思い付いたダンまち系短編集   作:色々残念

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とりあえず思い付いたので更新しておきます
今回はポイボス視点の話ですね
書いていたら5000文字くらいになりました


ダンまちクインテットその4 アポロンが別神だと俺以外も知っている

トラブルに巻き込まれそうなベルくんが、これからも生き残っていく為に必要な装備であるヘスティア・ナイフを手に入れてくれたことで、少しは安心できた。

 

この世界で知り合ったベルくんという善良な少年には生きていてほしい。

 

しかし、この世界は英雄を求めている。

 

迷宮都市のダンジョンを走破する英雄か、黒き竜を倒す英雄か、もしくはその両方を行える英雄を求めているこの世界。

 

世界の中心とも言われるオラリオは、冒険者達が数多く住まう迷宮都市。

 

そんなオラリオに数多く居る冒険者達の中に、Lv7はオッタル1人だけしか居ない。

 

たった1人だけのLv7で勝てるほど、黒竜という怪物は弱くはないだろう。

 

オラリオの外の戦力で、使い物になりそうなのは学区のLv7と、ベルくんの義母になってLv8にもなっているらしい静寂のアルフィアぐらいだ。

 

少なくとも黒竜を倒す為には、数多くの強者が必要になる。

 

ゼウスの英傑やヘラの女帝が率いていたLv7を数多く含む戦士達でも敗北した黒竜という存在。

 

ベヒーモスやリヴァイアサンよりも格上な黒竜という怪物。

 

今の俺では確実に黒竜には勝てないのは理解している。

 

黒竜を倒すにはベルくんという最後の英雄が必要なのかもしれない。

 

それでもベルくん、ベル・クラネルという1人の少年に、世界の全てを背負わせるようなことはしたくはないと思った。

 

主神にして育ての親の言葉を借りるとするなら、それは「美しくない」ことだからだ。

 

太陽の神アポロンに顔向けが出来ないような「美しくない」ことをする訳にはいかないだろう。

 

だからこそ俺は、今よりもっと強くなりたい。

 

Lv6を超えた先へと進み、壁を超えてLv7へと辿り着く為、今日俺は、1番身近な強者達である友人達に戦いを挑むと決めた。

 

俺の望みに応えてくれた3人の友人達に、主神のアポロンを加えて迷宮都市の外に移動し、辿り着いた荒野。

 

最初に戦いを挑む相手は、Lv2のチサキであるが、オーバーホールの個性で肉体を改造しているチサキはLv6と遜色のない相手だ。

 

「オーバーホールで直接触れて分解したりするのは、止めとくから安心してくれ」

 

「触れたら終わりの即死攻撃を無しにしてくれんのはありがてぇな」

 

「それじゃあ、やるか、ポイボス」

 

「来い、チサキ」

 

アポロンから学んだ拳闘の構えを取る俺に、素早く近寄ってきたチサキが繰り出すのは蹴り技。

 

空気を薙ぎ払いながら進むチサキの蹴撃を避けると、周囲に吹き荒れる暴風。

 

迷宮都市で放たれていたら、屋台程度なら軽く吹き飛んでいたほどに激しい風が巻き起こる荒野。

 

チサキの蹴りを回避し、連続でジャブを繰り出した此方の攻撃を、チサキは避けることなく受けたが、微動だにしない。

 

レベル詐欺なんてアダ名で呼ばれる訳だな、と思うほどに頑丈なチサキの身体。

 

アウトボクシングでは決定的なダメージにはならない程に頑丈なチサキを倒すには、インファイトで戦う必要があるだろう。

 

間合いを詰めて一撃一撃に渾身の力を込めなければ倒せない相手。

 

そんな相手だからこそ、乗り越えるべき壁となる。

 

前に進み、構えた拳で繰り出す拳打。

 

顔面に俺の渾身の右ストレートが直撃しても、チサキは倒れることはない。

 

寧ろ右ストレートで伸びきった此方の腕を掴んで投げを繰り出し、地面に頭から投げ落としてきたチサキ。

 

勢いよく荒野の地面に叩きつけられた頭部から痛みと衝撃が広がっていく。

 

チサキは投げ技も使えるのか、と考えながら立ち上がろうとした此方へと放たれたのは、まるでサッカーボールでも蹴るかのような蹴撃。

 

避けられないと判断し、両腕を交差して蹴りを受けた此方の身体が、吹き飛ばされた。

 

あまりの威力に受けた腕が軋み、骨まで響くダメージがあったチサキの蹴りは強力だ。

 

チサキがレベル詐欺なのは頑丈さだけではなく、攻撃の威力も高い。

 

そう何発も喰らいたくはない威力の蹴りに、投げ技まで使ってくるチサキ。

 

それでも俺のやることは変わらない。

 

拳を構え、踏み込み、打ち込む拳の速度を上げていく。

 

一撃一撃に全力を込めて放つ拳。

 

何度投げ飛ばされ、幾度も蹴り飛ばされようと、何回でも立ち上がって拳を握る。

 

オーバーホールを使わないチサキを相手には魔法を使うことなく、拳闘のみで戦い続ける俺は、拳をチサキに打ち込み続けていった。

 

激しい拳打を連続で放ち、止まることなく叩き込んだ拳撃。

 

反撃として繰り出されたチサキの蹴りは、確実に避けられない。

 

避けられないなら逆に此方から当たりに行くと決めた俺は、更に踏み込んで前に出た。

 

蹴りの威力が最大に高まる前に自ら当たり、脇腹に蹴りが直撃しようがお構い無しに、チサキの顔面に右フックを放つ。

 

ようやくぐらついたチサキの身体へと、追撃の拳を打ち込み、勝負を決めにいく。

 

腹部に叩き込んだボディブローから続けて繰り出したアッパーがチサキの顎に直撃し、ようやく地に崩れ落ちて倒れたチサキの身体。

 

此方の身体もチサキからの攻撃で満身創痍であり、いつ倒れて気絶してもおかしくはない。

 

「おれの負けだな」

 

地面に倒れていたチサキが、そう言うと自分の身体に触れてオーバーホールの個性を使い、分解からの再構築で一瞬でダメージを消し去って立ち上がった。

 

相変わらず反則みたいな個性だな、と思いながら俺は、主神のアポロンにステイタスを更新してもらう。

 

「良い戦いだったよビューティーズ!」とテンション高めなアポロンが行うステイタスの更新。

 

激しい戦いにより、それなりに上昇していたステイタスはオールSになるまで極まったが、ランクアップとまではいかなかったらしい。

 

それでも俺には新たに【拳闘戦士】というスキルが発現していたようで、拳を用いた戦闘時に発展アビリティ拳闘士が一時的に発現するだけではなく、精神力を消費して拳撃の威力を高めることが可能になった。

 

チサキに身体を修復してもらった俺は、ダメージも疲れも消えた身体で、次の相手の前に立つ。

 

次に戦うLv5のザニスは、火精霊の籠手を宿しており、神時代の冒険者と、精霊の力を借りていた古代の英雄のハイブリッドみたいな存在だ。

 

Lv5のステイタスを火精霊の籠手で更に強化することが可能なザニスは、並みのLv6を遥かに超える戦闘力を持っている。

 

「ザニス、最初から火精霊の籠手を使ってくれねぇか」

 

「別に構わないが、火までは出さなくても、いきなり籠手による強化が有りで手加減が抜きなら、今のポイボスだと勝ち目が少ないぞ」

 

「それぐらいじゃねぇと偉業にならねぇ気がするからな。頼むぜザニス」

 

「わかった。使わせてもらう」

 

片腕に火精霊の籠手を出現させたザニスは、籠手に覆われた拳を握った。

 

「アポロン・ファミリア団長。輝拳、ポイボス」

 

「ソーマ・ファミリア団長。酒鬼、ザニス・ルストラ」

 

互いに肩書きと二つ名を含めた名乗りを上げて拳を構えた俺とザニス。

 

アポロンから拳闘を学んだ俺とは違い、今まで見てきたザニスの戦い方は喧嘩殺法に近く、かなり荒っぽい。

 

攻撃には両拳しか使わない此方とは違って、使えるものは何でも使うザニスは拳以外も使用して攻撃してくるだろう。

 

だが先ずは近付かなければ攻撃を当てられないと考えて、俺はフットワークを用いてザニスへと接近しようとした。

 

そんな俺の動きを止めたザニスの一撃は、荒々しくも素早い豪腕による打撃。

 

明らかにチサキの蹴りよりも威力が高い打撃を、腕だけで繰り出すザニスは、とんでもなく強い。

 

足の筋力は腕の3倍とも言われる為、ザニスの蹴りの威力は今のチサキよりも確実に上だ。

 

豪快な乱打を放つザニスの攻撃を、拳闘の使い手として避けていく。

 

間合いを詰めて拳を放つ此方への反撃に、薙ぐように振るわれた腕。

 

まるでプロレスのラリアットのような一撃を両腕でガードして受けたが、無造作に振るわれたそれで、吹き飛ばされていく此方の身体。

 

チサキの蹴りを受けた時よりも吹き飛ばされる距離は長く、ザニスが凄まじい腕力を持っていることが理解できた。

 

空中で身を翻し、着地した此方へと接近してきたザニスが繰り出す拳。

 

上半身を横に逸らし、なんとかギリギリで回避が間に合ったが、ザニスの拳が僅かにかすっていた俺の頬が切れて血が溢れる。

 

溢れた血が地面に落ちるよりも早く、動いていたザニスが荒々しく振り下ろす腕。

 

両腕を交差して受けたが、あまりの威力に完全に受け止めることは出来ず、地面へと叩き付けられた俺の全身。

 

身体がバラバラになりそうな痛みと衝撃を感じながらも、素早く横に転がり、凄まじい威力を持つザニスの踏みつけを避けて、立ち上がった俺は拳を握る。

 

【拳闘戦士】のスキルを用いて精神力を消費し、ザニスへと叩き込んだのは威力を高めた輝く拳撃。

 

打ち込んだリバーブローは流石に効いたようで、ようやくダメージらしいダメージをザニスに与えることができた。

 

だが、この程度ではザニスを倒すのは不可能だ。

 

ザニスを倒すには【拳闘戦士】のスキルで最大限まで精神力を消費して威力を高めた拳を、魔法も用いて叩き込む必要があるだろう。

 

「【己を知る者はすべからく、己が美を誇るべし】【汝、自身を知れ】」

 

余計な小細工は抜きで、真正面から、最速で、最短の一撃を繰り出すと決めた俺は並行詠唱を開始。

 

「【我が身、太陽の如く美しく、輝きし刻】【女神の弓に自らを番え】」

 

回避に徹して詠唱を行う此方へと放たれたザニスの拳。

 

「【銀の矢と成りて】【アルゴスの防壁を撃ち崩せし也】」

 

学んできた拳闘の技術を用いてザニスの攻撃を全力で避け続けた俺は、並行詠唱を途切れさせることはない。

 

「【魂を射抜く銀矢】」

 

詠唱が完了した瞬間に後方へと跳躍し、距離を取って拳を握り、まるで弓を引くように拳を構えた俺は魔法名を唱えた。

 

「【アリュギュロトクソス】!」

 

現れた巨大な弓が俺を矢として番え、真正面から超高速で放たれた俺の身体。

 

矢として放たれた俺は銀の輝きを身に纏った状態で、ザニスへと迫る。

 

魔法を使用した後に残っていたありったけの精神力を込めて極限にまで威力を高めた輝く拳。

 

銀色に光り輝いたその拳をザニスの顔面へと打ち込んだが、それと同時に俺の顔面にもザニスの拳が叩き込まれていた。

 

ザニスの拳の威力と、残らず消費した精神力により完全に意識が飛んだ俺。

 

それからしばらくして目覚めた俺は、どちらが勝ったのかを戦いを見届けていたチサキ達に聞いたが、ダブルノックアウトで引き分けだったらしい。

 

俺の全身全霊の拳は、格上のザニスへと確かに届いたようだ。

 

「ナイスビューティーズ!魂焦がして戦ったきみ達は美しかったよ!」と言ったアポロンは凄まじくテンションが高い。

 

アポロンにステイタスを更新してもらうと、ランクアップが可能になっていたようで「流石はオレ様の自慢の子だ」と喜んでいたアポロン。

 

ついにLv7へと到達した俺は、精神力を回復するポーションを飲んでから、チサキの個性で身体を修復してもらうと、最後の相手の前に立った。

 

これから戦う相手は、神の恩恵などは授かっていない。

 

そしてチサキのように個性で肉体を改造している訳でもなく、精霊の力も借りていないにも関わらず、素の身体能力だけで全てを圧倒する存在だ。

 

英雄、間違いなくそう呼ばれる相手である金時。

 

素で強すぎるせいで神の恩恵に興味がない金時と戦うのは初めてだが、戦う順番を決める時、金時を最後にしてもらって良かったのかもしれない。

 

「勝負だ、金時」

 

「んじゃ、行くよポイボス」

 

拳を構えた金時を見た後に、腹部に凄い衝撃が叩き込まれた記憶だけしか残っておらず、いつの間にか寝かされていた俺。

 

そんな俺からちょっと離れたところで、正座している金時を叱っているザニス。

 

「やり過ぎだぞ金時。チサキがこの場に居なかったらポイボスは死んでいた」

 

「うん、ごめんなさい。Lv7なら頑丈かと思ったんだけど、ちょっと力入れ過ぎたオレが悪かったね」

 

ザニスに怒られて、素直に反省している様子を見せる金時。

 

「いや何があったんだ?」

 

何があったのか全くわからない俺が困惑していると、チサキが口を開く。

 

「ポイボスは金時の腹パンで死にかけたんだよ。あれは内臓が完全に潰れてたから、オーバーホールが使えなかったら助けられなかったぞ」

 

真剣な顔でそう言ったチサキが、嘘を言っているようには見えない。

 

「ちょっと力入れただけでLv7が死にかける腹パンを打てる金時って凄くねぇかチサキ」

 

「死にかけたのに子どもみたいに目を輝かせて、そう思えるポイボスも凄いというか、発想がズレているような気がする」

 

チサキと会話しながら上には上がいるもんだな、と考えた俺は、純粋に金時を凄い奴だと思えた。

 

そんな凄い金時なら黒竜とも戦えそうな気がしたが、本人にその気がないのに無理に戦わせるのは良くないことだろう。

 

とりあえず金時には「死にかけたことは気にしてねぇから大丈夫だ」と伝えておき「いずれまた戦ってくれ」と頼んでみる。

 

「その時は、ちゃんとチサキも連れてきてね」

 

チサキが居ないなら戦わないとまで言ってきた金時。

 

「まあ、オーバーホールを使えるおれも一緒に居た方がいいだろうな」

 

迷わず同行することを決めてくれたチサキに感謝しておき、それから全員でオラリオへと戻っていく。

 

俺がLv7へと到達したその日、シンとベルくんは、アポロンがプレゼントしていた魔導書で魔法を発現していた。

 

順調に強くなっているヘスティア・ファミリアの2人。

 

「俺も、今よりもっと強くならねぇとな」

 

立ち止まることなく前へと進む、それがアポロンの眷族だ。




ちなみにアポロンは「きみ達が更に輝く時を待っているオレ様からのプレゼントさ!受け取りたまえビューティーズ!」と言いながら魔導書2冊をシンとベルくんに直接渡したようです
眷族2人がアポロンから魔導書を渡されたことを知ったヘスティアは、手土産を持ってアポロンに礼を言いにいくべきか考えたみたいですね
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