しがないゲヘナ生の美食追求譚   作:アカドラゴン

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みたらし団子の落下運動(重力加速度をgとする)

「金目の物を出せー!!」

「ごらぁっ!!!逃げんなッ!」

 

俺は今、ゲヘナ自治区でスケバンに追われています。

 

どうしてこうなったのかは数日前に遡る。

 

 

『食事は、一人よりも誰かと食べた方がより楽しめるのですよ?』

 

俺はあの時の言葉が忘れられず、中学卒業後の春休みを悶々としたまま過ごしていた。

 

「あの羽と尻尾…もしかしてあの人はゲヘナに通っているのか?」

 

確証は無い。高校生じゃない可能性だってある。ただ、あの人の所在を示す手がかりはそれしかないのだ。

 

ミレニアムに落ちた今、俺はどこの高校に通うか決めなければいけない。キヴォトスには無数の学園が蔓延っていて、今からでも入学手続きができる学園は多くある。無論、ゲヘナも同様に。

  

でもなぁ…

 

「死ぬほど行きたくねぇ…」

 

ゲヘナはキヴォトス屈指の治安の悪さを誇り、キヴォトス最強格の風紀委員長でさえ完全には統治できていないのだ。

 

だけどもう一度あの人に会えるのなら…

 

でもゲヘナだしなぁ…

 

その後散々迷った挙句、俺はゲヘナ学園に入学願書を送った。

 

 

はい、回想終了。

こんなことをしてる間にスケバンを撒けたようだ。流石!逃げ足にだけは定評がある俺のトップスプリント。

 

今日はゲヘナ学園の入学式に来ていた───のだが、途中で温泉開発部とかいう連中が講堂の床に穴を開け始めたので中止になりました。やったね!(脳死)

 

と、いうわけで今から暇である。

ゲヘナ学園に入学するにあたってゲヘナ自治区に引っ越してきた俺にとって、ここは未開の地。”あの人”とまた会うためにはこのゲヘナを渡り歩いてみるしか手段がないのだ。

 

恐らくあの人は相当な食通だろう。

ならば、ゲヘナにある有名な飲食店を片っ端からあたってみよう。

 

いつか、一緒に食事を愉しむために。

 

 

「さてと、まずはこの店だな」

 

俺の目の前にあるのは歴史を感じさせられるような風貌をした茶屋だ。

客足は疎らだが、ネット上に転がっている多くのブログで評価されている。特に、『EATorDIEOfficial』というモモッター──ではなくモモックス(笑)アカウントではみたらし団子を高く評価しているようだ。

 

「すいません、みたらし3本ください」

 

俺がそう言うと愛想の良い獣人の店主はみたらし団子3本をトレーに乗せて俺に渡してくれた。

 

店先のベンチに腰を下ろし、風景を一望する。

流石ゲヘナと言うべきか、そこら中から銃声が鳴り響いており、茶屋の雰囲気とミスマッチだ。食事において雰囲気とはもっとも重要な要素の一つだと考える俺にとって、正直耐え難かった。

 

「ミレニアムに受かっていたら、今頃は──」

 

こんなことを考えていても仕方がないのは分かってる。だが、この感情はそう簡単に割り切れるものではない。

 

「いただきますっ!」

 

思考を遮断するため、俺は無理やり団子を口に押し込んだ。

その瞬間、丁度いい塩梅のしょっぱさが口に広がり、脳が幸福感情を訴えかけてくる。モチモチとした団子の食感もまた一興だ。

 

“あの人”の言う通り食は嫌な思考を止めて自分を幸せにしてくれるのだと再確認できた。

 

やっぱ俺、美食家とか向いてんのかな…でも俺のキャラ的にはト◯コじゃなくて◯松だしな…

 

「お婆ちゃん、みたらし1本ちょうだい!」

 

みたらし団子を楽しんでいると、一人の少女が店主に注文をしていた。常連なのか、親しげな様子だ。

その少女は赤い髪に小柄な体格に見合ってない立派なツノが生えている。恐らくゲヘナ学園の生徒なのだろう。

 

店主から団子を受け取った少女は迷う様子も無く隣に座ってくる。なんなんだこの人、馴れ馴れしいな。

年頃の男が隣に居てもなんとも思わないのか、少女は笑顔で団子に齧り付いた──否、齧り付こうとした。

 

団子の重心に銃弾が打ち込まれ、団子は2mほど吹っ飛んだ。

 

「うぇっ!?…何すんのよっ!」

 

少女はまさに怒り心頭。だが、銃弾を放ったであろうスケバンは悪びれる様子も無く戦闘を続ける。

そして、少女は自身の愛銃のトリガーに手を掛け────「ちょっと待ったぁ!!!」

 

少女を止めたのは、他の誰でもない俺だ。

だってこんなところでバトられると団子が不味くなるんだもん。

 

「一旦待ちません?やっぱりここってゲヘナじゃないですか?この店で食事をする以上銃弾の1発や2発は大目に見るべきというか何というか──」

 

「じゃあ何!?私のお団子はどうするの!!!」

「はいどうぞ!!!」

 

俺は光の速さで少女に団子を一本手渡す。これが不毛な争いを避けるための手段として最善だろう。ここの団子は安いし下手に意地を張る必要もない。

 

「あっ、ありがと…」

 

「別に構いませんよ。食事は誰かと一緒に食べた方が楽しめますから」

 

互いに無言で団子を頬張る。だけどこの空間は居心地が良かった。

 

「わ、私さ、ゲヘナ学園の新入生なんだ…見た感じだとあんたも新入生でしょ?だからタメ口でいいよ…」

 

「じゃあ遠慮なく。俺は新谷ユウタ、よろしく。えっと──」

 

「私は赤司ジュンコ。よろしく!」

 

俺たちは団子を食べている手とは別の手で握手を交わした。ついでにモモトークも交換した。

何気に女子と連絡先交換したのはこれで二人目だな…俺のモモトークの画面が埋め尽くされる日はそう遠くないのかもしれない。

 

こんな出会いがあるなら、ゲヘナに入っても悪くなかったかもな。

 




キャラに対する解像度を上げたいので次の投稿まで時間が空くと思います。気長にお待ちください。
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