転生とやらを経験するとは思ってもいなかったが、新たな生を授かった場所の環境が最悪だった。
誰も住んでいない完全に荒れ果てた村の跡地という凄まじく劣悪な環境に、俺という子を捨て去って消えた親には期待はできない。
僅か数歳で孤児になり、生きる為に行動をするようになった俺は、近くの森で、まずは水場探しと狩りの道具を作成することから始めた。
黒曜石に似た石を割り、簡素な石器を作り上げ、石のナイフで木の枝を切り落とし、蔦で石の穂先と太めの枝を組み合わせて槍を作り上げる。
自作の槍が完成したら、軽く強度を確かめてみたが、問題なく使えそうだ。
次は水場を探したが、ちょっとした川を発見。
水場があるということは他の生物も川まで来る可能性があると判断し、隠れて様子を伺っていると鹿が現れた。
槍を用いて鹿を狩り、石のナイフを使って毛皮を剥いで、解体を行ってから、なんとか木の枝と板を擦り合わせて着火させて火種を作り、枝を追加して火を大きくして肉を焼く。
塩胡椒なんてものはないので、焼いた鹿の肉にそのままかぶりついて食べていき、今後はどうしていくかを考えてみた。
余った鹿肉で保存食になる燻製を作ってから、周辺の環境を更に調べてみるのも悪くはない。
翌日、鹿肉の燻製をかじりながら周辺を探索してみたが、ゴブリンらしき相手と遭遇。
対話は不可能で、襲いかかってきたゴブリン。
石槍でゴブリンを殺すことはできたが、この世界にはモンスターも存在しているみたいだな。
更に探索を続けていると、洞窟の中にあった祠らしき場所に火を纏う籠手が浮いているのを発見。
なんとなく呼ばれているような気がして近付いてみると籠手は少女のような姿に変わり、此方をじっと見てくる。
しばらく此方を見て、頷いた少女は笑みを浮かべて手を差し出してきた。
少女が伸ばした手を俺が掴んだ時、俺の片腕に装着されていた籠手。
籠手は自在に出したり消したりできるようで、籠手に火を纏うことも可能になり、一々火種を作らなくても火を確保できるようになったのは悪いことではないだろう。
籠手を装備している間は、何故か身体能力も強化されるようで、ゴブリンの群れに襲われても簡単に返り討ちにすることができた。
その後は、魚を捕まえたり、獣を狩って、襲いかかってくるモンスターを倒す生活を数年間繰り返していたが、ある日、神を名乗る存在と遭遇。
コボルトの群れに追いかけ回されて死にかけていたヘルメスと名乗った神。
そんなヘルメスを助けた結果「助けてくれたお礼に」と言って、毛皮しか身に付けていない蛮族スタイルだった俺に予備の服を渡してくれたヘルメス。
とりあえず川で体を洗ってから久しぶりに服を着てみたが、毛皮よりも肌触りがいい服だった。
「オレと一緒にオラリオに行ってみないか?護衛になってくれるなら代金は弾むぜ」
そんなヘルメスの提案に乗り、向かってみたオラリオという場所。
道中でモンスターに襲われることになっても、籠手を装備した俺なら倒せる程度のモンスター達だけしかいなかった。
ちなみに籠手の正体についてもヘルメスは知っていたようで、どうやらこの籠手は、火の精霊が姿を変えたものであるらしい。
到着したオラリオで、ヘルメスからヴァリスという通貨をそれなりに受け取り、探索してみたオラリオ。
オラリオでは様々な神がファミリアとやらを作っているようであり、様々な人々も生きていた。
久しぶりに酒が飲みたくなった俺は、オラリオに酒の神は居ないのかと探してみると、ソーマという神のファミリアを発見。
試しに神ソーマに会ってみたが「これを飲んでみろ」と渡された酒は甘い酒で好みではない。
「もっと辛口なやつはないのか?これは好みじゃないんだが」と答えた俺に驚いていた神ソーマは「お前は神酒を飲んでも正気を失ってないのか!」と言いながら詰め寄ってきた。
様々な質問をしてきた神ソーマに答えていると「お前の好みは辛口の酒だったな、今度はそんな酒を作ってみるとしよう」と言い出したソーマという神。
「そういえば、お前の名を聞いていなかったな」
此方の名前を聞いてきた神ソーマに答える名は、一応今生の名前にしておくとしよう。
「ザニス・ルストラ」
「ザニスか、覚えておこう」
この日から、神ソーマと交流することになった俺は、神ソーマの眷族となってソーマ・ファミリアの一員となり、3度のランクアップを経てLv4となった結果、ソーマ・ファミリアの団長を任されることになった。
俺が団長になってから、とりあえずソーマ・ファミリアの環境を改善していったが、明らかに神酒がヤバい薬みたいな扱いをされていたな。
耐えられるもの以外には神酒を出さないように神ソーマに言っておき、神酒をキメる眷族を減らしていった結果、ソーマ・ファミリアを辞めていく者達も増えた。
趣味神といった神ソーマも眷族に目を向けることも増えてきて、ソーマ・ファミリアのホームに置き去りにされた小人族の赤子を育てることにも乗り気だ。
リリルカ・アーデという名の赤子を、神ソーマと一緒に育てた俺は、数年後、まだ幼いリリルカから「お父さん」と言われるようになる。
俺にとっても娘のようなリリルカに、様々な技術を教えてみたが、サポーターの才能がリリルカにはあるようだった。
それから闇派閥によって物騒な状態となったオラリオの暗黒期を、ソーマ・ファミリアの眷族達を護りながら駆け抜けた結果、ランクアップした俺はLv5となる。
月日は更に過ぎていき、リリルカがソーマ・ファミリアからヘスティア・ファミリアに移籍したりもしたが、どうやらリリルカはヘスティア・ファミリアの団長であるベル・クラネルに惚れているらしい。
まあ、リリルカも恋愛するような年齢になったんだな、なんてことを思いながらソーマ・ファミリアの団長として仕事をしていると、様々な騒動が巻き起こったりした。
その騒動の最中、美の女神フレイヤの眷族に、リリルカが腕を折られたらしい。
更に詳細な情報を聞くとフレイヤの眷族の中でも、小人族の「炎金の四戦士」がリリルカの腕を折ったようだ。
フレイヤ・ファミリアとファミリア連合による戦争遊戯が行われることになったみたいだが、ソーマ・ファミリアも当然参加する。
リリルカがヘスティア・ファミリアの一員になったとしても、ソーマ・ファミリアの娘であったことには変わりはないリリルカのことを大切に思っていない奴はいない。
全員が殺気立つソーマ・ファミリアに、他のファミリアが距離を置いたりもしたが、始まった戦争遊戯。
ソーマ・ファミリアが狙う相手は当然「炎金の四戦士」だ。
Lv5のステイタスに、火の精霊の力を上乗せした俺の一撃は、容易く小人族の戦士達を吹き飛ばしていく。
「貴方達は、うちの娘に手を出しました。私はタダで済ませるつもりはありません」
丁寧な口調でそう言った後、武器を構える「炎金の四戦士」を睨み付けた俺は再び口を開いた。
「覚悟は、いいな。クソガキども!」
片腕を覆う火の精霊の籠手を振るい、眼前の4人に叩き込む拳。
「炎金の四戦士」の連携を喰い破る暴力によって、容赦なく叩き潰す。
何度立ち上がってこようが、微塵の躊躇なく拳を打ち込み、地面に倒れた瞬間に顔面を踏みつけた。
「炎金の四戦士」の四肢がへし折れて、身体がズタボロになって起き上がらなくなったところで、ソーマ・ファミリアの冒険者が戦闘に参加できなくなる。
どうやら神ソーマが身に付けていた花がフレイヤ・ファミリアによって散らされてしまったらしく、失格となってしまったようだ。
それから、ベル・クラネルや他の冒険者の活躍もあり、ファミリア連合が勝者となった戦争遊戯。
まあ、リリルカの腕を折った連中に報復は出来たんで、ある程度は満足だな。
ちなみにこのザニスの二つ名は酒守ではなく酒鬼です
神々の間では鬼畜眼鏡という二つ名も広まっているそうです