起 四葉事変
紫陽花濡れる6月下旬。
その日はとても長く,重い日であった。庭瀬家で休養していた叢正が電話をとったことから始まった。
「なっ!?星児さ...会長が!?」
「おじさん?どーしたの?」
呑気に訪ねる尊に、叢正はいつになく真剣な表情となり、ありすのお父さん...四葉星児氏が亡くなったことを告げた。
庭瀬家では叢正と尊が代表で参列し、星児に別れを告げた。
マナ、六花、真琴、亜久里、レジーナもおり、式が終わって合流して会話していた時、突然警察官が現れて叢正に手錠をかけた。
「庭瀬叢正!収賄、不正競争防止法違反で逮捕する」
「なっ…!?」
「叔父さん!!」
尊は突然の逮捕に納得できず、叢正を連れて行こうとする警察官の前に立ちはだかった。
「叔父さんが何をしたってんだよ」
「邪魔するな!公務執行妨害でお前も逮捕してやる!」
「なんで逮捕されるのか教えてくれって言ってんの!叔父さんは逮捕されるようなことはしてない!はず!」
「....そこは断定してあげなさいよ」
レジーナのコメントに六花が慌てて口を塞ぐ。
「この、社会のゴミが!ゴミに教える道理なんてないんだよ!」
「この際だ、コイツを使って庭瀬組をアゲちまおう。そうすりゃ大手柄だ」
「あの時代錯誤のたぬき親父の鼻を明かせるぜ」
その時、警官と尊の前に目暮警部が割って入った。
「やめろ!身内が突然逮捕されて困惑しているだけだ。それに彼はまだ庭瀬組を継いでいない一般市民。ヤクザでは無い」
「しかし!」
「いいから持ち場へ戻れ!」
警官達を返すと、目暮警部は尊に向き合う。
「どういうことなんすか!目暮警部!叔父さんは金に靡くような人じゃないし、会長さんのこと尊敬してるって言ってた。技術を外に流すなんてありえねぇ」
「それをこれから捜査する。......無理やり自白させるようなことはさせないよう、上と担当者に伝える」
「叔父さんは庭瀬家の人間だけど庭瀬組の人間じゃない.....おじさんは社会のゴミなんかじゃ無いんだ」
「それは十分承知している。ここは私たちに任せて、君はもう帰りなさい。あの巡査達まだ君を睨んでいるようだ」
「く......」
モヤモヤした状態で庭瀬家に帰宅した尊は大和にことの顛末を話した。
「アイツは専務の倉田明宏と対立関係にあったと勲くん*1から聞いている。おそらく奴に嵌められたのだろうな」
「で、どうすんだよ」
「面会に行ってくる。まあ、極道を警察組織の管轄内に入れようとはしないだろうけどな。その辺は親父の知己の力を借りるとしよう」
葬式後、しばらくありすとは会えなかったのだが、ようやく会える目処がついた。
四葉邸の庭園にて、ネイビーブルーのドレスを着て静かに庭を眺めるありすに尊は声をかける。
「よ、よう、ありす」
「尊さん。マナちゃんたちも」
「その、お父さんの件なんだが」
「はい。」
尊はバッと両手を開いた。
「ありす、おいで」
「っ!?」
「吐き出しちまえよ。.....溜め込んでても苦しいだけだぜ。俺が全部受け止める」
尊の言葉を聞いたありすの目からポロポロと大粒の涙が浮かぶ。そして、尊に抱きつき、子供のようにわあわあと泣き出した。
「ありす、我慢してたんだね」
マナも、ありすに優しく抱擁する。
そんな一幕を遮るかのように突然招かねざる客が現れた。
薄紫のメッシュがかかったマゼンタの髪にピンクを基調とした独特のデザインの衣服を纏う美青年と髪の大部分を剃った、薄緑の髪を蠍状の尻尾のように左側にまとめ、緑色のリップを塗っている筋骨隆々の男だ。
「あんたたち何者なの!」
「ボクちゃん達の名前知りたい?どーしよっかなー。教えちゃおうかな?」
マゼンタ髪の青年は挑発するような言い方で返答したが....
「オレはルスト」
マッチョの方が律儀に自己紹介をしてきた。
「ちょ!なんで先に名乗っちゃうんだよ!まあいいや。ボクちゃんゴーマ。よろしくねん、プリキュアのみんな」
「なにがよろしくよ!」
六花が突っ込む中、尊はありすの頭を優しく撫でた後、赤いオーラを立ち上らせ、2人を睨みつけた。
「俺ァ今、過去最高潮に機嫌が悪ィ。ありすを慰めなきゃいけないし叔父さんの無実を証明しなきゃいけないし、兎に角やる事が多い。お前らに構ってる暇はねぇんだよ。とっととおうちに帰りやがれ」
「そいつは無理な相談だねぇ!ボクちゃんたちジコチューだし?」
ピンク髪の青年、ゴーマはそういうと尊に襲いかかってきた…!