コミュ障陰キャが弾き語る   作:スヴァルベルグ斉藤

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1話

 

「それでは時間もありますし、自己紹介でもしましょうか」

 

 !?

 入学して数日が経ち先生の話も終盤へと差し掛かり、そろそろ締めの挨拶にでも行きそうな頃、口から出されたのは締めの挨拶などではなく、自己紹介という名の爆弾だった。

 

「順番は……番号順でいいかな。それでは青木くんからどうぞ」

 

 やばい、どうしよう。

 始まってしまった、自己紹介地獄へと続く道が。わたしは小林だから、あ行が終わればすぐに番が回ってきてしまう。何かしら考えなければ、中学の時と同じように『答えは沈黙』になって高校生活が終わってしまうだろう。

 

 真面目に名前と好きな食べ物とかを話すか?

 それともウィットに富んだユーモアでも言ってみる?

 それとも皮肉の効いたブラックジョークか?

 

 あぁ、なんか悪い流れがきてる気がする。

 中学生の時もこんな感じで悩んで、いざ自分の番になった時に、頭の中が真っ白になったような……

 

 こうなったら前の人の自己紹介のフォーマットをコピーしよう。

 

 あっ、どうやらそうこうしているうちにわたしの前の人の番みたいだ。

 

 そして立ち上がった前の席の人は、亜麻色の長髪と整い過ぎている顔立ちをしていて、テレビの中の芸能人やアイドル達と引けを取らない程に可愛い子だった。どこかで見たことあるような気がするけど、多分気のせいだろう。

 

「加賀美かがみ空そらです。好きな食べ物はわさび。趣味はベースを弾くことと、強盗を撃退する妄想をすることです。一年間よろしくお願いします」

 

 そこそこなユーモアがありつつ、なおかつ特異なあるあるネタが紛れ込んだ自己紹介に、教室は笑いと拍手に包まれた。

 やばい、キャラが濃すぎる!!

 ふざけるなよ貴様!

 貴様みたいな顔の良い奴は、無難な自己紹介をしておけばいいんだよ!!

 

「次、小林さんお願いします。小林さん?」

「あ、あぁぁぁ……は、はい」

 

 わたしは返事をしてから、ゆっくりと立ち上がった。

 

「こ、こここ小林こばやし彩奈あやなです。す、好きな食べ物はもやし。しゅ、趣味は空を眺めることです」

 

 吃り過ぎたわたしの自己紹介によって、暖まっていた筈の教室が静まり返った。しかし目の前の加賀美さんが拍手をしたことを皮切りに、教室は満開の拍手が咲き誇ったのだった。

 

 咲き誇ったのだった。じゃねえよ。

 終わった。

 死にたい。

 強盗でいいから今すぐわたしを殺してくれ。

 

 わたしは緊張と恥ずかしさで、自覚できるほどに真っ赤に染まった顔を隠すように、顔面を机に埋めた。

 

 さようならわたしの高校生活。

 こんにちはわたしのぼっち生活。

 

 顔を埋めること数分。

 どうやら自己紹介が終わったようだ。

 さて、次は新入生歓迎会だったか。

 

「彩奈さん、私のこと覚えてる?」

 

 新入生歓迎会の会場である体育館へ向かおうと席を立ったところで、前の席の加賀美さんが後ろを向いて話しかけてきた。しかもその内容は自分を覚えているかというもの。

 

「……へ?い、いいいえ。お、覚えてないです」

 

 見たことはあるような気がするけど、どこで見たのかは覚えていない。きっとどこかですれ違っただけだろう。

 

「そっか、そうだよね。私苗字変わっちゃったし」

 

 加賀美さんは深刻そうに顔を俯かせながら、納得したように言う。

 

「も、もしかして、知り合いだったり……」

「……私は小学生の頃に、彩奈さんのことを虐めてました」

「……う、うん?」

 

 急に話が直角に曲がってしまい、困惑してしまう。

 

「私は葵あおい空そらです。小学生の時にあなたを虐めた葵空です」

「そ、そうだったんですか」

 

 そういえばいたなぁ、そんないじめっ子が。

 もうそんなことどうでも良いけど。

 

「本当に申し訳ございませんでした。本当に許されないことをしてしまいました。私に出来ることならなんでもするので……」

「加賀美さ〜ん、私達と一緒に新入生歓迎会行かない?」

 

 加賀美さんが話している最中、3人組の女子に声をかけられ、わたしはもう既に出来ていた女子グループに恐怖を覚えて背筋を落とした。

 

「いえ、今は……」

「葵さん、わたしはもう気にしてないんで、葵さんも気にしないでください。それでは」

 

 わたしは姿勢を低くして集まる視線達から隠れ、素早く教室を出て行った。

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