コミュ障陰キャが弾き語る   作:スヴァルベルグ斉藤

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3話

「小林さん、ちょっといいかしら」

 

 ホームルームが終わり、新入生歓迎会から数日が経って部活動が解禁された今日、いざ軽音部の見学に向かおうとするわたしの歩を止めたのは、わたしみたいな陰キャでぼっちでコミュ障な生徒に対処しようとするけど空回りしそうな新任の副担任の先生だった。

 

「な、なんですか?」

 

 似たようなシチュエーションを中学の頃に味合わされたわたしからしてみれば、今すぐにでもこの場を逃げ出したいくらいだ。そんな状況なのだから当然吃ってしまう。あ、吃るのは元からだった。てへっ。

 

「小林さん学校のことで悩んでることあったりしない?」

 

 一つ言って良いですか?言わないけど。

 言わせてもらいますけど、まだそれを聞いていいフェーズではないんです。だって、始業式から一週間も経ってないですよ?

 

 わたし今から軽音部の見学に行くんですよ?

 舐めてるんですか?

 舐めてるんでしょうね。

 

「な、悩みですか?と、特に無いですけど」

「仲良い人とかいる?」

 

 なんだその質問は。

 わたしみたいなゴミカス根暗陰キャには友達なんて出来ないってか。その通りだよ!

 

「……か、加賀美さんとかですかね」

 

 ごめん、加賀美さん。

 この前喋って以来、会話らしい会話をした覚えが無いけど、今だけは仲良いってことにしてくれ。

 

「そっか。加賀美さん以外はいる?」

 

 なんだ、その加賀美さんはみんなと仲良くしてるから数のうちに含まれないよなぁみたいなノリの質問は。

 もう面倒臭いなぁ、これどうしたら終わるのさ。

 

「あっ、彩奈さんと先生」

「あら、加賀美さんじゃない」

 

 そこにやってきたのは加賀美さん。

 これはややこしいことになってきちゃったなぁ。

 お願いだ加賀美さん。察してくれ!!

 

「ちょうど良かった。今から部活の見学に行こうとしてたんだけど、一緒にいかない?」

 

 加賀美さんはわたしの顔と先生の顔を見てから、にっこりと笑ってそう聞いてきた。

 

 加賀美さん、あなたは神だ。

 これからは救世主と呼ばせてください。

 

「い、いきます」

 

 という訳で乗るしかないよな。

 このビッグウェーブにさぁ!!

 

「先生さようなら〜」

「はい、さようなら」

 

 ということで、流れるように別れの挨拶を済ませる2人を横目に歩き始める。角を曲がって先生から見えなくなった所で立ち止まる。それを見た加賀美さんも立ち止まる。

 

「あ、ありがとう。じゃ、じゃあまた明日」

 

 そして走り出した。

 

「ちょ、ちょっと待って彩奈さん」

 

 加賀美さんごめんなさい。

 わたしは今から軽音部の見学に行かないといけないんだ。クラスの美少女に構ってる暇なんてないんだ。

 

 軽音部の活動場所である多目的室に着いたわたしは、走ったことにより切れていた息を整えながら、開いているドアから中の様子を覗いてみる。

 

 多目的室の中には白くて長い机が沢山並んでいて、一年生と思われる人達が何人も座っている。パッと見たところでも30人以上はいそうだ。

 

「彩奈さんも軽音部入るの?」

「ひゃぁ!?」

 

 突然背後から話しかけられたことで、驚いて飛び上がってしまった。

 

「な、ななななんで加賀美さんがここに」

「軽音部に興味があって。バンドもやってみたかったしね」

 

 あっ、そういえば自己紹介でベースがどうのって言ってたような。

 

 当然のことのように多目的室の中へと入っていく加賀美さん。わたしは加賀美さんに視線が向いているうちに、こっそりと席についた。

 

 机の上には、軽音部の活動内容やイベントの日程などが書かれた紙と、入部届がおいてある。わたしはとりあえず入部届けに名前を書いた。

 

「へぇ」

 

 名前を書き終わると、隣の席の人がわたしの入部届を見て声を漏らした。隣の席の人は黒髪のウルフカットで紫色のメッシュを入れていた。

 

 うわぁ、派手派手バンドマンだぁ。

 バンドのことあんまり分かってないけど、多分派手派手バンドマンだぁ。いや、この場合は派手派手バンドウーマンか。

 

 ってか、へぇってなに!?

 入部届に名前書いただけなんですけど!!

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