うちは呪術師専用図書館じゃないんですけど   作:月日は花客

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番外.君たちは初めての物語を覚えているか

「カレーライスって話、知ってる?」

「知らない」

「小説ですか?」

 

 今日も、書斎に現れた五条くんと夏油くんの相手をしていた時、ふと思い出した。

 昨日「カレーライス 教室で出会った重松清」を読んだせいかもしれない。

 そこに載っていた「カレーライス」という物語は、小学校の国語の教科書に載っていたことで有名だった。あとがきでその事への苦労が読めたりするのだが、割愛する。

 少なくとも、この二人は知らないらしい。

 

「児童小説……の区分に入るのかな。でも大人が読んでも楽しい」

「絵本を舐めるなってもう何回も言われてるから知ってるよ」

「へぇ、読んでみたいです」

 

 そういえば、彼らの年代はどういった物語が教科書に載っていたのだろう。そもそも教科書の会社が同じだったろうか。

 私の学校は中学まで光村図書だった。こうむら、こうそんと読んでいた皆んな、ただしくは「みつむら」だ。覚えておこう。

 もし光村だった場合、「教科書クロニクル」というウェブサイトであの頃の教科書、および内容を確認することができる。

 

「君ら何年生まれ?」

「せんきゅうひゃく……89?」

「1989。私は早生まれで1990」

「えっ」

「え?」

 

 私の生まれ年より前じゃん。

 つまり君たち過去から来たってこと?? 嘘。

 ええ〜……そんな事あるのか……つまり今まで来た人皆んな私の想定より上になってる? のか? まじかぁ……。

 五条くんも夏油くんも私より数年年上……かぁ……。

 なんだか心にダメージを負った気がする。なぜだろう、先輩にナマ言ってしまった時の焦りと似ている。

 だが、五条くんに関しては子どもの頃から見てきたのに変わりはないのでダメージは軽いか。

 いやでもちょっとアレだな……これからもう少し態度を改めるか……。

 

「いや……なんでもない。えー、1990……」

 

 スクロールすると出てきたのは一年生の教科書。

 五条は家庭教師だったらしいので、小中で習ったのかはそういえば、謎だな。とここで思い出す。

 まぁこれを機に児童小説の良さをもう一度味わうといい。

 

「まず一年生。『はなのみち』『おおきなかぶ』」

「おおきなかぶは知ってる」

「花の道……?」

「くまのやつだよ」

「あ〜なんかうっすらと……? 覚えてるような……?」

 

 くまさんが袋に花の種を入れて行こうとして〜……という話だ。これは私も覚えがあるから、長く収録されているのだろう。

 これは上巻で、半年経てば下巻。「くじらぐも」や「たぬきの糸車」が題に上がる。

 くじらぐもは良いぞ。雲の鯨なんてロマンの塊でしかないんだから。私は一年一組だったから、作中に登場する子達は二組だったのを残念がったものだ。母がそう言っていた記憶がある。

 

「二年生。『スイミー』『お手紙』『スーホの白い馬』」

「あ、スイミーって教科書にあんだ」

「そうか、悟は知らないか。ここで読んだのかい?」

「おー、それこそ小学生くらいの歳に」

 

 私はあの時の君の疑問をよく覚えているよ。まぁ今思うとなかなか的を射た質問だった。クソガキでも情緒あるガキだったな。

 お手紙は私はどちらかと言うと、英語の教科書に収録されていた記憶が強い。最後の方で長文読解としてあったんだな。

 同じく「ずうっと、ずっと、大すきだよ」も英語の教科書イメージが強い。あれも泣けるんだ。

 

「三年生、『エルマー、とらに会う』『モチモチの木』……エルマーシリーズって収録されてたんだ」

「『エルマーの冒険』しか知らん」

「三年生はあんまり記憶にないかも……」

 

 因みにみんなのトラウマ「ちいちゃんのかげおくり」もここです。でも小さい時はちいちゃんの悲壮な結末ではなく、かげおくりの遊びの方に焦点がいっていた気がする。

 放課後、友達とやってみたものだ。

 今度この二人にも教えてやろうかな。

 

「四年生、『白いぼうし』『ごんぎつね』」

「流石にごんぎつねは知ってる」

「白いぼうしってあれか、チョウチョのやつか! 懐かしい」

 

 白いぼうし……「これは、レモンのかおりですか」という序文が思い浮かぶ。タクシーという特別感ある始まりもいいんだ。あの時はタクシーなんてそうそう乗らなかったから。

 ごんぎつねは、言わずもがなの名作。劇でやった人もいるだろう。

 夏油くんはその懐かしい題名に、柔らかな眼差しで過去を思い出していた。

 

「五年生、『宇宙人の宿題』『大造じいさんとガン』」

「ガンって、病気の癌?」

「いや、鳥の方の雁だ」

「へぇ〜知らねえ〜」

「ウチにあるぞ」

「流石」

 

 宇宙人の宿題は、私知らないなぁ。『ふるさと』とかならわかるんだけど。世代差が出ている。

 

「六年生、『赤い実はじけた』『やまなし』」

「クラムボン! クラムボン!」

「流石に六年生は覚えてるなぁ。案外覚えているものだね」

 

 赤い実はじけたは私知らないな。やまなしはわかる、宮沢賢治。

 こうしてみると、結構知らない物語がたくさん収録されていた。別年代の教科書を見ると言うのも、案外楽しいものだ。

 

「カレーライス、無かったな」

「あれは六年生の話だけど、結構後みたい」

「でも、こうして題名を聞くと読み返したくなってくるなぁ」

 

 案外、物語じゃない詩歌とかも覚えてるかもね。

 私は教科書で寺山修司を知ったし。

 人間の記憶は馬鹿にできないのだ。

 

「ところで、なんで生まれ年聞いた時に驚いてたわけ?」

「……夕飯カレーライスにするけど、食べてく?」

「ねぇなんで?」

「牛派? 豚派?」

「鳥派ですね」

「シカトすんなよ!」

 

 いや、絶対にこの事実は墓まで持っていく。








私は「盆土産」が印象に残っています。
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