うちは呪術師専用図書館じゃないんですけど   作:月日は花客

19 / 19
番外編:食感はホットケーキにおいて第一に考えよ

 

 世の中にはスフレパンケーキだの、台湾カステラ風だの、分厚い円柱パンケーキだの、邪道が蔓延っている。

 そもそも分厚いパンケーキが市場を席巻したのは何故か。

 見た目の豪華さや、ふんわりとした食感が好評だったのだろうが、第三位くらいに「絵本みたい」というものが来るのではないだろうか。

 極めて遺憾である。

 「ちびくろ・サンボ」も「白くまちゃんのホットケーキ」も、出てくるのは平たいホットケーキだ。パンケーキだ。

 ふわふわ食感は否定しないが、あのしっとりした平たい薄いホットケーキこそが原初絵本のホットケーキなのではないか。

 

「そう思い、我々はキッチンに立つのだ」

「またお菓子作り?」

「パンケーキは分厚い方が良いでしょ〜」

「酒が飲みたい」

 

 硝子ちゃんには後で蜂蜜酒をあげよう。ファンタジー定番のお酒だぞ。

 私は休日。また書斎に三人が一気に集まった昼前ということで、今回もキッチンにて菓子を作る。

 といっても、前回の「ぐりとぐら」のカステラよりはよほど簡単だ。だからこそアレンジが効くとも言う。

 ぐりとぐらの中川李枝子さんや、「ある閉ざされた雪の山荘で」の東野圭吾さんなど最近は著名な作家さんの訃報が多くて悲しい。偉大な作家というのは長年続く名作を出すので、案外年齢がご高齢だったりするのだ。

 本日のメニューは当然ホットケーキ。だが、ただのホットケーキではない。

 

「コーヒー、シナモン、胡椒、バジル、その他諸々。色んな材料の中から、好きなものを組み合わせて黄金のパンケーキを作ろうの会だ」

「ああ、だからこんなにパンケーキ以外の材料がたくさん」

「ホットケーキミックス使わねーんだ」

「あれ、ホットケーキ作ったことあるの」

「恵と津美紀と作ったの」

「いいねぇ、保護者してんじゃん。今回は小麦粉のみです」

 

 ホットケーキミックスは便利だ。

 ホットケーキだけじゃなく簡単なスポンジケーキなんかにも使える。万能と言って良い。

 しかしそれはふわふわで分厚いパンケーキになってしまうのだな。膨らませることが得意なのだ。ホットケーキミックスは。

 私の好みは平たく薄いしっとりホットケーキ。ふわふわや分厚いものには興味が無い。

 

「分厚いの作りたいならベーキングパウダーやセルクルもあるけど、初心者にはセルクルはお勧めしない」

「セルクル?」

「成形のための丸い金属の輪っか。型として使うんだけど……蒸したりセルクルから崩さないようにひっくり返したり、上級者向け」

 

 時間もかかるし機材も別でいるので今回は使用不可です。

 洗い物をどれだけ出さないかで家庭のホットケーキは決まるんだよ。

 

「甘いの、しょっぱいの、なんでもいい。フライパンと電子レンジを譲り合って使ってくれたら、何作っても良いよ」

「マジで!? 消費できないでしょ」

「割と保存が効くから残ったらしばらく私の朝と昼になる」

 

 ホットケーキは冷凍したら割と期間が持つのである。混ぜたものによっては早めに消費しないとだけど。

 私は髪を結び、生地作りに取り掛かった。

 五条くんも夏油くんも、混ぜる過程はカステラで経験している。泡立て器くらい余裕で使えるだろう。

 

「僕甘いの作ろーっと! チョコチップとカラースプレー」

「んー、しょっぱいのがいいな。胡椒……インスタントコーヒー?」

「牛乳と混ぜて使うんだよ。私はパプリカパウダーと胡椒かな〜。おかず系にする」

「私もしょっぱいの食べたい」

 

 硝子ちゃんはおやつカルパスやベーコンを選んだ。うーん酒飲みの選択。

 

「基本材料は一緒だからまとめてあるけど、フライパンは二口しか無いから順番に使って」

「恵くん達も来れたらよかったのにねぇ」

「もう中学なんだから流石にホットケーキでは喜ばないんじゃない」

「いーや、お菓子作りと縁遠い生活だったしアガるでしょ」

 

 まぁなんとなく、泡立て器を持った時にテンション上がるのはわかる。

 ガシャガシャ混ぜて、薄力粉も振るう。この時、たくさん混ぜれば混ぜるほどもちもちになるが、しっとり派の私は程々に辞めた。

 

「ホットケーキって絵本にもよく出てくるけど、やっぱ丸くて平べったいのが正義よ」

「えー、分厚い方がおいしくない?」

「素人が……」

 

 あのしっとり加減がたまらんのだ。

 

「ひっくり返すにはフライ返しをやろう」

「あれやりたい。フライパン振ってやるやつ」

「無茶すんなー」

 

 あれは上級者中の上級者がやるもんだが、小器用に夏油くんは成功させていた。五条はできなかった。

 

「できた。チョコチップ+カラースプレー+トッピングに生クリーム〜」

「匂い甘っ」

「見た目からして胃もたれしそう」

 

 五条くんは完全に甘党のそれだ。焦げたチョコがさらに甘い香りを引き出していて、甘いものが苦手な人は見ただけで口に手を当てそう。

 

「私のはシンプルに胡椒。ハムとかレタスとか乗せれるね」

「シンプルイズベストだ」

「もうちょっと飾り気があっても良くない?」

「地味」

「うるさいよそこの二人」

 

 夏油くんのは、焼き目が均一だし綺麗な丸になっていた。ホットケーキを焼くのは得意なのかもしれない。今度ミミナナに作ってやろうと呟いたのが聞こえた。

 

「ベーコンとおやつカルパス。砂糖控えめ」

「しょっぱそ〜」

「ホットケーキっていうか、酒のための生地って感じ」

「お腹は膨れるからこれ自体は悪くなさそう」

 

 硝子ちゃんに蜂蜜酒を渡すとニヤリと笑って喜んだ。

 ただ、これはクトゥルフを読んだ私が飲みたくなったものなので……冒涜的というのは、心の中に秘めておく。

 

「私のはパプリカパウダーと胡椒、乾燥バジル。おかずに走った」

「パプリカパウダーってどんなのなん」

「結構美味しいよ? 香ばしいし」

「こっちも酒には合いそう」

 

 それぞれのパンケーキ、結局おかず系が四分の三になってしまった。

 

「あ、五条くんのは私食べないからそっちが持って帰ってね」

「これ食べられるのアイツしかいないよ」

「頑張って完食してね」

「え、8枚くらい焼いちゃったんだけど」

 

 その後頑張って完食した五条くんは、キツそうにお腹をさすって帰った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

東方仗助の能力を持って呪いの世界を生きる(作者:大腿四頭筋)(原作:呪術廻戦)

『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する東方仗助。そのスタンド能力「クレイジー・ダイヤモンド」によく似た術式に目覚めた転生者が闇を祓って闇を祓ってするお話。▼主人公最強ではないですが、対呪霊においては五条悟以上のチートになります。


総合評価:8983/評価:8.12/連載:11話/更新日時:2026年05月12日(火) 00:00 小説情報

時計塔にいる、時計塔のマリアさん(偽)(作者:アスタロット)(原作:Fate/stay night)

時計塔のマリアごっこで Bloodborneを周回して、上位者になった主人公さん。上位者パワーで、なんやかんやヤーナムを飛び出した。そんな外の世界で、主人公さんは自由に生きる。※なお、外の世界は型月世界とする。


総合評価:1466/評価:7.3/連載:24話/更新日時:2026年10月11日(日) 10:29 小説情報

呪術廻戦υ(ユプシロン)(作者:ホシカワ)(原作:呪術廻戦)

夜の杉沢第三高校。▼そこで同じ学校の先輩を助けるために両面宿儺の指を飲み込んだ。▼だが両面宿儺が現れない。▼しかし膨大過ぎる呪力を帯びる肉体。▼更に先ほどまでのあどけなく呪術界の事を全く知らなかった少年もいない。▼少し大人びた表情の虎杖悠仁。▼彼は後方にいる伏黒恵を見て微笑む。▼「伏黒――若いな……」▼しかし呪霊が虎杖を喰らおうと襲い掛かる。▼「せっかく旧友…


総合評価:8125/評価:8.09/連載:13話/更新日時:2026年05月22日(金) 18:00 小説情報

個性【蒼星】(作者:指ホチキス)(原作:僕のヒーローアカデミア)

蒼星(Blue Star)の個性と原作知識を持つ少女がヒロアカ世界の超常黎明期、原作の約130年前から生きていくお話。▼LobotomyCorporationはいいぞ


総合評価:16219/評価:8.8/連載:55話/更新日時:2026年10月08日(木) 12:22 小説情報

畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 (作者:鳳飛鳥)(原作:呪術廻戦)

癌で人生を終えた男が、若い頃の過ちが原因で畜生道へと堕ちる▼しかし生前に積んだ徳のお陰でただの畜生道では無く、特別な畜生道へと至る事となった▼その上、生まれ変わったのは生前好きだった漫画の一つ呪術廻戦の世界だった▼好きな作品ではあったが死亡フラグ満載のヤベー世界で畜生道に堕ちた自分がどうやれば生き抜けるのか?▼そんな感じの物語


総合評価:2213/評価:7.16/連載:101話/更新日時:2026年10月15日(木) 20:20 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>