ある日、尊とゆかりが歩いていた。隣町でデートをしている。
「歩き慣れた場所じゃないから、迷いそうね」
「手、離すなよ?」
ゆかりと歩いていると、紫髪で赤いリボンをつけた美女がこちらに向かって歩いてきていた。女性はこちらに気づき話しかけてきた。
「あら、尊」
「ちわっす姐さん」
「......姐さん?知り合い?」
ゆかりは、目の前の美女を観察しながら尋ねた。
「猫姐さん。前に話した鬼太郎の仲間」
「妖怪なのよね......わたし、なんで見えてるの?」
ゆかり等、一般の人間は妖怪を目視することが出来ない。しかしどうやら、尊と過ごしているうちに妖怪が見えてくるように......
「見える体質の人間と一緒にいたら見えるようになるんでね?」
「そういうものかしら」
「尊の影響を受けたのかもね」
猫娘も合流し、しばらく歩いて......
「「ラーメン、赤猫......?」」
3人はあるラーメン屋の前に来ていた。
「ふぅん......入ってみる?」
「すね。ちょうど腹も減ってるし」
「....わたし、そんなにいっぱいは食べられないわよ......」
「らっしゃせい!」
黒猫が元気よく挨拶し、その直後にメニュー表を持った白猫が現れ
「いらっしゃいませにゃーん♪」
と声をかけてきた。
「猫が喋ってる!?」
「尻尾は一本だけだし…普通の猫ね」
ゆかりと猫娘は戸惑っている…
その時。
一人の客が店員と客の1人に怒鳴り散らしていた。怒鳴られているのはおかっぱ髪の清楚で内気そうな女の子であった。
「なんだよ店の方が悪いだろ!」
「そ、それでもカウンター席のものを壊すのは…」
「うるせえ!ガキ!しかも女が口出しするんじゃねえ!」
「お客さん、もう帰ってくれ。迷惑だ」
すかさずトラネコの店長が鋭い目つきで男を睨みながら退店を促す。
「元はと言えばお前らが悪いんだろ!俺にセロリを食わせやがって!ふざけんな!なんでネギ使ってねぇんだよ」
「猫はネギ食うと死ぬんだよ」
「死ねばいいだろ!畜生のくせにナマ言ってんじゃねえ」
「なにあれ」
「店員が猫だからって舐めてるのかしらね」
ゆかりと猫娘は嫌悪感をあらわにしている。
「…俺が言ってくる」
男の前に立つ。
「なんだ,ガキ」
「あんた、この店から出てけ。不愉快だ」
「あ?客は神だ!そして俺は年上だ!ガキが指図すんじゃねえ!」
「その理屈だと俺も神なんで同格ですね。いや、ルール守らないアンタはガキ以下だ」
その時、「お客様のご迷惑です、お引き取りを」と言いつつ唸り声を発しながら虎が現れた。
「虎ぁ?俺は酔ってねえぞ!?....動物園かなんかか?」
「こんにちはー。庭瀬農園ですー」
「キンツァイとほうれん草、もやし、その他諸々納品に来ました」
そこに、段ボール箱を担いだ大男と真面目そうな中年男性が現れた。
「おや、若じゃないですか」
「善さん!あー、今日納品日だったんだ」
「お知り合いで?」
「この方は庭瀬農園を管理する蜂農会の親組織、庭瀬組組長のご子息、庭瀬尊坊ちゃんです」
「「「!?!?!?」」」
ヤクザの息子であることを知った常連達は一斉に尊を見た。男も。善さんと呼ばれた男は男を一瞥すると尊に問うた。
「あの男......連れ帰ってもよろしいですか?」
「いいよー。キンツァイ畑勤務に丁度いいね。もしかしたら好きになるかも」
「御意に」
「な、なんだ!?や、ヤクザ!?通報するぞ!うわなにをするやめ」
男は善さんの付き人らしき偉丈夫のチョップで気絶し、彼に担がれて店を退店した。
「…ありがとうございます」
少女は尊にお礼を言うが、尊は少女のラーメンを気にしていた。
「お気になさらず。ラーメン、もう伸びてない?」
「えっ?あ…」
「さっき食べてたのってスペシャルだよね」
「はい…」
「スペシャルひとつ追加で」
「にゃー!」
スペシャルを注文した尊。さらに女の子に奢ることを宣言する。
「俺が奢るよ」
「ええっ!?自分でお支払いします!」
「遠慮しないで。一応金あるし」
「そ、それでは…ご馳走になります」
「私以外の女の子に奢るなんて…酷いことするわ」
「ごめんて…でも伸びて冷めたラーメンってあの子が可哀想だったから…」
「優しいのね。でもその優しさ、ゆかりに向けてあげなさい」
「はぁい…」
「ラーメン赤猫,いいお店よね。今度鬼太郎誘って行こうかしら」
「それがいいと思いますよ」
猫娘と尊、ゆかりは赤猫前で解散するのだった…。
…………
「彼とはまた会えそうな気がします」
少女は微笑むと、突如現れた次元の境目へと入ってゆくのであった。
ラーメン赤猫は庭瀬組のナワバリとなりました