【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と友人たち

 

 翌朝、私は憂鬱な気持ちで朝ごはんを食べ、学校に向かった。萎れていたからお父さんに心配されたが、メッセージの件を話すと笑い飛ばされた。なんでも、心配してくれているうちが花だそうだ。それは……まぁそうだよね。心配させている自覚はあるんだ。ただ、それを受け入れてしまうと、私の人生そのものに影響があるから受け入れられないだけで。だから、申し訳ないけど、ずっと心配させ続けてしまっている。フォローはしてるつもりだ。

 ……というか、よくよく考えると、昨日の配信を見ていたとして、何か心配させるような危ない行動はしてないはずだ。渓谷の飛び降りも、以前からやっているしほかに危ないことなんてしてないし……何について話があるんだろう?モンスターを食べることについては、むしろ笑って聞いてくれているくらいだし……?

 

 憂鬱な気分から、疑問符が大量に浮かんでいる状態に移行しながら、学校に到着する。私が通っているのは、普通の公立高校だ。近くに冒険者用の学校もあるし、そっちに行こうかとも思っていたんだけど、パンフレットをみる限り冒険者というか、配信者向けっぽい感じだったので、それなら別にいっかと、こっちにした。友人たちの進路でもあったから。なんだかんだ、私は寂しがりやなんだろう。

 教室のドアを開けて、おはようと挨拶すれば、クラスメイトから挨拶が返ってくる。自分の席に友人たちが揃っていた。

 

「おはよう、夢希?」

「おはよー、夢希」

「お、おはよう、愛依(あい)(りょう)…」

「なーんでアタシから目を逸らすのかなぁ…?」

「愛依が怖いからでしょー?」

 

 目が笑ってなくて怖いからだよ。とは言えない。にっこり笑って圧をかけて来るのが愛依。その横でニヤついているのが凉だ。ニヤついてないで助けてくれ。

 愛依も凉も、中学校から友人で、2人とも可愛い系というよりはカッコいい系だ。愛依はモデルをやっていて、いわゆるギャルってやつ。ピンク髪の長髪をポニーテールにしていて、スタイル抜群。お洒落とか流行に詳しくて、ちょっと成績が悪いけど世話焼きの良い子。冒険者になった私のことを心の底から心配してくれる子。ただ、若干心配性というか、過干渉というか……ちょっとやらかすとこんな感じで詰めてくる。目が金色なせいで、笑って圧をかけて来るときは、猛禽類みたいな感覚がしてちょっと怖い。

 凉は、帰宅部でなんか色々やってるやつ。ゲームにアニメにマンガに映画とサブカルチャーにどっぷりな感じで、イベントがどうだ新作がどうだのと、結構忙しそうにしている。どっからお金が湧いてきているのかは謎だけど。私が読んだり見たりしているマンガやアニメは、こいつからの受け売りばかりだ。お勧めされるものがことごとくハマる辺り、こっちのことをよく見てるなって思う。ちょっとダウナーな感じで、だらっとしている印象だけど、イタズラ好きの猫みたいなやつだ。大抵、こういう場面では茶々を入れつつ、安全圏から楽しんでいる。矛先が自分に向きそうになったら、即逃げる。水色の髪をウルフカット?にしていて、目が翠なのも、あってスポーティな感じがするけど、基本的に家で活動しているヲタク?ってやつである。スタイルは……すごーく羨ましい感じのスタイルしてる。猫背なせいであんまり目立たないけど。

 

「は?怖くないでしょ。現役モデルの笑顔よ?ほらにっこり」

「目が笑ってないんだってばー。ねー」

「そんなことないでしょ?ね?」

「う、うん。かわいいとオモウヨ」

「なんで片言なのよー?んー?」

「……ふふっ……くっ……」

 

 目が怖いんだってば!目を背け続けていると、他のクラスメイトたちが視界に映る。こっちのことを認識はしているが、特に何かあるわけじゃない。なんというか、日常過ぎて注目に値しない出来事になってしまっているようだ。

 そういうわけだからか、こういう場面でクラスメイト達は助けてくれない。もう彼らの中では、私が何かやらかしたのは確定事項で、それを愛依に詰められているとしか認識されていないから。確かに、散々色々やらかしてるのは事実だし、それを詰められるのもいつものことなんだけど、ちょっとくらい助け舟を出してくれたっていいじゃないか!勉強の面倒とか、昼休みにみてあげてるのに!!

 ちなみに、私は勉強の成績は学年1桁順位に入るくらいにはいい。何故なら、ダンジョンに好き放題潜るために中学校時代に高校の内容を全て予習しきったからね。勉強で時間が取られるなんて許せないし、補習なんて以ての外。私はダンジョンで冒険するために今を生きている。授業中で全てを思い出しきり、それを忘れないように全力を尽くす。それが私の勉強法である。大真面目にこれを言ったら、それが出来るのはアンタだけよ!!って愛依に全力で叩かれた。私は、冒険者として超人的な肉体性能をしているので、むしろ愛依の方がダメージ受けてた。

 

「と、とりあえず、何の話が聞きたいの?私、昨日やらかし……はしたけど、危ない事をした記憶はないよ?」

「そのやらかしが大分アレだったけどねー?」

「…………」

「そのやらかしについて聞きたいの!」

「わたしもちょっと気になるかなー?」

 

 凉、君もか……!もう、やらかし自体が多すぎて、どの部分を聞きたいのかも分からない。萎れながら、2人分の質問攻めにあうのは確定のようだ。2人に肩を掴まれ席に座らされる。大分密着して、小声で質問してくる。いい匂いするなー、2人とも……

 

「とりあえず、あの人は誰?知り合い?」

「……初対面の人だよ」

「え、初対面なのにあんなに心配してくれてたの?良い人すぎない…?」

「なかなかいないよねー、あんな人」

「うん。本当に良い人だった」

「そして、そんな良い人に無断でモンスター食わせる鬼畜がアンタと」

「うぐ……」

「迷惑かけまくった挙句に泣いちゃうしねー?」

「慰められてるのは可愛かったわよ?」

「うぎぎぎ……」

 

 や、やめてくれ、本当に死んでしまう…!お父さんに抉られなかった分を今抉られてる…!いや、存分に恥を晒したのは事実何だけどさぁ!……ってことは、あの配信見てた人たちにも恥晒したのか……そっちはどうでもいいな。別に会ったりするわけでもないし。

 

「で、配信切ったあとはどうだったのよ?」

「……?どうって?」

「なんかこう……何か言われたりしなかった?」

「やらかし分のお詫びとかさー?」

「……後日お詫びに冒険の手伝いする、ってことを約束して連絡先交換したくらいだよ」

「それだけ?」

「それだけ」

「本当にそれだけー?」

「???……うん。本当にそれだけ」

 

 なんだろう2人とも何が聞きたいんだ…?そして、なんでそんなに安心したような顔してるの…?よくわからなくて2人を見ていると、それが2人に伝わったらしく、ため息をつかれた。なんでぇ…?

 

「アンタは色々と無防備過ぎんの!」

「そーそー」

「……そうかな?」

「こういうとこが夢希のいいとこでもあるけど……うーん……」

「なまじ強いからなおさら無防備になってるのかなー?」

 

 いや、本当に何の話…?

 

「まぁ、この件は置いておくとして……でも、ホントに気をつけなさいよ。今回の件は相手があの人だった上に、アンタの配信がほとんど誰からも注目されてなかったからこれで済んだだけ」

「うん。結果的に、やったことは炎上系の配信者と変わんないしさー」

「!?」

「【内緒でモンスター食べさせてみたwww】とか、ありそうでしょー?」

「一歩間違えたら大炎上してたわよ。冗談でなくね」

「いやでも、わざとじゃないのは前後を見れば分かるし、そこまではしないんじゃ…?」

「確かにその通りよ。()()()()()()()、だけど」

「…………?」

「あのねー?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、どうなると思うー?」

 

 血の気が、引いた。

 

「しかも、アーカイブもいつもの非公開じゃなくて削除。だから、確認しようにも前後の映像は存在していない。相手の人も、顔が映ってないし、名前も配信に乗ってなかった以上、本人だって名乗り出ても証明できない。装備なんかはいくらでも真似できるしね。つまり、アンタの()()()()()()()()()()()()は実質不可能ってわけ」

「まー、夢希も顔映ってないから、特定されることは多分ないとは思うけど、それでもねー?」

「言動諸々で特定される可能性は大いにあるわ。モンスター食べてる冒険者なんて、アンタ以外に知らないし」

「あー、うん。そうだねー……」

 

 もう多分、私の顔は真っ青を通り越して真っ白だと思う。本当に、社会的に死ぬ一歩手前だったのか私は。そこまでのことだと思ってなかった。確かにこれは無防備、というか、無知すぎたんだ私が。ネットのことについては、本当によく分からないし、2人から教えてもらってばかりいるな……

 2人に頭をかき混ぜられる。髪がぐしゃぐしゃになるけど、気にする余裕もなかった。

 

「嫌がるアンタに、無理矢理配信やらせてるアタシたちが言うことじゃないってのも分かるんだけど……ね?」

「他の人と違うことやってる分気を付けないと、ホントに危ないからねー?」

「…………うん。分かった」

 

 そのタイミングで予鈴がなって、2人は軽く私の髪を整えたのち、自分の席に戻っていった。私は、しばらくの間、手の震えが止まらなかった。

 

 

 

 とりあえず、午前中になんとか切り替えることに成功した。だって、落ち込み続けていてもしょうがないから。冒険者を辞めるなんて選択肢はないのだし。配信を辞める……のが無難な気もするんだけど、それこそ2人に心配をかけちゃうしね……。昼休みに2人と一緒にご飯を食べつつ、授業中に考えていたことを話す。私と愛依は持参の弁当、凉はコンビニ弁当だ。

 

「2人に相談があるんだけどさ」

「何よ、改まって」

「わたしたちで解決できることならなんでもどうぞー?」

「今回みたいなことを起こさないために、どうしたらいいかって考えてて」

「何度もラッキーは続かないだろうし、対策は必要よね」

「うん。それで、配信してるって意識が低すぎるのが問題あるのかなって思ってさ」

「あー……リスナーさんともコミュ取らないしー、挨拶も特にないしー。意識の切り替えみたいなのがないって話ー?」

「そうそう。で、挨拶とか会話とかやるのがいいかなって思ったんだけど……」

「けど?」

「今まで一切そういうことしてこなかったのに、いきなりやるのって……変じゃないかな?」

「アンタそれギャグで言ってんのよね?」

「大分つまんないギャグだけどねー」

「…………」

  

 結構ムカついた。2人して顔を見合わせて、大きな大きなため息を1つ。おいなんだよ。こっちは真剣に相談してるっていうのに……!口喧嘩で勝てたことないけど、やんのかぁ……!?

 

「あのね、1から100まで変なことしかやってないやつが今更まともなこと言い出しても、ギャグにしかなんないわよ?」

「!?」

「なんていうかさー、露出狂が今更服着てないことを恥ずかしがる、とかそういうレベルだよ?」

「そ、そこまで酷いかな私って!?」

「大体、どこまでいっても変人の言動しかしないんだから、今更他人からの評価気にしてどうすんのよ」

「そーそー。それこそ、『この世全てのモンスターを食べ尽くしてやるでゲス!ゲースゲスゲス!!』レベルの挨拶かますくらいじゃないと、評価変わんないってー」

「そ、それ、さらに変人扱いされるだけじゃ……」

「今から変人以外の扱いされるのは、流石に無理でしょー?」

「そうよ。そもそも自覚あるんでしょ?自分が変人だって」

「ぅ…………」

 

 何度も何度もぐっさり刺すじゃん2人して……!自分が変人なのは分かってるけどさぁ……!やっぱり口喧嘩では全く勝てないなぁ……2人には。

 

「口喧嘩で勝てないなー。とか思ってるんでしょうけど、そもそも喧嘩になってないから」

「夢希が弱すぎて、喧嘩の土俵にあがってこないもんねー」

 

 そ、そこまで刺さなくてもいいじゃん……泣くぞ?恥も外聞も投げ捨てて、泣き叫ぶぞ…!?

 一通り私をズタズタにして満足したのか、私をそっちのけにして、2人で会話を始める。

 

「意識の切り替えに挨拶するってのは、いい案なのよね。私も写真撮るときに大声で挨拶するから、切り替えうまくいってるとこあるし」

「ルーティンってやつー?まー、問題は挨拶をどういうものにするか、だけどー」

「そこで奇をてらう必要なくない?全編奇しかないのよ?」

「確かに。普通に名前名乗って、今日の目的伝えて終わり。くらいでいいかなー?」

「どっかに所属してるわけでもないし、スポンサーとかもいないんだから、それでいいでしょ」

 

 こういうところが優しいんだよね、2人とも……!

 

「次の配信の最初に理由伝えてー、素材を煮込んでる間とかにリスナーさんたちと会話してみたらー?」

「そうそう、訓練されてる感じするから、かなりまともだと思うわよ。アンタのとこのリスナー」

「完全に自治出来てるしねー」

「……今日は、煮込むような予定はないから、会話は出来ない気はするけど、挨拶はしてみるよ」

「頑張んなさいね」

「がんばー」

 

 やっぱり、2人に相談して良かった。今日ダンジョンに潜る時に、挨拶して目的だけ話すことにして、会話は……出来たらやろう。いきなりやってうまくいくわけないし。一般的な配信をするつもりはないんだから、それでいいはずだ。

 とりあえずはこの案でやってみよう。うまくいかないなら、また相談させてもらおう。

 

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