ロリサキュバスと同居生活してたらいつの間にか淫魔の王になっていた話   作:自宅戦闘員

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ブラくんとお泊り・2

 

 

 正直なところ、僕は登則恵子さんのことがあんまり好きじゃない。

 しかし嫌いと言っていいのかも分からず、彼女に向ける感情は非常に中途半端な状態だった。

 兄さんに触手を渡したこと自体は別にいい。それを使って暴走したのは、言ったら悪いが兄さんの“特別になりたい”という幼稚な願望のせいだ。

 でも登則さんにも少なからず責任はある、と思ってしまう。

 ただ、そういう話をするなら、ひーちゃんの淫蟲やらっちゃんの淫夢での魔力収集を認めてる僕が一番監督責任果たせてない罪人だよなぁともなる。

 その上、同人誌系ラグビー部合宿なんかしちゃう彼女は相当アレなわけで。

 わりと登則さんは淫魔のノリに近しいから、たぶん彼女は「ちょっと傾いた外法術師が陥る末路の一つ」なんだよなぁ、と思ってしまう。好き嫌いよりも先に苦手って感じかもしれない。

 

「ブラくん、よく眠れた?」

「……………」

 

 それはそれとして、触魔ブラキウム・インヴィディアを預かることになった。

 登則さんがラグビー部の合宿で県外に行く関係で、金曜日の夕方からうちに泊まり、日曜日の夜くらいに帰る形だ。

 昨夜は諸々の説明と出前の夕食で歓迎した後は、まだ僕に慣れていないからサナちゃんが表立って色々動いてくれた。

 もう寝るスペースないよ、と思ってたけど就寝時は眼球触手モードになってくれたおかけで籠に柔らかい毛布を敷き詰めるだけで充分な寝床になった。

 でも日中は基本小さな男の子状態らしい。

 

 触魔ブラキウムは本能で女性を襲うタイプの触手。五大淫魔の中でも危険な存在と言えなくもない。

 ただし魔力が充実している間は室内犬のようにおとなしくなるそうだ。

 サナちゃんは納得したような驚いたような複雑な表情をしている。

 

「本能で女性を襲うだけに、飢えなければ襲わない。実は、私も知らなかった特性です」

「あれだね、サバンナの動物もお腹いっぱいなら獲物を襲わねえよ理論」

「だとすると登則恵子さんのアレがアレな回数が、健全な場所では言えないくらいすごいことになってる気がします」

 

 まあそれだけ淫魔ちっくな魔力収集してるってことだからね。

 人間形態のブラくんは背が一番低い。らっちゃんはお姉さんぶって、ぐっと胸を張っていた。

 

「ここは先達である妾がキモブタさんちで暮らすのに必要な心構えを教えてあげるのじゃ! まず朝起きたら歯磨きと顔洗いを」

「洗面所こっち……」

「………」

「当たり前のように無視されてるっ!?」

 

 先輩風びゅーびゅーだったけど、ブラくんはひーちゃんの方についていく。

 あれかな、同タイプの根幹たる能力の持ち主だし波長が合うんだろうか。

 歯磨き洗面の後は皆で朝食。トースト、ベーコンエッグ、レタスのスタンダードなメニューだ。 

 薄めにいちごジャムを塗るサナちゃん、どっさり山盛りなひーちゃん、シンプルにバターで食べるらっちゃんと、食パン一つとっても違いが見えて面白い。

 ブラくんはというと、パンにもレタスにも手を付けないでベーコンエッグだけを吸収する。

 そう言えば昨夜もお肉以外は手を付けていなかった。

 

「ねえ、ブラくん。もしかして、タンパク質……肉っぽいやつ以外は受け付けないのかな?」

「…………」

 

 反応が鈍い。

 困っているとサナちゃんが「穀物と野菜は吸っても微妙、らしいです」と翻訳してくれた。

 

「あ、ソーセージが吸いやすくてお気に入りだそうですよ」

「じゃあストックしておこうか」

 

 休みだしサナちゃんと食材の買い出しに行くつもりでいた。

 そのついでにたらふく買い込んでおこう。……なんて思っていたら、ブラくんはショタ服を脱ぎ捨てて、僕の服の中に入り込んだ。

 

「あひゃう!?」

 

 にゅるっとくすぐったくほんのり温かい!?

 奇妙な感触に思わず声を上げたが、ブラくんは服の中から出てこようとしない。

 

「ええ、と、一緒に買い物……いく?」

 

 ぞわっと動いた。

 たぶんそういうことなんだろう。

 なら、隠蔽と認識阻害の魔術をかけておく。もう手慣れたものである。

 

「……私の服の中でなくてよかったです」

 

 ほふぅ、と安堵の息を吐くサナちゃん。

 たぶん登則さんに言われてるから、面倒を見るのは僕って考えたんだろうな。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 ということで商店街に。

 これでも地元では顔が売れている僕だけど、商店街のアイドル・サナちゃんにはもう敵わない。お店の人は「おっ、サナちゃん。今日は佐間くんといっしょかい?」と逆転現象が起こっている。 

 

「お夕食、なににしましょうか」

「そうだなぁ、寒くなってきたしおでん……いや、肉を多くなら鍋の方がいいかな」

「お鍋! いいですねぇ、鶏もも肉につみれ、お豆腐に白菜ネギで鳥鍋なんてどうでしょう」

 

 服の中で小さくなってるブラくんも騒いでいる。

 たぶんかなり喜んでいるはずだ。

 

「よし、ここは大盤振る舞い。コラボ効果で懐も温かいし、サキュティちゃんねるも順調。地鶏をどっさりといこうじゃありませんか……!」

「やったー、ナオトくん男前ですっ」

 

 サナちゃんも両手を上げて万歳賛成。

 鶏肉、鳥ミンチ、白菜とネギに糸こんにゃくに木綿どうふ。人参さんと、忘れちゃいけないのがソーセージ。

 まずはお肉屋さんでメインの仕入れだ。

 

「すみません、今日は鍋をするので鶏もも肉のいいところを2.5キロに、鳥ミンチを2キロ。あとソーセージも1キロお願いします」

「おう、毎度あり。稽古前にちゃんこでも作るのかい?」

「僕は相撲取りではありません(No Smoking)」

 

 分かってるだろうにぶっこんできおった。

 

「知ってるって。皆で鍋かぁ、いいねえ。お値段は勉強しとくぜ」

「わぁ、ありがとうございます」とサナちゃんがにっこり笑顔。

「いいってことよ。代わりにウチの倅とお見合いでも」

「私はナオトくんのモノなのでダメでーす」

「そいつぁ残念だ」

 

 お肉屋さんと小粋なトークを交わすサナちゃん。

 本当に馴染んだなぁ、と思う。 

 

「サナちゃんも、ひーちゃんも、らっちゃんも。今の暮らしを楽しんでくれてるよ。僕は上でふんぞり返ってる訳じゃない、って分かってもらえたらいいんだけど」

 

 独白のようにブラくんに語り掛ける。

 特に反応は見せなかった。

 

 

 

 家に帰ると、ひーちゃんとらっちゃんはパズルゲームで対戦していた。

 

「ぬぉっ、くう……ひー、意外とやるのじゃっ!」

「らーちゃんも……」

 

 あれだね、レースゲームしてるとカラダが傾く一人ってけっこういる。

 らっちゃんもその一人のようで、パズルゲームらしからぬ激しい動きを見せている。

 ゲーム自体には慣れていないけど、ひーちゃんは指の動きがゆっくりだから意外といい勝負をしている。

 

「ただいまー」

「おかえりなさい、なのじゃ」

「おかえり……」

 

 ただいまと言えばお帰りと答えてくれる。

 その尊さに思わず頬が緩んでしまう。

 

「今日は鳥鍋だよ。ちょっと奮発していい肉買ってきちゃった。デザートにみかんも冷やしておくから」

「おなべっ!?」

「わーい、お雑炊……」

 

 満面の笑みで喜ぶらっちゃん、既にシメにまで思いを馳せるひーちゃん。

 準備はサナちゃんが手伝ってくれる。

 

「私ほど巧みに昆布とかつおぶしでお出汁をとれる淫魔は他にいないでしょう」

 

 ふふーんと胸を張っているけど、そもそも大抵の淫魔は一番出汁を取ったりしない気がします。

 

「本当に料理上手くなったよね」

「咲綾さん直伝ですから」

「あ、鶏肉は切っておくから白菜お願いできる?」

「お任せください」

 

 二人で準備をすると楽しいし早い。

 ひょっこりとブラくんが顔を覗かせ、鶏肉をじーっと見ている。「もしかして、生でも平気?」と確認すると瞬きで返事をしてくれた。なので鶏肉の切れ端をプレゼント。

 

「じゃあ内緒の味見ってことで」

「…………」

 

 鶏肉を一つ上げたら思いのほか喜んでくれた。

 

「調理途中のつまみ食いって罪の味だよね」

 

 ブラくんも同意してくれたのか、ぴこぴこ触手が動いていた。

 

「ひーちゃん、らっちゃん。つみれ作るから手伝ってもらっていいー?」

「もちろんなのじゃっ」

「わー……」

 

 ぱたぱたテーブルの方にやって来る。

 皆でつっつくお鍋なら、手伝いをした方が楽し美味しい。

 なのでスプーンで種を鍋に落とすだけの作業だけど、二人にお願いした。

 その後もスムーズに調理は進み、出汁の匂いが香しい鳥鍋が完成。

 

「とりにくかろ? 妾がとってあげるのじゃ、鶏肉だけに」

「…………」

 

 皆で騒ぎながらつっつくのが鍋の醍醐味だ。

 うん、美味しい。この部屋でこんなに美味しい鍋を食べれるなんて少し前は想像していなかったや。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 夕食を終えた後は入浴。

 一応ブラくんをお風呂に誘ったら、いっしょに入ってくれるようだ。

 

「宿も飯も面倒を見てもらった。家主の誘いを断るのも無礼、だそうです」

「五大淫魔って揃いも揃って義理堅すぎない?」

 

 なんだろうね、このそこはかとない任侠のかほりは。

 

 お風呂はどっちだろう、と思ったけどショタ服を脱いで目玉触手モードだった。

 風呂桶にお湯を張ってあげたら気持ちよさそうに浸かっていた。……どうしよう。僕、ブラくんの感情がだんだん読めるようになってきたよ。

 

「不便はない?」

「…………」

 

 触手をゆらゆら振って問題ないアピール。

 さらには器用にスポンジを持って背中まで洗ってくれる。

 この子も五大淫魔だもんな。なんだかんだいい子である。

 風呂上りは冷たい飲み物を飲みつつまったり。ブラくんも氷水を触手で吸って寛いでる。なんだかんだいい休日だったように思う。

 

「じゃあおやすみー」

 

 そうして僕たちは眠りについた。

 

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