異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-ヤマト神刀騒動-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第3話『落ち着けミラ。この国の連中に常識を説いても無駄だ』

何が原因で始まったかすら怪しいくらいよく分からない流れで始まった乱闘を見ていた私とオーロさんだったが、私たちがお団子を食べ終わる頃にはようやく争いも終わり、元の穏やかな世界が帰ってきた。

 

「いやぁ。やったやった。久しぶりに体を動かして良い調子だぜ」

 

「そうだな」

 

そして、実に満足気な顔で戻ってきた瞬さんと宗介さんを見つつ、やはりこの国はおかしいと再認識するのだった。

 

「ところで、食い逃げさんはどうなったのですか?」

 

「ん? あぁ、誰かが捕まえたんじゃないか?」

 

「タブンなー」

 

そんな雑な反応あります?

 

私の記憶が確かなら、食い逃げさんを捕まえる為に争いを始めた様な気がしたんですけどっ!?

 

「くっ!」

 

「落ち着けミラ。この国の連中に常識を説いても無駄だ」

 

「おいおい随分ないい様じゃないか。瞬の奴はアレだが、俺はまともだぞ」

 

「……」

 

「なんだー! その目はー!」

 

信じられない。

 

いや、だって、宗介さんも瞬さんと同じタイミングに飛び込んで、なんでか瞬さんと戦っていたのだ。

 

どう考えても同じ思考の持ち主である。

 

ヤマトの人たちはおそらくみんな、戦うのが好きなのだ。

 

この国が今まで国連にも参加せず独自の運営を貫いてきた理由がここにある様な気がした。

 

ちょっと前までヴェルクモント王国との貿易! なんて考えていたけれど、だいぶ難しい様な気がしてきた。

 

「まぁ、とにかくだ。このままここに居ても仕方が無いし。そろそろ城下町に向かうか」

 

「城下町、ですか?」

 

「そう。我らがヤマトの中心。そして、巫女姫様たちがいらっしゃる場所だ」

 

 

 

それから、瞬さんが団子を全て食べ終わるまで待って、私たちは城下町『フソウ』を目指して移動を開始した。

 

しかし、ムサシという街からフソウという街までは二日くらいかかるらしく、その道中はのんびりとした旅になる。

 

「では、ヤマトは貴族が国を治めているという訳では無いのですか?」

 

「あぁ」

 

「ヤマトは基本的に能力主義だからな。あんまり出自にこだわりはねぇよ」

 

「なるほど。確かに効率という点で考えると、能力主義の方が良い気はしますね」

 

私は瞬さんと宗介さんからヤマトの事情を伺って何度も頷いた。

 

実に興味深い話だ。

 

「だが、問題もある」

 

「問題ですか?」

 

「そうだ。能力主義という事は出自の不明な人間を採用する可能性があるという事だ。もし、ヴェルクモント王国で同じ事をしようとすれば他国の間者を中に入れる可能性もある」

 

「あ……」

 

「もしくはセオドラーの奴を殺して、お前を自分の物にしようと考える奴が来る可能性だってゼロじゃない。聖女を手に入れる為だ。この程度いくらでもあり得る話さ。今までの歴史でも似たような話はあるだろう?」

 

「確かに、そうですね」

 

「だから、そういう意味じゃあ貴族っていうどこの人間だってハッキリしてる奴の方が良いのさ」

 

オーロさんの言葉に頷きながら、私は提示された問題点について考える。

 

が、すぐに良い案が浮かぶ事は無かった。

 

「うーん。ですが、そうなるとヤマトはどうなのでしょうか? ヤマトも同じ問題を抱えているはずですよね?」

 

「いや、そういう意味じゃあそこまで大きな問題にはならないな」

 

「そうなのですか?」

 

「あぁ。ヤマトってのが元々外とはあまり繋がりのない国だからな。役人になるって時も、ヤマトの人間かどうかすぐに分かるよ」

 

「そうだな。それに、出身の村や街に確認すれば、どういう人間かもすぐに分かる」

 

「という訳だ。外の世界とはちと事情が違うって事だな」

 

「だが、巫女姫様の周囲は、違うだろう?」

 

軽く笑いながら話をしていた宗介さんと瞬さんに、オーロさんがスッと言葉を差し込んだ瞬間、瞬さんも宗介さんも黙り込んでしまった。

 

その言葉に、やや空気が重くなったような気がする。

 

「……まぁ、確かにな」

 

「瞬!」

 

「事実だ。宗介。確かにオーロの言う通り、巫女姫様の周囲には選ばれた人間しか立てない」

 

「だが、それも全て中央に居座った爺共が言ってるだけさ。俺たちはヤマトに住む人間に違いはないと考えている」

 

「なるほどな」

 

オーロさんはパチパチと燃える火の中に木の枝を入れながら、小さく呟いた。

 

その言葉からオーロさんが何を考えているのか察する事は難しかったけれど、でも瞬さん達を苦しめようとしているワケじゃないという事は分かる。

 

「前からな。疑問だったんだ」

 

「何がですか?」

 

「瞬が何故、ヤマト守護刀十二刀衆なのかってな」

 

「確か強さの順番で決まるって言ってましたよね? なら瞬さんの強さを考えれば当然なのでは?」

 

「ミラ。よく考えてみろ。国内でトップクラスに強い男だ。そんな奴を国外に出す必要がどこにある? 情報収集ならある程度の実力があれば誰でも良い。いや、むしろ実力よりも諜報の為の能力が高い方が良いはずだ」

 

「それは、確かに……」

 

「しかし、瞬は正直その辺りの能力は話にならない。実力だけはこれでもかと高いがな」

 

私は派手に正面から我が家に入ってきて、暴れまわっていた瞬さんを思い出し、頷いた。

 

確かに、諜報というには少々派手過ぎた気もする。

 

いや、オーロさんも大概なのだけれど。

 

「こういう奴は国内に置いておく方が有用だ。しかし、お前は外に出た。国内では疎まれているから、じゃないのか? ヤマト守護刀十二刀衆と言えば、巫女姫の護衛も行うだろうからな」

 

「流石だな。オーロ」

 

「……」

 

「お前の言う通り、俺は確かに中央の人間に好かれていない。というよりは人斬りだからな。国内でもそれほど好かれてはいないだろう」

 

「そんな!」

 

「良い。気にするな、ミラ。当然の話だろう。親殺しなんてモノは人が犯す罪の中でも最悪だ。それをしてしまった俺が疎まれるのは当然と言える」

 

「それで、ヤマトから追い出されて。という事か?」

 

オーロさんの言葉に、瞬さんは少し考えてから、言葉を返した。

 

どこか諦めた様な笑みを浮かべたまま。

 

「追い出されて。というのは少し違うな。俺自身も望んでいたんだ。あの男、天霧宗謙を見つけ出してその命を絶つ事をな」

 

「そうか」

 

「だから、外へ出た事は間違いじゃない。これは俺がやらねばならない事で、俺がやるべき事だからだ。あの男を殺す事くらいしか俺に生きている価値は無いからな」

 

私は他人事の様に語る瞬さんに、何故か胸の奥で酷くイライラとした気持ちを抱えて、思わず立ち上がって叫んでいた。

 

私の叫びに反応してか、火の中でパチパチと音がして、火が強く燃え滾る。

 

「私は! 瞬さんがヴェルクモント王国に来てくれて、これ以上ないほど助かりました! 瞬さんが来なければ私はきっとあの冷たい山の上で死んでいたでしょうから!」

 

「……ミラ」

 

「私は自分勝手な人間なので、瞬さんがヤマトを出て、私やオーロさんと出会った事を運命だったと考えます! こうなる事が世界にとって最善だったのだと!」

 

「ふっ……そうだな。確かに。俺も瞬やミラが居なければ、サルヴァーラで死んでいたかもしれん。だから、俺も運命だったと信じたい物だな」

 

「……オーロ」

 

私はオーロさんと視線を交わして、笑う。

 

まったく瞬さんはしょうがない人だ。

 

「だから! 瞬さんがここにいる事に価値はあります。私とオーロさんがその証明です!」

 

「……そうか」

 

「それに。きっとヤマトにだって瞬さんに感謝している人は多く居ると思いますよ。居ないというのであれば、皆さんの見る目が無いだけの話です!」

 

「そうだな」

 

私はオーロさんの言葉に大きく頷きながら、瞬さんに笑いかけた。

 

私の言葉こそが真実なのだというように。

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