異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-ヤマト神刀騒動-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第10話『瞬兄ちゃんが負けた!!?』(颯視点)

(颯視点)

 

 

 

瞬兄ちゃんに投げ飛ばされて意識を失ってしまい、起きた時には既に瞬兄ちゃん達の姿はなく、フソウを出た後だった。

 

「宗一郎! 宗一郎!」

 

「……ん? なんだ、颯」

 

「なんだじゃないよ。もう瞬兄ちゃん達は行っちゃったみたいだぞ」

 

「なにっ!? なんでそんな事になってるんだ! っ!?」

 

「落ち着けって、僕らが寝てる間に出ちゃったんだよ」

 

「く、くそう。出遅れた」

 

宗一郎は飛び起きながら叫ぶが、まだ投げられて打ち付けた部分が痛みを発するらしく、背中を抑えながら苦しそうな息を吐いた。

 

僕だって、平気なフリはしているけれど、まだ体の色々な場所が痛いのだ。

 

しかし……。

 

「まさか刀を使わないなんて」

 

「それだけ俺たちが弱かったって事か」

 

「瞬兄ちゃんが強すぎるだけだよ。誰も瞬兄ちゃんには勝てないんだからさ」

 

僕は文句を言いながら布団から抜け出して、着物を整えた。

 

そして、救護室から外に出ようとして……外が騒がしい事に気づいた。

 

「ん?」

 

「どうした? 颯」

 

「いや、何か……」

 

僕は近づいてくる宗一郎に言葉を返しながら、扉に近づいて外の様子を伺う。

 

『それは確かな情報なのか!』

 

『信じたくない気持ちは分かるがな。忍衆の情報は確かだ』

 

『しかし』

 

どうやら焦っている人たちがドタドタと廊下を歩きながら叫んでいるらしい。

 

何が起きたんだ?

 

「颯? どうしたんだよ」

 

「シッ。ちょっと待って……」

 

『まさか天霧瞬が敗北するとはな』

 

「瞬兄ちゃんが負けた!!?」

 

「え!?」

 

僕は驚きのあまり、扉から離れて、座り込んでしまった。

 

だって、あり得ない。

 

瞬兄ちゃんだよ?

 

「颯。今の話」

 

「分からない。ホントかどうか……でも、忍衆の情報は確かだって言ってた」

 

「じゃあ本当に?」

 

「うん。瞬兄ちゃんが誰かに負けたんだ」

 

改めて言葉にして、その衝撃的な状況に僕は思わず震えてしまった。

 

瞬兄ちゃんが勝てない様な人に、いったいヤマトの誰が勝てるっていうんだ。

 

勝てる訳が無い。

 

「颯! しっかりしろ! 颯!」

 

「……っ! 宗一郎?」

 

「そうだ。俺だ。自分を見失うな。颯。瞬さんが負けたという話がどこまで真実か分からないが、全てを悪い方に考えるな」

 

「いや、悪い方に考えるなって言っても、事実として瞬兄ちゃんは負けたんだろ? それが全てじゃないか」

 

「誰にとは言って無かったんだろ?」

 

「……それは、そうだけど」

 

「なら、複数人に奇襲されたのかもしれない。もしくは卑怯な罠があったのかもしれない。人質がいたのかもしれない」

 

「……」

 

「状況は何も分からないんだ。なら、どうする? 新倉颯(にいくら はやて)

 

「僕は……いや、僕も行く! 霊刀山に! 瞬兄ちゃんを助けるんだ」

 

「それでこそだ。俺も一緒に行くぞ。それで俺たちの力を認めさせてやろう」

 

「っ! そうだね! やってやろう!」

 

それから僕たちは急いで準備をして、摸擬戦用の刀を腰に差し、霊刀山を目指すのだった。

 

 

 

大人たちが傍におらず、子供だけでフソウを出る事も、霊刀山へ行く事も全ていけない事であったが、二人で進む道のりはそれなりに楽しかった。

 

「宗一郎! 宗一郎! ヤバい! この犬! ヤバいぞ!」

 

「やばいってなんだよ! うわっ! こっちに来た!」

 

「刀を抜けって! こ、こいつ等あれだ! 魔物だ!」

 

まぁ、だいぶ死にかけたけど。

 

「颯! このっ! 鳥が!!」

 

「駄目だ宗一郎! そんなに振り回しても! うわっ! 危なっ!」

 

「こっちは何も見えないぞ! 何とかしてくれ! 颯!」

 

「ちょっと待ってろ……って! こっちにも来た! 待て! 来るな! 来るな!!」

 

それでも実戦で得られる物は大きく、僕たちはこの短い旅の間にも大きく成長する事が出来ていたのだった。

 

もしかして、天才という奴なのではないだろうか。

 

「ようやく着いたな。霊刀山」

 

「ま、まぁ? 考えてみれば大した道のりじゃ無かったね」

 

「そうだな。だいぶボロボロだけど」

 

「それでも僕らは子供だけでたどり着いたんだから。凄い事だよ」

 

「それはそうだね。まぁ瞬さんや時道さんはもっと幼い頃に霊刀山に来たらしいけど」

 

「あの人たちは規格外だから……」

 

「まぁ、そうだね」

 

僕と宗一郎はとりあえず納得しながら、霊刀山の中に入る事にした。

 

とは言っても、何だか今日の霊刀山は不気味な雰囲気である。

 

以前、和葉ねえちゃんと来た時よりも、なんだか霧が濃い様な気もした。

 

不気味だ……。

 

「……」

 

「どうした? 颯。怖いのか?」

 

「こっ! 怖いワケ無いだろ! 別に怯えてなんかいないよ!」

 

「そうか? なら良いけどな」

 

「あぁ、何も問題ないね! 何なら僕が先に入ろうか!」

 

僕はゴクリと唾を飲み込んで、足を一歩前に踏み出した。

 

ドキドキと胸の奥で鼓動が鳴り響いているけれど、一歩踏み出した事による影響は何もなく、ただ静かに時が流れるばかりだ。

 

「なんだ。何も無いじゃないか」

 

「そ、そうか。まぁそうだよな。姉上と来た時も何も無かったし」

 

僕らは気持ちを落ち着かせてから、改めて霊刀山の中に入って行く。

 

だが、二歩三歩と進んでも何も起こらず、周囲は不気味なほど静かなままだった。

 

「どうする?」

 

「とりあえず瞬さんを見つける所からじゃないか? 僕ら二人で巫女姫様を助けるってのは流石に無謀だと思うし」

 

「そうだよね。でも、瞬兄ちゃんはどこにいるんだろう?」

 

「……確かに。そこまで聞いてくれば良かったかな」

 

「そうだね」

 

僕と宗一郎は霧に覆われた霊刀山を見渡し、どこかに瞬兄ちゃんが居ないかと探したが、どこにもその姿は見えない。

 

霧が濃すぎるのだ。

 

「どうにかして霧を無くせないかな」

 

「無理だろ。こんな、周りいっぱい霧ばっかりなんだぞ? 風でも起こせれば別だろうけどさ」

 

「風かぁ」

 

うーんと腕を組みながら考えるが、特にいい案は浮かばない。

 

何となく思い付きで腕を振り回してみたが、多少周囲の霧は薄くなるが、それだけだ。

 

あまり意味はない。

 

「颯。遊んでないで行くぞ」

 

「べ、別に遊んでたわけじゃない。こうする事で風を起こそうとしていたんだ」

 

「はいはい。そんな事で何とかなるなら、俺達の前に誰かがやってるよ」

 

「……確かに」

 

僕は腕を振り回すのを止めて、先を歩く宗一郎の後について山道を登ってゆく。

 

とは言っても、この道が本当に正しいのかどうか分からな……っ!!?

 

「宗一郎!!」

 

「なんっ!?」

 

僕は霧の中でキラリと光る何かが視えて、宗一郎を地面に倒しながら僕自身も地面に倒れる。

 

そして、先ほどまで僕らの頭があった辺りを通過していった白刃を目にして、息を吞むのだった。

 

「だ、誰だ!!」

 

『ふむ。まだまだ未熟ながら、光るモノはあるな』

 

『我らの剣を継ぐにはまだまだ至らぬが、その片鱗は見える』

 

僕は宗一郎と共に置きながら刀を抜き、構える。

 

そして、霧の向こうから現れた黒い影の様な者たちは、僕らが求め続けた神刀を手に持ちながらこちらをジッと見据えるのだった。

 

「颯! これは」

 

「分からない! でも、こんな事、初めてだ!」

 

「何が起きてるんだ」

 

「それも、分からない……けど、そんな悪い事じゃないのかもしれない!」

 

「襲われてるんだぞ! 悪くない訳あるか!」

 

「そうじゃないよ。宗一郎。思い出してよ。宗介兄ちゃんも、和葉ねえちゃんも、ここで、試練を受けて神刀を手に入れたんだろ!?」

 

「っ! そ、そうか! これが、試練!!」

 

「分かんないけど。でも、きっとそうだ!」

 

僕と宗一郎は気合を入れて刀をしっかりと握りしめる。

 

戦う。勝つ。

 

強くなる!

 

それが僕らの目標だった。

 

そして、これからもそれは変わらない。

 

「いくぞ!」

 

「勝負だ! 神刀!!」

 

『良い覚悟だ』

 

『己の限界を超え、今日を乗り越えて、挑んで来い。遥かな高みへ!』

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