っていく。
あとは、なわばりの精神的干渉にどれだけ抗えるかだ。
そう思った時、足首が何者かに絡めとられた。
「しまっ……!?」
脱出方法を見つけて少し緩んだ精神の隙を突かれた。
四肢を拘束する触手。ぎりっ、と腕を強く縛り上げられ、刀も落としてしまった。
そうすれば後は好き放題だ。同年代の女子と比べても豊かな肢体を、てらてらと濡れた触手が這う。
「ふぁっ!?」
くすぐったさとも気色悪さともつかない感触に思わず声が漏れてしまった。
触手は昂り、さらに激しさを増していく。
そうして咲綾は肉の波に飲み込まれていった……。
……そんな、夢を見た。
※ ※ ※
普段とは違う、どこか神秘的な雰囲気を醸し出し、夢魔ラエティティア・ソムニウムは静かに語る。
「白昼夢、という言葉があるのじゃ。目覚めた時に見る淡く滲む夢もまた、妾が支配する夢幻の一つ……」
もっとも、三十秒ももたずいつものらっちゃんがにぱーっと笑う。
「いわゆる幻覚・幻影系の魔法も妾の範疇。よって、今あの触手たちはさーやさんをぬちゅぬちゅぬるるるんしている夢を見ているも同然なのじゃ。妾、すごい? すごい?」
「うん。ありがとう、ラエティティア。本当に助かったよ」
「ぬふふ、さーやさんが無事でよかったのじゃ」
嬉しそうに頭を突き出すラエティティア。
咲綾は小さく笑いながら、猫耳付きの頭を優しく撫でる。
気持ちよさそうに「のじゃー」と目を細める姿は、まるで本物の猫のようだ。
でも冷静に考えたら触手ですら誤魔化せる幻惑とか普通に危険な能力である。敵だったら恐ろしいと思わざるを得なかった。
「でも、どうして?」
『さーちゃんからサアヤが危ないって聞いた。だからお手伝いに来た』
「そっか。ヒラルスもありがとう」
『ん』
なおヒラルスに関しては 彼女が使役する羽虫型の淫蟲と会話する形になっている。
たぶん本体は直人のマンションでベッドの上だろう。
それでも、正直ムリヤリな脱出方法しか思いつかなかったので援軍は有難い。
単騎で逃げ出すためにはアスファルト カタナで切りつけながらなわばり走り抜けるをしないとイケなかった。
「このなわばりは人払いと認識歪曲がメインで、妾達も入れたからよかったのじゃ」
『触手はらーちゃんがごまかす。サアヤが適当に斬って、外にいてなわばりの影響のないひーが道案内をする』
羽虫が咲綾たちの先導をする。
道や周囲の風景ではなく、ただ淫蟲に意識を集中……しようと思ったけれど、なんだか道に変な物が落ちている。
これは……。
『魔力節約淫蟲ミニ。これを道に置いて迷わないようにしてある』
「ヘンゼルとグレーテルもびっくりだね」
『ドーナツ食べたい……』
「たぶんヒラルスが思ってるのはエン〇ルクリームじゃないかな?」
「妾、もちもちの〇ンデ好きー」
「もう、ラエティティアまで。脱出したらお礼にご馳走してあげる」
『おぉ、サアヤ。ふとっぱ……おっきいおっぱい』
「ヒ・ラ・ル・ス? たぶん太っ腹が失礼だと思ってそっちに変えたんだろうけど。どちらにしても失礼だからね?」
「やったー、ドーナツ! あのねあのね、妾はポ〇デおしょうゆ食べたいっ。動画で見たのっ」
「あれ、もう発売中止してるって美桜が言ってたような」
「えっ……」
ラエティティアが物凄く悲しそうな顔をする。
なお彼女は五大淫魔最恐と恐れられる強力な夢魔である。
(退路での攻撃はなし。当然か……触手は私を捕らえていると思っている。なんかちょっと嫌だけども)
どうやら、危機は脱したようだ。
先程までの緊張はどこへやら。咲綾は楽しく雑談をしながら、淫蟲に導かれるままなわばりを脱げ出すことができた。
※ ※ ※
横暴な兄におもちゃを取り上げられる、みたいなシチュはあんまりなかった。
そもそも冷遇されていた僕はおもちゃを買って貰えなかったし。
代わりに人間関係を取り上げられることはあった。
小学校に入ったばかりの頃、少ないながらに友達ができた。でも途中で兄さんが入ってきて、一緒に遊ぶようになった。
最初は優しい兄ムーブ、それからだんだんと確認しようがない嘘を吹き込んで、僕の友達の筈がいつの間にやら兄さんの味方になっていた。
『直人は、家では本当にワガママでさ。母さんも大変だよ』
『お前さー、兄ちゃんに対してひどいだろ』
『そんなやつだと思わなかった』
そう言って離れていく周囲の誰か。
皆、デブでブサイクで運動も勉強もできない弟よりも、可愛らしくて優秀な兄を信じた。
『はぁ、こんなブタが弟だなんて、恥ずかしい』
『……』
夕食の時も武尊兄さんは言葉でチクチクと僕を刺す。
母さんも止めはしない。それどころか同意して罵倒してくる。
『本当に、食べるのだけは一人前でみっともない。それに比べて武尊ちゃんは可愛くて、自慢の息子だわぁ』
父さんはどうでもいいとばかりに夕飯を食べ終えて、さっさと書斎に戻ってしまう。
母さんはあからさまに兄を贔屓した。兄さんだけおやつがある、新しいおもちゃを、服を買ってもらえる。お手伝いしても僕は怒られてばかり。
友達に嘘を吹き込んで兄さんが盗ったのを知っても、母さんは『直人よりも武尊ちゃんを好きになるのは当然でしょ?』。
佐間家において僕は虐げてもいいモノだった。
そんな僕を、唯一気にかけてくれたのがお祖父ちゃんだ。
僕への態度があんまりだと、両親に文句を言ってくれたこともある。まあ改善はされなかったけども。
お祖父ちゃんは、母さんに対して特に怒っていた。最近になってその理由が分かってしまった。
僕とお祖父ちゃんは血が繋がっているけど、兄さんは違う。
たぶん、母さんは浮気をしていて、兄さんは他所の種で出来た子供だったんだろう。
けど離婚せず再構築、その後に僕が生まれた。
両親がなんで別れなかったのかはよく分からない。
僕を虐げる母さんは、本当は浮気相手の方が好きで一緒になりたかったのかも。結局父さんを愛していなくて、その子供に興味をもてなかったのかな、とか。
仕事ばかりで家庭を顧みない父さんは、本当は汚い家庭を見たくなかっただけなんじゃないかな、とか思ってしまう。
なんとか家庭を続けてきた、つぎはぎだらけのパッチワークファミリー。
残念ながらぼろきれの僕は早々に剥がれて風に吹かれてさようなら。残った本体の布地たちがどうなるかは知ったこっちゃありません。
まあ、お祖父ちゃんが母さんにキレてたのは、汚嫁さんが嫌いっていうある意味真っ当な感性だったんだろう。
わりに、兄さんをひどく怒ったりはしなかった。
もちろん弟への態度を叱責はしたけど、母さん憎しの延長ではなく、ちゃんとした説教だったと思う。
兄さんの方も、お祖父ちゃんに良く懐いていた。
……あれ? 兄さんの性格上、怒られたら反感を持ってもおかしくない。
なのに、なんで普通に懐いてたんだろう。
ぼんやりとした頭。
痛みはあまりない。
代わりに、誰かが優しく撫でてくれているような。
心地良さにふと僕は目を開いた。
「……あ、ナオトくん。気分はどうですか?」
「さ、な、ちゃん……?」
そこにあったのは、銀髪赤目の少女の優しい笑顔。
天使? いや、淫魔だった。
どうやら、子供の頃のことを夢に見ていたらしい。
目を覚ますと、サナちゃんが僕の頬にそっと手を当てていた。
ここは、僕の部屋?
「だいじょぶ、おにーさん?」
ひーちゃんもぺちぺち胸板を叩いて来る。
っていうか、いっしょのベッドにいますね。潜り込んでたみたいです。
サナちゃんが「ひーちゃんも心配してたんです、許してあげてください」と言うから、ぽんぽんと優しく頭を撫でる。
すると、普段の無表情ではなく、柔らかい微笑みを見えてくれた。
ベッドの傍には美桜さんの姿もある。
奪魔デートラヘレとの戦いの後、気を失ったところまでは覚えているけど、あの後どうなったんだっけ。
「よかった、気が付いた?」
「美桜さん……が、僕を?」
「うん、お姫様抱っこで」
あんまり知りたくなかった情報だった。
でも、助けてもらったらしい。
「あ、ありがと……」
「ううん、こっちこそ。奪魔に一杯食わせたのは、直人じゃん」
「そんな。最後に針を一刺ししたくらいのもんだよ」
「それでも、痛がるあいつの顔さいっこーだったからおっけー」
美桜さんは思い出しながらけたけた笑っている。
サナちゃんレベルの相手だ。勝てないのは当然。だけど、やっぱり悔しいと思ってしまう。
「あれ、そう言えば怪我が……」
「私が治しました。また、魔力を使ってしまいましたが」
「ありがとう、サナちゃん。そんな顔しないで」
申し訳なさそうにするけど、こっちの方こそ申し訳ない。
今回の件は完全に僕のせいだ。
魔力をちゃんと集められなかった。その気になればいくらでも集められるはずだったのに。
もっとも、それでも奪魔に届いたかと言えば疑問だ。
そのくらいあいつは強かった。
「そうだ、咲綾さんは!?」
「そっちもだいじょぶ。ひーとらーちゃんがフォロー済み」
「そ、そっか……よかった……」
今回の件、奪魔は僕たちの足止めと言った。
本命は触魔ブラキウムによる咲綾さんの奪取だった。
だけど彼らの暗躍を阻み、彼女を守ることができた。なら、今はそれを喜ぶべきだろう。
※ ※ ※
しばらくすると、らっちゃんに手を引かれ咲綾さんが戻ってきた。
なぜかおみやげドーナツを大量に持って。
「お帰り、咲綾さん。無事でよかった」
「ただいま、直人くん。……ふふ、なんか変な感じだね」
確かに僕のマンションに来たのにお帰りは変か。くすりとお互い小さく笑う。
次はらっちゃん。元気に飛び込んでくる。
「おっと。お帰り、らっちゃん」
「ただいま、なのじゃ! キモブタさん、抱き上げてぐるぐるやって!」
「はいはい。今日はお疲れ様。ありがとうね」
「妾すごかろ? キモブタさんの忠臣は触魔ブラキウムでなく、夢魔らっちゃんなのじゃー!」
あ、まだ気にしてたのね。
でも今日はめちゃくちゃ褒めよう。
らっちゃんを抱え上げ、おおげさにくるくると回れば、そりゃあもう楽しそうに笑ってくれた。
ていうか、ひーちゃんがくるくるの順番待ちしてる。その後ろに咲綾さんも並んでた。
「あの、咲綾さん?」
「わ、私も並んでたらそれやってもらえるのかな、と」
「さすがに照れが先に来るんですが……が、頑張ります」
なおひーちゃんをくるくるした後、本当に咲綾さんにもやりました。
カノジョも照れ臭そうに「わー、きゃー」と言いながら、なんだかんだで楽しそうでした。
重さは特に問題ないんですが、大きさ的に色々問題がありました。
「えーと。もういい?」
半目で見る美桜さんからツッコミが入り、ここからは真面目なお話。
ドーナツとお茶をお供にお互いに情報交換をする。
そこで咲綾さんから聞いた情報に、僕は驚愕に目を見開く。
「は? 兄さんが?」(※ゴールデ〇チョコレート
「うん。触魔ブラキウム・インヴィディアを使役していたの」(※オール〇ファッション
今回の件を総合すると。
まず登則恵子さんが「佐間くんに告白したい」と相談を持ち掛け、その後一人で帰宅。
その際に武尊兄さんが強襲、しかも触魔の触手を引き連れて。
さらには僕らの方には奪魔デートラヘレに足止めまでさせてだ。
「そんなに咲綾さんが欲しかった?」
「どうだろう。私個人に価値を見出しているより、恥をかかされた仕返しとか、直人くんに嫌がらせをしたかっただけのような気がする」
「文化祭の時の? ちっちゃい男っ!」(※フ〇ンチクルーラー
美桜さんが悪態をつく。
僕もそう思う。昔はもっと、怖かったんだけどな。運動も勉強もできて優等生で。僕じゃあ絶対叶わないと思っていた。
「でもサアヤを欲しい男の人は多いと思ぅ、んまい」(※ハニーディ〇プ
「ふふ、ヒラルス、ありがと」
相変わらずな仲良しなひーちゃんと咲綾さん。
ナチュラルに戯れられるようになってる。
「でも、兄さん側に触魔・奪魔がついてるってこと? 奪魔は契約してないって言ってたけど」
「デートラヘレがそう言ったなら事実でしょう」(エンゼ〇クリーム
「嘘は言わないタイプ?」
「いえ。その場のノリとテンションで生きてる淫魔なので、そもそも騙そうなんて考えず勢いでぶちまけただけですね、きっと」
なんというか、すごく場当たり的な性格をしているらしい。
それを聞いた美桜さんはものすごく真剣な顔をしている。
「直人と同じタイプか……」
「待って美桜さん? ちょっと聞き捨てならないんですが」
「キモブタさんもわりとノリと勢いで行動するタイプなのじゃ」(※ポン・デ・リ〇グ
「ほら、ララのお墨付き出たよ」
くそっ、微妙に否定できない!
「と、ともかく。奪魔デートラヘレの言葉に嘘がないなら、兄さんと登則さんはグルで、触魔の餌にしよう+僕への嫌がらせで咲綾さんを狙った」
美桜さんが選択肢に入らなかったのは、たぶん小学生の頃の僕の情報で止まってるから。
となると、退魔巫女っていうのはどこから得た情報なのか。
「心光の癒し事件、裏にいたのはデートラヘレです。そこを解決した時点で私たちは目をつけられていたのでは?」
サナちゃんの言が正解のように思う。
ってことは、結構前から監視されていた?
「ああ、そっか。じゃあ咲綾さんたちが退魔巫女って知っていて当然か……。でも、そうするとなんかおかしいよね」
「へ? どういうこと?」
僕の言葉に美桜さんはきょとんとする。
「いや、だってさ。今の兄さんって、外法術師だよね? なのにあんなに堂々と行動したら、退魔協会が動くでしょ、普通に。僕だったら正体隠して動くし、多少無茶してでも咲綾さんを逃がさない。口を塞がないといけないから」
「逃がさない……、口を塞ぐ……」
「おーいお姉ちゃん。変な妄想しなーい。まあ、でもそうよね。退魔協会に報告されたらアウトだし」
「兄さんはそんな考えなしな人じゃないと思うんだけど」
頭を悩ませる僕たちに、ちょっと頬を赤く染めた咲綾さんが補足をする。
「そこは私も疑問に思ってたの。でも、話した感触だと、そもそも退魔協会を知らないような気がする……」
となると、デートラヘレに詳しいことを教えてもらえてない?
「ああ、そうか。もしかしたら、兄さん的には春乃宮が特別な家系で、咲綾さんたちは“数少ない退魔巫女の末裔”。だから自分のものにすればそこで終わりと思ってるのかも」
「そう勘違いするのなら、情報をかなり制限されていますね」
むむぅ、とサナちゃんが唸る。
僕の場合、サナちゃんが色々教えてくれる。
でも兄さんは奪魔や触魔とそういう関係を構築できていないのだ。
「サナちゃんがいい子でよかった……」
「いえいえ、私もナオトくんが魂約者でよかったと思っていますよ」
「ひーもいい子……」
「妾もいい子っ」
当然のように褒め待ちの列ができる五大淫魔です。
その光景にちょっと頭を悩ませる咲綾さん。
「どうしたの、お姉ちゃん」
「最近染まり切ってたけど、本当は奪魔デートラヘレたちの方が淫魔としては正しいなぁ、って」
「そこは間違いないわ。こんな気安い上級淫魔初めてだもん」
美桜さんがけらけらと笑う。
けれど一転、真剣な顔を作る。
「ここら辺の情報の整理もいいけどさ。差し当たって、どうするか決めないとまずくない? もし退魔協会を知らないなら、あのナンパ男、また雑にお姉ちゃんを狙って来るよ、たぶん」
「しかも下手に協会に報告したら、協会VS奪魔編に突入かぁ……」
美桜さんの指摘は間違いない。
兄さんは僕のこと嫌いだから、嫌がらせをしてくることは容易に想像が尽いた。
「正直言うとさ、兄さんの居場所は分かってるんだよね。だって実家暮らしで、大学も知ってるから」
「ですが、監視してたならデートラヘレもナオトくんの居場所を知っているのでは?」
「……だよねぇ。にしては今までなんにもアクションを見せなかった」
ていうか今回も、触魔ブラキウムの契約者だから一応助力した、後は僕の腕前を見ておこうみたいなノリだった。
つまり、デートラヘレ的には兄さんに肩入れしているわけではなく、好きに動いているということだ。
魂霊契約していないのも正直こちらとしては幸運。兄さんの直接の戦力は触魔ブラキウムだけと見ていいんだろう。
「まあ、そっちは置いておくとして、兄さんを倒すのは必須」
「正直実力的には、私でも充分倒せると思うよ。でも話を聞く限り、奪魔は直人くんを試している節がある」
「直人がメインで戦うなら邪魔しない、って言ってたし。あれ、お姉ちゃんや私に横槍いれんなっていう釘刺しだよね」
なんだかよく分からないけど、奪魔デートラヘレは僕に兄さんを倒させたいし、ちゃんと強くなってほしい、的なことを言ってきた。
その目論見は分からないけど、問題は別にある。
「ぶっちゃけ場所が割れてるから、再戦は簡単。でもさ、僕、現状めっちゃ魔力使っちゃってるんだよね……」
たぶん今のままだと兄さんに勝てません。
触手の物量にやられてしまいます。
「魔力を置いておいても、まだまだ弱いんだって今回のことで痛感した」
「デートラヘレに弱点思いっ切り指摘されたもんね」
「ぐほぉ!?」
そういや美桜さんの前で童貞ばらされました。
めちゃくちゃ恥ずかしい。でも、サナちゃんが気にせず話を進める。
「その指摘は間違いがありません。結局のところは外法術師は……えっちなことをしないと強くなれない。今までは騙し騙しやってきました。でも、もう一段階上を目指すなら、ナオトくんは覚悟を決めないといけません」
ばばーんと腕を振り上げ、銀髪の美ロリっ娘が高らかに宣言する。
「道行く誰かを襲うか! 行きずりの相手とワンナイトカーニバルするか! 恋人を作って純愛えっちするか! ロリサキュバスハーレムを作るか!
はい、シリアス終了します。
あとさすがにパイセンが可哀そうなので一番最後のは却下でお願いします。