深淵六層の白笛であり、「黎明卿」の異名を持つボンドルド。しかし彼には、誰にも知られていないもう一つの夢があった。それは、「おしゃれなカフェを経営すること」である。
第一章:夢の開店準備
「素晴らしい!これこそ私が追い求めた完全なるエスプレッソマシンだ!」
ボンドルドは新しいエスプレッソマシンを前にして、その「奇跡的なデザイン」に心から感動していた。黒い装甲と白笛はそのままだが、手にはメモ帳と鉛筆が握られており、何やらラテアートのデザインを真剣に考えている。
「ナナチ、君の意見を聞きたいのだが、ここに星型のラテアートを入れるのはどうだろう?」
「…はぁ?なんなんだお前は…。それより、どうしてカフェなんか始めようと思ったんだ?」
「それは素晴らしい質問だね、ナナチ。私は深淵を探求して多くの犠牲を払い、多くの謎を解明してきた。しかし、何かが足りないと気づいたのだ。それは…お客様の『笑顔』だよ!」
ナナチは呆れ果てた表情を浮かべながら椅子に座り込む。
「いや、そんなのどうでもいいだろ…。お前が言う『笑顔』って、だいたい不気味なんだよ…」
「そうか、では君の笑顔をお手本にしよう。素晴らしい案だ!」
第二章:奇妙な接客
数日後、ボンドルドのカフェ「アビスの一杯」がついにオープンした。
初めての客が扉を開けると、異様な光景が広がっていた。壁には深淵の地図が飾られ、テーブルごとに「価値ある飲み物リスト」が置かれている。
「いらっしゃいませ!黎明卿のカフェへようこそ!」
ボンドルドは完璧な接客スマイルを浮かべて客を迎える。だがその手には…明らかにおかしい量の実験器具が握られていた。
「こちら、本日のおすすめ『深淵ブレンド』です。味わうと二層から六層までのエコーを感じられる素晴らしい一杯となっています!」
客は一口飲んだ瞬間、あまりの酸味と苦味に顔を歪めた。
「こ、これは…」
「その表情、最高だ!まさに深淵の洗礼を感じた瞬間だね!」
第三章:ナナチの暴走
ナナチはもう我慢の限界だった。
「おい、ボンドルド。こんなカフェ、まともに経営できるわけないだろ!」
「何を言うのだ、ナナチ。私のカフェはもう深層探索者たちの間で大人気だぞ!」
「いや、それただの怖いもの見たさだろ…。しかも、客が帰り際に全員『また実験されるんじゃないか』って怯えてるじゃないか!」
ボンドルドは反省するどころか、さらに新しいメニューを考え始める。
「では次は、『命を分け合うティータイム』というテーマで新しいプランを立てよう。君も協力してくれたまえ、ナナチ!」
「…もう勝手にしろ…」
結局、カフェは一部の好奇心旺盛な客に支えられ、なんとか営業を続けることになった。だが、カフェの収益はすべて「次なる実験」に費やされる運命だった