コミュ障陰キャが弾き語る   作:スヴァルベルグ斉藤

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4話

「新入生の皆さんこんにちは。そしてこの軽音部の見学に来てくださってありがとうございます」

 

 隣の席の派手派手バンドウーマンに無意味にキレていると、よく通る綺麗な声の挨拶が聞こえた。前を見ると、この前の新入生歓迎会のライブでボーカルをしていた先輩がいた。隣には水色の髪の毛の男装女子もいる。

 

「部長の安立(やすだて)美咲(みさき)です。バンドではギターボーカルをやっています。安立(あだち)じゃなくて安立(やすだて)だから。間違えたら死刑だからね」

 

 へ?

 

「冗談でーす。気軽に安立(あだち)ちゃんって呼んでね〜」

 

 呼べるか!

 

「ここからはこの部活のステップを分かりやすく説明していくよ。お手元にある資料にも書いてあるので、よければ見ながら聴いてください」

 

「まずステップ1、バンドを組もう」

 

 おっとっと、もしかしてわたしみたいな人は募集してなかったりする?

 

「バンドを組もうとは言ったけど、バンドを組まずに1人でギターを弾きにくる子もいるし、絶対に組めって訳じゃないよ。でもライブに出るなら、バンドは組まないといけないからね。ちなみに初心者の人でも、ちゃんと先輩達が教えるので安心して下さい」

 

 あー、良かったぁ。

 ライブなんてしないからバンドは必要ないし、1人でギターを弾いてる子がいるってことは、その人がギターのことを色々と教えてくれるかもしれない。

 

「次はステップ2。オーディションを受ける。オーディションっていうのは、軽音部の中のオーディションのことです。うちは体育祭や文化祭、その他の行事なんかもバンドの演奏をさせてもらえるんだけど、勿論この演奏にも枠があるの。その枠を取るためにオーディションをしてライブに出るバンドを決めます」

 

 ふむ。

 なんか大変そうだし、がんばれーって感じだな。

 

「そしてステップ3、ライブに出よう。しっかりと練習して最高のパフォーマンスが出来る様に頑張ろう。軽音部の活動はこのくらいだね。それじゃあ(すい)くん、バトンタッチね」

 

「はい。副部長の五十嵐(いがらし)(すい)です。皆さんはよく誤解されるんですけど、僕は男です。ちゃんとついてますので、女扱いはやめてくださいね」

 

 そうだったの!?

 確かになんで男子用の制服着てるのかな?とは思ったけど。

 

「もし女扱いをされたら、安立部長のいうところの死刑にしちゃいますからね。これは冗談ではありません。気をつけてください」

 

 副部長は笑顔で言ってはいるが、その瞳は全く笑っていなかった。

 

 いや、怖いってさっきから。

 

「ということで、各パートの練習場所について説明していきます。ギターはここ、多目的室です。でベースは……」

 

 ギターはここかぁ。

 なら今この教室にいる先輩とかはみんなギターだったりするのかなぁ。多目的室は普通の教室よりも広いからかなり良いなぁ。

 

「最後にひとつだけアドバイスを。軽音部はバンドを作る関係上、人間関係がギクシャクしたり、恋愛やら失恋やらでドロドロとしたりします。それがきっかけで辞める人も沢山いるので、そこだけ気をつけてください。僕からは以上です」

 

 わたしには関係なさそうだ。

 え、なんでかって?

 それは勿論決まってるだろ。そもしも人間関係なんて存在しないからだよ。ガハハハハ!!……はぁ。

 

「入部届は家に帰って、しっかりと両親と相談してから印鑑を押してもらってください。じゃあ何か部活について質問ある人いますか?」

 

 きちんと説明されたことで、質問をする人なんていなかった。にしても親かぁ。まぁ判子ならこの前作ったのがあるし、相談なんてしなくてもいっか。

 

「特に無さそうなので、やりたいパートなんかがある人だったり、何にも決まってない人なんかは、さっき言った練習場所に行って見学してみてください。ギターの人はこの後ここで練習するので、待っててください」

 

 ギターの練習の様子でも見ておこうかな。

 いや、でもどうせ入部するのは確定してるしいいや。

 

「ひゃっ!?」

 

 立ち上がってから、入部届やその他のプリントをクリアファイルに入れようとした時、突然お尻を揉まれてしまい変な声が出てしまった。

 

「字、綺麗だね」

 

 お尻を揉んだ人が誰か確認しようと首を動かそうとしたら、どこか聞き覚えのある声で、そう耳元で囁かれた。慌てて顔を確認すれば、隣の席に座っていた派手派手バンドウーマンだった。

 

「じ、じじじ字ですか?」

 

 お尻を揉まれている。

 どうしよう、怖くて辞めてって言えない。

 

「そう。その入部届に書いてある字、綺麗だなって思ってさ」

「あ、あああありがとうございます」

 

 まだお尻を揉まれている。

 この人ってそっち系の人なのだろうか。もしくはボディタッチが激しめの人なのだろうか。

 

 分からない。

 友達同士とかならこういうこともありえるのかも。

 

「彩奈ちゃんっていうんだ。可愛いね」

 

 また可愛いねと耳元で囁かれる。

 

「す、すすすすいません。し、失礼しますぅぅ!!!」

 

 わたしは恥ずかしくなって急いでプリントを片付け、わたしのお尻を揉んでいる派手派手バンドウーマンの手を強引に払い退けて廊下へと飛び出した。

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