アルテミスでの補給が出来なかったため、俺達はデブリベルトで大破した戦艦での現地調整で何とか飢えを凌ぐ事にしたのだ。
当然最初はサイ達はやる気が無かったが、俺の一言で何とかやる気を示した。
しかしデブリベルトにはあの戦争の引き金とも言えるユニウスセブンの残骸があった。
その光景には皆は余りにも声が出なかった。
一度ユニウスセブンの地表に降り、俺はストライクを降りる際にハンドガンを一丁持つことにした。
誰もいないのは分かっているが、念のために持っておくことにして、俺はナタル達と共に近くの建物のドアを開ける。
そこには浮いている遺体とその赤子もいる悲惨な光景だったのだ。
それを見たミリアリアが悲鳴を上げながら顔を背ける。俺はその中に入り、辺りをライトで調べる。
どれも全てあの核ミサイルで起きた時のまま…、時間が止まったままだったんだ。
「(…これが戦争の犠牲者、何とも苦しいものだ)」
俺はそう思いながら手を合わせて、祈りを捧げる。
そして俺達は一度アークエンジェルに戻り、ナタルがある報告をし、それにサイ達は驚く。
「あそこの水を!?本気ですか!?」
「あそこには一億トン近くの水が凍っているのだ」
「そんな!バジルール少尉だって見た筈です!! あそこは亡くなった人たちの場所なんですよ!?」
サイが言った後にミリアリアがそれに抗議するが、それをマリューさん達の言葉で沈む。
「残念だけど、水はあそこしか見つからないの…」
「誰も大喜びしている訳じゃない。『水が見つかった!!』ってよ」
「そんな…フラガ大尉」
トールはムウの言葉に少しばかりショックを受ける、まあ俺も少しばかり言うとしよう。
「サイ、トール、ミリアリア。誰だってあそこに踏み込みたくはない…、でも仕方ないんだ。俺達は生きる為に水が必要なんだ、俺達は亡くなった者達の分まで生きなきゃならないんだ!」
「総司…」
「…坊主の言う通りだ。俺達は生きてる…、って事は生きなきゃならねえって事なんだよ!!」
ムウの言葉に皆は黙り込んだ。
重い選択かも知れないが、宇宙では水は確保出来ない。魔法でも使わない限り水は手に入らない。だからあそこの水を俺達は手に入れなきゃならないんだ…。
あっ、水と言えば気になる事が…。
「マリューさん、1つお聞きしたい事が」
「何?総司君」
「この艦に浄水設備ってありますか?」
「浄水設備?どうしてそれを聞くんだよ?」
ムウが俺が言った言葉に首を傾げ、俺は気にしている事を言う。
「あそこの水を使うのは分かりますが、バクテリアや汚物などの水も含まれているとしたら、それを分けるのは時間が掛かります。それだったら浄水設備でそれを分けれたらいいんですが…」
「…申し訳ないんだけど、その様な便利な設備はこの艦にはないの」
「分かるだろう?宇宙戦艦だぜ、それがあれば苦労はないって」
「…ですね」
俺はちょっとばかり期待を寄せたが、まあ呆気なく撃沈だ、そんな便利なある訳ないか…。
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そしてその頃、ザフトの本拠地でもあるプラントではアスランとクルーゼは評議会に呼ばれいていた。
それはヘリオポリス崩壊の件に付いて報告が聞きたいだそうだ、それもその筈。いくら中立国のコロニーで地球軍の新型機動兵器が開発されていて、それを破壊した事に黙っている訳にもいかなかったのだ。
そして全ての報告をクルーゼが終えた事により、それに評議会の過激派が怒りに満ちていた。
「こんな物を開発していたとは! ナチュラルめ…!!」
「でもまだ試作機段階でしょ? いくらそんな物があったとて」
怒り狂う過激派の者達を穏健派達がそれを何とか収める。穏健派は余り争いを好まない者達、戦争に突入してしまったとは言え、何とか戦争終結にさせようと努力してきた。
だがそれを1人の男が名乗りを上げる。
「皆さん。我々は好きで戦いを好んでいる訳ではないのです、誰もが戦争を終わらせたい、それは誰もが同じ。しかしそれを無残にも打ち破った者達がいる、思い出して頂きたい、血のバレンタイン…ユニウスセブンの悲劇を!!」
そう…その男の名は『パトリック・ザラ』、アスランの父親であり、プラント議会の攻防委員長でもあった。
彼は血のバレンタインで妻である『レノア・ザラ』を亡くしており、それ以降ナチュラルを根絶…滅ぼす為に動いている過激派の長でもあったのだ。
パトリックの目には誰もが敵に見えて、時には過激派の者達でも敵に見える時もある。
その様子にはアスランも心に重い気持ちで一杯だった。
「24万3721名…。それだけの同胞を失ったあの忌まわしい事件から1年、それでもなお犠牲を払い続け、コーディネーターを根絶やしにするナチュラルの手は緩まない。同胞を守る為に戦わなければならないのならば、戦うしかないのです!!」
その事に穏健派の者達は言葉が出ず、それにはプラント最高議長である『シーゲル・クライン』はため息をつくしかなった。
クルーゼが密かに笑みを浮かべる中で、アスランはただ悲しい表情をするしかない、当然だ…こいつも戦争を望まない奴だからな。
そして議会が終わり、アスランが敬礼をしたまま議員たちを見送る。その中でシーゲルはアスランに近寄る。
「アスラン」
「クライン議長閣下!!」
「そう他人行儀な礼をしてくれるな」
「いえ、これは…」
シーゲルの言葉にアスランは戸惑いを隠せない、仮に相手は評議会最高議長、その人物から他人行儀をしないでくれと言うのは無理だ。
それにはシーゲルは少々に笑いながら言う。
「ハハハ、君がようやく戻ったと思ったら、今度はラクスが仕事で居らん。全く…君達は何時になったら時間が取れるのかな?」
「はぁ…申し訳ありません」
「私に謝られてもな…。しかし…また大変な事になりそうだな。君の父上の言う事も分かるのだがね…」
シーゲルは本当はあまり戦火を拡大させたくないと考えている、無駄に血を流す必要ないと思い、早期終結に向かう様にと努力しているのだ。
それにはアスランも内心は同じ気持ちだったが、こいつの父の事を思うとなかなかそうは言えなかった。
「アスラン・ザラ!」
っとクルーゼがアスランを呼び、それにアスランは振り向く。
「あの新造艦とモビルスーツを追う! ダコーニとポルコの隊が私の指揮下に入る。出港は72時間後だ」
「はっ!」
「失礼いたします。クライン議長閣下!」
そう言って敬礼をし、アスランも敬礼をしてその場を去って行った。アスランと入れ替わるかの様にパトリックが来る。
そんなパトリックにシーゲルは重い口を開く。
「我々にはそう時間が無いのだ、いたずらに戦火を拡大してどうする?」
「だからこそ許せんのです。我々の…邪魔する者は」
そう言って静かにシーゲルを睨み付けるパトリック、彼はいつも場を収めるシーゲルを邪魔者とみなしている。
これは先の言葉と通り、パトリックの目は誰もが敵に見ている。
誰も彼を止める事は出来ないのだから…。
だがその時、ある人物がパトリックに近づく。
「ザラ国防委員長閣下」
それにパトリックは振り向くと、黄緑色の髪をした少年がやって来て、パトリックに話す。
「もうじき予定の時間が迫っております上、急ぎ準備を…」
「分かった。では…」
パトリックはそうシーゲルに挨拶をし去り、黄緑色の少年は敬礼をしてパトリックと共にその場を去って行く。
その時シーゲルはあの黄緑色の少年にやや危機感を抱いていた事に誰も知るよしもなかった。
それはあのアウラが送り込んだ刺客とも知らずに。
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そしてデブリベルトで、俺達はミリアリアが紙の花束を持って凍った水の前に立っていた。
補給を始める前に祈りを捧げる為、ミリアリア達が花束を贈る事にしようとしたのだ、当然そんな都合のいい花束はなかったが、丁度避難民の女の子が折り紙を持っていて、それを花束替わりにしようと考えたんだ。
当然その折り紙は俺を含めサイ達やその女の子も一緒に作った。その際俺とトールにサイはカズイの不器用さの様子を見て思わず苦笑いした事は言うまでもなかったな。
そして作った折り紙の花束をミリアリアがそれを送り、アークエンジェル一同全員黙祷をした。
俺もストライクのコックピットの中でこの様な悲劇を2度と起こさない様にと祈りながら黙祷をするのだった。
その後、俺達は物資や弾薬、水と言った補給を開始し、俺はストライクで周囲の警戒を当たっていた。
すると一隻の民間船が破壊されて流れているのが見えた。
「これは…、まさか…ん?」
俺が見ていると、モニターに一機のジンが現れて、俺は瓦礫の陰に隠れる。
その装備を見る限り、強行偵察複座型のジンだな…。ラクスを探しに来たのか。
だが今は不味いな…。
「アークエンジェルの皆は補給を受けている最中だ、ここで通信されたりもしたら不味い…」
それと同時にここで潰さないと、後でラクスを拾う場面も失うからな、申し訳ないがここで…っ!!
俺がそう思った時、カズイとチャンドラが乗るミストラルが俺の前を横切り、ジンの索敵センサーがそれに反応して、向かっていくのが見えた。
「ザ!ザフトの!!」
「うわっ!!」
ジンが所持するスナイパーライフルで発砲し、その一発がミストラルに当たるが破壊には至らない。
仕方ない…。撃つか!
俺が瓦礫から飛び出し、ビームライフルを構えた時だった。
俺の背後から桃色のビームが飛んできて、ジンの胸部に直撃して、一撃で爆破したのだ。
「っ!?」
俺は思わず後ろを振り向き、ビームライフルを構える。すると遠い場所にある1つの機影が映ったのだ。
それは緑色の装甲をし、尻部には緑色の粒子が散布され、手にはスナイパーライフルを持った機体がいたのだ。そして頭部には高性能のカメラがあり、その頭部にあるブレード式アンテナが上がり、ツインアイが輝く。
おいおい…!あれってまさか!!
俺がその機体を見ていると、その機体は俺の方に向けて指で合図を送った後、尻部から更に粒子が散布され、画面から消えて行き、俺はそれに唖然とするしかなかった。
なんで…あの機体此処に!?
そう思っていると、モニターにある信号が受信され、その反応に俺は振り向く。
近くに救命ポッドが流れていて、それに俺は見るのだった。
そして去った行くあの機体で、水色の髪をした少女が操縦している黒髪ロングの少年に通信を入れる。
『よかったのですか?勝手に手助けしちゃって…、合流は地球であったはず…』
「別にあれ位ならどうって事ない。それにあの距離でのビームライフルの精密狙撃は中々当たらない、ストライクのライフルでもな。だから俺がやった方が早いと思っただけだ」
彼が乗る機体…、それはこの世…この世界には存在しない機体、『GN-002 ガンダムデュナメス』であったのだ。
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そして俺は救命ポッドをアークエンジェルに持って帰り、それにはナタルは呆れられていた。
「つくづく君は落とし物を拾うのが好きな様だな」
「それはどうも」
「はぁ…」
俺の言葉にはナタルは再びため息を吐くしかなかった。
仕方ないだろう、このポッドには彼女が乗っているんだから。
「それじゃあ開けますぜ」
マードックさんがポッドの電子ロックを解除して、兵士たちが銃を構えてる。
そしてポッドの扉が開くと、そこに小さな丸いピンクの物体『ハロ』が出て来た。
『ハロー!ハロ!ハロ!ラクス!ハロー!』
ハロに見ながら思わず目を向けていると…。
「ありがとう、ご苦労様です」
っと俺は思わず振り向く、ポッドからはピンク色の髪をして、その美しい顔を整えた少女『ラクス・クライン』が出て来たのだ。
ようやく…会えた。
ようやく…ラクスと会えた。