フレイがラクスに暴言を吐いた事に食堂の空気は著しく重い、ミリアリアとカズイがフレイが黙り込んでいる様子を見て、カズイがそれに言う。
「…フレイってブルーコスモス?」
「っ!違うわよ!!」
即座に否定するフレイ、しかしフレイは先ほどの事を考えていた。
「…でもあの人達の言ってることって、間違ってはいないじゃない。病気でもないのに遺伝子を操作した人間なんて、自然の摂理に逆らった間違った存在よ。ホントは皆もそう思ってるんでしょ?」
「フレイ…、さっき総司に言われた事、もう忘れたの?」
「っ…」
ミリアリアの言葉にフレイは言葉を積もらせる。
《そういう誤った偏見な所があるから、ブルーコスモスが生まれてくるんだよ》
フレイはその言葉を聞いて黙り込んでしまう、彼女は彼女なりの考えてを持っていたとしても、それは言ってはいけない事でもあるのだ。
この場にいない俺はこの世界の秩序が本当に狂ってると思う。
遺伝子を操作しただけで、優劣を決め、互いに憎しみ合って殺し合う…。
そんな世界で、未来を託す子供たちに寂しい思いをさせたくはない。そんな世界で悲しい思いを継がせたくないんだ。
この世界の子供たちには明るい未来を見て欲しい。
俺はそう思っている。
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補給を終えて、デブリベルトを出たアークエンジェル。補給の問題が片付いたと思ったら、今度はラクスを拾ってしまった事に頭を悩ませていた。
「やれやれ、補給が終わったと思いきや、今度はピンクの髪のお姫様か。悩みの種は尽きませんな、艦長殿」
っとムウは冗談ばかりの事を言い、それにはマリューさんはため息をつく。
「はぁ…、やっぱり月本部に連れて行くしかないのかしら…」
「まあ、そりゃあ大歓迎だろうな。いろいろ利用価値があるし」
ムウはラクスを月本部に連れて行くことは賛成としている、だがマリューさんは気が乗らない雰囲気であった。それもその筈、いくらラクスが民間人と言えど、コーディネーターである上にプラント最高評議会議長の娘を利用する手はない。
マリューさんはそれを巻き込みたくないと見ている。
「出来れば…彼女は巻き込みたくはないです。民間人ですし、そんな目には合わせる訳には…」
「そうおっしゃるなら彼らは?」
っとマリューさんの言葉にナタルがある事を語り始める。
「こうして協力し、戦場で戦ってきた彼等だって、まだ子供の民間人ですよ」
その事にトール達は思わず振り向き、それを聞いているマリューさんは困った様子になる。
「バジルール少尉…それは…」
「ソウジ・モリカワや彼らをやむを得ぬとは言え戦闘に参加させておいて、あの少女だけは巻き込みたくない?っとでも仰るのですか?」
ナタルの途轍もない正論に、マリューさんは言葉が出なかった。
「彼女はクラインの娘です、と言う事はその時点で既に“ただの民間人ではない”っと言う事ですよ」
「……」
マリューさんはその言葉に返す言葉もなかった。
そして三日後、アークエンジェルは月に向かっている中で、第8艦隊の先遣隊がアークエンジェルを捜索している事を知り、更にはフレイの父親も一緒に乗って探していると聞いて、フレイはそれに嬉しそうにした。
だがその前にサイはある事を問う。
「フレイ、総司にはちゃんと謝ったか?」
「え?どうして…」
「ミリィ達から聞いたよ、あの子に酷い事を言った際、総司を怒らせたって」
それにフレイは気まずそうになる。
「それは…まだだけど」
「なら早めに謝った方がいいよ。総司は一度怒らせると本当に面倒い所があるから…」
「…うん、サイがそう言うなら」
っとそう言うフレイ、本当なら他人に頼まれるのじゃなく、本心で謝るのが基本なのだが、フレイは基本わがままなんだろうな…。
そして俺はと言うと…。
「まあ!そんな事も出来るのですね?」
ラクスの部屋に居て、彼女に蝶のロボットを作ってあげたのだ。
ハード面やソフト面も俺自身で考えたから、これは俺なりの自信作ってもんだ。
アスランにハード面で負けるかよ…。
「これは君にあげるよ」
「宜しいのですか?」
「ああ、記念だよ」
俺がそう言ってると、突如警報が鳴る。
『総員!第一戦闘配備!!総員!第一戦闘配備!!』
ん?何だ…?こんな所で敵に遭遇?
「まあ、どうしたのでしょうか?」
「どうやらまたザフトに見つかった様だ」
「と言う事は、また戦いになるのですね?」
「ああ、君はこの部屋から出ない様に」
「総司も戦いに向かわれるのですか?」
ラクスが俺を見つめながらそう言う、おいおい…頼むからそんな悲しい目をするのはやめてくれよ。流石に行きづらいよ。
「…そうだよ。それが俺の今出来る事だから」
そう言って俺はラクスの部屋から出て、パイロットスーツに着替える為更衣室に向かう。
するとその時。
「総司!」
突然声を掛けられ、俺は振り向くとフレイが不安そうな表情で来る。
「戦闘ってどういう事?」
「分からないが、戦闘配備って事はザフトに先遣隊が見つかったって事だろうな」
「総司! 先遣隊には私のパパが乗っているの! お願い!パパを守って!!」
フレイが俺の腕を掴んで、父親を守ってほしいっと頼んできた。だが…。
「…すまないフレイ、その約束は出来ない」
「何で!?」
「戦場ではいつ何が起こるか分からないんだ。守れるものが守れない場合がある」
「そんな…!じゃあパパの船を守ってくれないの!?」
フレイは泣きそうな目で俺を見ながら言う。
「そうは言ってないが、出来る限りの事はする。ただフレイ…これだけは覚悟して欲しい。戦場でいつ死ぬか分からない、じゃなきゃ自分を失う事になるかな」
俺はそう言って更衣室へと向かい、フレイはその後姿を見続けるのであった。
そして別の所では、先遣隊とザフトの艦隊が交戦している様子を一隻の船が見ていた。
それはあの時アルテミスでアークエンジェルが去る様を見ていた船だ。
「これは…大変な事になったな」
「や、やっぱり助けましょうよ!」
ロングヘアの黒髪の少年が言う中で、水色の髪の少女が慌てた様子で言う。
っがそれをそのロングエアの少年が頭を横に振る。
「駄目だ、今出たらややこしくなる。ここは見守るんだ」
「そんな…」
「しかし参ったもんだな。先遣隊がザフトに見つかるなんて、それをアークエンジェルも見つけて駆け付けるって…」
筋骨隆々の金髪少年がその様子を見て、黒髪ロングの少年はそれに呟く。
「…これも試練って事なのかな。フレイ・アルスターの…」
っとまるでフレイの試練だと言わんばかりに言う黒髪ロングの少年。
俺はそれを知るのはもっと後の事だった。